政治(金融)講座ⅴ1241「中国債への投資」
商売の基本は「人の褌」で相撲をとることであると揶揄する者がいる。他人の資金で商売をするのが資本主義社会の基本でもある。日本には創業150年とか200年と言う企業が多数存在する。日本は古来から土地所有が認められていた。創業200年の信用と蓄財が存在する。そして、明治から他人の資金による商売の拡大が図られてきた。借入(融資)には、質草(担保)が必要であり、その担保力が商人にとっての「信用」であり、返済財源は売上や利益から賄われるものであるが、売上不振などで返済不能となった場合はその担保の処分金から賄われるなどの堅実な経営がなされてきたのである。
翻って共産主義において、不動産などの所有は認められておらず国家の所有となっているが、国営企業の担保力は国家の保証はあるのか否か、国営企業はゾンビー化していると言われているほど企業の財務が悪化していると思われる。隠蔽体質から正しい財務内容が公表されていないことも信用するに値しないと言わざるを得ない。今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2683年7月31日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
世紀の取引か破滅への道か、中国債投資で日本の運用者の見解二分
Ruth Carson、Masaki Kondo、テソ由美 によるストーリー • 水曜日
(ブルームバーグ): 中国の債券市場がもたらすのは世紀の取引か、それとも破滅への道か。東京でビールを飲みながら思いを巡らす日本のベテラン運用担当者3人の姿には、世界2位である中国債券市場への参入を決める際に世界の投資家が直面するジレンマが集約されている。
竹井章氏(アセットマネジメントOneグローバル債券担当ファンドマネジャー)と樋口達也氏(三菱UFJ国際投信債券運用部エグゼクティブ・ファンドマネジャー)、下村英生氏(ファイブスター投信投資顧問シニアポートフォリオマネジャー)は少なくとも10年来の友人で、酒を酌み交わしながら金融について語り合うことを含む共通の趣味を持つが、中国債の取引に対する考え方は対極にある。
それぞれ勤務する資産運用会社3社の運用資産は計6400億ドル(約90兆3000億円)に上る。
三菱UFJ国際投信に勤続30年の樋口氏は、ほぼ世界中で金利上昇が続く中、中国が債券投資家にとって最大の投資先になるとみている。
一方、ソブリン債投資で37年の経験を持つ竹井氏は、中国債には手を出さない。その理由は、単にリスクが高過ぎるからだ。過去30年にわたりさまざまな市場に投資してきた下村氏も同じ意見だ。
竹井氏は、中国債に投資したことは自分のキャリアの中で一度もないと語る。中国の不動産問題や資本規制、西側諸国との地政学的緊張の高まりについて触れ、中国債に投資すれば資金を取り戻せない可能性があると指摘した。
一方の樋口氏はそれほど不安視しておらず、中国経済の減速ペースは世界の他の国々よりもはるかに速く、同国債に投資すればリターンが得られると予想。利回りが2%を超え、イールドカーブがより急勾配の市場は他にないとしている。
中国ジレンマ
3氏のアプローチは、世界金融における最大のジレンマの一端を浮き彫りにしている。つまり、無視できないほど巨大でありながら、中国の一部大企業を屈服させた共産党の予測不可能な意思決定や、米国との対立の影響を受けやすい市場にいかに投資するかということだ。
習近平指導部は数兆ドル規模の市場を世界に開放する一方で、国内の「無秩序な資本拡大」を抑制しようとしている。人工知能(AI)から軍事技術、台湾問題に至るあらゆる事案を巡る米中間の緊張の高まりが、このジレンマに拍車をかけている。
日本の投資家が中国に提供できるものは多い。超低金利の最後の砦(とりで)である日本は既に4兆2000億ドルもの資金を投資の世界に放っており、より高い利益をもたらす資産の取得を必要としている。問題は、リターンを確保するためにどれだけのリスクを取るつもりなのかということだ。
投資家は中国債投資で手痛い経験がある。ブルームバーグの中国債指標は昨年、ドルベースで5%下落。2016年もほぼ同じ下落率だった。特に人民元が再び圧迫されている今、15年に中国が行った衝撃的な人民元切り下げが市場で盛んに取り沙汰されている。
