やさしい物理(宇宙)講座ⅴ56「地球の準衛星」
知的好奇心がそそられる報道記事が出たので紹介する。地球上で戦争なんかをせずに、このような研究に国家予算を使って欲しいものである。宇宙には未知の物質や未知の知的生物が存在するかもしれない。最近、世界中でUFOの存在を肯定して研究が進められていると聞く。夢が広がる世界である。
皇紀2683年(令和5年)4月28日
さいたま市桜区
理論物理研究者 田村 司
地球の新たな準衛星「2023 FW13」を発見 西暦3700年まで存在する “月のような天体”
sorae によるストーリー • 昨日 22:09
地球の自然衛星は「月」だけであると一般的に言われますが、小さな小惑星の中には短期間だけ地球の “第2の月” となった例が知られています。しかしながら、地球の重力に捕らわれていた、つまり真に地球中心の軌道にいたことのある小惑星はこれまでに4例 (※1) しか知られていません。
※1…人工物である可能性が高いものや流星を含まない。
【▲ 図1: 準衛星の例であるKamoʻoalewa(2016 HO3)の軌道。地球もKamoʻoalewaも太陽を中心とした軌道を公転しているが、地球から見たKamoʻoalewaは地球を公転する衛星のような軌道を描く(Credit: NASA / JPL-Caltech)】
一方で、見た目だけは自然衛星のように振る舞う小惑星も見つかっています。このようなタイプの小惑星を「準衛星」と呼びます。地球から観測した時に地球の周りをゆっくりと公転しているように見えることからそう呼ばれていますが、準衛星の重力的な中心は地球ではなく太陽であり、月のように地球の重力に捕らわれている真の衛星とは無関係であると言えます。
準衛星である小惑星が衛星のような動きをしているように見えるのは、こうした小惑星が地球の公転軌道とほとんど同じ軌道を公転していて、なおかつ地球と小惑星の軌道が交差しているからです。準衛星の公転軌道は遠日点 (太陽から最も遠くなる軌道上の点) が地球の公転軌道の外側に、近日点 (太陽に最も近くなる軌道上の点) は内側にあります。遠日点では小惑星の速度は地球よりも遅くなるので、地球が小惑星を追い抜きます。反対に、近日点では小惑星の速度は地球よりも速くなるので、今度は小惑星が地球を追い抜きます。遠日点と近日点で抜きつ抜かれつを繰り返すことで、まるで小惑星が地球の周りを公転しているように見えるのです。
準衛星となる小惑星の軌道は長期的には安定しておらず、準衛星になる期間は地球にかなり接近している時のみとなります。普段はそのようには見えない運動をしているものの、短期間だけ準衛星のように見えると予測される小惑星は複数見つかっています。
一方で、現在(2023年4月22日時点)準衛星となっている小惑星は5個見つかっていますが、軌道が最も安定していると推定されている469219番小惑星「Kamoʻoalewa」 (※2) でも、準衛星である期間は約300年と推定されてます。
※2…一般的なカタカナ表記は「カモオアレワ」であるが、発音に近づけると「カモ・オーレヴァ」と表記できる。
【▲ 図2: 2023 FW13の、2023年から2052年までの公転の軌跡(緑色)。見た目上は地球(水色)の周りを公転しているように見える(Credit: Tony Dunn)】
このような背景の中で、最近発見された「2023 FW13」はかなり特異な準衛星であることが判明しました。2023 FW13は地球から約2700万km離れた位置にあり、直径は10mから20mと推定されている、かなり小さな小惑星です。
2023年3月28日に初めて観測された2023 FW13は、その後の調査でより古い撮影記録(最古のものは2012年5月21日)にも写っていたことが判明。軌道が解析された結果、2023 FW13は現在地球の準衛星となっている6個目の小惑星であることが判明しました。
さらなる軌道解析の結果から、2023 FW13の準衛星としての軌道は相当安定していることが判明しました。この小惑星は遅くとも紀元前100年から準衛星の軌道に入っており、少なくとも西暦3700年までは現在の軌道を維持すると考えられています。約3800年という軌道の安定度は、準衛星では文字通り桁違いの長さです。
2023 FW13のような準衛星は真の衛星ではありませんが、地球の近くに留まり続けるという点は共通しています。このような地球からの距離が比較的近い小惑星には数ヶ月で到達可能であるという利点があり、小惑星探査の目標や、あるいは火星のような長期の有人宇宙探査の練習台として利用できる可能性があります。
【▲ 準衛星「2023 FW13」の想像図(Credit: NASA EYES)】
Source
・Minor Planet Electronic Circular. “MPEC 2023-G10 : 2023 FW13”. (Minor Planet Center)
・Minor Planet Electronic Circular. “MPEC 2023-G33 : 2023 FW13”. (Minor Planet Center)
・David L. Chandler. “Does Earth Have a New Quasi-Moon?”. (Sky & Telescope) 文/彩恵りり
地球の新しい準衛星、小惑星2016 HO3
地球に近い軌道を持ち地球と共に太陽の周りを公転する、擬似的な月のような小惑星「2016 HO3」が発見された。
【2016年6月22日 NASA JPL】
今年4月27日、米・ハワイのパンスターズ1望遠鏡による観測で小惑星「2016 HO3」が発見された。大きさは40~100m程度とみられている。
この小惑星が特徴的なのは、常に地球の近くにあって、地球と共に太陽の周りを公転するという点だ。近いといっても1400万km(地球から月までの約38倍)以上は離れているが、これまでに見つかっている同種の天体のなかでは最も軌道が安定している。このような天体は「準衛星」とよばれている。地球の周りを回るように運動するが、これはあくまでも見かけ上のことだ。力学的な運動中心は太陽であり、中心が地球である「真の」月とは本質的に異なる。
