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夏の終りに
秋が近づき、訳もなく寂しい夏の終わりに、公園で一人、ベンチに座っている。さらさらと撫でるような親しみのある風と、木陰のハーモニーが気持ちよく、何を見るわけでもなく、ただぼうっと前を見ていた。ベンチに落ちる木陰の位置は時間と共に変化し、それに伴い、私は座る位置を少しずつ変えていた。最初はベンチの右端に座っていたが、今は左端に追いやられている。もうすぐベンチ全体が日なたとなり、ここを去らなければならないだろう。陽に抗えない自分の情けなさに、なんだか笑えてくる。ふと喉が渇き、コンビニで買ったアイスコーヒーに口をつけた。もう少ししか残っておらず、全て飲み干した。それはほとんど氷が溶けていて、コーヒー味の水であった。そこで私は、コーヒーが無くなったことを理由に、ベンチを立った。私は陽に追い出されたのではなく、自分の意思で帰るのだ。そう思うととても愉快で、跳ねるように陽の中を歩いた。