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政治講座ⅴ1463「追悼は中国の権力闘争の号砲か?」

 歴史は繰り返される。
天安門事件の発端は、改革派だった胡耀邦元党総書記の死がきっかけとなった。
胡耀邦の葬儀までに、追悼を名目に政治改革を求める学生を中心に約10万人の人々が天安門広場に集まった。
追悼・抗議運動自体は、胡耀邦が死去した1989年4月15日から自然発生的に始まった。
抗議の参加者たちは統制がなされておらず、指導者もいなかったが、中には中国共産党の党員、トロツキスト、左派の毛沢東主義者、通常は政府の構造内部の権威主義と経済の変革を要求する声に反対していた改革派の自由主義者も含まれていた。
また、デモへの支援は外国の西側諸国からも行われ、米中央情報局(CIA)は、学生活動家たちの間に情報提供者のネットワークを構築し、反政府運動の形成に積極的な協力を見せ、タイプライターやファックスなどさまざまな機材を提供したとされる。のちに、CIAは英MI6とともに何人かの反体制派指導者の密出国に関与することになる。デモは最初は天安門広場で、そして広場周辺に集中していたが、のちに上海市を含めた国中の都市に波及していった。今回はそのような歴史が繰り返される可能性を秘めた追悼となるので、その報道記事を紹介する。

     皇紀2683年10月29日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

中国・李克強前首相の突然死、習政権に突きつける新たなリスク

Bloomberg News によるストーリー • 14 時間

(ブルームバーグ): 中国の李克強前首相の突然死は、習近平国家主席に新たなリスクをもたらしている。習主席に次ぐ中国ナンバー2として10年間首相を務め、改革派として人気のあった李氏への市民の思いが、景気減速に対する不満に波及する恐れがあるからだ。

中国の李克強前首相、心臓発作で死去-改革重視し習主席と距離

  中国では不動産危機で多くの人が資産を減らし若年層失業率は記録的高水準に達している。こうした中、習主席が外相と国防相を相次ぎ解任したことで、すでに政権の安定性には疑問が投げかけられている。

中国が李国防相を解任、外相に続く主要閣僚交代-政権の安定性に懸念

  李氏の死去に乗じて反体制の声が広がれば、政情不安への懸念は一段と強まりかねない。中国市民は実際に過去、共産党指導者の死去をきっかけに党の権力掌握への抗議を示したことがある

Xi Jinping and Li Keqiang© Photographer: Giulia Marchi/Bloomberg

  アジア・ソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマス研究員は「習氏は恐らく、追悼を率先して行うことで、李氏の死が政治的主張に利用される可能性を封じようとするだろう」と指摘。「李氏の死を利用して習体制に反対しようとする企てを押さえ込むための協調的な取り組みもあるだろう」と述べた。

  中国では1976年周恩来氏の死去が広範な抗議行動のきっかけとなった。1989年4月に胡耀邦氏が死去した際には、天安門広場での民主化要求デモにつながった。共産党指導部は天安門広場とその周辺に軍部隊を送り込み、抗議者たちを武力で排除。死者数は最大2600人に上ると推定されている。

  中国外務省の毛寧報道官は27日の定例記者会見で、「突然の心臓発作による李克強前首相の悲劇的な死に深く哀悼の意を表する」と述べ、李氏の葬儀の段取りについては「しかるべき時に」発表されると説明した。

  中国のインターネット上では李氏を悼む声が広がり、ソーシャルメディアの微博(ウェイボ)では訃報の閲覧回数が約13億回に上り、多くのユーザーがショックと悲しみを表していた。

  アメリカン大学の歴史学者、ジョゼフ・トリジアン氏はX(旧ツイッター)への投稿で、中国指導部が直面する当面の課題は、李氏の遺族を満足させながら習政権の政治的アジェンダにも配慮しつつ、民衆の感情を煽らないような方法で李氏の死去を扱うことだと指摘した。

  中国政治に関するニュースレター「内参」を発行しているアダム・ニー氏は、李氏の死去は「重要かつデリケートな政治的節目」になる可能性はあるものの、全体的な影響は限定的とみている。

  「周氏や胡氏の死去時のような政治的潮流が生まれるほど、民衆の不満が高まっているとは思わない。平均的な中国人は、来月の今頃には李氏の死を忘れているのではないだろうか」と語った。

原題:Xi Faces ‘Delicate Political Moment’ in Handling Grief Over Li(抜粋)

--取材協力:Xiao Zibang、Jacob Gu.

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©2023 Bloomberg L.P.

