やっさんの思い出
思い出というものは、自身の頭の中にあるが、場所にも見えないマーキングとして存在すると信じている。
新宿駅の中の南口にあるコーヒーショップ。
今はドトールになっているが、昔は違う店だった。
ただ、椅子やテーブル配置は変わらない。
その場所に、たまたま今来てコーヒーを飲んでいる。
やっさんとはほんの数ヶ月付き合った仲だった。別れ話をしたのが、ここなのだ。
お互いに相容れられない価値観があり、私たちは別れる方向で気持ちの擦り合わせをしていた。
30分くらい話しただろうか、お互いのバッグについて話したりして、何故か和気あいあいなムードに変わっていった。
結局、コーヒーを飲んだ後に、都庁のてっぺんに行って手を繋いで東京の街を見下ろした。
別れるのに、手を繋げばホッとした。
結局、その後はご飯を一緒に食べて、おしゃべりをして、笑いながら別れたのだった。
やっさんはちょっと変わっていたけど、真面目な人だった。
私は真面目過ぎる人とは、やって行けない自堕落さがあるからダメだった。
縁って不思議。思い出も不思議。消えたようで消えないな。