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やさしい物理講座ⅴ152「可視光線(電磁波)の『電磁誘導』と『共振(共鳴)』(仮説)」
「可視光線が物質に照射された場合にその物質がどのような反応(挙動)をとるのであろうか。」という素朴な疑問を持った。そこで、自論(仮説)であるが、音波と音叉に共鳴が発生することから、可視光線と物質にも共振(共鳴)が発生して、その共振した可視光線が、物質の色として我々の眼球に届くのではないだろうか。
笑い話をのような自論(田村仮説)を簡単に解説してみたい。
皇紀2685年1月26日
さいたま市桜区
理論物理研究者 田村 司
まず光の正体について解説する。
光は粒子性と波動性両方の性質を表す。これを光の2重性という。この2重性を「光は空間を波として伝わり、物質によって放出・吸収されるときは粒子として振る舞う」と解説されている。
光は昔は粒子であると思われていたが、光は電子がスピーン(回転して)電磁波であることが分った。図72
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電場と磁場の変化
電場が磁場を作り出し磁場が電場を作り出し交互に伝播していく。
その電場と磁場を時間の経過でグラフにしたのが下図である。
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光(電磁波)の分類と可視光
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人工的につくられる電磁波
電線に電流を流すと電線の周りに磁場が発生する。その磁場を打ち消すように電場が発生し、その電場を打ち消すように磁場が発生しそれが伝播してゆく。
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電波のイメージ
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日本の電波法などでは300万メガヘルツ以下のものと
定義される
物質と光(電磁波)の関係
通常(普通)の物質(分子)は、自分から光を発して光ることはない。
なぜならば、電子・陽子で電気的なバランスで成り立っている。
外部からのエネルギーの吸収で分子から電子が飛び出す場合は電気的にバランスを欠くことになる。
普通の物質は物質の外部からエネルギーをもらい(吸収=電磁誘導)して、そして、その物質の特有の光(電磁波)を放出する。
その光(電磁波)を放出するイメージ図が次の図である。
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観測されるスペクトル線は原子のエネルギー準位間の電子遷移により生じる。量子力学的には「光子は電子エネルギー準位間の遷移より入り、光子は電子エネルギー準位間の遷移より出ず」で表現できる。
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量子力学における言葉の解釈
励起状態は、(原子、分子、あるいは原子核といった)系のハミルトニアンの固有状態のうち、基底状態より高いエネルギーの全ての固有状態(量子状態)を指す。
励起は、光、熱、電場、磁場などの外場によって引き起こされる。
励起により、基底状態にあった固有状態は励起状態へ、励起状態にあった固有状態はより高いエネルギーを持った励起状態へ移る。
励起を引き起こすものは、上記以外にも電子や陽子、中性子、分子、イオンの入射、衝突や、フォノンなどによる励起もある。
ハミルトニアン(英: Hamiltonian)あるいはハミルトン関数、特性関数(とくせいかんすう)は、物理学におけるエネルギーに対応する物理量である。
量子力学では、位置と運動量を演算子で表す。
従って、位置と運動量の関数であるハミルトニアンは演算子としての性質を持つ。シュレーディンガーの波動方程式とハイゼンベルクの行列力学が争ったが最終的には等価であることが証明された。すなわち解く状況に応じて都合のいいように取ればよいのである。
具体例として時間に依存しない場合のシュレーディンガー方程式を扱う。時間に依存しない場合のシュレーディンガー方程式は固有関数または固有状態を Ψ、エネルギー固有値を E とする固有値問題の形をとる。𝐻^Ψ=𝐸Ψ
光の二重性について
粒子性と波動性が論じられている。
光の粒子説のとして、「光は光子(フォトン)という一種の粒子の集まりで、一個の光子が持つエネルギーEはプランク定数h、その振動数をνとすれば、E=hν、で与えられる」と定義されている。
