政治講座ⅴ1404「中国経済に対する世界が抱く幻想と錯誤」
中国の経済破綻でどれほどの被害が世界に及ぼすのであろうか。米国の証券市場・株式市場を利用してインフラへの投資などをして中国は成長してきた。今回は報道記事から実像に迫る。
皇紀2683年10月3日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
はじめに
中国は共産主義でありながら市場経済を導入して成長をしてきたが、中国経済を会計簿記に照らして考察すると、内部留保などの資本は皆無に近く体力のない企業であると考えられる。世界の工場としての生産活動からの利益は外国投資の配当金として流出して、会社自体の内部留保はなく、資本剰余金も積み上げられていないと考えると脆弱な経済基盤であろう。言い換えると借金体質なのである。
通常、会社が設備投資するときは、費用対効果を考えて、その利益から設備投資資金の返済財源を捻出する。
当然、毎年の必要経費に設備の減価償却金を算入できるだけである。その減価償却費は返済原資になるが、内部留保は税引き後当期利益の積み重ねである。40年間でどのくらいの内部留保がたまるのであろうか。日本には創業100年とか200年という企業があるが、中国では私有財産の土地はないから、自己資本は薄いと思われる。だから、中国は国営企業しか存続できないし、利潤追求型ではなく、国家目標で活動する企業がほとんどである。合弁会社は多少違うのであろうが、国営企業には、債務超過で破産や会社整理・清算されるべき国営企業がゾンビ企業として存続可能になっている。
中国で十数年前から鬼城マンション(ゴーストタウン)の存在が報道されていた。最近、中国の大手不動産のデフォルトが報道されているが、このような、事態になることは十分予想がついていた。決算書も見ない吾輩が容易に予想がついていたので、市場分析・会計分析をする専門家は同然予想がついていたのであると推測する。
だから、危険を察知した金融関係者はドン引きしてすでに手を引いているので、海外投資家は被害は最小限に抑えられると考える。
故に、中国の経済破綻で過去の米国の1929年10月の世界金融恐慌にはならないと考える。そして、リーマンショックを引き合いに出す専門家がいるが、それはサブプライムローンを混在させて証券化して販売した金融商品に問題の解決を難しくしたのとは次元が違うのである。
翻って中国の金融商品には理財商品がある。この商品が海外の投資家に販売されているならばその総量によっては影響があると考えられる。同じように、地方政府の外郭企業の融資平台の債務残高が1300兆円が不動産投資に使われており回収不能な不良債権となっている。これは債権の購入者が中国内部の富裕層が購入しているので海外への波及は限定的であろう。ただ、中国は秘密主義・隠蔽体質であり、海外に販売された債権がないとは言い切れない。あなたの海外証券の商品があるならご確認あれ!
【解説】 中国が抱える経済問題、世界に与える影響は
BBC News によるストーリー •18 時間
ニック・マーシュ、アジアビジネス担当編集委員
アメリカがくしゃみをすると世界が風邪をひくという言い回しがある。では、もし中国の体調が悪い場合はどうなるのだろうか?
