Web校正ってどういう仕事?
「Web記事を校正する人」がいます。けれども、あまり知られていません。
そもそも「そんな仕事があるの?」「校正って何?」という人も少なくないように感じています。
そこで、今回はWeb・紙媒体を問わず校正し、Web校正者向けコミュニティ「校正部」を運営する私が、「Web校正とはどういう仕事なのか」「紙媒体の校正との違いは何か」について書いてみようと思います。
校正とは
校正とは、文章の誤りを見つけ、それを正すことです。
何を校正するかで作業内容は大きく変わってきますが、メインは誤字脱字や日本語の誤りをチェックすることです。
Web記事であれば、記事の目的に沿った内容になっているか、検索上位に表示されるような対策がなされているかといった点をチェックすることがあります。一方、書籍や雑誌などの紙媒体であれば、文章の体裁に関するチェックが必要になることもあります。
また、「書かれている内容が合っているか」という事実確認(ファクトチェック)も、校正者の重要な仕事の一つです。
校正に近い言葉として「校閲」がありますが、言葉の定義は人によって異なるため、クライアントごとに確認が必要です。
Web校正と紙媒体の校正の違い
どちらも同じ「校正」ですが、Web校正と紙媒体の校正には、実際の作業に違いがあります。そこで、特に大きな違いを3つ紹介します。
1. 気になる点があった場合どうするか?
Web校正と紙媒体の校正の違いは、まず何か気になる点があったときに「提案をするのか」「疑問を出すのか」ということです。
Web校正では多くの場合、「こういう理由で、ここはこのように修正したらどうか」と具体的な修正案を提示します。直接文章を修正するよう依頼されることも少なくありません。Web校正は「記事の仕上げ」を求められることが多いのです。そのため、適切に修正できる文章力も必要だといえます。
紙媒体の校正は、「ここは問題ないでしょうか」と疑問を出します。「理由はこうだからです」と添えることもありますが、「こう修正してはどうでしょうか」と提案をすることはありません。むしろ、してはいけないことだとされています。それは書き手や編集者が検討することだからです。
2. クライアントにどう伝えるか?
次に紹介する違いは、クライアントへの伝え方です。
Web校正は、WordやGoogleドキュメントのコメント機能を使い、提案内容などをクライアントに伝えることがほとんどです。
わかりやすく伝えることはもちろん、コメントを読んだ人が不快にならないよう丁寧かつ簡潔に書くことが求められます。そのため、テキストコミュニケーションのコツも身につけておくことが必要です。
紙媒体の校正は、細かな違いはあれど、校正記号や伝え方はほぼ決まっています。原稿に書き込めるスペースは限られているため、とにかく簡素化しわかりやすく書くことが必要です。
伝え方の決まっていないWeb校正のほうが「クライアントにどう伝えるか」を考える時間が多いといえます。
3. 表記統一は必要か?
Web校正も紙媒体の校正もする私がいちばん苦労しているといえる点が、表記統一です。
同じ意味の言葉の表記が違うことを「表記ゆれ」、そのゆれている表記をそろえることを「表記統一」などといいます。
Web記事は、表記統一するのが基本です。あえて表記をゆらすケースもありますが、私の経験上かなり少数だといえます。
一方で紙媒体、特に書籍校正においては、校正者が表記統一の指摘をしないケースがほとんどです。近い場所で表記がゆれている場合は疑問出しをすることがありますが、あくまで疑問としてお伝えします。
Web校正では、表記が統一されているかどうかチェックしなければならない場合が多いので、校正時は自然とセンサーが働きます。
その感覚を持ったまま書籍校正をすると、表記がゆれていたときに、ついつい気になってしまうのです。怖いのは表記ゆれに気を取られて、誤りを見落としてしまうこと。「統一病」といわれるほどです。
そのため、Web校正と書籍校正とでは、頭をしっかり切り替える必要があります。
積極的なサポーターになる
私はWeb校正者の立場を「積極的なサポーター」だと考えています。
なぜなら、クライアントやライターの意図をくみ取りつつ、記事をより良くするためのご提案をするからです。
Web校正者は、記事を最後まで読んでもらうために、誤りを正したり提案したりしていく役割を担っています。そのため、常に適切な対応ができるようスキルを磨き続けていくことが必要です。
自信を持って応募し謙虚さを持って校正する
どんな仕事でもいえることですが、仕事に応募するときは自信を持って対応することが必要になります。なぜなら、発注者は自信がなさそうな人に依頼しようとは思えないからです。
自信を持って「おまかせください」といえるよう、勉強したり経験を積んだりして、日々努力することが大切です。
しかし、校正者が校正するときには、自信を持ってはいけないと考えています。なぜなら、言葉は時代とともに変化し続けているものですし、人間の記憶はあてにならないものだからです。
常に自分を疑い、たとえ知っている言葉だとしても、こまめに調べる姿勢が大切です。
とはいえ、「自分をできない人だと思え」という話ではありません。
「本当にこの意味しかないのか?」
「もっと適した表現はないか?」
というように、さまざまな可能性を考え抜く必要があるということです。
校正者は白黒はっきりさせる立場ではありません。求められない限り、添削をしたり指示を出したりしません。最終的に書き手や編集者がどうするか判断するための材料を提供する立場なのです。
最後に
Web記事作成において、校正者が関わらないケースはよくあることです。なぜなら、ディレクターや編集者がその役目を兼ねていることが多いからです。
必ずしも校正者が必要とされない中で、Web校正者は依頼された内容を確実に遂行し、クライアントに価値を感じていただくことが重要だと考えています。
「校正者に依頼してよかった」
「今後も記事作成時には校正を依頼しよう」
このように評価されるWeb校正者が増えることで「校正」という仕事の価値が高まり、その結果、校正者の仕事増加にもつながると考えています。
そうなることを期待して、引き続き校正の仕事や情報発信、Web校正者の育成に取り組んでいきます。