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政治(経済)講座ⅴ1604「エンゲル係数で分る食費の節約の重要性」

昨年、96歳で他界した母親の口癖「安く思えるだろうが食費ほど高額なものはない」と。
経済学のエンゲル係数の知識のない母親が経験則での発言である。
まさに、その通りである。食料は食えばすぐ消費されて糞となる。1日三食で年間、1095回食事をすることになる。高額な品物であっても、壊れない限りは、財産価値は存続する。生命維持のための食料は、必ず必要であるが、おいしい高額な食事であっても、それは刹那的な快楽である。食べると直ぐ消費されて財産として残らない、残るのは「糞」と言う排出物である。このようなことを経済学的な理論で解説するとエンゲル係数であろう。今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2684年1月22日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

29.8%!中国のエンゲル係数が再び30%以下に

Record China によるストーリー • 

中国国家統計局は17日、中国の2023年のエンゲル係数は前年比0.7ポイント低下の29.8%となり、個人の消費構造が改善していることの現れだと発表した。写真は義烏市内の屋台。© Record China

中国国家統計局はウェブサイトで17日、中国の2023年の1人当たり個人食品・タバコ・アルコール類支出が消費支出に占める割合(エンゲル係数)は前年比0.7ポイント低下の29.8%となり、個人の消費構造が改善していることの現れだと発表した。

エンゲル係数が低いほど、生活水準は豊かだとされる。国際連合食糧農業機関(FAO)はエンゲル係数に基づいて世界各国の生活水準を分類し、60%以上を貧困層、50~59%をやや貧困の層、40~49%をややゆとりのある層、30~39%を相対的な富裕層、20~29%を富裕層、20%未満を超富裕層とした。

中国のエンゲル係数は17年に29.3%になり、初めて30%を下回った。ここ数年の数字を見ると、19年は28.2%、20年は30.2%、21年は29.8%、22年は30.5%だった。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

エンゲル係数が過去43年間で最高域

~食料費の負担増のしわ寄せ~

熊野 英生
要旨
総務省「家計調査」のエンゲル係数は、1980年以来の過去最高の割合に並んだ。食料品の高騰が原因だ。10年前比で増加した中身を調べると、肉食化・間食化・中食化という3つの変化の特徴を見い出すことができた。家庭では、女性の就労比率が高まり、その影響が食料品の消費の内訳にも変化を及ぼしている。
目次

29%のエンゲル係数

過去1年間の移動平均値のエンゲル係数(家計消費支出に占める食料費の割合)が2000年以降で過去最高で並んでいる(図表1)。総務省「家計調査」の全世帯ベース(2人以上世帯)では、2022年9月~2023年8月までの12か月間累計のエンゲル係数が29.0%になった。この数字は、過去最高の2021年1月、2月(過去12か月累計)の29.0%とも並んでいる。
注:1999年以前について暦年データで遡ってみると、1980年以前で過去最高に並んでいた。それ以前は日本の所得水準が低く、エンゲル係数はもっと高まった。これを含めると43年間で最高域。

理由は、食料品価格が、消費者物価の中で目立って上昇していることにある。消費者物価の食料品(含む生鮮食品)の上昇率は、2021年以降上昇し、現在もその勢いは衰えそうにない。
岸田首相は、経済対策5本柱で、物価上昇の負担増に何とか支援の手を差し伸べようとしているが、エネルギー(電気ガス代、その他光熱、自動車関係費)にはいくらか効果を及ぼせたとしても、食料品の方には影響力を十分に行使できていない。食料品は、輸入比率が高いため、円安効果が価格高騰を促しているせいだ。

では、どういった世帯が、特に負担感が大きいのだろうか。2022暦年の家計調査から、世帯属性を調べてみた。すると、70歳以上の高齢者世帯と低所得層のところで、負担感が高くなっている(図表2、3)。食料費は必需的な品目だから、食料費が高騰したとき、支出を切り詰めようとしても限界がある。特に、年金生活者(無職世帯)にとっては、なかなか食料費が切り詰められない分、価格上昇が大きなストレスになっていると考えられている。日本の高齢化率は世界一(2023年9月29.0%)なので、食料品価格の高騰に消費マインドが敏感な性格を持っていると考えられる。

どんな種類の食料費が増えているか?

