政治(金融)講座ⅴ380「仕組み債」
最近の世の中は益々不確実性が増している。
昔から、不確実性は存在した。
その不確実性を利用してその変化を先に織り込む売買するのが先物取引である。
一般の商売でも先を見通す力の先見性や洞察力が必要である。
仕入れの商品の選定・数量・時期など総合的な判断が必要となる。
企業経営にはそのような判断・分析・決断は求められる。
思い通りならないのが経済であり、また政治にも左右されるのはご存知であろう。
賭博の世界で儲かるのは胴元である。顧客は顧客同士で配当分配を争うのである。今回は「仕組み債」の報道記事から内容紹介する。
皇紀2682年9月16日
さいたま市桜区
政治・金融研究者 田村 司
はじめに
リーマンショックはサブプライム問題から金融派生商品の混在で複雑で混乱が回避できないものとなった。
個人投資家が絶対手を出してはいけない、「仕組み債」が危なすぎる理由
大江英樹:経済コラムニスト著
2022.7.19
仕組み債に関連したトラブルが増えている
「仕組み債」と呼ばれる金融商品がある。名前から想像すると『債券』のように見える。
『債券』とは償還(満期)が決まっていて、その間、あらかじめ決められた金利が支払われる。償還までの間には金利情勢によって価格が上下することはあるものの、償還時には必ず元本が戻ってくるという性質のものだ。
ところが、この「仕組み債」は少し性格が異なる。一般の社債に比べると少し金利は高いが、一定の条件の下では、大幅に元本が割れて償還されることが起こり得る。
「預金よりも有利にお金を運用したいものの、株式への投資には不安がある」という人に対して金融機関が積極的に売り込んでいるのが、この仕組み債だ。ところが、大きく元本割れをしたことで顧客と金融機関との間のトラブルも増えている。
FINMAC(特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター)の紛争解決手続き事例を見てみると、昨年(2021年)の1年間では、その37.8%が仕組み債及び仕組み債投信によるトラブルだ。
そもそも仕組み債とは一体どんなものなのか?
そもそも仕組み債とは?「いいことづくめ」とは限らない
“仕組み”というのは先物やオプションといった金融派生商品を組み込むことを意味しており、通常の債券にオプション取引などを組み合わせたもののことである。これによって通常よりも高い金利が得られる半面、特定の株価指数や個別株(これは仕組み債によって異なる)の値動きに影響を受けて、元本を割り込むことが生じるという性質を持っている。
ではどうやってそのような仕組みになるかというと、オプション取引における「プットオプションの売り」がその主な手段となっている。これだけでは何のことか分からない人も多いだろう。
オプションというのはそもそも『選択する権利』のことであり、プットオプションとは「売る権利」である。もう少し詳しく言うと、「ある証券をあらかじめ決められた価格で、将来の決められた時点で売ることのできる権利」のことを言う。
もしプットオプションを買っておけば、将来その価格が下がっても下がる前の価格で売ることができるわけだ。これはいわば、後出しジャンケンみたいなものである。「そんなうまい話があるのか」と思うかもしれないが、これは必ずしもうまい話とは限らない。
なぜならその権利を買うには「オプション料」を払わなければならないからだ。さらに決められた期間内に株価が下がらなければ権利を行使することはないので、払ったオプション料は無駄になる。これは言ってみれば、「保険」と同じものである。オプション料という保険料を払って株価下落という災難に備えるわけだが、もしその期間に災難が生じなければ払った保険料は無駄になるので、掛け捨て保険と同じである。
「プットオプションの売り」には恐ろしい罠が潜んでいる
プットオプション(売る権利)を買うというのは「株価下落に備えて保険を買っておく」ことだ。では仕組み債で使われている「プットオプションの売り」とは、どういうことだろう。
「売る権利を売る」ということになるので、これだけでは何が何だかわからないように思える。これは簡単に言えば「保険を引き受ける」という行為なのである。
プットオプションの買い手は、売り手に対してオプション料という保険料を支払う。その代わりに、株価が下落した場合、プットオプションを買った相手は売り手に対してあらかじめ決められた価格、これを行使価格というが、その値段で「買い取り」を要求できる。つまり下落する前の価格で買い取るように請求できるということだ。
もし、買い手が買い取りを要求してくれば、売り手はそれに応じなければならない。しかも期間内であれば、要求のタイミングは自由だ。つまり、その買い取り要求の権利をいつ要求してくるのかは相手次第ということになる。もし仮に株価が下がらなければ、オプション料はまるまる利益になる。