世界第2位の経済大国であり、14億人の人口を抱える中国は現在、さまざまな問題を抱えている。経済成長の鈍化、若者の失業率上昇、そして不動産市場の崩壊だ。
先には、経営危機に陥っている不動産開発大手、中国恒大集団(エバーグランデ)の許家印会長が警察の監視下に置かれたと報じられたほか、株式の取引が再停止となった。
中国政府を悩ませるこうした問題は、世界にとってどれほどの重大事なのだろうか。
アナリストらは、世界的な大災害が差し迫っているという懸念は誇張されたものだとしている。
しかし、多国籍企業やその従業員、そして中国と直接関係のない人々でさえ、少なくともその影響の一部を感じることになるだろう。結局のところ、それはあなた次第だ。
勝者と敗者
シンガポールのアジア貿易センターのデボラ・エルムズ所長は、「例えば、中国人がランチの外食を控えるようになったとして、それが世界経済に影響を与えるだろうか?」と問いかける。
「答えは、あなたの考えるほどではないが、中国の国内消費に直接依存している企業に打撃があることは確かだ」
米アップルや独自動車大手フォルクスワーゲン、英ファッションブランド「バーバリー」といったグローバル大企業は、中国の巨大な消費者市場から多くの収益を得ているため、家計消費が落ち込めば影響を受けるだろう。その影響がさらに、こうした企業に依存する世界中の数千ものサプライヤーや労働者に波及する。
中国が世界の経済成長の3分の1を担っていることを考えれば、どんな経済的失速でも国外にまでおよぶだろう。
米格付け会社フィッチは8月、中国経済成長の失速は「世界的な成長見通しに影を落としている」とし、2024年の世界全体の見通しを下方修正した。
一方で、中国が世界の繁栄の内燃機関になっているという考えは過大評価だと指摘するエコノミストもいる。
英オックスフォード大学中国センターのエコノミスト、ジョージ・マグナス氏は、「数学的には確かに、中国は世界の経済成長の約40%を占めている」と話す。
「しかしその成長の恩恵を受けているのは誰か? 中国は莫大な貿易黒字をあげている。輸入よりも輸出の方がはるかに大きいので、中国がどれだけ成長するか、あるいは成長しないかは、世界の他の国々についてというよりも、むしろ中国についての事柄だ」
それでも、中国のモノやサービスへの、そして住宅への消費は縮小している。つまり、原材料やコモディティーへの需要も下がっている。同国の8月の輸入高は、ゼロコロナ政策の制限のあった前年同月と比べて9%のマイナスだった。
「オーストラリアやブラジル、アフリカのいくつかの国々といった大きな輸出相手国は、これに大きな影響を受けている」と、豪シドニーのロウイー研究所インド太平洋開発センターのローランド・ラジャ所長は話した。
中国での需要減退はまた、価格の停滞も意味する。西側の消費者からすると、金利のさらなる引き上げを伴わない物価上昇抑制策としては歓迎すべきことだろう。
ラジャ氏は、「高インフレへの対処に悩んでいる人々や企業にとっては良いニュース」だと話した。つまり短期的には、一般の消費者は中国の成長鈍化の恩恵を受けるかもしれない。しかし途上国の人々にとっては、長期的な疑問が浮かんでくる。
過去10年にわたり、中国は一帯一路構想に基づいて1兆ドル以上を大規模インフラ事業に投資してきたとみられている。
150カ国以上が中国から資金や技術を受け取り、道路や空港、海港、橋などを建造した。ラジャ氏によると、中国国内の経済問題が長引けば、こうしたプロジェクトに対する中国の貢献度が低下する可能性がある。
「中国の企業も銀行も、海外にばら撒くような大盤振る舞いはできなくなるだろう」
中国の立ち位置
中国の海外投資の縮小は考えられる可能性の一つだが、中国国内の経済状況がその外交政策にどのような影響を与えるかは不透明だ。
ぜい弱になった中国が、傷ついた対米関係を修復しようとするかもしれないと主張する人もいる。アメリカの貿易規制は、今年上半期の中国の対米輸出を25%減少させる一因となった。ジーナ・レモンド米商務長官は最近、中国は一部のアメリカ企業にとって「投資できない国」だと述べた。
しかし、中国のアプローチが軟化したことを示す証拠はない。中国政府は独自の制裁によって報復を続け、西側諸国の「冷戦のメンタリティー」を頻繁に非難し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やシリアのバシャール・アル=アサド大統領など、制裁を受けている政権の権威主義的指導者と良好な関係を維持しているように見える。