(黄色)2016 HO3の軌道、(水色)地球の軌道、(中心)太陽(提供:NASA/JPL-Caltech)
「計算によれば、小惑星2016 HO3は過去100年ほどの間、安定して地球の準衛星であり続けてきたようです。さらに今後も数百年間にわたり、準衛星として地球と共に太陽の周りを回り続けるでしょう」(NASA Paul Chodasさん)。
2016 HO3は、約半年間は地球よりも太陽に近い軌道を動き、地球よりも先行する。残る半年間は太陽から遠ざかり、地球より遅れて公転する。また、軌道が地球の公転軌道に対して少し傾いているため、小惑星は1年に1度、地球の軌道面に対して浮かび上がり、再び潜るという動きを繰り返す。
地球近傍小惑星「カモオアレワ」月から生まれたと米大学が発表。中国の小惑星探査機がサンプル採取へ
秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
2021/11/12(金)
2016年に発見された地球近傍小惑星「469219 Kamo`oalewa(カモオアレワ)」は、月面での隕石衝突で飛び出した破片が小惑星になったものと米アリゾナ大学が地球、環境、惑星科学の専門誌『Communications Earth&Environment』に発表した。確認されれば、月を母天体とする小惑星は世界で初めての発見となる。小惑星カモオアレワは、2024年に中国が打ち上げる予定の小惑星探査機「鄭和(ていわ)」の目標となっており、表面の物質を持ち帰る計画だ。
Lunar-like silicate material forms the Earth quasi-satellite (469219) 2016 HO3 Kamoʻoalewa
小惑星カモオアレワは、ハワイ大学などが進める小天体観測計画、「パンスターズ計画」により2016年4月に発見された小惑星。発見時には「2016 HO3」という番号がつけられていた。直径は45~57メートル程度とみられ、岩石質のS型またはL型と考えられている。振動しながら地球の周りを回っているような軌道を描いていることから、ハワイ語で“振動する破片”を意味する「カモオアレワ」と名付けられた。
小惑星カモオアレワが太陽系ではもっともありふれたタイプの岩石質の小惑星で、ごく小さいにもかかわらず注目されるのは、その特異な軌道にある。月のように地球を公転しているように見えるが、地球から1400万キロメートル以上(地球~月の距離の38倍以上)と地球の重力が影響する範囲よりも離れているため「準衛星」と呼ばれる天体のひとつだ。こうした準衛星の軌道を持つ小天体は、カモオアレワを含めこれまでに5個しか見つかっていない。
このカモオアレワの起源について、アリゾナ大学は、月を母天体とする小惑星との論文を発表した。小惑星の母天体候補としては、カモオアレワがL型小惑星であった場合には太陽系初期にあった惑星の元となる物質の名残りである、小惑星バルバラの可能性が指摘されている。一方で、アリゾナ大学の研究者は「地球近傍小惑星が準衛星の軌道に移動する可能性は非常に低い」と考えたという。準惑星の軌道はあまり安定せず、比較的安定しているカモオアレワであってもおよそ500年前に現在の軌道に到達し、今後300年でまた別の軌道に移動する可能性が高いという。
カモオアレワは小惑星の中では小さく暗いため、毎年4月ごろしか観測チャンスがない。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で観測することができなかったものの、アリゾナ大学の研究者によれば、2021年の新たな観測でスペクトル(表面の反射光のパターン)が既知の地球小惑星とは一致しないことがわかった。一致したのは、アポロ計画で持ち帰られた月の石のもので、このことから月を母天体とする説を提唱するにいたった。
カモオアレワは、地球の重力に捉えられて衛星となるには遠すぎるが、小惑星の中では地球に近い。JAXAが小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」で探査した小惑星イトカワや小惑星リュウグウ、アリゾナ大学の「オサイリス・レックス」が探査した小惑星ベンヌに続いて、将来の探査の候補として考えられてきた。中でも中国が2024年に打ち上げを予定している小惑星探査機「鄭和」は、小惑星の表面にドリルを打ち込んで探査機を固定し、表面サンプルを採取する方法を実施することを検討している。200~1000グラムと大量のサンプルを採取することを目標としており、打ち上げから2年後には地球にサンプルを届けて新たな彗星探査に向かう計画だ。
小惑星カモオアレワは、月から生まれた小惑星か、それとも太陽系初期の惑星の名残りか。中国が実際に小惑星サンプルを持ち帰ることができれば、月の石と照らし合わせて確認される期待が高まる。中国も嫦娥5号による月サンプルを手にしているが、アリゾナ大学が一致するとしたのはアポロ計画で持ち帰ったものだ。中国の持つ小惑星サンプルとアメリカの持つ月の石を比較検討するという、宇宙探査の二大強国のコラボレーションが実現するかもしれない。
記事に関する報告
秋山文野 サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経て宇宙開発中心のフリーランスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。
参考文献・参考資料
地球の新たな準衛星「2023 FW13」を発見 西暦3700年まで存在する “月のような天体” (msn.com)
地球の新しい準衛星、小惑星2016 HO3 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)
地球近傍小惑星「カモオアレワ」月から生まれたと米大学が発表。中国の小惑星探査機がサンプル採取へ(秋山文野) - 個人 - Yahoo!ニュース
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