でもこれは考えてみれば恐ろしいことだ。プットオプションの売り手、すなわち保険の引き受け手が得られる利益は、オプション料だけに限定される。だが、代わりに下がった場合の損失はどこまで損になるかはわからないからだ。
こういうオプション取引というのは主にプロの機関投資家同士でおこなわれるものだ。彼らは資産運用が業務なので、多くの株式を保有している。株価が下がることに備えるためにはプットオプションを買って一定の保険をかけておくことも必要だし、売る側からすれば、安定した保険料が受け取れるのであれば保険を引き受けてもよいという判断もありうる。多くの場合、機関投資家はオプションの売りと買いのポジションを複雑に持ちながらリスク管理をするものだからである。
個人投資家による仕組み債の利用はあまりにもリスクが大きすぎる
ところが、これを個人投資家が利用する場合、話は違ってくる。「仕組み債を買う」ということは個人がそのお金をひとつのオプション取引に投入するのと変わらないからだ。
これはあまりにもリスクが大きすぎると言ってよいだろう。直接株式を買うのであれば下落のリスクはある代わりに上昇によるリターンもある。リスクとリターンはトレードオフの関係だから、これは当然である。
ところが仕組み債の場合、株価はいくら上がっても受け取るのは決められた金利だけである。その金利が普通の社債に比べて高いというのはオプション料を受け取っているからだ。
しかも、下落によって損失が生じるというのはどこまで下がるかはわからない。仮にスタートした時に比べて償還時に対象となる株価指数や個別株価が半値になっていたとしたら、投資した金額は半分になって戻ってくるのだ。ただし、満期受取額が株価に連動するのは、対象指数や株価があらかじめ決められた一定の水準を一度でも下回った場合のみである。
この水準を下回ることを“ノックイン”と言う。うまくいって期間中にノックインしなければ元本と利息は受け取ることができる。ただ、昨今のように株価変動が大きくなってくると、ノックインということは十分に起こり得ると考えるべきだろう。
実際、冒頭で紹介した紛争事例の多くはノックインし、その後も株価が低迷したことで大きな損失を被ったこと、そしてその事実が正確に説明されていなかったことに起因している。
また、「早期償還条項」といって、あらかじめ定められた判定日における参照指数・銘柄の価格が決められた水準を上回れば、償還日より前に償還されることもある。これによって当初想定していた期間に受け取れるはずと予定していた金利を得ることができなくなることにも注意が必要だ。
早期に償還を受けてお金が返ってくると、投資家としては引き続き同じような仕組み債で高い金利を得たいと思うだろう。ところがその時点では既に参照指数・銘柄の価格が上昇しているわけだから、その後の下落リスクはそれまでよりも高くなるということも見逃せない。
加えて仕組み債の手数料は普通の投資信託等に比べると極めて高い。通常は5~7%ぐらいにもなる。昨今の投資信託は手数料が下がり、信託報酬でも0.2%程度のものが多いことを考えると、この手数料の高さは際立っている。
この理由は通常のオプション取引で受け取るオプション料をサヤ抜きしているからだろう。つまり業者の取り分が極めて多く、もうかるからだ。これだけトラブルが多いにもかかわらず金融機関が仕組み債を販売するのはこの取り分の多さにあると言ってよい。
仕組み債に問題があるといえる2つの理由
結論を言えば、筆者が仕組み債に問題があると思っている理由は大きく2つあると考える。
(1)リスクに見合うリターンが小さい
ノックインがあった場合に限られるとはいえ、株価下落による損失の見返りがせいぜい2%程度の金利というのは、あまりにもリスクとリターンがアンバランスである。
(2)情報開示が徹底されていない
手数料や価格に関する情報が他の金融商品に比べて、十分に開示されているとはいえない。これは説明不足以前の問題である。
結局、高いリスクを取りたくないはずの高齢者や投資に不慣れな人ほど被害を受けやすい、という矛盾をはらんでいるのが「仕組み債」なのである。
金融庁も日本証券業協会も仕組み債については金融機関に対して「重要情報シート」を作成するように求めているが、形式だけ整っていればよいということではなく、真の意味でのフィデューシャリーデューティー(金融機関が投資家に対して負う責任)を真っ当することが求められるのではないだろうか。(経済コラムニスト 大江英樹)
仕組み債の販売制限相次ぐ みずほ証券や三井住友銀
2022/9/15 6:00
みずほ証券や三井住友銀行が、仕組み債と呼ばれる設計が複雑でリスクが大きい金融商品の販売を縮小したり、全面的に停止したりしていることが14日、分かった。地方銀行系の証券会社でも販売方針の見直しが相次い...
