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あわら市観光まちづくりビジョン②
前回からの続きになります。
具体的なビジョンの内容よりも、このビジョンがどのような経緯や背景のもとで生まれたのか、そちらを中心にお話しさせていただきたいと思います。
まず、そもそも論として「なぜビジョンが必要なのか?」という疑問があると思います。「ビジョンを掲げることで、何が変わるのか?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
その疑問はもっともです。おそらく、多くの方が同じように考えたことでしょう。
しかし、今日お伝えしたいのは、やはり共有された価値観――つまり、ビジョンが持つ力がいかに重要かということです。ビジョンがなければ、個々の活動はどうしてもバラバラになりがちです。逆に、共通のビジョンがあれば、その目標に向かって全員が一体となって動き出すことができる。それが大きな変化を生む原動力になるのです。
その点についてしっかりとお伝えし、皆さんにビジョンの重要性を感じ取っていただければと思っています。
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こちらの策定趣旨をお読みいただければお分かりのように、新幹線開業という大きなチャンスをしっかりと捉え、あわら温泉を軸に世界から注目されるエリアにしていくために、この観光まちづくりビジョンが策定されています。
しかし、先ほどの宿泊客数の減少グラフをご覧いただいた通り、我々観光事業者は、新幹線が開業しようがしまいが、あわら温泉の宿泊客の減少を、現場の最前線で肌で感じています。そして、現実的には既存のやり方だけではもう立ち行かないという危機感を、誰よりも強く感じているのです。
だからこそ、今こそこのビジョンが必要です。単なる延命策ではなく、真に持続可能な未来を見据えた観光まちづくりを行うために、新たな価値を創造し、あわら温泉がこれからも人々に愛され続ける場所であるための土台を築く必要があるのです。
こちらは、昨年10月から芦原温泉旅館協同組合と福井県観光連盟が共同で進めている、福井県観光DXのオープンデータ活用事例です。現在、旅館協同組合の10施設がデータ提供に協力してくれており、単なる人数だけでなく、室数、単価、稼働率といったエリア全体の稼ぐ力を可視化するための指標が揃っています。
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さらに、過去のデータだけでなく、未来3か月の数字もリアルタイムで把握できるようになっており、エリア全体の状況を一目で確認できる仕組みができ上がっています。
では、なぜ私がこの仕組みを構築したかったのかというと、今後、宿泊人数だけを追い求めることに対して強い危機感を抱いているからです。
もちろん、このデータを共有することには最初、かなりの抵抗がありました。「なぜ予約の数字を他の旅館と共有しなければならないのか?」と。宿敵とは「宿の敵」と書く通り、隣の旅館はライバルであるという意識が強くありました。
しかし、私たち宿泊業は、既存のやり方を見直さなければ、存続すら危うい状況に直面しています。また、収益性を重視した経営スタイルに転換できなければ、持続可能な経営は実現できません。
この時、何より重要なのは、危機感を共有することです。そして、そのためには具体的な数字を見せることが必要だと考えました。私は、経営の数字はまさに健康診断のようなものだと思っています。どの部分にどんな問題があるのかが具体的にわかれば、そこから改善の道筋が見えてくるのです。
この危機感をしっかりと共有できたことで、あわら温泉エリアは大きな一歩を踏み出すことができました。
これらのデータを活用することで、さまざまなことをより深く分析できるようになりました。最近よく聞かれる質問に、「新幹線の効果はどうですか?」というものがありますが、今までは宿泊人数だけでしか判断できなかったこの問いに対しても、より精度の高い答えを出せるようになっています。
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このグラフは、10月以降の宿泊者地域別の売上構成比を示しています。従来、新幹線の効果は宿泊人数でしか検証されていませんでしたが、今回のデータ活用により、売上という観点でもその影響を測ることが可能になりました。ご覧いただけるように、関東地方からの売上構成比が新幹線開業のあった3月以降大きく伸び、直近の8月には倍増し、18.5%に達しています。
この結果をもって、私は新幹線開業効果が確かにあったと断言できます。
ただし、重要なのは、このグラフが示すのはあくまで結果だということです。この結果に至るまでには、多くの要因が絡み合っています。宿泊業界や地域全体の取り組みがどう影響してきたのか、その背景にはまだ解明されるべき課題やチャンスが潜んでいるはずです。
今後さらに分析を進めることで、現状のあわら温泉が最大のパフォーマンスを発揮できているかどうか、あるいはさらに伸びしろがあるのか、そうした点を見極めていきたいと考えています。
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まちづくりには多くの資金と人材が必要です。しかし、これらの資源は無限にあるわけではありません。むしろ、限られた資源をどこに、どう使うかが成功のカギを握っています。だからこそ、明確なビジョンが非常に重要になってくるのです。
まちづくりには官と民が一体となって取り組み、主体的に動いていかなければなりません。明確なビジョンがあれば、どのように資金を集め、どのような人材や技術を活用すべきかが明確になります。そして、計画に基づいて資源を適切に配分することで、私たちは地域の未来を共に高めていくことができるのです。
先ほどのエリアデータ共有の例も、こうした取り組みの一環です。官民の連携を深め、地域全体でデータを共有することで、効率的かつ効果的に資源を活用できる仕組みをつくっていきました。
官民連携を成功させるためには、【明確なビジョンと目標の設定】、そして【強固なパートナーシップの構築】が欠かせません。これらが揃うことで、持続可能な地域の発展が実現できるのです。
今回のビジョンが今後のあわら市の都市設計に大きな影響を与えると聞き、私はあわら市の本気度を強く感じました。同時に、私たち民間も覚悟を持って取り組まなければならないと痛感しています。これは非常に重大な役割であり、私たちのビジョンが未来のあわら市の姿を形作ることになるのです。
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当然のことながら、どのようなメンバーでこのビジョンを実現していくかが、成功の鍵を握ります。ビジョンを実行に移すためには、多様な視点と専門知識を持ったメンバーが不可欠です。共に働くメンバーの選定が、最終的な成果を大きく左右することになるでしょう。
今回の策定委員は、観光事業者、交通事業者、農業者、市民代表、大学生など、さまざまな分野から選ばれた17名で構成されています。しかし、策定委員だけでは知識や経験が十分ではありません。そのため、アドバイザーやオブザーバーによる伴走支援が必要となります。
さらに、これらをまとめる事務局の役割も重要で、総勢43名のメンバーが一丸となって「観光まちづくりビジョン」の策定がスタートしました。
次回へ続く・・・