思いつきが招いたタイムロス
時折、思いつきで行動に移す自分自身に対して、嫌気がさすことがある。
ある日YouTubeを眺めていたところ、思わず読みたいと思う本が飛び込んできた。その書籍は、今の日本社会の足枷となっている部分を、大きく切り込んだ内容のものである。
現在社会における深い実情をこの目で知っておきたいと、気になったものから根こそぎ読破している私にとっては、是が非でも読んでおきたい本であった。
この時ネットリテラシーに長けた人であれば、すぐさまネットを介して、欲しい本を電子書籍という形で購入するだろう。私も、数年前からKindleを所有しており、これまで何冊かを電子書籍として手に取っている。
ここで改めて電子書籍のメリットを一つ挙げるとするなら、いざ欲しいと思った本を、直接書店に足を運ばずとも、スマホないしPCを駆使してその場で購入することができる、という利便性が大きいことだろう。
だが、すぐに買えるという利便性を考えれば、私が今住んでいる自宅の近所には、歩いて数分もしない距離のところに書店がある。実体のない本を読む機会が増えてきているとはいえ、未だに紙媒体を手に取って読むことの頻度が高い。
その書店は、わりと規模の大きい店舗である。これまで購入してきたものを含む大抵の本は、わざわざネットで在庫の有無を調べずとも、ほぼ百発百中で置いてあった。今回欲しいと思っている本も、とりあえずそこに足を運べば有るだろう。
私はその日の午後、事前に何も調べないまま、近くの書店に向かっていった。しかし10分以上かけて探してみるも、お目当ての本はどこにも見つからない。
結局店員さんに声をかけて探してもらうことにしたものの、在庫は置いていないと言われる始末となってしまった。
まさかの事態に直面し、後々になってスマホで在庫検索をかけてみた。すると、私が欲しいと思っていたその本は案の定「取り寄せ」の状態となっていたのである。
完全に行き損となってしまった。お店にないものと言われているものを、これ以上探してもしょうがない。諦めて家に引き返そうと外に出てみると、まるでバケツをひっくり返したような量の雨が、目の前に映し出されていた。
自宅を出る時は、小雨がパラパラと降っている様子だった。ただ向かう先は近所だから、別に傘を持ち出さずとも大丈夫だろう。そう軽視して持たずに出たのが、完全に裏目に出てしまったのだった。
さらにスマホで天気予報を調べてみると、自分がいる場所の、かつその時間帯の降水確率には100%という数字が浮かんでいた。
いくら近くに書店があるからとはいえ、予め欲しい本の在庫の有無を調べておけば、今回見たいに時間をかけて探す手間は省けたはずであった。
それでなおかつ、念の為に天気予報を確認したうえで傘を準備していたら、突然の大雨を前にして、待ちぼうけにならずに済んだことであろう。
いずれも前もって調べておけば、こうして時間の無駄にはならなかったはずだった。欲しかった本も置いておらず、悪天候によって足止めを受けてしまった私は、肩を落としながら呆然と立ち尽くしていた。
今はなんでもかんでも、ネット一つで簡単に物事を調べられる時代だ。それを駆使せず思いつきで行動に移した結果、私はある意味でダブルパンチを喰らうことになってしまうのであった。