みずほ・三井住友「仕組み債」販売制限 顧客の損失懸念
2022年9月14日 18:30 (2022年9月15日 5:13更新)
利回りは高いがリスクの大きい金融商品「仕組み債」について、大手金融機関が顧客への新規勧誘の停止に動き始めた。三井住友銀行と千葉銀行が販売を全面的に停止した。みずほフィナンシャルグループ(FG)、横浜銀行、広島銀行は販売を一部停止する方針だ。デリバティブ(金融派生商品)と知らずに購入した顧客とトラブルになるケースも多く、販売体制を見直す。
苦情報告相次ぐ「仕組み債」、個人が買ってはいけない理由
久保田博幸金融アナリスト 8/24(水) 10:00
金融庁と証券取引等監視委員会は苦情が相次ぐ「仕組み債」について、メガバンクや地域銀行、証券会社などの販売実態を総点検する。安全なイメージの強い債券にもかかわらず、デリバティブ(金融派生商品)を組み込んだハイリスク商品で、数千万円単位で含み損が発生する個人投資家もでている。監視委は地銀子会社を中心に重点的に立ち入り検査へ入り、金融庁も金融商品取引法上、問題があれば銀行検査に入る方針だ(24日付日本経済新聞)。 個人向けの仕組み債については、一般の社債に比べ、高格付け・高利回りであることが多く、大変魅力的に見える。ただし、利回りの高さだけで購入を判断するのは大変危険である。
仕組み債は何かしらの条件付きで利子が高めに設定されている。その何かしらの条件をしっかり確認することが重要で、利率の高さもそのリスクに見合ったものであるのかを確認することが必要となる。そのリスクそのものが理解できれば問題ないが、よく分からないのであれば、仕組み債には手を出すのはやめるべきである。現在の超低金利時代にあり、極端に有利な金融商品というものはない。
仕組み債がなぜ高格付け・高利回りを達成できるかというと、仕組み債に組み込まれたオプションなどのデリバティブにある。デリバティブに仕掛けられた時限装置が働かなければ、それなりに高い利子を享受できるが、何かがあった時には損失が桁違いに膨らむことがある。そのリスクを完全に理解するには、オプションなどへの理解とともにリスクに見合った条件設定なのかも見分ける必要があるが、これはプロですら、なかなか難しい判断となる。難しいだけでなく、大きな損失を被る危険性があるため、特に個人にはあまり推奨はできない。
仕組み債のリスクそのものが理解できれば問題ないがと書いたが、このリスクを販売者が完全に理解していることも考えづらいものもある。それだけ仕組み債が複雑怪奇となっており、その分、制作サイドや販売サイドは手数料相当分を享受できる仕組みとなっている。
購入者側としては、そのリスクはさておき、利回り水準が魅力であるため、つい購入してしまうこともあろう。しかし、その利回りの高さこそがリスクの高さを示しており、少なくとも個人はリスクが理解できないのであれば仕組み債を購入してはいけない。
ただし、法人が購入する場合には、投資の配分先として債券での運用、しかも一定の利回り水準が必要で、仕組み債に投資せざるを得ないケースもあるかもしれない。しかし、これもハイリスクハイリターンの運用とならざるを得ない。
久保田博幸 金融アナリスト
フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。
更新日:2019年10月10日
知らないでは済まされない!金融資産を食いつぶす仕組債
仕組債という言葉を聞いたことがありますか。
証券会社と取引のある方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
この仕組債ですが、とても厄介な商品性で初心者の方が持つには少々危険な一面を孕んでいます。
本当は買わないに越したことはないのですが、すでに持っている方やその危険性を知らずに運用をしている人が多いのも事実です。
今回は金融機関で販売される仕組債を徹底解剖していきますので、しっかりとした知識をみにつけ資産運用の役に立ててください。
そもそも仕組債とは?
仕組債という言葉自体、あまり一般投資家の周りでは知られていないような気がします。新聞やニュースでもあまり目に触れる機会のない商品なので、まずは仕組債とは何かを知っておきましょう。
上記にあるように、仕組債は少し複雑な商品です。
この「仕組み」自体も商品によってバラバラで、そのタイプは数が多いのでこの記事では金融機関で販売されるタイプのものに絞って説明をしていきます。
証券会社でよく販売されるEB債と日経平均リンク債を知っておこう!
