【第7回】つくば研究支援センターのスタートアップ海外進出支援~台湾関係機関との連携推進~
こんにちは!つくば研究支援センター(Tsukuba Center Inc.)のnote編集部です。あっという間に暑い夏が終わり10月ももう終盤、肌寒い季節になりました。今年は特にインフルエンザの感染が拡大していますので、みなさま暖かくして、お体にお気をつけてお過ごしくださいね。
note第7回の記事となる今回は、つくば研究支援センターにおけるスタートアップ海外進出支援について、台湾関係機関との連携事例をご紹介します。
台湾について
台湾と聞いて、みなさま何を思い浮かべるでしょうか?
台湾政府の機関である台北駐日経済文化代表処が1,000人に対してアンケートを行った「日本人の台湾に対する意識調査結果 2020年」では、7割以上が台湾に親しみを感じ、日台関係を良好であると回答しています。特に興味のある分野としては、「食文化」、「自然・風土」、「歴史・史跡・寺廟」となっているようです。
台湾グルメは日本人にはとても人気があり、小籠包、タピオカミルクティーなどのブームの火付け役は、いずれも台湾のブランドです。
実際筆者が現地に足を運んだ際にも、台湾庶民の味である「魯肉飯(ルーローハン)」に舌鼓を打ちました。醤油のスープで甘辛く煮込んだ豚バラ肉がご飯ととても良く合います。
ー今世界の注目を集める国、台湾
そんな台湾ですが、食文化や観光以外にも、世界の注目を集める分野があります。それは半導体をはじめとするハイテク産業です。
台湾の輸出品目の上位は、電子部品、情報通信機器、金属製品、機械となっており(注1)、中でも半導体の受託製造(ファウンドリ)に関し、台湾企業は世界の収益額の6割以上を占めています(注2)。
最近では、世界最大級の半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)が熊本工場を建設するというニュースが日本国民の注目を集めました。半導体は、コンピュータ、スマートフォン、自動車、AIをはじめハイテク産業では欠かせない電子部品であり、世界の半導体市場規模は今後も拡大が見込まれています。TSMCの熊本進出による経済効果は、今後10年間で4兆円を超えるとも言われています(注3)。
このようなハイテク産業に牽引された力強い経済成長により、一人当たり名目GDPは32,811米ドル(2022年)と日本に肉薄しています(注1)。
台湾の自治体・研究支援機関とつくば研究支援センターの交流
ディープテック領域では、ITサービスと比較して当初より大規模な設備投資を必要とすること、またプロダクトやサービスが普遍的であるという特徴があるため、創業当初から海外市場への進出を念頭においているスタートアップが多く存在します。
つくば研究支援センターでは、つくばの優れた研究シーズを活用したディープテック・ベンチャー/スタートアップの海外進出支援を行っています。
ー台湾の自治体・研究支援機関との交流
台湾をはじめとするアジアの産業集積地は、本邦から地理的に近接しているだけでなく、グローバルハブとして世界に進出する上での窓口になっています。
これら都市の企業・投資家・ベンチャー支援機関(インキュベータ/アクセラレーター等)との関係強化及び連携は、ベンチャー/スタートアップ企業の成長支援にとって重要だと考えています。
実際に、優れた半導体技術や新素材技術を有する複数のつくば発ベンチャー/スタートアップ企業が、台湾の製造業者や研究機関等との提携や連携強化を志向しています。
このような企業間の交流等を促進すべく、つくば研究支援センターでは、2019年2月に台湾の工業技術研究院(ITRI)(注4)との間で連携協力に関する覚書を締結し、革新的企業の成長促進に有益な情報の相互提供、現地での相手企業のサポート、スタートアップ企業の支援に関する意見交換などを行っています。
また、日本最大級の研究開発クラスターである筑波研究学園都市には、海外からも数多くの視察団が訪れています。2023年4月からの半年の間にも、台湾関係機関からつくば研究支援センターに複数の訪問がありました。
(1)台湾バイオテクノロジー開発センター(Development Center for Biotechnology)一行による訪問
