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こっそりアルバイト大作戦?
私が通っていた高校では、バイトは原則として禁止であった。
専ら大学や専門学校など進学を目的とした高校ではなく、どちらかと言えば就職に関して有利に立つための専門的な資格取得に特化した高校である。
周りからすればやがて社会人となって会社に就職する前に、この社会におけるいろはを学生のうちに少しでも学んでおいた方がいい、とは思うかもしれない。
だが、入学を迎えた時点で既に学校側は、よほど家庭の金銭事情が逼迫しているような状況を除き、嫌というほどに「バイト禁止」を掲げていたのであった。
詳しい話は聞いていないが、おそらく私たち世代より前の卒業生たちが先々で色々とやらかしを起こした挙句の措置かと思われる。
少なくとも、私の両親が高校生だった時代では普通にアルバイトをしていたことがあったと聞かされていた。
それが数十年を経て禁止にするようなことだから、そう決めるまでの間に学校側は相当頭を悩まされていたかもしれない。
それでも教師たちにバレないように、金を稼ぐ目的を主として放課後あるいは土日を利用してバイトをしている同級生は何人かいたそうだ。
しかしその者たちはどれだけこっそりと影に隠れるようにやり過ごそうとも、第三者の目に留まっては学校に報告が入ってしまい、検挙をされた果てには停学処分を喰らっていたらしい。
その裏でもしかしたら、卒業するまでずっと誰かに目の当たりにされることなく、バイトをし続けていた人間もいたことであろう。
無論、私はバイトは高校三年間を通して一度もしてこなかった…
とは言い切れない。
正確に言うと、私が三年間の高校生活でしてきたバイト経験は、たったの一日であった。
それは卒業をあと少しで控えている三年生の頃、まだ次の進路先が決まらないまま冬休みを迎えてから数日経ったある日のことである。
父からとある仕事を一日だけ、短期バイトなるものとして手伝ってほしいと頼まれたのだ。
それは父が仕事先で携わっている業務ではなく、そこに勤めている会社でそれぞれ取引先に年賀状を送るために作成するという、いわばPCを使った事務作業であった。
家族の中ではパソコンに詳しくなんでも使いこなせそうだという理由で、父は私を抜擢していた。
ただ、退っ引きならない事情がない限りバイトは禁止であるのを承知していた。その上で父は頭を下げていた。
「社長も皆も忙しくて、なかなか手がつけられなくて猫の手も借りたいと言ってたから、なんとか力を貸してほしい!」
父も多忙を極めている。仕事柄、31日の大晦日までずっと仕事であるため、これだけお願いされてしまったらさすがに断らざるを得なかった。
翌朝になって若干の緊張を抱えたまま、私は父のいる職場へと向かっていったのであった。
うまく役に立てるだろうかという緊張と、バイトしている姿が学校側にバレたりしないかという緊張が重なり合っている。
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