証券会社で販売される仕組み債は主にEB債と日経平均リンク債になります。
EB債とは、参照銘柄の値動きによって受け取ることのできる金利が変化する債券のことを指します。
詳しく説明をする前にいくつか聞きなれない用語が出てくるので、それについて学んでいきましょう。
基準価格設定日
証券会社で販売される仕組債には通常、基準価格設定日があります。
基準価格設定日とは、仕組債の「仕組み」が発動されるための条件になる価格になります。
例えば、トヨタの株価を参照にした仕組み債であれば、その基準日のトヨタの株価の始値や終値、もしくはザラ場の平均価格がその基準価格として設定されます。
その設定された価格を基準に投資家が受け取るクーポン(利息)を決めたり、のち程説明するノックイン条件を決めたりするのでとても重要です。
仕組債の募集開始から債券の受け渡し日まで時間が空くことが多く、投資家はこの基準価格設定日を忘れがちですが、とても重要な価格になりますので注意が必要です。
基準判定日
基準判定日とは、投資家が受け取ることのできるクーポンを決める日のことを指します。
デジタルクーポン債
対象となる指数や株価が、基準価格を上回ったか下回ったかによって受け取ることのできるクーポンが変わる債券のことを指します。
通常2パターンの金利が設定されており、それぞれをハイクーポン、ロークーポンと呼びます。
基準判定価格
基準判定価格とは、デジタルクーポン債基準価格設定日の株価や指数の値を元に設定される価格のことで、通常は基準価格設定日の70%~80%で設定されます。
デジタルクーポン債で目にする機会が多く、基準判定価格以上か以下によって受け取ることのできるクーポンが変わります。
参照銘柄を一つ決め、基準日を決めます。
利払い時の金利判定日にその値動きに対して基準価格以上であればハイクーポン、以下であればロークーポンが支払われます。
ノックイン
ノックインとは対象となる指数や株価があらかじめ設定された基準価格を下回ることを指します。
一度ノックインをしてしまうと、債券の満期償還時に額面割れで帰ってくるリスクが発生し、投資元本を割れこむことがあります。
この場合、いくら戻ってくるかは対象となる指数次第であり投資家は償還日をただただ待つしかありません。
EB債
EB債とは仕組債の一つです。
日経平均株価リンク債やその他の指/数連動債の場合、償還日には必ず現金が投資家の元に返ってきますが、EB債の場合はノックイン条項が発動すると株式での返還となります。
投資家は返還された株式を売却することによって現金を回収することになります。
株式は通常の株式と同様に配当金を受け取る権利があり、株価が上がれば売却して利益を得ることができます。
ただし、注意しなければならないのが投資家に受け渡される株数です。
投資家は投資金額を償還時の株価で割った株数を受け取ると勘違いしがちですが、実際は償還時の株価ではなく基準価格の株価になり、それは大抵償還時の株価よりも割高になります。
つまり、投資家の受け取ることのできる株数はその時の時価で買い付けを行った場合よりも少なくなってしまう可能性が極めて高いということになります。
仕組債のメリット・デメリット
仕組債のメリット・デメリットを紹介していきます。
メリット
投資家や金融機関の要望に応じて、商品の条件をアレンジできる
例えば債券の利率を高めに設定したり(その代わりに、ノックインプライスの引き上げなどなんらかしらの悪条件を受け入れる必要がある。)、償還の期間を短くしたり長くしたりするなどできます。
また、仕組み際の中身も販売会社が自由にアレンジできることができ、私募債※などであれば投資家の嗜好に合わせた債券を蘇生することができます。
(※一部の投資家のみに販売される条件が比較的に良い債券のこと)
手数料がかからない
債券を購入する際、投資家は購入手数料を支払う必要がありません。
仕組み債も債券になるので、投資家は販売手数料を取られることなく投資元本を100%投資に回すことができます。
リスクを抑えて株式を買ったような取引ができる
株式投資を始めてみたいが不安がある人にとって、デジタルクーポン債は株式投資のいい練習になります。
デジタルクーポン債を保有している間、投資家は対象の株価によって受け取ることができるクーポンが上下します。
また、ノックインした場合は投資家の元には投資資金は株式となって返ってくるため株を買い付けたような感覚になります。この場合、買い付け手数料はかかりません。
つまり、投資家はまるで株式を買ったかのように株価を追いかけ、もしかしたら株式になって返ってくる可能性があるということです。
