見出し画像

映画『ハニーボーイ』自分を虐待した父親を演じるということ

ハリウッドの人気子役が父親に虐待されながら過ごす日々と、子役が成人しハリウッドスターになった後も、トラウマに悩まされる現実を描いています。2019年サンダンス映画祭審査員特別賞受賞。

ストーリー

ハリウッドの人気子役のオーティスは、いつも突然感情を爆発させるアルコール依存症の「ステージパパ」ジェームズに振り回される日々を送っていた。
それから10年後、オーティスはハリウッドのスターとして活躍していたが、撮影に忙殺される中でアルコールに溺れるようになっていた。ある夜、泥酔して自動車事故を起こしたオーティスは、更生施設へ送られる。そこでPTSDの兆候があると診断され、過去の記憶をたどり始める。いつも浮かんでくるのは父親のことであった。

アルマ・ハレル監督。シャイア・ラブーフ脚本、出演。

12歳のオーティスは「ワンダー君は太陽」のノア・ジュプ。10年後のオーティスはルーカス・ヘッジズが演じます。

ノア・ジュプの愛らしさ、ルーカス・ヘッジズの間違いない演技、どれも素晴らしい。

でも、一番衝撃だったのは、シャイア・ラブーフが自分を虐待した父親を演じたことです。

この物語のオーティスはシャイア・ラブーフ自身です。シャイア・ラブーフといえば「トランスフォーマー」「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」などの主演作がありますが、アルコールの問題で実際に更生施設に入っています。

彼が治療の一環として施設内で書いたノートから、自身で脚本を執筆し、PTSDの原因である父親を演じました。

アルマ・ハレル監督のインタビュー記事によると、ラブーフはこの映画の撮影のために離れて住む父親に実際に会いに行き、少しのあいだ生活を共にしたそうです。

その行為が傷ついたメンタルにどのように作用するのかは、専門家ではないのでわかりません。

でも、生半可な覚悟では、自身を虐待した父になりきり演技をするなんてできないと思われます。

脚本では、父親は肉体的な暴力を振るうというより、常に精神的な苦痛をオーティスに与えているという描写でした。

オーティスは、どうしようもない父親だけど、やっぱり父親に愛されたい。自分が稼がないと父親がどこかに行ってしまう、父親が又逮捕されて消えてしまう、と常に不安に思っています。

父親は、人間として自分のことで精一杯で常に汚い言葉でどなりちらす。

最低な父親ですが、父親を単なる理解不能な悪人としては描いておらず、そこが、シャイア・ラブーフの気持ちなんだと思います。

今後、シャイア・ラブーフが活躍できますように。

大好きな映画です。

出町座さんで鑑賞しました。

画像1


画像2

いいなと思ったら応援しよう!