政治講座ⅴ1226「中国の種子戦略」
工業などの産業の知的財産の保護以外に農業の知的財産保護の為に『種苗法』と『地理的表示(GI)』がある。以前のブログで解説しましたがあ興味のあるからは次をご覧あれ。
日本の農業従事者の汗と努力の成果が海外に流出していることが報道で騒がれている。この法律が奏功して日本の種子ビジネスが保護され、活性化されることを切に願うのである。
地域には長年培われた特別の生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品が多く存在します。これら産品のうち、品質、社会的評価その他の確立した特性が産地と結び付いている産品について、その名称を知的財産として保護する制度が「地理的表示保護制度」である。
やさしい法律講座ⅴ32 副題 地理的表示(GI)|tsukasa_tamura (note.com)
やさしい法律講座ⅴ33 副題 種苗法(しゅびょうほう)|tsukasa_tamura (note.com)
翻って、中国も本格的な『種子』の保護に乗り出したようである。今回は報道記事から中国も『種子』の知的財産の保護に動き出したようである。
皇紀2683年7月26日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
中国の反腐敗キャンペーン、新標的は種子取引
Chun Han Wong によるストーリー • 3 時間前
中国の習近平国家主席は自身が進める最新の反腐敗キャンペーンの一環として、法執行当局に対して不正情報を集めるよう指示している。今回は穀物や種子に関わる問題を標的にする。
中国共産党の規律に関する最高機関である中央規律検査委員会は、これまで軍や治安組織、金融部門での汚職を罰してきた。現在は穀物や種子の取引から違法な利益を得ている疑いのある当局者や業者、農業従事者を追っている。同委員会は中国で最も多忙で最も強力な機関の一つで、習氏が最優先事項と見なす分野における取り締まりを担っている。
中国政府の情報開示や国営メディアの報道によると、中国の「種子安全保障」をより強力に保護するという任務を負っている当局は、種子に関連した不正事件を数十件捜査し、そのうち数件では汚職の罪で穀物部門の当局者を刑務所に送った。一方、地方政府は「種子部門の腐敗」について独自の取り締まりを指示するとともに、幹部を田園地帯に送り込んで農業従事者の教育や違反者の一掃に当たらせている。
立法機関の上層部は食品安全法案の精査を行っている。6月下旬に公表された草案によると、同法案は、食料の生産・供給の安全を守り、最先端の種子技術を開発し、食品の安全と安全保障を脅かす不正行為を罰するための法的枠組みを設ける。
当局者によると狙いは、食料の生産や安全を脅かしかねない偽の種子や低品質の種子の拡散を阻止することと、農業関連の補助金を不正に取り込んだり低品質の種子を販売したりする当局者や業者、農業従事者を罰することにある。
習氏は国益として食料安全保障を強調することが多く、14億人の国民が十分な食料を確実に入手できるようにすることを当局者に求めている。その要求は近年、切迫感を帯びている。食料供給に混乱が起きるのを防ぐため、大豆やトウモロコシなどの穀物の主な輸入元である米国と対立する可能性を念頭に準備を進めている。
中国の支配者は古来、食料安全保障を社会安定の要と捉えてきた。食料不足や飢饉(ききん)がしばしば民衆蜂起の引き金になってきたからだ。共産党もこの問題に悩まされ続けており、とりわけ1959~61年の大飢饉で国が危機に直面した後にその傾向が強まった。当時は、農業を集団化し、急速な工業化を進める毛沢東の急進的な取り組みを受けて、何千万人もの餓死者が出たと推計されている。
中国政府は現在、種子産業を戦略産業の一つと見なしている。西側諸国が技術的優位性を利用して後発の中国に圧力をかける可能性がある分野だ。習氏は、中国種子産業の「シリコンバレー」と当局者が呼ぶ海南省の種子生産拠点を2度視察し、強い個人的関心を示してきた。
昨年の視察で習氏は、「中国国民はご飯茶わんを自分の手でしっかりと持ちたいのであれば、自分の手で種子をしっかりと握っていなければならない」と述べた。つまり、中国は種子技術について独立性と強さを持たなければならず、「中国の食料安全保障を確保するためには自国の種子を使用する」必要があるということだ。