ノックインまでは株価の下落余地は相当あり、それ以下にならない限りは満期まで待てば元本が全額返ってくるので株式購入よりはリスクが低いという見方もできます。
デメリット
仕組みが複雑で理解するまでに時間がかかる
仕組み債は、商品ごとに仕組みが違います。
ある程度カテゴリー分けができるとはいえ、通常の債券と比べてクーポンの受け取り条件が複雑であるため、なかなか理解ができないという方も少なくありません。
基準価格、判定価格、早期償還価格、ノックイン価格をそれぞれ確認することによって理解をスムーズにすることができます。
購入から基準価格の決定まで時間がかかる
仕組債は一定の販売期間を設け、その間投資家が買い付けをします。
しかし、販売期間は2週間~1ヶ月ほどあり、基準価格が決定する前に参照する指数や株価が上昇してしまい、高いところでプライスが決定してしまうことがあります。
高い基準価格で決定すれば、当然基準判定価格やノックイン価格も高い水準になり、元本割れリスクが高くなってしまう可能性があります。
どうして仕組債が危険なのか
一見高金利で為替リスクのない仕組債は、初心者にとって魅力的に見えます。
リスクレベルも一般の株式を購入するよりも低く見えるでしょう。
そのため、「まだ株式を購入したことはないけどこれから始めてみたい」とか、「通常の債券の金利では満足できないが投資信託を購入するのは少し抵抗がある」といった人には願ってもないような商品に映るかもしれません。
さらに、債券であるため投資家が直接負担する手数料がないうえ早期償還条項がついているもの多いため、証券会社としても販売しやすいのです。
では、どうしてその仕組債が危険なのでしょうか。
考えられるさまざまなリスクを確認してみましょう。
流動性リスク
仕組み債は通常の債券と違い、市場では流通していません。
つまり、売買が行われていないということになります。
流動性が低いということは自分が売却したいときにできない可能性が高くなります。
急ぎで売却する場合には、かなり低い価格での売却を受け入れなければなりません。
マーケットでの流動性が確保されていないため、債券を売却する場合は販売元である証券会社と相対取引をすることとなり、相手が提示する価格を受け入れなければなりません。
債券の満期での額面は通常100ですが、流動性が低いため、売却時は当然額面価格割れになってしまうことが多いです。
ノックインリスク
仕組債で一番恐ろしいのがノックイン条項になります。
一度ノックインしてしまうと、元本割れを避けることはかなり難しいと言えます。
ノックインの基準値は通常基準価格の50%から60%あたりで設定されており、これを下回るとノックイン条項が発動します。
例えば日経平均株価リンク債であれば基準価格から落ちたパーセント分元本が割れて投資資金が帰ってきます。
つまり、償還時に日経平均が半値になっていれば元本も半値になって帰ってくるということです。通常金利は7-12%の間で設定されていることが多く、期待できるリターンとリスクが釣り合わないケースが多いです。
EB債の場合は、投資資金は全て対象の株となって投資家に返却されます。
しかもこの株、上記のEB債の欄で説明した基準価格の価格で買い付けしているためノックインした状況では当然多大な評価損が出ています。
通常半値まで下落した株価が値段を元に戻すことは極めて難しく、保有し続けてしまったがために評価損が拡大してしまうことも多々あります。
利益機会喪失リスク
仕組み債は債券なので当然参照する株価や指数の上昇に対しての恩恵を受けることができません。
クーポンは初めから決まっており、通常判定日と利払い日は年4回です。
たとえ10%のハイクーポンであっても年4で割れば1回あたりに受け取ることのできる利息は2.5%です。
参照指数がいくら10%上昇していようが、その恩恵を受けることはないのです。
つまり先ほどのノックインリスクと組み合わせると期待できる利益は極めて限定的、損失は不確定という投資のセオリーとしては最悪の金融商品になるのです。
早期償還リスク
早期償還リスクとは、基準価格が一定の値を上回ることで早期償還条項が発動し償還日前に投資家に投資元本の受け渡しがされてしまうことです。
一見元本が早く返ってくるため一見良い条項に見えるのですが、それ以降のクーポンを受け取ることはできません。
また、購入時に取得した有利な基準判定価格も無効となってしまうので、償還した資金で新しい仕組債を買い付ける時に割高な基準判定価格になってしまう可能性があります。
どうして金融機関は仕組債を販売したがるのか