台湾バイオテクノロジー開発センターは、1984年に官民共同出資で台北近隣の国立バイオテクノロジー・リサーチ・パーク内に設立された研究機関であり、特に新薬の研究開発及び産業振興に関する支援活動を行っています。2023年4月、同センター会長以下幹部がときわバイオ株式会社及び当社を訪問し、意見交換を行いました。
(2)台南市経済発展局一行による訪問
台南市は、「六都」と言われる台湾で最も大きな都市群(直轄市)の一つであり、本島南西部に位置しています。光学・電子関係企業が集積しており、南部サイエンスパーク(南部科学工業園区)を擁しています。同市経済発展局長及びITRI中部支部CEOが来訪し、つくば研究支援センター入居スタートアップとの意見交換を行いました。
(3)新竹市一行による訪問
新竹市は、台湾最大の新竹サイエンスパーク(新竹科学工業園区)が位置するICT企業の集積地であり、TSMCの本社も同サイエンスパークの中に位置しています。高虹安新竹市長はじめ、同政府の代表団がつくば研究支援センターをはじめとするつくばの研究機関等を訪問し、視察・意見交換を行いました。
つくば発スタートアップの台湾進出支援
ー台湾国際イノベーション技術見本市「Taiwan Innotech Expo 2023」へのつくば発スタートアップ企業による出展
2023年10月12日~14日の3日間、台北世界貿易センターにて、イノベーティブなアイディア製品、ソリューション、特許技術が一堂に集うアジア有数の国際イノベーション技術見本市「Taiwan Innotech Expo(TIE) 2023」が開催されました。会場には、日本でも人気のある台湾のデジタル大臣(デジタル発展部部長)オードリー・タン氏も登壇するなど、大きな盛り上がりを見せました。
本年のTIEには、公益財団法人日本台湾交流協会の「令和5年度日台産業協力架け橋プロジェクト助成事業」として、公益財団法人いばらき中小企業グローバル推進機構(注5)の支援の下、つくばより5社のスタートアップ企業がブース出展をしました。
TIE開催期間中、会場入口付近につくばスタートアップを含め茨城県の関係機関が集まった専用ブーススペースが設けられ、台湾企業や研究機関など、多くの訪問客で賑わいました。
入居企業とともにつくば研究支援センターからも担当者が参加し、研究開発拠点としてのつくばの魅力を発信しました。
ー国立陽明交通大学・国際産学連携センター(GLORIA-NYCU)との連携に関する覚書の締結
また、2023年10月13日、つくば研究支援センターは台湾の国立陽明交通大学・国際産学連携センター(GLORIA-NYCU)の間で相互連携のための覚書を締結しました。
陽明交通大学(NYCU)は、台湾を代表する理工系・医学系の総合大学であり、新竹サイエンスパーク内にキャンパスを有しています。台湾の半導体産業を支える高度人材の育成・供給機関であり、Acerの創業者や台湾ファウンドリ第3位のUMCの創業者は、いずれもNYCU出身です。
また、NYCUの前身である交通大学(NCTU)は、半世紀以上にわたって台湾の半導体技術に関する基礎研究をリードしており、1964年に台湾で初めて半導体ラボが設立されたのもこの大学です。
つくば研究支援センターは、GLORIA-NYCUとの覚書の締結を通して両当事者間での情報交換を促進するとともに、つくば発スタートアップ企業の台湾市場への進出や販路開拓をより一層支援していきます。
結び:クロスボーダーなオープンイノベーションの促進に向けて
ディープテック・ベンチャー/スタートアップが事業を成長させていく上では、外部の企業や研究機関との連携が重要な要素になります。つくば研究支援センターは、今後も、国内のみならず台湾をはじめとする海外のプレイヤーや支援機関とのオープンイノベーションを促進することで、つくばの優れた研究開発シーズの社会実装や産業創出を支援していきます。
執筆:つくば研究支援センター ベンチャー・産業支援部 大塚和慶
※本記事は、個人的見解・意見を述べるものであり、つくば研究支援センターの組織的・統一的見解ではなく、それらを代表するものでもありません