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月の癒し
いつの日かカバーを断るようになった。
そもそも、なんでカバーかけるのだっけ?
あぁそうか。
なにを読んでるのか見られるのが恥ずかしいからだ。
本棚を覗かれるほど恥ずかしいことはない。
とあの時は思っていた。
わたしの頭の中を覗かれてるようで。
こんなの好きなんだって好奇に思われるのも
こーゆーひとなんだって決めつけられのも
ぜんぶが嫌だった。
だから隠したんだ。
さらけだすのは勇気がいるし
それは実に難しい。
ノールックでする目薬の如く難しい。
落とすのが怖くて目をつぶるのはもちろん
まつげに弾かれ、緊張で口は渇き、
息も思うようにできない。
失敗の連続にもうひざはびしょびしょだ。
そこで学ぶのさ、鏡を見ながらやればいいと。
堂々としてればいいんだ。
怖いことなんてない。恥ずかしいことなんてない。
美しい装丁を隠す必要もないんだ。
いつの日か本書カバーですら
うるさく感じるときがある。
だから思いきって剥がして捨てた。
カバーをとったその先には
美しいブルーが待っていた。