顧客から販売手数料が取れない仕組債をどうして金融機関は積極的に販売しているのでしょうか。そこには大きな2つの理由があると考えられます。
新規資金を獲得しやすい
債券は株式と違い投資家が新規の資金を金融機関に投資しやすい商品です。
手数料がかからない上、債券という特性上満期になれば元本が返ってくるという考えが投資家の頭の中にあるためです。
スプレッドを確実に抜くことができる
仕組債の場合、指数や株式の値動きを債券の中に組み入れます。
しかし、債券の取引である以上その値段は証券会社の仕切り価格となり、証券会社は確実にスプレッドを抜くことができます。
販売手数料という目に見える形の手数料がなくても証券会社は確実にそこで利益を得ることができるのです。
まとめ
仕組債はリスクが低く見えるもののしっかりとリスクを確認した上で購入しないと予想もしていない損失を被ることがあります。
リーマンショックやギリシャ危機の際には大量の仕組み債がノックインをし、多くの投資家が損失を被りました。
ただ、リスクをしっかりと理解できていれば株式よりも安定的なリターンを生み出すことを期待できる商品です。
流動性が低いことを考慮し、余裕資金で長期間預け入れても自己資金がショートしないように資金管理をすればうまく運用することができるかもしれません。
ただし、リスクで説明したように期待できる利益が極めて限定的である上、損失は不確定であることから参照する指数や銘柄は慎重に選ぶ必要があるでしょう。
金融機関からの提案に安易に乗らず、常にノックインした時のリスクを意識することが大きな損失回避への大きな一歩になります。
【厳禁】「仕組債(EB)はやばい」5つのからくりをわかりやすく解説
2022年9月1日
仕組債が気になる。債権にも関わらず年率10%の利子が受け取れると説明を受けた。仕組債への投資をするべきだろうか?
記事を執筆した経緯
仕組債の仲介業をされている経営者と話をする機会があり。
筆者としては、正しい金融知識が得られる現在「仕組債のようなハイリスク•ミドルリターンの投資商品が売れるわけが無い」と思っていました。
経営状況を確認すると、富裕層の高齢者をターゲットに「売れに売れている」との事。
経営者本人も「こんな商品がいつまでも売れるはずがない」と考え次の事業を模索している。
明らかに顧客優位ではない投資商品と分かりながら仲介業をしており、経営者本人は「私は購入していない」と発言。
ヒアリング結果も踏まえ「仕組債のやばいからくり理由」を解説します。
残念ながら仕組債を購入する方は、情報収集を行わずこの手の記事は届きません。もし、あなたのご両親や友人が仕組債を購入していたら、ぜひ本記事で学んだことを使って「やめたほうがいい」とお伝えを頂きたいと思います。
仕組債(EB)とは?
一般的な債権にはない特別な条件を付与し、高いクーポン(利子)が受け取れる投資商品 別名、「EB(他社株転換社債)」とも言う。
以下で補足すると
「仕組み」とは、スワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)を利用。
結果、投資家や発行体のニーズに合うキャッシュフローを生み出す構造となる。仕組みにより、満期クーポン(利子)、償還金などを投資家や発行者のニーズに合わせて自由に設定することが可能。上記説明を見ただけで理解できた方は、十分な金融リテラシーをお持ちの方です。
但し、現実的には「よく分からない・・・」と感じる方も少なくありません。
仕組債は非常に複雑な作りになっており、正しくリスクを理解せず投資をしている方が多く存在します。
そのため、元本割れが発生して初めて「知らなかった」というトラブルも・・・仕組債のターゲットは「金融リテラシーが低い情報弱者」の方です。細かく目論見書を見る方であれば、自衛が可能な投資商品でもあります。
仕組債(EB)の仕組み
具体的な事例を元に仕組債の事例をチェックしましょう。仕組債として販売されている商品の一例は以下の通り
SBI証券仕組債より参照
利率は年13%の仕組債
普通預金:0.001%/年
国債:0.005%/年
定期預金(1年):0.10~0.25%/年
と比較すると、非常に魅力的な利率となっています。
上記、仕組債の条件は以下の通り
対象株式住友金属鉱山株式会社
野村ホールディングス株式会社売出額4億円利率年13.00%(税引前)/年10.359%(税引後)
1.各利率決定日のすべての対象株式終値が、利率決定価格以上の場合:年13.00%(税引前)
