おばちゃんに混じって
客室清掃を始めてかれこれ2年が過ぎた。これは長いのか短いのか。個人差はあると思うけど、私は入って2、3回で慣れたのでたぶんベテラン。
ある時、就活支援をしているというある企業の人事部に
「ぶっちゃけ、清掃とか月梨さんくらいの年代の人いないでしょ(笑)」
と言われた。何故か笑われもした。
ぶっちゃけ(るほどのことでもないが)、今のホテルには私と同年代の人なんていない。というか私が一番若い。人事部は別に間違ってない。
働いている人のほとんどが私の母くらいの年代。お子さんを学校に送り届けてからできた時間に働いているそうで。いわゆるパートさん。
世代が親子ほど離れてるのもあってパートさん同士の会話には入れないことが多いけど、優しくしていただいている。
最近、スタッフのLINEグループに余った食器の写真を載せて「誰か貰ってくれないか」と呼びかけている人がいた。なんともアットホームな職場。
誰もがやりたいような仕事ではないと思う。数あるアルバイトの中で、なぜ清掃業を選んだのかという問いが聞こえてきそうだけれども。
答えは、至ってシンプル。
興味があったから。
今とは別のホテルでフロント業務を少し経験したので、清掃もしてみようという気持ちで応募。また、自分の部屋の掃除すらろくにしない自分が何かを綺麗にできたら自己肯定感が上がりそうだとも思って。人手が足りなかったためか、すぐに採用していただいた。
フロントスタッフとして働いていたときは夜勤だったため、朝から作業するメイクさん(と呼んでいた)とすれ違いで退勤していた。だから、実際に作業しているところは見たことがないし、自分が客として宿泊するときもいつも知らぬ間に清掃は終わっている(そうしないといけないので当然だが)。
主な業務は、ベッドメイキングと水回りの清掃。
細かな作業は多いが、慣れてしまえば意外と簡単。
他人が使ったもの、汚いものを触ることへの抵抗はあるので部屋によっては当たり外れがあるが、たまに清掃スタッフへの感謝のメッセージの書き置きを見ると、やっててよかったなぁと思う。
始めてみて…
ホテルに入るのは特別感があってテンションが上がるが、当然職場なので見慣れてしまうと何も感じなくなる。
もっと大手の高級ホテルはどうか知らんが、綺麗でないところに気を配るようになってからは、「自分が泊まるなら〇〇が汚れていないかチェックしよう」と思うように。
さっきからホテルホテル言ってる(ゲシュタルト崩壊した)けど、実は清掃会社のバイトなのでホテルの人間ではない。
だから勤務先の特徴も頭に入れておかないといけない。これが案外大変。もう慣れたけど。
お客様からすれば皆ホテルの人間に見えるので、わからないことを質問されるとめちゃめちゃ焦る。立地周辺の知識も持っておかないといけないので、シンプルなようで案外マルチタスクである。
連泊のお客様に対しては声を掛けて部屋に入ることがあるが、それはDD(Do not disturb)カードが貼っていなければ、の話。「清掃は不要です」と言われてしまうと、コミュニケーションはおろか、お客様の顔すら見れない。
コロナ禍で宿泊業は大打撃を受けている。この状況下では部屋に入られるのに抵抗があるのか、DDが増えた。タオル交換とゴミ回収のみの簡易清掃に切り替わったり、ホテルの予約時にDDプランを選択できるようになったり。
私は人見知りのくせに人と関わる仕事が好きだから、今までサービス業のバイトしかしてこなかった。はなから接客ができる仕事ではないと知りつつも、どこか寂しさを感じる。ドアを隔てて誰かのために仕事をするのは少し不思議な気持ちだ。
慣れてしまえば何も考えずに淡々とできる仕事ではあるが、コロナ禍で宿泊業の苦労と人の流れを嫌というほど実感させられた。
清掃スタッフは「縁の下の力持ち」。そう思ってくれる人がこの世に増えたらいいな。
僅かな期待を胸に、私は今日もシーツの皺を伸ばす。
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