エンゲル係数の内訳ではどんな種類の食料費が増えているのか。家計調査の支出金額(名目値)を過去10年間で比較してみた(2023年8月からの過去12か月累計÷2013年8月からの過去12か月累計)。食料費は、10年間比で15.1%増加していた。増えているものを挙げると、①調理食品42.7%、②飲料28.1%、③肉類26.3%、④乳卵類25.0%、⑤菓子類25.0%、⑥油脂・調味料18.1%が目立っている。それらを特徴づけると、「肉食化」、「間食化」、「中食化」の3つになるだろう。それぞれについて細かくみていくと、

肉食化

食料費全体では、コメ、魚介類の支出が減っている。それと対照的に、肉類(豚・鶏)の支出と、乳卵類(バター、チーズ、卵)の支出が増えている。動物性タンパク質の摂取が、和食から洋食へと大きくシフトした。牛肉は意外に増えていない。豚・鶏以外に増えているのは、ソーセージ、卵、ヨーグルトといった朝食素材だ。おそらく、和食から洋食へのシフトは、朝ご飯の調理時間・片づけの時間を短くするためだと筆者はみている。

間食化

菓子類の増加の内訳は、チョコレート、スナック菓子、ビスケット類、洋菓子の増加が目立つ。その代わりに、まんじゅう、ようかん、カステラは減っている。ここでも和から洋へのシフトがみられる。これらは、朝昼晩の食事以外の間食が増加していることの反映だ。間食化の動きは、菓子以外に飲料でも顕著だ。乳酸菌飲料、炭酸水の増加は著しい。緑茶は、茶飲料が増えて、緑茶が減っている。自販機などのペットボトルのお茶が消費を増やし、代わりに急須で入れる茶葉の消費量は減っている。これは、家庭で間食しているよりも、オフィスで間食しているイメージだ。

中食化

食事が、素材から加工したものから、すでに調理されたものへとシフトしていることは、中食化と言われる。過去10年間で中食化はさらに進んだ。べんとう、おにぎり、調理パン、サラダなどが軒並み増加している。職場では、昼・夜とも外食をせずに、おにぎりやお弁当で済ませる人が多くなっている。忙しいことが理由にあるが、外食の値段が高いので、おにぎりにする人も多いのではないか。また、中食化の原因には、女性の就労も関係している。仕事からへとへとになって帰った母親が、すでに調理されたものや冷凍食品を使用する傾向を強めたこともあるだろう。朝食だけではなく、夕食にも調理・片づけの短時間化という変化が押し寄せている。食料費の変化からわかるのは、女性が仕事をする割合が強まって、家庭内の食事も変化してきている様子だ。

圧迫される和の食材

エンゲル係数が高まる背景には、食料品価格の高騰がある。例えば、10年前比較では、消費者物価(帰属家賃を除く総合)は13.1%も高騰した(消費者物価・総合は10.8%)。名目・消費支出の増加は同期間2.0%なので、実質消費は▲11.0%になる。同じように、食料品の価格上昇は10年間で25.3%だった。実質食料品(数量)は▲10.2%になる。食料品も他の品目も同程度に減らされている。
発表されているデータから食料品の内訳を実質値(水準)を求めることは難しいので、筆者が独自にベンチマークを設定して試算したところ、興味深い結果が導かれた(図表4)。実質ベースの10年間の変化は、主食用調理品が19.5%と最も大きく増加し、コーヒー・ココア、他の飲料(炭酸飲料など)が続いて多かった。実質ベースで大きく減っているのは、魚介類の▲40.1%、コメの▲26.3%、果実の▲20.8%が大きかった。自家用コメの消費は激減と言ってよいが、おにぎりやお弁当の中にご飯があるので、コメ消費全体では、中食を経由したものへとシフトしていると考えられる。
実質化した結果をみても、過去10年間の「肉食化」、「間食化」、「中食化」の傾向はおおむね変わっていなかった。おそらく、最近の食料品価格の高騰は、洋の食材が顕著だが、消費量は洋の食材そのものが減らされるより、需要が漸減していた和の食材離れを加速したと考えられる。コメ、魚介、茶葉といった和の食材は、価格が安くなってもそれで需要拡大が難しいのが実情だろう。


熊野 英生


歴史的な食品値上げなのにエンゲル係数低下の謎今後「家計の苦しさ」は過去最高となるのか

末廣 徹 : 大和証券 チーフエコノミスト 著者フォロー

2022/08/19 5:20

食品値上げが相次ぐ中で、意外なことにエンゲル係数が低下している(写真:Bloomberg)

食品値上げがラッシュともいえる状況にあり、人々の関心も極めて高い。

6月末時点における主要メーカー105社による2022年以降の価格改定計画(実施済み含む)は、累計1万5257品目、平均値上げ率13%となった。調査を実施した帝国データバンクによると、「2022年5月頃までは小麦など原材料価格の高騰が値上げの理由だったが、近時は急激な円安や原油高による輸入・物流コストの上昇へと変化している」という。

家計の消費マインドの指標である7月の消費者態度指数(内閣府「消費動向調査)は前月から1.9ポイント低下し30.2なった。内閣府は基調判断を「弱含んでいる」に下方修正した。すでに国民の負担は増加しており、不満は高まっているように思われる。

意外にもエンゲル係数は低下している

しかし、意外にも足元でエンゲル係数は低下している。エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食費の割合であり、食費にはもちろん外食も含まれる。エンゲル係数が高くなるほど生活水準は低くなるとされている。

