自分が悪い時は、素直に認めます
大学の研究室の窓が、朝から開いていた。
研究室担当の事務職員が、空気の入れ替えをしているのだ。ただ、台風が近づいてきているし、大丈夫か?という懸念はあった。
もちろん、僕も窓を開けて風を感じるのは好きな方だ。晴れていたら、窓を開けてしまう。
これはまぁ心理的な作用というか、涼しいかどうかよりも、何となく清々しい感じを味わうためという理由の方が大きい。
ただ、その朝の時点でもそこそこ風が強いな、と思ってはいた。昼頃になっても、その勢いが止むことは無かった。かと言って、窓を開けていることが不自然なほど、強い風というわけでもない。
窓が開いていること自体は好きなのだが、僕はすぐに閉じる。昼間などは特に、窓が開いていると外の喧騒が気になる。大学の中なので、車の音などがするわけではないが、はしゃいだ学生の声などが聞こえてくることはある。
ただ、僕が窓を閉めていると、生徒や職員が部屋に入ってきた時に「なぜ、窓を閉じているのですか」と言われることが結構ある。
僕は基本的に、その程度のお願いは素直に聞く。こちらとしては理由があってそうしていることでも、自分が折れることが可能なら、ほとんど相手に譲る。「開けていいよ」と声をかけるか、僕が開ける。
何というか、視聴者の方々には伝わらないかも知れないが、「自分がこうしたい」という気持ちを職場の人たちに押すことはない。
「なぜ閉じたのですか」と職員の人に言われることもあるので、彼女が開けた時は、極力閉じないことにしている。おそらく、何か理由があってのことなのだろう、と考えている。そうやって、彼女の仕事を尊重しているつもりだった。
しかし、16時ごろにその彼女が部屋に入ってきた時、「窓が開いている!」と少し怒っていた。「風が強いから窓を開けっぱなしにしないでください。砂が入ってきているではありませんか」と(文言は違うが)。
自慢ではないが、これくらいのことでは僕は怒らない。そういうテンションで来られても、ただ素直に思ったことを返すだけで、怒りはしない。
その日、彼女とはお昼ご飯を一緒に食べた(ただ、研究室で各々がご飯を食べていただけ)。その時、すでに風は吹いていたし、「けっこうな風が吹いているのに、窓を開けたままで良いのか?」と僕は考えていた。
彼女は普段から外から風に乗って入ってくる砂や花粉などに敏感で、その辺りをうまくコントロールしてくれていた。だから、僕は全く意識をしていなかったわけではない。一緒に働いている人の性質くらい、ある程度は理解している。
その彼女が、窓を開け放ったまま出ていったのだから、これは問題が無いと判断してしまった。
むしろ、研究室の外の廊下や工学棟のトイレの窓などは、僕が閉じて回ったほどだ。清掃員がいるが、常に巡回しているわけではないから。
そこで、室内の窓のみ閉じなかったのは、変な気を遣ってしまったからで、これは僕の悪いところだと思う。
どのような理由があっても、砂や小さな塵が入らないようにしておくべきだったのだ。
結果的に、「掃除をするのが大変だし、床がざらっとしているのを嫌がる生徒がいる。私が怒られるんですよ。」とお叱りを受けた。何をか言わんやである。
ただ、彼女の言い分もわかった。掃除をするのは確かに彼女だ。もちろん、掃除は僕もする。こう聞くと、なぜ女性が掃除をする世の中なのか、と憤慨される方もいらっしゃるかも知れないが、そういう問題では無い。それが彼女の仕事であり、それを奪うことは失礼だと僕は思っている。活動の中で、仕事に貴賎は無い、ということも何度も言ってきた。
彼女は、仕事に責任を持って取り組んでいる。だから、それだけ怒ることができるのだ。素晴らしいことである。
「ならば、なぜ昼食時に閉じておかなかったのか」とは思ったが、まぁ人間はそれくらいの誤差があるものだし、完璧な人間など居ない。揚げ足をとるのは、良くないことだ。
大切なのは、一つの失敗を取り上げて糾弾するのではなく、日頃からその人が守ってきた仕事やその結果を見てあげることだ。その都度その都度、点を見るのではなく、それまでの全体を見るということ。
人間なんて、皆悪いところがある。それを言い出すと、皆がバカだということになる。まぁ、僕も含めて皆バカには違い無いのだが、バカがバカにバカと言っても、何にもならない。全く建設的じゃない。
その人が「平均してどういう人か」という全体で測らないと、人と関わって生きていくことはできないだろう。その人の1日を見るのではなく、1ヶ月を見てあげる、ということ。優しいとはそういうことだ。
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つきのまどの【つれづれゴニョゴニョ】
最低でも、月の半分、つまり「2日に1回」更新します。これはこちらの問題ですが、それくらいのゆとりがあった方が、いろいろ良いかと。 内容とし…
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