ファッションウィークと僕達 #12
キラキラしたファッションショーの裏側でドロドロしてる僕達の仕事について。
ファッションウィークとはNY , London , Milan , Parisの順に各都市一週間ずつで行われ何百ものブランドが新作を発表するファッション界の大イベントです。Men's , Women’s それぞれ春夏、秋冬の年2回行われます。
今回は僕達がどのようにファッションウィークをサバイブしているのか、また今起きている問題のついて軽く話たいと思います。
チーム
まずそれぞれのブランドは世界中で活動しているヘアースタイリストの中からLeadと呼ばれる1人を選びます。Leadはファッションデザイナーと共にショーで発表する新作の服に合うヘアースタイルを決めヘアーチームを指揮するBossです。もちろん服を着せるスタイリスト、メイク、ネイル、それぞれにLeadがいてそのチームがあります。
ブランド側が何人のモデルを用意するかによってチームの人数が変わってきます。例えば50人のモデルがいるのであれば約20人前後のアシスタントが選ばれます。
トップレベルのLeadになると世界中からの腕に自信のある猛者達を率いて年間100以上のショーを担当しそのチーム内にはランクがあります。
1stから3rdまでの責任重大のフルタイムアシスタント
何年間も共にショーをこなしてきたクセの強い凄腕のメインメンバー約5人
メインの座を狙うレギュラーメンバー約15人
都合よく使われる控え新メンバー約15人
で構成されています。その他SNS担当、荷物管理担当、プロデューサー、ドライバーなどを含め1チームになっているところもあります。
メンバーの基本的技術レベルは高くさらに個性豊かで難しい黒人モデルの髪の扱い方が激上手いノリの良いオバちゃん達、わがままなモデルを言いくるめるのが激上手いオネエ達、性格悪いけど味方になると激頼れるあの国の人達、サボってたのに美味しいとこだけ確実に取りに来るあの国の人達、細かい作業が激上手く真面目に一生懸命働くあの国の人達、ゴマスリが超絶上手い人、など個性的なメンバーをLeadが適材適所に動かします。長い年月をかけて最強のチームを作り上げる麦わらの一味みたいな感じですね。
これが1つのチームとしてNYからParisまでの4都市4週間を共に働きミラノの中盤でケンカしParisが終わると笑顔でそれぞれの国に帰って行ます。
フルタイムとメインメンバーだけにはギャラとは別に飛行機代、ホテル代、食事代が支払われますがその分ショーの準備であまり自由時間はありません。
それ以外の技術メンバーは自腹ですが仲間達とAirbnbで安い部屋を借り楽しみながら周ります。
ギャラはブランドによって異なります。まだ無名の若手ブランドはヘアースタイリスト1人あたり$100(約1万円)ぐらいですが、有名ブランドになると$400〜$800+アイロン、ドライヤー、スタイリング剤などがもらえます。
有名ブランドを担当するチームにくい込むのは非常に難しく、控え新メンバーはその名の通り控えですので自腹で現地入りはしますがショーに呼ばれるかどうかは前日までわかりません、モデルの人数が増えた時やレギュラーの誰かが離脱した時の予備です。呼ばれてもシャンプー要員です。
なので全て自腹で周っている人はよっぽど優秀な人でない限り呼ばれないので赤字です。
それでも参加する意義がある。
参加者のみに渡されるBackstage passは僕達にとって努力の勲章の様な物です。
なぜ参加するのか
僕が感じた理由は6つあります。
➖流行る前の最新のヘアースタイルとその作り方を学べ、経験値と技術力がupする。
➖本来自分の実力では一緒に働けないトップレベルのモデルさんを担当(一緒に写真を撮るw)するチャンスがある。
➖有名ブランドのショーに参加したという実績をプロフィールに入れることができ見栄えが良い。自信にもなる。
➖いろんな都市を拠点にしているヘアースタイリスト仲間が増え情報交換ができる。
➖各国から集まるメンバーと一緒に働く事で自分に足りないとこがわかり自分の実力が世界的にどのレベルにあるのかを確認できる。
➖スタイリング剤が山ほどもらえて、それらの使い方を実践で見る事ができる。
➖興奮、感動できる。
このようにキャリアupする上でとても貴重な物を得る事ができるのです。
金銭的、体力的、技術的、精神的にファッションウィークをサバイブするのは簡単ではありませんがそれでも参加する意義があるのです。
ファッションショーの今後
コロナの猛威は当然ファッションショーにも影響を及ぼしています。
ディオールは5月に予定していたショーを7月22日に変更しさらに無観客でやるらしい。その他多くのブランドがショーの中止を発表し、またSNSで簡単にショーを見ることができるようになったり環境負荷の問題から根本的にショーの在り方が見直されようとしています。
一方でショーで得られる利益やメディアへ与える印象はやはり大きく、生で見る素材、世界感、オーラなどを感じてもらえるリアルなショーの必要性を訴えるデザイナーも多くいます。彼等の考えは↓から。
雑誌の撮影やショーを生業にしてきた僕達ヘアースタイリストはファッションウィークに参加し成長しいつかトップブランドのLeadになる事を夢見て頑張っているわけですがそれが今後努力しても叶わない時代になってしまうかもしれない、、、
全ての事のデジタル化が進むのはしょうがないけど、でも僕達はリアルに触って経験しなければ絶対的に良い技術をマスターする事ができない職種なのです。リアルとデシタルの両方を上手く組み合わせてこれからも是非ショーを続けてもらいたい。
何よりあのキラキラした世界をドロドロした世界の僕達が裏で作る感動をずっと味わいたい。
Tsuki