「死線上のアノ子」の話
「人って……死にたくなる事、あるんやな」
友人からメールが来た。
彼女の名前はさゆり。
7つ年下の女の子。
出会ったのはお店をしている時。
お客さんとして遊びに来てくれた。
当時、短大生だったさゆりは
元気いっぱいで、暗さの欠片もない子であった。
家にもちょくちょく泊まりに来て、ラーメンを食べに行ったり、カラオケに行ったりしていた。
オススメの漫画はひと通り読んでもらった。
久しぶりに出会うと、ずーっと自分の話をしゃべりっぱなし。
「イヤ……ちょっと私の話も聞いてくれん?」
「え……私の話聞きたいかなって……」
「あんたの話も聞きたいけど、私の話も聞いてよ」
「ウチの話……面白いで?」
「私の話だって、オモロイわ!!」
いつも、そんな愛にまみれた会話をしていた。
さゆりは管理栄養士になり、大阪で働く事になった。
頻繁に連絡はとっていなかったが、人づてに、たまにくる連絡に
会社がブラックっぽいな、と何となく察する事が出来た。
冬のある日。
仕事をしていると一通のメールが届いた。
「人って……死にたくなる事、あるんやな」
さゆりからのメールだった。
鋭い私はピンときた。
(あ……やっべー。これ、ほっといたら死ぬヤツ)
私は一回呼吸をして
さゆりに電話をする。
つながらない。
(えーっと……何だった?会社の名前?)
奇跡的に覚えいたさゆりの会社の名前。
検索をして電話をかけた。
「お電話ありがとうございます。〇〇食品です」
「もしもし~、山崎の姉です〜。いつもお世話になっております〜。入院している祖母の具合が悪くて……さゆりと電話で少し話……出来ます?」
嘘も方便。
「もしもし……」
さゆりのとても暗い声。
「もしもし、私!つくね!今からそっちに仕入れ行くから!今日泊めてくれ!」
「え……姉さん?マジで?ほんまに来るん?」
「ほんまに!あんたがおらんと、私、寒空の中マッチ売らなあかんくなるけん!頼むな!」
「うん……分かった」
(よし、これで取り敢えず大丈夫)
片付けを始めた。
「今日と、明日は休ませて頂きます」
と書いた紙をお店の扉に貼り付ける。
(全て現地調達で良し!)
大阪行きの新幹線に飛び乗った。
6時頃、さゆりの顔を見ると一気に力が抜けた。
正直、不安もあったので……
「ホンマに、来たんやな……」
「あんなメール見たからな!来るしかないじゃろ!」
安心して、軽く怒ってしまった。
いつものようにラーメンを食べた後、さゆりのマンションへ向かった。
初めての彼女の部屋は荒れ放題であった。
詰替えのシャンプーは詰替えられる事もなくそのまま使われており、ベッドにはカピカピのコンタクトレンズが何枚も落ちていた。
その状態を見て心の底から言った。
「あんた……もう仕事辞め?こんな状態……もう何もかもアカンわ……」
「やっぱり……そうかな……」
「今日は私来れたから良かったけどさ……今の会社おったら……また死にたくなるだけじゃろ」
「……うん」
「最後にあんたの事守れるのは……あんただけなんやで……」
「……うん」
(まだ話が通じる状態で良かった……)
布団に入り話をしながらいつの間にか寝ていた。
ケータイのアラームで目が覚めると、さゆりも起きて来た。
「おはよう」
「おはよう。パン食べる?」
「うん、ありがとう」
二人でパンを食べて、用意を済ませると、すぐ出発。
「朝早いなー」
「うん……」
駅まで送ってくれたさゆりが
「ホンマにありがとう」
お礼を言ってくる。
「こっちこそ、泊めてくれてありがとう」
私もお礼を言う。
「何でここまでしてくれるん?」
「え……友達が死ぬのは出来るなら止めたい。生きてて欲しいからなぁ」
「ウチ……死にそうやった?」
「死にそうやったね」
「会社……辞めるわ……」
「そうしてくれ……次はフツーに遊びに来たいわ」
「うん!またな」
「おー!」
そう言って、お互い手を振った。
何だかんだ、優しいひろゆき氏。
面白(?)精神科医かばちゃん。
取り敢えず、いのちだいじに。
明日も元気で、笑って過ごしてほしい。
少し疲れている、あなたに届け。
#習慣にしていること