言葉を花に変えて
あらゆる言葉を花で表現できたのなら、世界は今よりも良くなるに違いない。人々はバック一杯の花を持って出かけ、言葉の代わりにそれを渡す。おはようは紫のコスモスに、ありがとうは白のスイートピーに、お疲れ様は黄色のチューリップに置き換わる。事あるごとに花を渡し、それと同じだけ花を受け取る。そのため、帰る時も相変わらずバックは花で一杯である。家に帰ると、それらの花を意味ごとに分けられた花瓶に生け、今日受け取った言葉を反芻する。
愛する人への告白の日には、この日のために育てたとっておきの赤い薔薇をバックの奥底に忍ばせ、その花弁が損なわれないように慎重に歩き、待ち合わせ場所へ向かう。あらゆる言葉を花で表現できたのなら、世界は今よりも良くなるに違いない。