習近平が消した中国「もう1つの道」李克強の無念 心臓発作で急死、影が薄かった首相の10年間

西村 豪太 によるストーリー • 13 時間

李克強氏の改革への姿勢は期待を集めたが、習近平主席「一強」の前にその影は薄くなった(写真:Bloomberg)© 東洋経済オンライン

10月27日未明、心臓発作により68歳で急死した中国の李克強・前首相は、ひと言でいえば西側からみて「話が通じる」リーダーだった。

【図表】2012年の2月に世界銀行と中国の政府系シンクタンクの連名で公表された「2030年の中国」。 李克強氏の指示でまとめられたと目される報告書の改革メニュー

習近平国家主席のような共産党高級幹部の子弟とは違い、李克強氏は安徽省の普通の家庭の出身である。文化大革命の時期に少年時代を過ごし、大学入試が再開された1978年に最難関とされる北京大学の法学部に入学した。共産主義青年団の先輩である胡錦濤・前国家主席と同じく、改革開放後の社会で実績を重ねて昇進したエリートだ。

博士号を持つ本格派のエコノミスト

北京大学の大学院では経済学に転じ、のちに博士号を取得している。中国の要人にありがちな、実力不明の「なんちゃって博士」ではない。李克強氏の博士論文は中国の経済学界で最も権威があるとされる賞を得ており、本格的なエコノミストだ。こうした素養があるうえ英語も堪能だったので、西側との「共通言語」は豊富だった。

ときに、その発言は波紋を広げることもあった。2010年には内部告発サイトのウィキリークスで「中国の統計は信頼できない。頼りにできるのは電力消費量、鉄道輸送量、銀行融資の増加率だけだ」という発言が暴露された。李克強氏が遼寧省のトップである党委員会書記だった2007年、アメリカの駐中国大使にそう語ったとされている。

すでに最高指導部入りが確実視されていた李克強氏の発言が伝わると、欧米ではこれら3つの指標を組み合わせた「李克強指数」が中国景気ウォッチのために使われるようになった。本人もそのことはよくわかっていたようだ。

首相就任後の2014年に、李克強氏は天津で開かれた夏季ダボス会議で自ら「7、8月の電力消費量、貨物運送量などの変化が国際的な注目を集めているが、まだ合理的な範囲にあると見ている」とコメントするしゃれっ気を見せた。こうしたセンスも西側受けする要素といえるだろう。

中国経済については、一貫して民営企業の振興と市場化、国際化を呼びかけてきた。首相就任の前年、2012年の2月に世界銀行は中国の政府系シンクタンクである国務院発展研究センターとの連名で「2030年の中国」と題する報告書を公表している。

当時、李克強氏の指示でまとめられたと報じられた報告書には、現在にいたるまで必要とされる中国経済の改革メニューがそろっていた。

(1)市場経済への移行完了、
(2)開かれた技術革新の加速、
(3)環境に配慮した投資を開発の推進力とする「グリーン成長」への転換、
(4)保健、教育サービス、雇用などをすべての人が享受できる体制づくり、
(5)国内財政制度の近代化と強化
(6)中国の構造改革と変化を続ける国際経済とを結びつけることによる相互利益の追求――といったものだ。

テレ朝news
中国 李克強前首相の故郷で多くの人が献花
追悼の動きに警戒か
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その内容は、当時の温家宝首相が翌月に全人代で行った政府活動報告にも色濃く反映された。この時点で、経済改革について中国の指導者と西側は同じ方向を向いていたわけだ。米中対立が顕在化する前、中国は豊かになれば開放的になると多くの人が信じていた最後の時期である。

空振りだった「リコノミクス」

2013年に経済運営の司令塔である首相に就任すると、李克強氏は改革路線を鮮明に打ち出した。当時、中国の内外でもてはやされた「李克強経済学(リコノミクス)」は、
財政出動の抑制
過剰融資の是正(デレバレッジ)、
③産業構造の改革生産性向上、の3つを柱としていた。

生産年齢人口の減少などが、中国経済の先行きに暗い影を落とし始めたころだ。持続可能な発展を可能にするため、リコノミクスには大きな期待が寄せられた。

ところが、1年もたたないうちに李克強氏のプレゼンスは大きく低下する。曲がり角は、2013年11月に開かれた「三中全会」だ。中長期の主要な経済政策方針などを決める5年に1度の重要会議である。

この場では、市場機能の重要性を強調しつつ、「市場の見えざる手と、政府の見える手の両方をうまく使う」として、政府による市場への介入をよしとするロジックが打ち出された。同時に習主席をトップとする「全面改革深化指導小組」が共産党に設立され、李克強氏の求心力は大きくそがれた

その後は李克強氏が率いる国務院(内閣)が地盤沈下し、共産党への一極集中が進んだ。習主席の権力が圧倒的に強くなるなかで、李克強氏の活動領域は起業振興キャンペーンなどの周辺分野に追いやられた

