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『博士の異常な愛情』(ちょいネタバレ注意)

オススメ度⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(5つ星中5つ)

1964年製作のアメリカとイギリスの合作映画。時代物の白黒映画です。

【あらすじ】冷戦の最中、アメリカ空軍の将軍が暴走し、ソ連への水爆攻撃を勝手に命令。米大統領が攻撃を回避しようとソ連と連携するが、ソ連への攻撃が止められなかった場合、ソ連が保有する報復兵器の自動核爆弾装置が発動され、地球上の全生物が絶滅する自体に。人類滅亡を食い止めるべく、爆撃機を止め、絶体絶命な状態を免れようとする人類の奮闘を描く。


「映画2時間も時間使うし、ぜってぇー駄作とか観たくない」

「自分史上、最高の映画に出逢いたい」

「彼女と別れたし、コロナだし、とにかく暇だけど、充実させたいわ」

上記に当てはまる方はマストウォッチです。

白黒映画ということで、なかなか映画の内容に入りづらいと思われるかもしれませんが、心配及ばずで、すぐに釘付けになります。 その理由は下記3つ。

【釘付けになる理由】

1. 米国ドラマ『24-TWENTER FOUR-』を思わせるような絶対絶命なシチュエーションで様々な登場人物が各々の立場で状況を回避・遂行の奮闘を見事に描写。

映像は白黒ですが、現代の映画に全く見劣りしません。緊迫感のあるカメラワークと各小道具も本物(か知らんけど)っぽくて、逆にリアルです。

2.俳優がいるが、全員演技力高し。

ドラマや映画って、「おいおい事務所の力かよ....」って思わせる俳優もいますが、全員最高です。しかも、昔の白黒映画であるような、オーバーリアクションもないです(あまり感じさせないです)。さらに補足として、ピーターセラーズが「大統領」「博士」「大佐」という3役を見事に演じきるのも魅力の一つです。ちなみに、筆者は、他のレビュー見るまで気づきませんでした。笑

3.古びることのないコンテンツと痛快さ。         

今から50年以上前の映画とは思わせないコンテンツ力とブラックユーモアがあります。それぞれの国が国力を誇示するために、誰得な人類破壊兵器を作ることによる皮肉と「このまま行くとこの映画みたくなるよ?」という問題警鐘を鳴らしており、鑑賞後、色々と考えずにはいられなくなります。ただし、後味の悪さは全くなく、ある意味でスカッとした気持ちになります。


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とまぁこの映画の魅力はこのあたりにし、ここからは筆者が他の方のレビューを読みつつ、想う3点書きます。         

1.ヒトラーは死んでも、ナチズムは生き続ける。                           

映画のストレンジラヴ博士はドイツから帰化した人物ですが、大統領のことを誤って「総統」と呼んだり、熱弁している際に、癖で右手が挙がってしまう所から、熱狂的なナチス信奉者であることが暗示されています。第二次世界大戦後の冷戦の時代、「資本主義」「社会主義」の思想対立の真かであるにも関わらず、その時代でもナチズムが影を潜めています。筆者が思うにこの現象は映画だけにとどまらず、現在も同じような現象が起きていると感じます。ドイツでは、歴史教育においてナチズムの卑劣さを教えているようですが、それでも、ユダヤ人を排除しようとしたり、再度ヒトラーを崇拝したりする輩が出てきているとか...。指導者がいなくなっても、思想はなかなか滅びないのだと感じます。

2.想像力をいかに持つかで未来は希望にもなり絶望にもなり得る。

               
この映画は、暴走した将軍を止められず、結果人類滅亡という最悪なシナリオを迎えます。そもそもの「核所有による脅し合い」いう滑稽さは言うにも及びませんが、それ以外にも、軍が暴走した時の対策、爆撃機の通信器故障の対策、全て想像力の欠如と言わざるを得ません。人類が自分たちでは抑制しきれない巨大な力を手にした時、いかに未来を想像できるか、最悪なケースを含む多くのシナリオを想定できるかでこの先の未来は変わっていきます。八甲田山の悲劇もまさに、同じことが言えるでしょう。

3.娯楽化(映画化)されている今だからこそ、"ゆるふわ"ではなく、愚民にならないように心がけたい。

話が少し飛躍しますが、こういったいわば「タブー」とも言えるテーマをブラックユーモアとして娯楽化できる時代は、まだ言論の自由が保証されてます。本当に怖いのは、こういったブラックユーモアでさえも、誰も発信・発言・検索できなくなる時代。「民」という字の語源は、目を針で潰した象形文字で、目を針で突いて見えなくした奴隷を表すそうですが、『茶色の朝』を迎えないためにも、思考停止は避けたいものです。


最後に、

映画はたった二時間の時間で様々な教訓を教えてくれたり、感受性を豊かにさせてくれます。今回、筆者が感じたことを書きましたが、人によってはそれ以外のことを感じることもあると思います。名作と言われる所以が分かる作品になっているので、お時間あれば観てみて下さい。