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僕と夢庵昭島店の1642日


僕が高校3年の9月から大学卒業までアルバイトをしていた夢庵昭島店が閉店したことを先日そのときのバイト仲間からのLINEで知った。
知った時にはもう閉店していて最後にお店に食べに行くことはできなかった。すごく大切なものというか、自分のことをなんでも知っている親友を失ったような、母校がなくなったようなそんな気持ちになった。


昭島店で10年以上働いていたパートのおばちゃんは今何をしているんだろう。毎日来ていた毎年お年玉をくれるパチンコ好きの常連のおじいちゃんは今何をしているんだろう。

夢庵を知らない方もいると思うので簡単に説明すると、ファミレスで有名なすかいらーくグループ(ガストやジョナサンなどもすかいらーくデニーズはセブン&アイグループ)の和食を中心といたファミレスで店舗によってはお座敷や靴を脱いでくつろげるタイプのお店もあり、カツ丼やしゃぶしゃぶ食べ放題といった若者向けのメニューからうどんやそば、焼き魚に煮魚、漬物やおひたしといったお年寄りの方が喜びそうなメニューもありドリンクバーはもちろん、ファミレスでは珍しいお酒の飲み放題もあるというどんな人を連れていっても喜んでもらえる最高のファミレスそれが夢庵。


僕は小学生の時から夢庵が大好きだった。健康志向であまり外食を好まなかった母親も和食の夢庵にはよく連れってくれた。外食の楽しさと楽しさ、家族と過ごせ寛げる安心感全てのいい感情が詰まっている場所が夢庵だった。イカゲソの唐揚げ、若鶏の唐揚げ、スタミナ丼、ネギトロ丼、サラダうどん、ソフトクリームは僕の殿堂入りメニューだ。

高校野球を引退して車の教習所へ通うお金を貯める為にバイトを探していると時給がよかったのは牛角と夢庵だった。牛角の方が高かったので電話をかけると募集が終わってしまっており、すぐに夢庵に電話をかけると面接が決まり、生まれ持った爽やかさと清潔感、野球部で培った礼儀正しさで即採用。僕の人生初めてのアルバイト、社会デビューは夢庵昭島店に決まった。確か時給880円だった。

最初はバイトが嫌で嫌で仕方なかった。メニューをとるハンディーの扱いが難しいすぎてなかなか覚えられない。席の卓番が覚えられない、メニューの名前とセットの組み合わせ。そばかうどんかをお客さんに毎度確認してもなぜか耳で聞くのと押すボタンを間違えてキッチンの社員のおっちゃんに睨まれた。

他にも四年半でたくさん失敗した。
お客様の太ももに熱燗をこぼして怒鳴られたこと、テーブルの片ずけをしていたら手が醤油小皿に当たってしまいお客さんの白いワイシャツに醤油のシミをたすき掛けでつけてしまい店長がクリーニング代を出してくれた『白いワイシャツと私事件』、僕の接客が悪いとお客さんに胸ぐらを掴まれて半べそをかいて掴まれた制服の第二ボタンが取れてお客さんの手に残った『奪われた私の第二ボタン事件』、ビールジョッキを10個を一度に割った『ジョッキストライク事件』。夢庵は僕の数々の前科も寛大に受け入れてくれた愛のあるバイト先だった。

僕の研修担当になった女の人の滲み出るヤンキー感と厳しい指導に萎縮しながらもバイトが終わった後の優しさと私服のエロさが高3の僕には刺激的すぎてあの頃から僕はMになったんだと思う。

とにかくバイトに行くたびに体も心も慌ただしく毎回すごく疲れていた。
バイト終わりに飲むドリンクバーのメロンソーダが体に染みまくった。


夢庵のバイトを続けて一年も経つともう楽しさしかなかった。それは可愛いJKと一緒に働けるから以外に理由がなかった。ずっと野球部で恋愛経験がほとんどなかった僕は青春を取り戻すように働いた四年半の中で二人の女の子を好きになった。一人の女の子は圧倒的可愛さに一目惚れ、もう一人の女の子はデザートの熱いぜんざいをこぼしてそれを触ってしまい熱がるちょっと天然な姿にイチコロになった。圧倒的な可愛さの子とはなんと付き合えて、天然ぜんざいっ子には明らかな拒否を感じすぐに身を引いた。

振られた時には今の相方の工藤くんの家で二人でチョコフォンデュとインディアンポーカーをして傷を癒し、可愛い子と付き合えたときには夢庵の僕が人生のバイブルにして慕っていた先輩二人に自慢して褒めてもらえたのが付き合えたことより嬉しかった。

夢庵で働いていた時に一番好きだった曜日は火曜日だった。僕のバイブルの一個上の先輩二人と仮面ライダーを目指していた身長185センチの後輩(休みたい日を伝える休み届けの理由にいつも仮面ライダーになる修行の為と書いていた。僕はお坊さんの修行と書いていた)の四人がいつもシフトが重なる日が火曜日だったからだ。
先輩から聞く僕が人生で経験した事のない話を聞く時、毎回無茶苦茶なことをしてくる後輩、四人でやった新メニュー開発会議、バイト終わりに先輩の車で行った深夜のドライブ。ずっと笑ってた記憶しかない。いったことないけど男子校ノリってこういうことなのかな思える最高な時間だった。

夢庵昭島店は僕に社会の厳しさと、お金を稼ぐ事の大変さと、人の優しさと、性癖と、恋愛と男子校ノリという贅沢な青春を味あわせてくれた僕の人生に欠かせない場所。会いたい人に会えなくなる経験はして来たけど。行きたい場所にいけなくなる思いは初めてしました。


ありがとう。夢庵昭島店。ここが僕のアナザーすかいらーく。

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観音日和 つきやま
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