ときどき中国経済の現状に警鐘を鳴らすかのような発言が注目されたが、それが習主席との力関係を変えることはなかった。習主席の一極体制のもとで、中国では国有企業の育成を重視する社会主義的な色彩の強い経済運営が定着した。

見せ場がなかった10年間

2013年の「三中全会」以来、李克強氏に見せ場は与えられずじまいだった。今、その重要会議の開催タイミングがまた近づいている。今回、首相の任にあるのは李強氏。習主席の浙江省在勤中に秘書を務め、気に入られた人物だ。

李強氏は上海市党書記に抜擢されてからは、上海証券取引所への新市場創設や、アメリカの電気自動車メーカー・テスラの工場を誘致するなどの実績を残した。しかし中央政府での経験は皆無で、就任後も独自のカラーは感じさせない。

2022年に総人口の減少というエポックを迎え、成長力低下のもとで不動産不況に揺れる中国。この難局にあって、結局のところ必要な改革のメニューは「2030年の中国」で示されたものとあまり変わっていない。この10年を空しく過ごしたことは李克強氏にとって無念だっただろうが、中国、ひいては世界にとっても悲劇的だった。

中国の李克強前首相が死去 故郷では膨大な数の献花

ABEMA TIMES によるストーリー • 1 時間


中国の李克強前首相が死去 故郷では膨大な数の献花© ABEMA TIMES

27日に急死した、中国の李克強前首相をしのんで、幼少時代を過ごしたとされる家に膨大な数の献花が寄せられています。

【映像】献花に訪れる人々、建物の周辺の様子

建物の周りをぐるりと取り囲む白や黄色の菊の花。安徽省合肥市にある李克強氏が幼少時代を過ごしたとされる建物です。

27日に、李克強氏の死亡が報道された後、中国のSNSには建物の周りに昼夜を問わず、多くの人が献花に訪れる動画が、弔いの言葉とともに数多く投稿されています。

ただし、追悼の動きが大きくなりすぎるのを警戒してか、一部の動画は閲覧が制限されたほか、学生などに集会を禁じる動きも確認されています。(ANNニュース)

李克強前首相の旧居前、1万人超が自発的追悼…異例の規模に政権批判を警戒・私服警官も

読売新聞 によるストーリー • 13 時間

28日、安徽省合肥市で、多くの人が献花し花束が積み上がった李克強前首相の旧居前=大原一郎撮影© 読売新聞

 【合肥(中国安徽省)=比嘉清太、北京=川瀬大介】27日に急死した中国の李克強(リークォーチャン)前首相が少年時代を過ごした安徽省合肥市の旧居前に28日、地元住民ら1万人以上が訪れ、献花した。死去した中国指導者への自発的な追悼としては異例の規模だ。習近平(シージンピン)政権は、追悼が政権批判に転じることを警戒している。

 旧居前では28日夕、バラや菊の花束を抱えた住民らが約500メートルにわたり行列をつくった。花束は高さ2メートル以上積み上げられ、「永遠に懐かしむ」と急死を惜しむメッセージも添えられていた。現場では警察官や当局が動員したとみられる治安ボランティアら100人以上が交通規制にあたった。

 小学1年の長男(7)と献花した地元の教育業、侯蕾さん(30)は、李氏を「安徽省の誇りだ」とたたえた。当局は、習氏との確執が取り沙汰された李氏への同情論が地元で高まることに神経をとがらせているとみられ、私服警官も通行人に目を光らせていた。

 中国のSNS・微博(ウェイボー)では、李氏の死去に関し、コメントの閲覧が規制されている。新華社通信の公式アカウントが投稿した李氏の「訃告(ふこく)」に対しては約14万件の投稿があると表示されるものの、閲覧可能なのは約30件にとどまる。当局の意向を踏まえた措置とみられる。

 共産党機関紙・人民日報は28日付の紙面で李氏の「訃告」を1面で伝えた。2019年7月に死去した李鵬(リーポン)元首相と同じ扱いだった。広東省深センや貴州省貴陽では、花火や音楽のイベントが中止された。

参考文献・参考資料

中国・李克強前首相の突然死、習政権に突きつける新たなリスク (msn.com)

習近平が消した中国「もう1つの道」李克強の無念 心臓発作で急死、影が薄かった首相の10年間 (msn.com)

画像 | 習近平が消した中国「もう1つの道」李克強の無念 心臓発作で急死、影が薄かった首相の10年間 | グローバルアイ | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

中国の李克強前首相が死去 故郷では膨大な数の献花 (msn.com)

李克強前首相の旧居前、1万人超が自発的追悼…異例の規模に政権批判を警戒・私服警官も (msn.com)

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