政治講座966「米国は消費の悪化ではなく需要に供給が追い付かない経済産業構造(産業空洞化)が理由」
米国の産業の没落は強いドルのために、人件費の安い海外にほとんど生産拠点を移した(産業空洞化)のが原因である。トランプ大統領はそのために産業の国内回帰(内製化)を進めた。それが順調になる前に武漢ウイルスによる疫病が世界中に広がりパンデミックを起こした。サプライチェーンの崩壊が供給不足を生み、高インフレとなった。これを高金利政策で解決するという愚策が銀行破綻を招いたことも一因である。ふと過去の日本の銀行経営において営業店の目標に「預貸差」があった。貸し出しが預金を上回る事の無いように大蔵省の護送船団方式で行政指導があった記憶がある。取り付け騒ぎ防止のためと今思うのである。その後、金利自由化とともに、高い金利を提示すると金が集まる時代となって、融資(貸出)競争へと時代が進むと、「預貸差」ではなく、「預貸和」が営業目標となった。融資額の一部を預金の歩留まり率を上げて信用創造が拡大するバブルを作り、銀行の融資可能額が膨らんだのである。自己資金比率が低い方が資本回転率が高いとされるなど、資本金の効率を求められた。
その後、日本はこれが逆回転するバブル崩壊が始まったのである。そして、銀行が債務超過になる事態となり、一部の銀行は公的資金で資本注入で債務超過の銀行経営を立て直しすることになったのである。今回は高金利政策は米国の経済自体を苦しめることになると考えるが、別な視点の違う報道記事を紹介する。
皇紀2683年3月28日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
日米の株価が今後も下落基調にあると見るワケ アメリカでは銀行不安とは関係なく消費が悪化
馬渕 治好 によるストーリー • 6 時間前
FRBはアメリカの銀行破綻が起きたことで大規模な支援策を用意。だがそれとは別に、同国の経済はすでに悪化している(写真:ブルームバーグ)© 東洋経済オンライン
とくに日経平均株価については「9日までの『株価が上がる要因探し大会』は今後行き詰まり、日本株は下落色を鮮明にしていくと見込む」と述べたが、残念ながら見込んだとおりの展開となった。まさにこの9日が最近の日経平均のピークとなっている。
銀行不安がなければ株価は上がっていたのか
そうした株価推移について、「いや、この世界的な株価の波乱は、ひとえにシリコンバレーバンク(SVB)やクレディ・スイス・グループの苦境により、銀行経営への懸念が広がったことによるものだ。馬渕さんはこれらの銀行経営不安についてはまったく予想できていなかった。見通しがたまたま『まぐれ当たり』したにすぎないのではないか」といった意見もあるだろう。
もしそうした見解が正しければ「銀行経営に対する不安が生じなければ株価が上がったはずだ、これからもその不安が解消されれば株価は上昇色を鮮明にするはずだ」という結論となる。しかし筆者は、そうは考えていない。
まず、足元の金融業の不安は、リーマンショックとはまったく異なる。リーマンショックは「アメリカでは住宅価格が下がるはずがない」という「住宅神話」に基づいていた。幅広い銀行が通常の貸し出しに加え、サブプライムローンと呼ばれる、返済が危うい借り手向けの融資も大いに行ったことに起因する。
銀行側のもくろみは「もし借り手からの返済が滞っても、値上がりし続ける住宅を担保に押さえているのだから、最終的には融資は担保不動産の売却で回収できる」というところにあった。
ところが、実際には住宅バブルが崩壊して価格が下落し、住宅ローンの焦げ付きが全額は回収できなくなった。また、住宅ローンは証券化されて、多くの投資家が保有していた。このため、住宅ローン劣化の悪影響は、幅広い銀行と幅広い投資家に一斉に打撃を与え、金融不安を引き起こした。結果として、サブプライムローン問題の行く末が、市場の命運を一手に握ることとなった。
しかし足元の金融機関の経営不安は、個別性が高い。銀行は預金などの形で借りた資金を、融資に振り向けて儲けるというビジネスモデルだ。ただし、一部を証券投資などにも充てて利益を得るという形になる。
ところが、SVBは預金の多くを証券投資に回しており、同行の預証率、すなわち「証券投資額÷預金」は2022年12月期決算によれば67%と高率だ。しかも証券投資額のうち、満期まで保有することを前提とする債券投資が77%に達している。
アメリカの国債やエージェンシーMBS(公的性の高い住宅金融会社による住宅ローン担保証券)などは、デフォルト(債務不履行)は想定しがたく、満期まで保有すれば元利金が返ってくるため、安全だ。
ところが昨年来の金利上昇により、債券価格は下落している。これはSVBにとって含み損にすぎないので、売却しなければ損失にならないはずだが、SVBの主力顧客であるITやバイオなどの新興企業は、手元資金の必要性からこぞって預金を取り崩し始めた。
すると、SVBは手持ちの現金や短期証券だけでは対応しきれず、泣く泣く満期保有を前提にした債券を売って預金者に現金を渡さなければならなくなった。このため含み損が実現損となり、そうした損失発生が経営不安を呼んで、さらに預金の引き出しを招くという事態に陥った。
クレディ・スイスの危機も元は固有の事情による
スイスのクレディ・スイスの場合、もともとの不安の発端はアメリカのファミリー・ファンド(富裕層の個人的な金融資産を運用する法人)であるアルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻(2021年4月)により、50億スイスフラン(約7000億円)の損失を被ったことにあった。その後も何度も経営不振が取り沙汰され、株価は下落基調にあった。最近突然何か悪いことが起こった、というわけではない。
