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藤井月
2016年9月29日 22:36
「もしもし、マナミ?同窓会で途中でいなくなったでしょう〜なんで?」 同窓会主催者のマキが電話をかけてきてそう言うからドギマギした。 私はちょうど手元に、記念撮影の写真を持っていた。 「実はね、和馬と隣のホテルのラウンジで飲んでたんだ」 と言ったら、マキが黙り込んだ。そしてこう言った。 「え?は?和馬って、広田和馬?嘘。来なかったよ?」 「え?はこっちのセリフよ
2016年9月28日 14:25
「それで?したの?しなかったの?」理穂は、その小さな目を見開いて聞いてきた。 「ないない、ないない」 私は両手をブンブン振って否定した。 理穂の目は、またいつもの小さな目になる。その目はいつ見ても「彫刻刀でスッと傷をつけたかのような」細くて小さな目。彫刻刀の種類は、刃を正面から見たらVのやつだ、、、と、どうでもいいことを考えながら、コーヒーカップについた口紅を親指でぬぐった
2016年9月25日 23:16
「マナミ」と、和馬は片手をあげて、口の端だけで笑って近づいて来た。「久しぶり、生きてたんだ」私はニヤニヤしながら軽く言ったが、これはシャレにならない挨拶だ。何故って、、「俺、死亡説出てたらしいね。海外に行ってたから、消息不明っぽかったんだろうな、はは」2人で、笑いながらビールを飲んだ。同窓会会場を見渡すと、みんなよく笑っているし楽しいムードに溢れている。記念撮影をプロのカ
2016年9月24日 20:03
このトシで参加する同窓会は、まるで不思議な別次元にいるような気分になる。デパート屋上の小さな遊園地。例えればそんな空間だ。昔、気分を高揚させ訪れた場所。お腹の底から笑ったり泣いたり、すねて駄々をこねたりした、裸の自分がいた場所だ。そんな場所に、昔のままのメンバーでそこに集まる。懐かしさで盛り上がって笑い合う。心のそこから。だが、もう遊園地の遊具では遊ばないし、心も踊るわけではな