2.各利率決定日のいずれかの対象株式終値が、利率決定価格未満の場合:年1.00%(税引前)利率決定価格当初価格×85%(小数第3位を四捨五入)利払日償還日までの毎年1月、4月、7月、10月の26日早期償還判定水準当初価格×105%ノックイン判定水準当初価格×70%
シンプルに解説すると
住友金属鉱山株式会社
野村ホールディングス株式会社
2社が当初価格から70%(ノックイン判定基準)を下回らなければ、年13%の利回りが受け取れる
105%(ノックイントリガー)になると、判定日に早期償還となる
という仕組債です。
イメージ図は以下の通り
参照:債券|SBI証券より
上記5つのパターンを1つずつ解説します。
条件①額面100%満期償還条件②額面100%早期償還条件③1度ノックイン事由になるも株価上昇で額面100%早期償還条件④1度ノックイン事由になるも株価上昇で額面100%満期償還条件⑤1度ノックイン事由になり株価は下落の場合、対象銘柄の現物(株式・上場投信)に転換されて償還
条件①~④は投資として成功したパターンです。
条件⑤の場合、株価が下落した株式及び上場投信に転換。
つまり、含み損となった株式を顧客は受け取ることになります。
悩み人 一般的な投資商品同様リスクは同じでは?と思われますが、「仕組債はやばい」と言われるからくりが5つあります。
「仕組債(EB)はやばい」5つのからくりをわかりやすく解説
仕組債がやばい理由は以下の通りです。
順番に解説します。
デメリット①早期償還される
仕組債が投資家優位とは言えない大きな理由は、「早期償還される」という点にあります。
早期償還設定基準が設けられており、多くの仕組債は「当初価格が105%」が基準となっています。
本来債権というのは、保有している期間のみ利子を受け取ることができるため、早期償還されることはデメリットしかありません。
いくら10%を超える高利子を受け取れるとはいえ、短期間で早期償還された場合受け取れる利子は減少。
それにも関わらず株価減少に対しての制限はなく、「利益は限定的、損失は無限大」とハイリスク•ミドルリターンの投資商品となっています。
デメリット②証券会社のドル箱商品
結論、仕組債は証券会社のドル箱商品です。
1990年代後半「株式手数料の自由化」の動きにより取引手数料競争が過熱。
さらにその速度を加速させたのが、ネット証券の登場です。
この動きにより、手数料は格安となり証券会社にとって売買手数料は「儲からない商品」となりました。
結果、各証券会社はドル箱商品を作るべく複雑で顧客が正しくリスクを理解し辛い仕組債を販売。
特に危険な仕組債と言われるのが「新興国通貨建て仕組債」です。
ブラジルレアル
トルコリラ
メキシコペソ
この手の仕組債は6%を超える手数料が証券会社及び銀行側双方に得られるシステムになっています。
仮に、1,000万円仕組債を購入していた場合、120万円もの手数料が見えない形で搾取されています。
デメリット③回転売買が必要
仕組債は早期償還という仕組み上「回転売買」が必要です。
つまり、高い利回りを受け続けるには何度も仕組債を購入する必要があります。
このため、一度満額の金利を受け取った投資家に対して
証券マン
再度仕組債を購入して利益を上げましょう!
というセールスが行われ、何度も高手数料の仕組債を購入させられる投資家が多数存在。
株価は必ず上昇と下落を繰り替えすため、いずれ大きな損失を抱える事に。
今までの利益をすべて失い「こんなリスクは知らなかった・・・」という投資家も少なくありません。
仕組債で一番利益を得ているのは投資家ではなく、「販売側である」という点は覚えておきましょう。
デメリット④途中解約できない
仕組債は途中解約が基本的に対応不可。
このため、「仕事がクビになった」、「急な出費が必要なった」などの場合、対応ができません。
投資は余裕資金で行うという事は基本ですが、投資家判断で現金化できないというのは大きなデメリットの1つです。
デメリット⑤キャピタルゲインを受けられない
仕組債は利子を受け取る投資商品です。
このため、キャピタルゲイン(売買差益)を受け取ることができません。
仕組債を購入せず、シンプルに対象企業に投資をすれば株価上昇の売買差益+配当を受けとることが可能です。
早期償還などの強制決済もありません。
結論、仕組債は「ハイリスク•ミドルリターン」の投資商品です。
購入している方の多くが正しくリスクを認識できていない現実があります。
実際に、損失が出て初めて「こんなはずじゃなかった・・・」をショックを受ける方も少なくありません。
そこで実際に「どういった投資商品を購入したら良いのか?」について解説します。
(仕組債はNG)実際に買うべき投資商品とは?
