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ツキノポエトリー

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いつも孤独を抱きしめながら、放課後のほとんどを書店で過ごしていた中学時代。銀色夏生さんの詩集に心がふるえて、詩を書き始めた。 今も孤独を愛し、書くことで心を満たす。 ツキノポエ…
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#現代詩

詩|2月14日、晴れ

いつもより一時間早く起きた朝 ほんのり甘い匂いがした 雲はひとつもない青ばかりの空で 苺で…

月乃
3日前
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詩|咲かない春

空をぜんぶ、ひとりじめしたくなる あの青をぜんぶ、わたしのものに どれだけうばってもなくな…

月乃
6日前
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詩|心の四季

冷たい強風に煽られながら 駅までの道を歩いた マフラーを忘れて寒さがしみる 午後二時のホー…

月乃
9日前
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詩|冬の花

草木が雨に濡れた匂いで空が咲いた さよならが心に到着するのを待って 水色と薄朱色がマーブル…

月乃
10日前
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詩|星の夜

氷の涙は満月の裏側に隠している。 泣かないと決めて歩いてきた いばらの道は、 痛いほど煌め…

月乃
11日前
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詩|いのちの波紋

いのちの雫が雨粒みたいに降ってきて 夜の水面に小さな波紋をつくっていく 心臓はずっと真ん中…

月乃
13日前
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詩|月暈が白く、光る

真冬の海辺をあてもなく歩いていた 白い雪が落ちてくるのを待っていた 時々、小さな貝殻をひろったり 時々、言葉を砂に埋めたりして 凍った心を溶かさないように あなたの体温を感じないように ほんの少しだけ離れて歩いた 心の声があなたに聞こえないように 冷たい闇を流れる雲の影 月の光に反射する白い輪 置き忘れた優しさが胸にささって 痛くて痛くて心が号泣してしまう 月暈に守られていたものが 少しずつ溶けだしていく 白木蓮の花びらのような雪片が 戸惑いながら舞いおちる やがて

詩|小樽運河

あの、まだ夏とも言えない湿った季節 あなたの手を握りしめて 運河沿いを歩いていた 噂どおり…

月乃
3週間前
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詩|生きるための傷

暗闇の中で一筋の光を感知して ゆっくりと目をひらき、息を吸う ああ、わたしは生きているんだ…

月乃
3週間前
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詩|金魚

あなたの心を泳ぐ金魚になった 赤い鱗をキラキラさせて 正面から見つめることができなくても …

月乃
1か月前
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詩|まるいもの

心の少し尖ったところを 三日月のナイフで削って できるだけまるくまるくして 優しくありたい…

月乃
1か月前
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詩|糸

真っ黒な夜に飲み込まれていく 現実を生きている気がしないんだ あの夜があなたを連れていくこ…

月乃
1か月前
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詩|好きを数える

簡単に手に入らないものが好き 強そうに見えて本当は繊細な人が好き 弱そうに見えて芯のある人…

月乃
1か月前
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詩|星降る木曜日

濃紺の夜空に真鍮の三日月が刺さって 傷口からじわりと滲む冷たい血液 わたしを静かに蝕んでゆく薔薇の棘 花でもないのに咲こうとした罪と罰 心の隙間に咲いたヒアシンスに懺悔する 水をあげるかわりにコバルトブルーを 嘘の中に見つけた瑠璃色の真実を掬って 藍を失ったからと言って なんだというの 何者かになるための試行錯誤だなんて 命の時間を錆びたナイフで削らないで 花なら花らしく あなたならあなたらしく 湖のほとりに落ちた幾千もの星々 逆さまの空に ただ生きていればいいよって