土筆の味
バス停に続く遊歩道に出たら、春の草の匂いがした。ヨモギの香りだ。
思わず立ち止まり草むらを見つめてしまう。
小さな頃はみんなで、土手に這うようにして、ヨモギやノビル、そしてツクシを摘んだものだ。
ヨモギは両手に余るほど摘んで母に渡す。
母はすぐに火を通しスリコギでスって、粉と水と混ぜてお団子にしてくれたものだ。
ノビルはエシャロットみたいに、サッと茹でて酢みそで食べる。父の晩酌の友だ。
ヨモギもノビルもよく食べたけど、
ツクシは夢中になって摘んだだけで、食べていない。
親から、「頭のところが開いてない青みがかったのを摘むように」と言われた通りに摘んだ思い出はハッキリ浮かぶのだけど。
確か父の晩酌の際に、食べたいとせがんだが、
「この味はわからないだろうから」
と、食べさせて貰えなかったのだ。
だからいまだに、ツクシを見かけると
「どんな味がするのだろう」
と興味しんしんな目つきでしばし眺めている。