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いつもより一時間早く起きた朝 ほんのり甘い匂いがした 雲はひとつもない青ばかりの空で 苺で…
空をぜんぶ、ひとりじめしたくなる あの青をぜんぶ、わたしのものに どれだけうばってもなくな…
冷たい強風に煽られながら 駅までの道を歩いた マフラーを忘れて寒さがしみる 午後二時のホー…
草木が雨に濡れた匂いで空が咲いた さよならが心に到着するのを待って 水色と薄朱色がマーブル…
氷の涙は満月の裏側に隠している。 泣かないと決めて歩いてきた いばらの道は、 痛いほど煌め…
いのちの雫が雨粒みたいに降ってきて 夜の水面に小さな波紋をつくっていく 心臓はずっと真ん中…
真冬の海辺をあてもなく歩いていた 白い雪が落ちてくるのを待っていた 時々、小さな貝殻をひろったり 時々、言葉を砂に埋めたりして 凍った心を溶かさないように あなたの体温を感じないように ほんの少しだけ離れて歩いた 心の声があなたに聞こえないように 冷たい闇を流れる雲の影 月の光に反射する白い輪 置き忘れた優しさが胸にささって 痛くて痛くて心が号泣してしまう 月暈に守られていたものが 少しずつ溶けだしていく 白木蓮の花びらのような雪片が 戸惑いながら舞いおちる やがて
あの、まだ夏とも言えない湿った季節 あなたの手を握りしめて 運河沿いを歩いていた 噂どおり…
暗闇の中で一筋の光を感知して ゆっくりと目をひらき、息を吸う ああ、わたしは生きているんだ…
あなたの心を泳ぐ金魚になった 赤い鱗をキラキラさせて 正面から見つめることができなくても …
心の少し尖ったところを 三日月のナイフで削って できるだけまるくまるくして 優しくありたい…
真っ黒な夜に飲み込まれていく 現実を生きている気がしないんだ あの夜があなたを連れていくこ…
簡単に手に入らないものが好き 強そうに見えて本当は繊細な人が好き 弱そうに見えて芯のある人…
濃紺の夜空に真鍮の三日月が刺さって 傷口からじわりと滲む冷たい血液 わたしを静かに蝕んでゆく薔薇の棘 花でもないのに咲こうとした罪と罰 心の隙間に咲いたヒアシンスに懺悔する 水をあげるかわりにコバルトブルーを 嘘の中に見つけた瑠璃色の真実を掬って 藍を失ったからと言って なんだというの 何者かになるための試行錯誤だなんて 命の時間を錆びたナイフで削らないで 花なら花らしく あなたならあなたらしく 湖のほとりに落ちた幾千もの星々 逆さまの空に ただ生きていればいいよって