中国は世界最大の穀物生産国であり、世界の耕作可能地の10%に満たない土地で世界の供給量の4分の1を生産している。しかし一部の推計によれば、国民を養う能力はこの数十年で低下している。国家発展改革委員会のナンバー2を務めた人物は昨年、同国の食料自給率が2000年のほぼ100%から76%に低下したと指摘。その理由として農業生産の競争力低下や種子産業の相対的な弱さを挙げた。
中国農業科学院副院長の万建民氏は2021年の共産党機関紙のインタビューで、中国の農業は国内で調達した種子を使用して高水準の自給率を達成していると指摘。輸入種子は全体の0.1%に過ぎないとした上で、育種技術と種子の生産には「改善余地が依然大きい」と述べた。
政府当局者や国営メディアは、種子を先端半導体になぞらえてきた。政府が中華民族の復興を目指す中で技術の習得を約束している分野だ。中国の農学者で故人の袁隆平氏は高収量のハイブリッド米を開発し、生産高を需要に見合う水準に高めた功績から、国民的英雄とたたえられてきた。その一方で、農業分野には汚職と不正がはびこり、国家の利益を損なってきたという側面もある。
国営紙「農民日報」は最近1面に掲載した論説の中で「農業の『半導体』とも言える種子は、さまざまな国家間の新たな技術競争の場であるだけでなく、大国間のゲームにおける重要な交渉材料でもある」と述べた。
農民日報によれば、中国の種子業界は外国による支配を免れるための十分な体力を持っているが、種子の品質面では依然他国に後れを取っている。同紙は、偽の種子や不当表示を「徹底的に取り締まる」といった対策が必要だと指摘。当局者や業者が種子の種類をごまかしたり、低品質の種子を最高品質と偽ったりして、農業従事者をだましていると報じた。
規制当局と学術機関が種子関連の研究を強化する一方で、共産党と政府は業界慣行の取り締まりに力を入れている。党中央規律検査委は1月、中国の食料サプライチェーン(供給網)には依然として腐敗がまん延していると指摘し、穀物取引をめぐる怪しい行為に対する取り締まりの強化を求める指示を出した。
党はこのメッセージを強調するため、「国家食料安全保障」に関する習氏の発言集を新たに出版した。一方、中央規律検査委の機関紙は最近の1面記事で種子業界を取り上げ、種子の生産および販売はもうかる仕事であり、幹部は簡単にカネが手に入る話に惑わされかねないと論じた。
同紙は、ある種苗企業が四川省の約30の村で地元当局者80人以上に賄賂を渡して、規格を満たしていない種子を販売した結果、農民が「深刻な損失」を被った事例を紹介した。その種子の発芽率が国の基準を大幅に下回っていることに農民が気付いたという。
当局は、違反が疑われる人の捜査を公表することで汚職の抑止を図ってもいる。こうした捜査の一つが浙江省の農業当局者スー・ジアキアン氏に対するもので、スー氏は昨年9月に党除名処分を受け、その後地方裁判所から汚職の罪で禁錮3年10カ月の実刑判決を受けた。
政府によると、スー氏は2014~17年の期間、自身が承認した補助金で恩恵を受けた農家から約2万ドル(約283万円)相当の賄賂を受け取っていた。政府の説明によると、スー氏は請求できない費用を補うために賄賂を受け取ることは当然だと感じていたという。同氏はまた、12万1000ドル以上に相当する農業補助金を不正受給するために他者と共謀した罪にも問われた。
同省の党規律検査委員会は、スー氏は地元の農業に献身するのではなく、「当初の大志を汚職の『種』にむしばまれ、結局は自分がまいた種を刈り取らざるを得なくなった」と述べた。
スー氏のコメントは得られていない。この裁判に関する公式な説明では本人がどのような主張をしたかは触れられておらず、国営の裁判書類サイトでもこの事例は見つからなかった。
種子の安全保障に関するプロパガンダ活動は、農業生産高の多さで知られる中東部の安徽省で特に盛んに行われている。同省亳州市(小麦、トウモロコシ、大豆の主要生産地)では、市当局者は種子安全保障に関する政治教育映画の上映会に出席することが義務付けられている。
「人民にとって、食料は最も重要なものである」。安徽省規律検査委員会は亳州市のある検査官の発言を引用した。「食料に関しては、種子が基本だ」
参考文献・参考資料
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