もちろん、不安を引き起こす引き金はあった。3月15日に、筆頭株主(保有比率9.9%)であるサウジ・ナショナル・バンクの会長が、追加投資を否定する発言を行ったことだ。ただ、クレディ・スイスの経営の劣化は、やはり同行特有の事情が大きい。
このように個別性が強い経営不振ではあるが、根拠のないうわさによるものであったとしても、「あちらの銀行もこちらの銀行もつぶれるかもしれない」と皆が思えば、預金者が一斉に預金の引き出しに押し寄せ、本当の金融危機になるかもしれない。
こうしたパニックの恐れに対しては、多くの手が打たれている。詳細は避けるが、SVBについては、預金保険の上限(25万ドル)を超える部分も含め、預金全額が保護されることとなった。ジャネット・イエレン財務長官は3月21日に、「小さな金融機関が預金流出に見舞われ、それが広がる危険性がある場合には、同様の措置(預金の全額保護)が正当化される可能性がある」と講演で語り、不安の鎮静化に努めている。
このほか、連銀はBTFP(Bank Term Funding Program)という仕組みを創設し、個別行で預金の引き出しがかさめば、それに対応するための資金を、証券担保をとって融資する(結果として手持ちの満期保有予定の債券を、市場で売却する必要がなくなる)こととした。
以上からもわかるように、足元の銀行不安は個別性が強く、全体に広がるおそれは限られている。心理的なパニックが膨らむ展開の中でも、当局は抑え込みを迅速に行っているといえよう。「銀行の経営不安の行方が世界市場の命運を握っており、それによって株価が上がるか下がるかの方向性が決定される」とは考えない。
アメリカでは個人消費が一段と悪化
では、これからの世界株価を何が動かしていくかといえば、アメリカの景気と企業収益の悪化だ。それはアメリカの株安とドル安をも引き起こし、日本を含むその他の主要国にも悪影響を与えよう。
アメリカ経済全体のうち、個人消費は7割弱を占める。その個人消費にはすでにじわじわと暗雲が立ち込めているが、さらにがくんと悪化する事態に向けて、徐々に「仕込み」が進みつつある。
すでに個人消費や、その背景となる雇用市場の状況については、これまで当コラムで何度も解説してきたので、繰り返しをできるだけ避け、最近判明した事項に限って述べよう。
前回のコラム後に公表された主要な経済統計では、3月15日に2月の小売売上高が発表され、1月分は前月比3.0%増と大きく増えていたものの、2月分は同0.4%減と反落した。
角度が異なるデータも眺めると、アジア18カ国からアメリカ向けのコンテナ船の荷動き量は昨年9月から前年同月比マイナスとなっており、直近の今年1月は同20.1%減と大きな落ち込みだ。
この1月分において、前年同月比でのマイナス寄与度が大きいものを品目別に見ると、(1)家具寝具など、(2)繊維類およびその製品、(3)遊戯用具・スポーツ用品が押し下げ寄与のトップ3で、いずれも消費財であり、アメリカの個人消費の悪化がうかがえる。
さらに、3月以降の消費関連統計は公表を4月まで待たないといけないが、そこでかなり悪いニュースが流れる「仕込み」が進んでいると考える。
前回のコラムで、これまでの消費は「コロナ貯蓄」(コロナ対策で過去に支給された現金が手元に積み上がったもの)を取り崩して支えられてきたが「それが底をつきかけている」という点を、数値を示しつつ解説した。
コロナ貯蓄がさびしくなっても、人間というものは一度行ったぜいたくをなかなかやめることができないことから、クレジットカード払いに頼っているのではないか、とも推察されている。
ところが、シティグループの調査によれば、週次のクレジットカード払いの金額は、3月第2週では前年同期比6.8%減、第3週は同10.3%減とのことだ。3月は、手元の現金が乏しくなり、かつクレジットカード払いに頼るのも限界に近くなっていることから、個人消費がかなり悪化しているものと懸念される。
アメリカ経済予測に暗雲が覆うのはこれから
3月のアメリカの個人消費悪化が明らかになるとすれば、そうした消費関連諸統計が公表されるのは4月半ばあたりとなる。その頃には2023年1~3月期の同国の企業収益の発表が行われていようが、S&P500種指数ベースの1株当たり利益は前年同期比5.3%減益が見込まれている(3月24日時点でのアナリスト予想集計値)。
昨年12月時点での予想値は同0.7%増益であったので、大幅な下方修正だ。かつ、2022年10~12月期は同3.5%減益で着地しているので、予想どおりとなれば2四半期連続の減益で、コロナ禍以来(2020年1~3月期、4~6月期)のこととなる。なお、コロナ禍の時期は2020年7~9月期までの3四半期連続の前年同期比減益であり、足元の予想値も2023年4~6月期まで3四半期連続の減益見込みだ。
先行き着々とアメリカ株やドルについての悪材料が仕込まれていると解釈でき、暗雲が覆うのはこれからだ。短期的な株価の戻りはありそうだが、銀行経営不安のいかんにかかわらず、主要国の株価下落を想定する。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
参考文献・参考資料
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