発言者と同じ境遇、同じ考え方になって聴く
こんにちは。企業や組織の個性を見つけ潜在力を引き出す、オートパイロット経営コンサルタントで中小企業診断士・司法書士・メンタルトレーナーの小野司です。
リーダーが現場に行かないと作業が滞るのをなくしたい、経営を自動化したいという、若手リーダー、経営者様にそのヒントをお届けしています。
カイゼン活動の最初は、メンバーに関心事を書き出してもらいます。
関心事と言っても伝わりにくいので、具体的には、「不」(不便、不自由、不安、不平、不満など)を書き出してもらいます。
なぜ、ネガティブに思える「不」を書き出すかと言えば、ポジティブな関心事と比べ、たくさん書き出せるからです。そして、「不」は書き出しても責任は生じにくく、細かい「不」も出されるからです。
人は一日に6万回思考していて、そのうち4.5万回はネガティブなことを思考しているそうです。
つまり、ネガティブなことの方が、書き出しやすいのです。
そのため、カイゼン活動では「不」を書き出してもらうことで、現場の関心事を把握しています。
実際のカイゼン活動では、ポジティブな”目指す姿”も書き出してもらっています。しかし、「不」の方が、現場の関心事をつかめます。
「不」を書き出した後は、各自の「不」を全員でシェアします。
シェアの時、リーダーは、共感して傾聴します。
そして、共感して傾聴する時のポイントがあります。それは、
「発言者と同じ境遇や考え方に立って聴くことです。」
確かに、発言者の「不」が自分の考えと違う場合は多々あります。
しかし、発言者と同じ境遇や考え方に立つと、その方の大変さが見えてきます。
リーダーがこのような姿勢で聴くと、発言者も心をやわらかくしてくれます。そして、関心事の本質も見えやすくなります。
ただし、この「発言者と同じ境遇、発言者と同じ考え方」で聴けるようになるのは難しいです。訓練が必要です。
メンタルトレーナーの資格を取得する段階では、セッションを多くします。
その中で一番難しいのが傾聴です。
聴いている時に、自分の価値観や考えが入ってくるのです。
また、"こっちの解釈の方がいいですよー"と教えたくなります。
自分の価値観や考えが違う話に同調するのにも抵抗が生じる時もあります。
そのため、
「発言者と同じ境遇、発言者と同じ考え方」
で聴けていない状態になっているのです。
メンタルトレーナーは、セッションを繰り返して、傾聴を身につけてゆきます。
カイゼン活動の事例で紹介します。
あるメンバーの「不」は、
「ある作業が大変で自動機が必要です。
社長や工場長に何度も言っているのですが、買ってくれません」
というものでした。
コンサルタントとして、事前に決算書も見ており、会社の財務状況を把握していました。
また、同様の作業を他社で、自動機を使わずに等やりくりしていたのを知っていましたので、作業自体に工夫の余地はありそうと思って聞いていました。
そして、
“機械はすぐには買えないので、やりくりを考えたらいいのに"と思っていました。
そのようなココロの状態で傾聴していました。
そうしますと、発言者から、
「私の言っていることをわかってくれていない」
と言われました。
その通りです。
発言者と同じ境遇、同じ情報量、同じ知識、同じ考え方を想像して聴くのです。
そして、一旦、「受け止めること」が大事だったのです。
これが、カイゼン活動での傾聴です。
カウンセリングでは、
傾聴が上手くいっていないと、クライアントさんはココロをあまり開いてくれません。
カウンセラーは、クライアントさんを理解しにくくなります。
クライアントさんを理解できていないと、カウンセラーの言葉は響かなくなります。
カイゼン活動でも、似ているところがあります。
一旦、発言者の話を受け止めた上で、どうしようか、と一緒に考える姿勢が大事なのです。
そうすることで、現場の関心事をつかむことができるのです。そして、リーダーの言葉も響くようになります。
なお、傾聴の時、発言者の感情もそのまま受け止めると、リーダーのココロも疲弊しやすくなります。そのため、受け止め方も大事になります。
受け止め方については、またの機会に紹介したいと思います。
詳細は下記をご覧下さい。
拙著『ちっちゃな「不」の解消から始めるカイゼン活動』日刊工業新聞社(p56)
みなさまのヒントになりましたら、とてもうれしいです。