一方で、アメリカやEUからは多くの高官が毎月、中国を訪ね、双方向の貿易について協議を続けている。実際のところ、中国の発言と中国の政策の間に何があるのかを知る人はほとんどいない。
この不透明性について最も過激な推測をしているのは、米政府のタカ派的なオブザーバーだ。それによると、中国経済の悪化が、中国政府が自国の「領土と主張する台湾への対応に影響を与える可能性があるという。
米連邦下院・中国委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和党)は9月初め、中国の国内問題が習近平国家主席の動きを「推測しづらいもの」にしており、台湾をめぐって「何かとても愚かなこと」をする可能性もあると述べた。
インド太平洋開発センターのラジャ所長はこの意見について、中国の「経済的奇跡が終わった」ことが明らかになった場合、中国共産党の反応が「実に重大な結果をもたらす可能性がある」ということだと説明する。
だが、ジョー・バイデン米大統領を含め、この意見を否定する声は多い。台湾についての質問に対しバイデン氏は、習氏は現在、国内の経済問題で「手一杯」だと答えた。
「中国が台湾を侵略する原因になるとは思わない。中国はおそらく、以前と同じ能力を持っていないだろう」
想定外を想定する
しかし、歴史から学ぶことがあるとすれば、それは想定外を想定するべきだということだ。アジア貿易センターのエルムズ所長が指摘するように、2008年以前、ラスヴェガスのサブプライム・ローン問題が世界経済に衝撃を与えるとは誰も予想していなかった。
2008年の余波から、一部のアナリストは「金融の伝染」と呼ばれる現象を懸念している。これには、中国の不動産危機が中国経済の本格的な崩壊につながり、世界中の金融メルトダウンを引き起こすという悪夢のシナリオも含まれる。
米金融街ウォールストリートの投資大手リーマン・ブラザーズの破綻と、世界的な景気後退を招いたサブプライム・ローン問題との類似性は、確かに指摘したくなる。だが、オックスフォード大中国センターのマグナス氏は、これは必ずしも正確ではないと話す。
「これはリーマンショックのようなものにははならないだろう」
「中国は大手銀行を破綻させることはないだろうし、アメリカで破綻した何千もの地方銀行や地域銀行よりも、バランスシートはしっかりしている」
エルムズ氏もこの意見に賛成だ。
「中国の不動産市場は、アメリカのサブプライム・ローンのように金融インフラと連動しているわけではない。さらに中国の金融システムは、2008年のアメリカのような直接的な世界的影響を与えるほど支配的なものではない」
「我々は世界的に相互につながっている。成長の大きな原動力の一つが機能しなくなれば、他の部分にも影響を及ぼし、多くの場合、予想外の形で影響を及ぼす」
「2008年の再現になるとは思わないが、重要なのは、一見、国内的な問題に見えることが、我々全体に影響を及ぼす可能性があるということだ。我々が想像もしなかったような形になることもあるだろう」
中国の理財商品の種類と投資家のリスク許容度について
2023/09/04 神宮 健
中国の理財商品のデフォルトが報じられている。ここでは、中国の理財商品について今一度整理しておく。
中国の理財商品(資産管理商品)は、2018年以降、機能別規制の下にある。銀証保の縦割り行政の中で、シャドーバンキングにおいて、いわゆる規制アービトラージが横行したことから、「金融機関の資産管理業務の規範化に関する指導意見」(2018年4月、人民銀行、銀保監会、証監会、外為管理局。以下、指導意見)は商品を組成・販売する金融機関の業態にかかわらず同じ機能の商品・サービスには同じ規制をかけることにした。
機能分類の一つは募集方式で、公募商品か私募商品かである。なお、私募は適格投資家向けで募集人数が200人まで、また宣伝不可である。
【公募商品】
公募の理財商品としては、主に銀行の理財商品と基金管理会社(投信の運用会社)の証券投資基金(証券投資信託)がある。(なお、銀行の理財商品はほとんどが公募商品である)。両者とも一般投資家向けである。証券投資基金は以前から投資先商品(株、債券等)の市場価格で評価されており、投資家もそれに慣れている。一方、銀行の理財商品は、実際は元本割れのリスクがあったにもかかわらず長らく「銀行神話」の下で暗黙の元本保証がなされていた。2018年以降は暗黙の元本保証が禁止され、現在はほとんどの商品が基準価額商品となっている。ただし、実際は投資家が慣れているとは言い難い。昨年、発行価格割れが生じると、少なからぬ投資家が動揺したことが伝えられており、なお、投資家教育の途上である(週刊エコノミスト「銀行理財商品に市場の洗礼 投資家教育の強化も必要」2023.1.17参照)。金融当局としてはこの分野でのデフォルトは避けたいところと言える。