光が原子から放出、あるいは吸収される光子説はプランクの提唱した量子仮説即ち「物体が振動数νの光を吸収したり、放出するとき、やり取りされるエネルギーは常にhνの整数倍である」という説を発展させたものである。
しかし、どうして、そのようなことが起こるか。
そこで、発想の転換、吾輩は光が干渉や回折などの波に特有の性質(現象)を示すことから、「粒子性」ではなく、原子における電子と光(電磁波)との電磁誘導と「共振性」とに起因するのではないかと考えるに至ったのである。
光の吸収・放出は原子における電子に電磁波エネルギーの波との電磁誘導と共振現象が起きていると考える。
色々な専門書にも、このような電子と電磁波の共振性を解説しているものはない。つまり、吾輩の独自の(田村仮説)見解である。
原子における電子と光(電磁波)との電磁誘導と「共振性」に起因することを、発見者田村の命名権で「光の共振性」と命名した。
波として伝播してきた光(電磁波)が原子に当たったときにその光の一部の振動数と共振現象を起こし、共振を起こした原子の中の電子が特有な共振したスペクトルを出すのである。
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イメージのために、音叉を例に考える。
音は空気の振動です。
音=空気の振動エネルギーという訳で、叩いていない音叉にも振動エネルギーが伝わり、共鳴する。
個体には固有振動数というものがそれぞれ決まっていて、固有振動数が同じものでなければ共鳴はしない。
単に音叉が二つあっても、この固有振動数が同じでなければ、どんなに距離が近くても振動こそすれど、共鳴まではいかない。
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電子と光(電磁波)は同じ穴の貉のようであり、原子の穴に入った入った電子は励起により電磁波と言う光を出す。
まさに、音叉(音波)の共鳴と同じで、電子と電磁波の間で共振が起こした光を我々は眼にしていると考える。
その原子に熱として吸収される光以外で振動数が大きい(波長が短い)光(電磁波)は、電磁誘導で、物質の電子をはじき出した(溢れでた)電子の存在こそが「光電効果」の本質ではなかろうか。
「光電効果」を及ぼす振動数を持った光(電磁波)と吸収された振動数(波長)以外は、電子と光(電磁波)との共振で物質の色として放出されるのである。
そのような現象を引き起こす本質的な原因は光の振動数に呼応した共振が原子の中の電子と光(電磁波)で起きていると仮説を立てたのである。
次に、その解説のためのイメージとして、音叉による音の「共鳴性」についても解説する。
音叉による音の「共鳴性」
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あらゆる物体には固有振動数(その物体にとって振動し易い振動数)がある。外部から振動が与えられるとき、与えられる振動が固有振動数に近づくにつれ、物体の振幅が急激に増大する。この現象を「共鳴」または「共振」という。
「光エネルギー」の「放出」のイメージ
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光合成に必要なスペクトル
生物(植物・動物・微生物)講座「紅葉の研究(光合成と葉緑体)」|tsukasa_tamura
太陽の光には可視光として、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤のおよそ7色である。しかし、厳密な境界がない。だから紫、藍、青をまとめて「青色光」とし、緑、黄を「緑色光」、橙、赤を「赤色光」とし、光合成に関する光を表現するときは、青色光、緑色光、赤色光の三色に分ける。
クロロフィルの吸収スペクトルと光合成の作用スペクトルにおいて、クロロフィルへの吸収スペクトルは青色光と赤色光である。緑色光は橙色の色素カロテンや黄色の色素キサントフィルなどのカロテノイドと呼ばれる色素がある。それらも光を吸収し、光合成に役立つ。これだけでは緑色は光合成にかなり役立つ一因では説明できない。
緑色光は細胞内などで乱反射されて、最終的にはクロロフィルに吸収されるなどの「寄り道効果」と呼ばれる現象が起きて光合成の作用スペクトルに含まれるのである。
吸光による励起
光(電磁波)を吸収した物質では,入射した光子( Photon :光量子ともいう)のエネルギーに相当する電子状態の遷移や運動エネルギーの増加が起こる。
具体的には電子エネルギー,振動エネルギー,回転エネルギーが変化する。
励起(Excitation)は、光、熱、電場、磁場などの外場によって引き起こされる。
光子のエネルギー E ( J )は,プランク定数 h( Js ),周波数ν( s-1 ),波長λ( m ),光の速度 c( m s-1 )とすると,