実際に購入するべき投資商品は以下の通りです。
個別株
米国債券ETF
投資信託
順番に解説します。
①個別株
仕組債で気になる銘柄があれば、素直に個別株を購入しましょう。
個別株であれば、リスクはあるも早期償還もなくキャピタルゲイン(売買差益)を受け取ることができます。
他にも個別株のメリットは
手数料が格安
いつでも売却可能
キャピタルゲイン+配当、株主優待を受け取れる
複雑な投資商品を購入する事なく、シンプルに個別株の購入をおすすめします。
②米国債権ETF
債権から利子を受け取りたい方は米国債権ETFもおすすめです。
具体的なおすすめは以下ETFとなります。
AGG
BND
特徴は、「BBB以上の投資適格格付け」で構成された、債務不履行リスクが低く信用度が高いETFです。
AGG、BNDの特徴は
配当利回り:2~3%
経費率:0.04%
組入れ銘柄数7,000以上
経費率はたったの0.04%です。
こういった、超格安の投資商品は販売側のうまみがなく証券会社からは紹介されることはありません。
自身で投資商品の知識を付け、不要な手数料を支払うのは辞めましょう。
詳しくは以下記事でAGG、BNDについて解説しています。
③投資信託
基本ですが資産形成には、投資信託の活用もおすすめです。
これから投資を始める方であれば「積立NISA」の活用が最適解と言えます。
少額からでも良いため、インデックス投資を検討してみてはいかがでしょう。
おすすめの投資信託は以下で解説しています。
【厳選】ジュニア(積立)NISAにおすすめ投資信託ランキング5選本記事では、「ジュニアNISA、積立NISA」をテーマにおすすめの投資信託を5選紹介します。 現在、非課税制度を中心に積立...
【対策】投資の勉強が可能なツールを活用して自衛しよう
現在は、情報社会であり有益な情報を無料で得られる時代です。
このため、正しい投資の知識を得る事は手軽に行う事ができます。
具体的には以下の通り
Youtube
Twitter
投資本、投資雑誌
株アプリ
情報サイト
など、便利なツールは様々です。
以下記事で、網羅的に投資の勉強ができるツールをまとめているため、合わせてチェックしてみましょう。
「仕組債(EB)はやばい」5つのからくり【まとめ】
本記事では「仕組債はやばい」をテーマに5つのからくりを解説しました。
ポイントをまとめると以下の通り
結論、仕組債はおすすめできる投資商品ではありません。
実際に経営者サイドと意見交換を行い、このような投資商品が売れていることに疑問を持ちます。
特に顧客は投資経験が少ない方が多く、退職金で仕組債を購入している方も存在。
もしあなたのご両親や友人が仕組債を購入していたら、「やめたほうがいい」とぜひお伝えを頂ければと思います。
My opinion
欲に目がくらむと、本質が見えなくなる。
投資と投機は違う旨を以前のブログで解説したが、「仕組み債」は投機であり、元本が戻らないと覚悟した方が良いであろう。
この様な派生商品には高学歴者で「自分は頭が良い」と自負している者が落ちる。
何故なら、知ったかぶりをして自己判断をする。
本来は不明な点(リスク)を「知らないから教えてくれ」と言って質問攻めにする謙虚さに欠け、そのリスクを見逃すなどの自業自得に陥る場合が多い。
投資・投機をする者に対してベテラン営業パーソンは、自尊心が有る者へは、営業のテクニックで簡単に落とせると言われている。自尊心をくすぐると簡単に契約するらしい。
営業のテクニックで落とせない者は、一般常識があり、欲が無く、学歴の自尊心のない、「理解できないことは理解できない」と言える人物である。
孔子曰く「これを知るをこれを知ると為し、 知らざることを知らずと為せ。 是れ知るなり。」 どんとはれ!
参考文献・参考資料
仕組み債の販売制限相次ぐ みずほ証券や三井住友銀|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)
個人投資家が絶対手を出してはいけない、「仕組み債」が危なすぎる理由 | 自分だけは損したくない人のための投資心理学 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
みずほFG・三井住友銀行「仕組み債」販売制限 顧客の損失懸念: 日本経済新聞 (nikkei.com)
苦情報告相次ぐ「仕組み債」、個人が買ってはいけない理由(久保田博幸) - 個人 - Yahoo!ニュース
知らないでは済まされない!金融資産を食いつぶす仕組債 | マネ会 証券・株 by Ameba
【厳禁】「仕組債(EB)はやばい」5つのからくりをわかりやすく解説|イチリタブログ (long-term-investment.com)
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?