政治講座ⅴ521「消耗戦ではロシアは負ける」
通常兵器の生産能力の限界に露軍は置かれている。残されている兵器は核兵器だけになってきた。いま、核兵器で恫喝する事だけが残された戦う手段であるが、NATOの核兵器で報復を受ける可能性に怯えており、使うことに躊躇しているようである。
皇紀2682年10月31日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
ロシアの“破壊戦略論”と“消耗戦略論”プーチン氏はまだ序の口と思っている【報道1930】
TBS NEWS DIG 2022/10/29 10:21
ロシアはウクライナが放射性物質をまき散らす“汚い爆弾”を使うと発信し、西側はそれを“偽旗作戦”と疑う・・・。刻々と変化するウクライナでの戦況。前線で今何が起きているのか。まもなく迎えるウクライナの冬とは…。そして、ロシアが持つという2つの軍事戦略とは…。
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■「避難する民間人は撤退する軍が攻撃されないための“生きた盾”だ。」
4州併合からすさまじい勢いで地域の奪還を進めるウクライナ軍。南部へルソン州ではロシア軍の撤退が続いているという。番組では州都ヘルソンに暮らし続けるウクライナ人に話を聞いた。彼はテレビ局の代表だが、ロシアに占領されてからは放送ができずネットで情報発信をしている。
地元テレビ『ヘルソン・プラス』 ヴォロジーミル・コシュク代表
「1週間前に取材されていたら顔を隠し、音声も変えてもらった。あるいは後ろ姿で出演していただろうね。この3.4日でヘルソンの状況は激変したよ」
地元テレビ『ヘルソン・プラス』 ヴォロジーミル・コシュク代表
「最近ヘルソンでは動員された兵士が増えた。見た目からして明らかにちゃんとした軍人じゃない。新品の軍服を着て眼鏡をしている人も多い。兵士というより学生に見える。ヘルソン市周辺で塹壕を掘っている。防衛線を強化しているんだろう。ヘルソンの戦いに向けて準備しているようだ。(中略~一方住民は避難している)避難する船に乗った住民は身分証を没収される。身分証がないから自由に行動できなくなる。その後バスでクリミア方面に連れていかれた。しかしウラル地区に行った人もいるようだ。これは避難ではなく追放だ。いずれはシベリアに送られるという噂もある。」
ウラル地区といえばヘルソンから3000キロ以上離れた山岳地帯だ。そして、彼らを乗せたバスは、ただの移動手段ではなく“人間の盾”として利用されているという。
地元テレビ『ヘルソン・プラス』 ヴォロジーミル・コシュク代表
「移動中バスとバスの間には軍用車両が走る。兵士を運ぶ車輛だ。車列は住民を乗せたバス・兵士を乗せた軍用車・バス・軍用車…というように交互に並ぶ。つまり避難する民間人は撤退する軍が攻撃されないための“生きた盾”だ。」
ヘルソン州各地でロシア軍が撤退しているのは事実なようだ。一方で州都ヘルソン市だけは動員した若者をつぎ込んで守ろうとしている。
北海道大学 服部倫卓 教授
「今回のウクライナ侵攻の中でロシアが州都を占拠したのはヘルソン市が唯一なんですね。4州併合したのに州都を失うというのはメンツ丸つぶれであると。だから他からは撤退しても、ヘルソン市だけは守るつもりかと・・・」
メンツのために州都だけは守る。ロシアもかなり厳しい戦い方を強いられている。一方ウクライナにとっては、ロシア軍を追い払っても過酷な現実が迫っている。冬の寒さだ。
■「ウクライナの冬はマイナス10度とか20度になる」
ロシア軍のインフラ施設への攻撃によってウクライナの電力インフラは3~40%破壊されている。現時点で7つの州、約150万戸が停電している。これが間もなく訪れる冬、深刻な問題を引き起こす。実はウクライナの暖房の多くは、旧ソ連時代に作られたセントラルヒーティングだ。即ち発電所で電気を作る際に出る95度の熱湯をパイプで各家庭に分配。それで給湯と暖房を賄っている。つまり発電所が運転停止になると、地域丸ごと暖房も給湯もストップすることになる。現在薪ストーブの大量生産を急ピッチで進めているが、凍死者が出ることも懸念されている。
北海道大学 服部倫卓 教授
ウクライナの冬はマイナス10度とか20度
になるんです。(中略)今の時期になると“そろそろ暖房、入るかなぁ”って気が気じゃなくなる。ロシアはそういうタイミングで電力インフラを攻撃したんですね」
東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「私がモスクワに住んでた時も、ソ連式の団地に住んでた。まさに同じシステム。パイプが来ていて発電所から直に熱が来るんでエアコンとか他の暖房いらない暖かさ。逆に言えばそれが来なかったら寒くって・・・。熱湯が送られてくるっていうのは冬の間命をつなぐ上で死活的なものだってロシア人もわかってるから、そこを攻撃すればウクライナ国民の士気は下がるだろうと狙ったんだろう・・・。(中略)でもこれでウクライナが戦争継続をあきらめるかっていうと、そうは思わない」
前線では反転攻勢に出るウクライナ。寒さにも屈しないウクライナ。これに対しプーチン氏は、戦略の変更に踏み切ったようだ。
■「破壊戦略論というのは、何を破壊するかというと敵の戦う能力と意志なんです」
ロシアには2つの軍事戦略があるという。
(1) 『破壊戦略論』・・・兵士同士は直接的な激しい戦闘をしない。
精密誘導兵器などによる攻撃のみならず、情報戦もこれに含まれる
(2) 『消耗戦略論』・・・兵士同士が犠牲を出しながら直接激しく戦う。
第2次大戦における独ソ戦はこれで、4年間で2000万人以上が戦死した
東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「破壊戦略論というのは、何を破壊するかというと敵の戦う能力と意志なんです。」
つまり、ミサイルなどで敵の兵器、基地、インフラを破壊することで戦う能力をなくす。また、情報戦で敵の判断を誤らせたり、戦意を喪失させたり、士気を下げるのも破壊に当たる。
東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「ロシア連邦議会下院のカルタポロフ国防委員長が作戦総局長だった2015年に言った。これまでの戦争は、プロパガンダ2、軍事力8でやったが、これからはプロパガンダ8の戦争だ。でもこれは軍の中でも未来志向のある人が、心理戦とかで戦わなくても勝てるんだよって考えがちなんです。ところが、ロシアの保守本流である陸軍の将軍たちはあまりこういう考えが好きじゃない。」
相手が小国だったり、戦争の初めのうちは破壊戦略でもいいが、敵が強かったり、戦争が長引けば結局軍事力だというのが陸軍の考え方だという。そして今回のウクライナとの戦いも同じだという。
東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「今回もはじめは破壊戦略論だった。だからすぐ終わると思った。特別軍事作戦と呼んでいたのも、それほどの戦いじゃないよってことだった。ところがやってみたらウクライナの足腰が強かった。で、普通の戦争にもつれ込んでいった‥」
結局プーチン氏は消耗戦略に切り替えるしかなかった。第2次大戦の対ドイツ戦では消耗戦の末2000万人の戦死者を出したが、勝利した。つまり、ロシアには消耗戦の成功体験がある。
プーチン氏は今度の戦争で、何人の戦死者を出すのだろうか…?
(BS-TBS 『報道1930』 10月26日放送より)
参考文献・参考資料
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