E = hν= h cλ-1
で与えられる。
なお,真空中の光速 c = 2.99792458×108 m s-1 ,プランク定数 h= 6.626070040×10-34 Js である。
この解説には「なぜ、どのように励起されるか」という視点が欠けている。
その「なぜ」の部分の解説が、電子と光(電磁波)との「電磁誘導」と「共振性」により光(電磁波)エネルギーが伝播・伝達されると解釈すると電子と光の間にエネルギーがどのようにして伝わるかがわかる。
光の吸収は電磁誘導
電子と光(電磁波)との電磁誘導と「共振性」により光(電磁波)エネルギーが伝播・伝達されると解釈する。
これが、光が物質と関わる第一段階であり,物質が光を取り込む過程つまり光の吸収による励起と考える。
励起(Excitation)は、光、熱、電場、磁場などの外場によって引き起こされる。
光エネルギー伝達の原理(電磁誘導)について
電磁誘導とは、磁場の変化が電流を生じさせる現象のことを指します。
原子の電子と光(電磁波)のエネルギー伝達はどのような関係性で伝達されるのであろうか。
それは、光の特性は電場と磁場が交互に発生する。
それに接触する電子に電磁誘導が発生して光の持つ電磁波のエネルギーの受け渡しが行われる。
この現象は、ファラデーの法則に基づいている。
具体的には、導体(例えば、銅線)を磁場の中で動かすか、または磁場自体を変化させることで、導体内に電圧が誘導される。
この誘導電圧によって、回路が閉じている場合には電流が流れる。
電磁誘導は、発電機や変圧器、電動機など、さまざまな電気機器の基本原理となっています。
例えば、発電機では、回転するコイルが磁場の中を通過することで電流が生成されます。
また、変圧器では、一次コイルと二次コイルの間で磁場が変化することで、電圧を変換することができます。
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物質に吸収される光(電磁波)
物質特有の振動数より小さい電磁波(波長の長い)は物質に熱として吸収され温度を高める効果をもたらす。これが黒体であり、その黒体の温度によって黒体放射を起こす。
マックス・プランクは、黒体放射のスペクトルに関する法則の導出を考える中で、原子のエネルギーが、エネルギー素量(現在ではエネルギー量子と呼ばれている)ε = hν の整数倍になっていると仮定した。この仮定を、量子仮説という。
日常で眼にする事象では電子レンジの過熱であろう。マイクロ波という電磁波で加熱して温度を温めている。
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光(電磁波)を照射すると電子が飛び出す光電効果
紫外線のような波長の短い光が金属の表面に当たると負電荷を帯びた電子が飛び出す。これを光電効果というが、これを考えるとき光エネルギーの量ではなく、電磁波の振動数が電子を拘束している原子つまり原子のエネルギー準位間の電子遷移により生じるのであると解説される。
光(電磁波)の照射による外部光電効果
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物質に光を照射すると、光と電子の相互作用によって、光のもつエネルギーが電子に与えられ、電子(光電子)が物質の表面から放出される。この現象を外部光電効果、または単に光電効果と言う。広義には電子のみならず、原子や分子が外部に放出される現象も含める。
光電子の放出は物質に一定の振動数以上の光を照射した時のみ発生する。このときの振動数を限界振動数 ν0 と言う。またその時の波長を限界波長 λ0 と言い、これらの値は物質の種類によって決まっている。入射光の強度にはよらない。
つまり、電子を弾き出すことができるのは、十分高い周波数の、電子を弾き出すのに必要なエネルギーをもっている光子だけである。青色光の光子は周波数が比較的高く、金属から電子を弾き出すのに十分なエネルギーを持っているのに対し、赤色光の光子は必要なエネルギーを持たず、いくら光を強く(光子の数を増やす)しても電子は弾き出せない。
この現象の起こりやすさは仕事関数 φ で表すことができ、ν0 と λ0 を用いて書くと、c を光速、e を電気素量として
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と表される。
光(電磁波)の照射による物質のエネルギー吸収
(a) プランクによると物質が持つそれぞれのエネルギーは連続ではなく,不連続です。
物質が取る不連続な各状態のエネルギーをエネルギー準位(単に準位ということも多い)という。