具体的には、総務省が発表する家計調査によるとエンゲル係数の季節調整値は2020年に28%程度まで上昇し、2021年以降は低下している。原数値では2020年5月の30.2%が最高だった。それが、直近の2022年6月は26.8%(前年同月差マイナス1.2%ポイント)になっている。依然として高水準ではあるが、エンゲル係数が低下しているのには何らかの「裏」がありそうである(グラフ参照)。

食品値上げが続いているのにもかかわらず、エンゲル係数(「食料費÷消費支出」)が低下している要因を整理するため、2021年以降のエンゲル係数の変化を、分母である「消費支出」による要因と分子である「食料費」による要因に分解した。

これを見ると、足元のエンゲル係数の低下は「消費支出」による要因が大きいことがわかる。すなわち、エンゲル係数の「分母」が大きくなったことで、全体が低下している。

しかし、「食料費」もエンゲル係数を低下させる方向に寄与している。これは、食品価格高騰のイメージとは大きく異なる結果である。

以下では、「消費支出」と「食料費」のそれぞれについて変化を調べた。

脱コロナで「消費支出」が足元では増加

まず、分母である「消費支出」については2021年以降ではエンゲル係数を低下させる方向に寄与していたが、2020年以降の2年半の期間でみるとエンゲル係数を押し上げる方向に寄与している。

この背景にはコロナ禍による対面型サービス消費などの減少とその後の経済再開による消費回復があったと考えられる。

すなわち、2020年以降にコロナ禍の下で対面型サービス消費を中心に、エンゲル係数の分母である消費支出が抑制されていたため、結果的にエンゲル係数が上昇したと考えられる。一方で、2021年以降はこれとは逆に経済活動が正常化に向かうにつれて「不要不急支出」が回復基調となり、「消費支出」全体が押し上げられて、エンゲル係数が低下した。今後も、家計の消費全体が回復していくことがエンゲル係数の押し下げ要因となるだろう。

次に、分子である「食料費」についても、2021年以降ではエンゲル係数を押し下げる方向に寄与していた(前掲グラフ)。最近の食品値上げの流れを考えると、やや違和感のある結果である。

「食料費」の状況については、「名目消費」「実質消費」「価格」に分けてそれぞれ比べると、状況が整理できる。

興味深いことに、「食料費」の「価格」は2021年途中から上昇しているものの、「実質消費」は減少していることがわかる。その結果「名目消費」が伸び悩んでいるという格好だ。すなわち、「価格」は食品値上げのイメージどおり上昇しているが、数量ベースの消費量を示す「実質消費」が減少しており、「名目消費」が伸びていないのである。

実質消費の減少は長続きしない

「実質消費」の減少は、購入する食料の「量」が減少していることを示している。家計が食べる「量」を趨勢的に減らしているというのはやや不可解な動きである。例えばコロナ後のダイエットなのか、食料費の節約のために「カロリー効率」の高い食品、つまり腹持ちのいい食材にシフトしているのか、といったことが考えられる。

ほかには、コロナ禍における巣ごもり消費、つまり買い溜めによりストックされていた食料が積極的に活用され、それが一時的に購入数量の減少につながった可能性も考えられる。世界的に製造業や小売業での「在庫調整」が注目を集める中、家計の「在庫調整」も進んでいるのかもしれない。この仮説が正しければ、「在庫調整」の一巡後に「食料費」が増加するシナリオも否定できない。

いずれにせよ、コロナ禍という特殊な状況が影響したのであろう。食料費の実質消費の減少は常識的に考えて長続きしない可能性が高い。

以上により、コロナ禍の反動による「消費支出」の増加と「食料費」の実質消費の減少により、2021年以降のエンゲル係数は低下傾向にあることがわかった。しかし、いずれも一時的な要因と考えられ、今後はエンゲル係数が上昇するリスクが大きいだろう。

この先さらなる値上げがありそうだ

食品値上げについてはこの先一段と進む可能性が高い。冒頭に述べた帝国データバンクの調査では、2022年に値上げが予定されている品目の6割程度が7月以降のことであり、本格的な価格上昇はこれからだ。さらに、円安などの影響を受けて、今後新たに値上げが決定される品目も多く存在するだろう。「実質的な」食料費の減少で値上げの影響をカバーすることにも限界が来るとみられる。

エンゲル係数の解釈をめぐってはさまざまな議論があるが、食品値上げに伴う「食料費」の増加による上昇であれば、家計の生活水準の低下を示しているといえるだろう。今後は生活水準の低下によって個人消費に負の影響が及ぶことは不可避であると考えられ、国内景気の悪化が懸念される。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト



参考文献・参考資料

29.8%!中国のエンゲル係数が再び30%以下に (msn.com)

エンゲル係数が過去43年間で最高域 ~食料費の負担増のしわ寄せ~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)

歴史的な食品値上げなのにエンゲル係数低下の謎 今後「家計の苦しさ」は過去最高となるのか | 若者のための経済学 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

エンゲル係数 - Wikipedia

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