【私募商品】
一方、私募の理財商品には、大きくわけて①信託会社、証券会社(と子会社)、基金管理会社(と子会社)等の出している私募の商品と②私募投資基金があり、これまでもデフォルトが発生してきた。
①は金融機関の私募業務で、上述の「指導意見」が適用される。適格投資家の条件は以下の通り。(1)2年以上の投資経歴があり、かつ以下のいずれかを満たす。家計の金融純資産が300万元を下回らず、家計の金融資産が500万元を下回らない。または直近3年の本人平均年収が40万元を下回らない。(2) 直近年末の純資産が1000万元以上の法人。(3)金融管理部門が適格投資家とみなすもの(なお、信託会社については指導意見に則した関連弁法が実施されていないため、異なった条件が使われている可能性はあるが、統一される方向にある)。つまり、ある程度、資産・所得を持っている投資家が投資している(注)。
②の私募投資基金は、主に、私募股権(エクィティ)基金(PEファンド)、私募創業基金(VCファンド)、私募証券投資基金から成る。私募投資基金については専門の法律・規定を作ることになっており原則「指導意見」の適用外である。PEファンドとVCファンドはIT等の先端産業育成のため80年代から育成されたものである。一方、私募証券投資基金は2000年代に法律上の灰色地帯で発生し、その後、徐々に法律が整備され主に自主規制の下で発展してきたもので(主に自主規制機関による)、玉石混交である(拙稿「淘汰の時代を迎える中国の私募投資基金業界」(金融ITフォーカス、2023年7月号)参照)。そして、私募投資基金の適格投資家の条件は、(1)純資産1,000万元以上の会社、(2)金融資産が300万元以上あるいは直近3年の平均収入が50万元以上の個人、等である。
玉石混交ゆえ、時として詐欺事件が生じるのもこの私募投資基金である。過去数年間、日本でも、中国の投資家の取り付け騒ぎの映像が流れることがたびたびあったが、多くは私募投資基金の支払不能のケースである。中国の経済メディアも市民に対して注意喚起を続けてきた経緯がある。このため、足元ではある程度リスク許容度のある投資家が投資していると思われる。
ところで、最近、恒大の理財商品のデフォルトのニュースがあった。この理財商品は、資金調達者が地方の金融取引所に登録して直接、非公開発行する「定融商品」という私募商品と見られる(ここまでで説明してきた分類には入り難い商品である)。通常の取引所(銀行間市場など)と比べると透明度は低い。恒大傘下の恒大財富を通して投資家に販売されており、今回の支払不能の公告も恒大財富が発表している。(調達資金は、恒大集団の事業に投入されていた。なお、同商品は2年前に支払不能になり、その後は返済をリスケするなどして今日に至っている)。
このように理財商品といっても様々あり性格が異なっている点には注意を払う必要がある。
(注)信託、証券、基金会社(以下信託会社等)の私募業務はシャドーバンキングの下で大きく拡大した。2010年代、規制により銀行が直接、不動産会社や地方政府の融資平台に貸し出すことが難しくなると、銀行が信託会社等の私募商品を通じて不動産会社等は迂回融資を続けたのである。そして、このスキームを設計するのは銀行、利鞘の大部分を得るのも銀行であり、信託会社等は手数料(チャネル業務と言われる)を得ただけである。ここで利用された信託会社等の私募商品は、銀行の理財商品を唯一の顧客とするいわゆる「一対一商品」が多く、指導意見がチャネル業務を抑制する中で激減している。近年、信託の私募商品等でデフォルトが発生しているのは(当コラム「中国の信託会社の最近の状況について」2023年8月30日参照)、チャネル業務関連というよりも、信託会社等が適格投資家に私募商品を販売しているケースであろう。
参考文献・参考資料
【解説】 中国が抱える経済問題、世界に与える影響は (msn.com)
中国の理財商品の種類と投資家のリスク許容度について | 2023年 | 神宮健のFocus on 中国金融経済 | 野村総合研究所(NRI)
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