図1aのように2つの状態1および2のエネルギーをε1, ε2(ε1<ε2)とすると,物質がhνというエネルギーを持った光を吸収して状態2に上がるためには,2つの状態間のエネルギー差Δε=ε2 -ε1=hνでなければなりません。
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物質がエネルギー的に取りうる状態のうち,エネルギー的に最低の状態を基底状態 ,それよりも高い状態を励起状態 という。
図1では状態2が励起状態ですが,状態1は必ずしも基底状態とは限らず一般にはエネルギー的に高い状態のこともあります。
(b) 光吸収によって基底状態から励起状態に上がるとき,基底状態の電子が1個励起状態に上がります(図a)。電子はエネルギー的に不連続な状態間を,いわば川を飛び越えるように飛び上がるのです。これを遷移 transitionといい,電子が遷移することを電子遷移といいます。
(c) 図1で2つの状態1, 2は,その物質に固有の,性質の分った特定の状態です。
このようにある状態が「~の状態である」と特定することを帰属 といい,ある吸収帯を状態Aから状態Bへの遷移に帰属することをしばしば記号でA → Bと表わす。
吸収スペクトルや発光スペクトルにおいては帰属はまず第一に重要なことですから,帰属できない場合は帰属自体が大きな研究目的になります。
(d) 物質にはそれぞれに固有のエネルギー準位があり,従って吸収する光の波長も違うので目に見える色も千差万別です。
物質がどの波長の光をどの程度吸収するかをグラフに表わしたものを吸収スペクトル といい,通常は縦軸に吸光度,横軸に波長(または波数)を取る。
吸光度 (記号D)は,試料に光が入射する強度(入射光強度)Io,透過光の強度I との間に成り立つ関係式(ランバート・ベールの法則)によって次のように表わされます。
(e) 吸収スペクトルには幾つかの種類があります。原子の場合は不連続線から成る線スペクトルですが,多くの多原子分子や化合物の吸収スペクトルは一般に山のように幅広い形をした吸収帯 を示します。
その吸光度最大の所を吸収極大,その波長を極大波長(λmax)といいます。実例は後述の図7~8を見て下さい。
(f) 上で述べた(a), (e)から,物質が光を吸収するためには次の2つの条件が必要です。
① 2つの状態間のエネルギー差に相当する波長の光を当てる
そのために使われる波長の光を励起光,波長を励起波長といいます。
② その物質の吸収帯に相当する波長の光を照射しなければならない
2.スピン多重度
光化学ではさまざまなスピン多重度を持つ各種の励起状態を扱います。従ってこれを知っておかないと光化学はなかなか面白く感じられません。
電子は右回り,左回りのような性質といってよいスピンの性質を持っています。
その性質を表わすのがスピン磁気量子数と呼ばれる量子数で,例えば電子1個について右回り(矢印↑)を1/2とすれば左回り(矢印↓)は-1/2という数値を取ります。
符号,矢印の向きは反対にしても構いません。電子が複数ある場合は,スピンの向きを考慮した全体の数値すなわち全スピン量子数(記号S)を求めます。このとき2S+1で表わされる量をスピン多重度(記号M)と称し,数値Mを持った状態をM重項というのです。スピン多重度は項を表わす記号の左上に数字で示します。例えば項をBとすれば以下のようになります。
(例1)電子1個の場合はS=1/2でM=2(二重項 doublet, 2B)
(例2)電子2個でスピン対↑↓の場合はS=0,M=1(一重項 singlet, 1B),スピン平行↑↑の場合はS=1,M=3(三重項 triplet, 3B、
(例3)電子3個でスピン↑↑↑の場合はS=3/2,M=4(四重項 quartet, 4B),スピン↑↑↓の場合はS=1/2,M=2(二重項 doublet, 2B)など。
3.励起状態のいろいろ
光吸収によってどんな励起状態が生じるかはどの吸収帯を励起するのかということと密接に関連する。
(a) 有機分子(図2):基底状態はスピン対をつくった一重項S0です。基底状態から電子が1個遷移して励起状態になる場合,二通りがあります。
一つは電子がスピンを変えないで遷移し,基底状態と同じ一重項になる場合です。この励起状態を基底状態と区別して励起一重項状態 (記号S, S1あるいは1S, 1S1など)といいます。図示していませんがエネルギー的にさらに高い所にも第二,第三励起一重項,・・・(記号S2, S3,・・・)があります。もう一つは電子がスピンを反転して遷移し,スピン平行の三重項になる場合です。一重項の基底状態と区別する必要がないので最低三重項状態 lowest triplet state(記号T, T1あるいは3T, 3T1など)と呼び,励起三重項とは言いません。この励起一重項と三重項はセットで存在し(S1とT1, S2とT2,・・・),三重項の方がエネルギー的に必ず低くなります。
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(b) 遷移金属錯体:金属によってd電子数が異なり,従ってスピン多重度が異なるので有機分子のように一律に扱うことができません。d電子数で扱うのが便利で,例として図3にd電子数3(d3系)のクロム(Ⅲ)の場合を示しました。基底状態と同じ四重項の励起状態がありますが,有機分子とは違って個々の状態に固有の記号が付けられています。
4.電子励起状態と振動準位 3で述べた励起状態は電子遷移によって生じますから電子励起状態 electronic excited stateと呼ばれ,一本の水平線すなわちエネルギー準位で示されています。図では省略されていますが,実はこのような各電子励起状態には分子の振動運動に伴う振動準位 vibrational levelと呼ばれるエネルギー準位がさらにあって,それぞれは振動量子数 v(=0, 1, 2, ・・・)に対応している(図4)。
今まで一本の線で示した電子励起状態は振動準位0の準位に相当しており,実際にはそれよりもっとエネルギーの高い振動準位がある。
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5.さまざまな吸収(あるいは遷移) 吸収スペクトルには物質によって幾つかの吸収パターンがあります。
(a) π-π*遷移:π電子系芳香族有機化合物に典型的な吸収で,基底状態のπ状態からπ*励起状態への電子遷移に基づきます。πは電子が占めるエネルギーの低い軌道のうちでエネルギー最高の状態であり,π*は電子が占めていないエネルギーの高い軌道のうちでエネルギー最低の軌道です。
n-π*遷移:へテロ芳香族に見られる吸収。例えば窒素Nを含む分子には,Nの非共有電子対のうち1個の電子がπ*軌道へ遷移することによってこの吸収が見られます。
(b) 遷移金属錯体の吸収:遷移金属錯体には以上のほかに次のような吸収があります。
d-d遷移:錯体特有の吸収で,d軌道間の遷移に基づくのでこのように呼ばれます。そのほかに結晶場吸収,配位子場吸収などと呼ばれることも多くあります。
電荷移動遷移:金属-配位子間の遷移に基づく吸収で,通常は電荷移動charge transferの頭文字を取ってCT吸収と呼ばれています。L(配位子) → M(金属)への向きに起こるLMCTと,M → Lへの向きに起こるMLCTの2通りがあります。[Ru(bpy)3]2+はMLCT吸収,MLCT発光の例として良く知られています。
配位子遷移:錯体を構成する配位子自体による吸収で,多くはπ-π*遷移の結果です。
(c) 禁制遷移:2つの状態間の電子遷移が制約を受けない場合を許容遷移,制約を受ける場合を禁制遷移といいます。同じスピンを持った2つの状態間の電子遷移はスピン許容遷移であり,異なるスピンを持った2つの状態間の電子遷移は厳しい制約を受けるスピン禁制遷移です。例えば有機分子ではS1 → S0はスピン許容遷移,S1 → T1やT1 → S0はスピン禁制遷移です。
スピン許容遷移は強度が強く,モル吸光係数が大きな値(ε>104)を取りますが,スピン禁制遷移は強度が非常に弱く,モル吸光係数は小さな値(ε<10)になります。n-π*遷移も理由が異なりますが禁制遷移です。
(d) 光吸収で優先的に生じる励起状態は?
:ランバート・ベールの式(6)から分るように,光を効率よく吸収するのはモル吸光係数εの大きな吸収帯です。
言い換えればスピン禁制遷移による吸収は,εが小さいために光を吸収したとしてもその励起状態に存在する分子の数が小さく,無視して差し支えありません。
従って光吸収によって生じる励起状態としてまず考慮すべきものは,有機分子ではスピン許容のπ-π*遷移によって生じる励起一重項状態S1であり,最低三重項状態T1ではありません。従って三重項状態T1はそのセットの相手S1を経由して生じるのが普通です。
励起状態 から基底状態に戻るときの光エネルギーの放出
光を吸収して、余分のエネルギーをもった状態(励起一重項状態)から分子は余分のエネルギーをなくしてエネルギーの低い安定な状態になろうとします。その変化の仕方には主に次の4つの過程があります。
(a)余分の エネルギーを光として出して、元の状態(基底状態)に戻る。
(b)余分のエネルギーを熱として出して、元の状態(基底状態)に戻る。
(c)余分のエネルギー使って化学反応を起こす。この反応を光化学反応といいます。
(d)余分のエネルギーを少しだけ熱として出して、別の励起状態(三重項状態)へ移る。
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