中国債はここ数年、世界の他のソブリン債をアウトパフォームしているが、それでも外国人投資家の市場撤退に歯止めがかからず、昨年の流出額は過去最高の6160億元(約12兆1300億円)に達した。投資家の中国債への回帰はまだ始まったばかりだ。
ファイブスターの下村氏からみて、中国投資は現時点ではあまりにも高く付き過ぎる。
下村氏は「この局面から市場に参入するかと言われると、債券市場を取り巻く法規制、完全に自由な市場でないことなどの理由を鑑みると中国市場にあえて参入しようとか、特別に強気な見方をするなどということはない」と述べた。
こうした見方に対抗するため、中国政府は外国人投資家の誘致を強化。今年に入り「互換通(スワップコネクト)」を導入し、海外投資家が本土市場の金利スワップ取引に参加できるようにしたほか、30年物国債の先物取引を開放し、期間長めの国債に対する新たなヘッジ機能を提供した。
中国は重要な資金調達手段であるレポ市場について、海外投資家のアクセスを拡大する可能性も示唆した。
中国債アウトパフォーム
ブルームバーグがまとめたデータによると、中国債は今年に入り3%余り上昇し、伸び率は世界の債券指標の約2%を上回っている。
日本から中国債券市場への資金流入はこの6年で増加。中国債がブルームバーグの「グローバル・アグリゲート・インデックス」やFTSEラッセルの「FTSE世界国債インデックス」といった世界の債券ベンチマークに採用されたことが需要を下支えしている。それでも05年以来の累積購入額はわずか1兆7600億円と、米国債の購入に投じられた額のわずか2%に過ぎないことが、日本の国際収支データから読み取れる。
樋口氏は中国債について、利回りがさらに低下する可能性があり、概して投資に非常に適していると分析。中国の債券市場では、デュレーションリスクをはるかに取りやすいと述べた。
しかし、竹井氏は目先のパフォーマンスより、顧客の長期的な利益を守る方が重要だと考えている。同氏が特に警戒しているのは、「ゾンビ企業」と債務不履行がまん延する中国の不動産市場だ。
中国の堅調な経済がどこから来るのか、特に債務との関係で想像するのは極めて難しいと、同氏は語った。
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グローバル投資家、中国債に本格回帰か-6月は2カ月連続で買い越し外国勢、香港経由で中国の金利スワップ取引可能に-「互換通」始動期待外れの中国経済、習指導部も打つ手なし-米中逆転はない可能性も
原題:Friends Who Help Manage $640 Billion Clash on China Bonds (1)(抜粋)
(市場関係者のコメント詳細を加え、記事を更新します)
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©2023 Bloomberg L.P.
期待外れの中国経済、習指導部も打つ手なし-米中逆転はない可能性も
Bloomberg News
2023年6月30日 11:47 JST
地政学が焦点となった今、米中逆転はほぼ確実に遅れる-BE
「ベース効果」差し引くと23年の中国成長率は3%に近い可能性
2023年は、世界一厳しい新型コロナウイルス規制から解き放たれた中国経済が、世界の成長エンジンとしてその力を発揮する一年になるはずだった。
だが、23年も半ばを過ぎようとしている今、中国経済は多くの問題に見舞われている。個人消費の低迷や危機的な不動産市場、輸出不振に加え、若年層の失業率は20%を突破し過去最悪を更新。地方政府の債務も膨らんでいる。こうしたひずみは世界中に波及し始めており、商品相場や株式市場などあらゆる面でその影響が見られる。
インフレ抑制を図る米連邦準備制度の利上げで米国がリセッション(景気後退)入りするリスクもあり、世界1、2位の経済大国が同時に低迷するとの見通しも強まっている。
さらに悪いことには、中国指導部は状況を好転させる大きな選択肢を持ち合わせていない。
大型の景気刺激策で需要を押し上げるという中国政府がこれまで採ってきた典型的な手法は、不動産や産業における大規模な供給過剰を招き、地方政府の債務残高を急増させている。
そのため、約30年にわたり前例のない経済成長を遂げた後、沈滞から抜け出せなくなった日本のような状況に、中国も陥るのではとの議論も浮上。
これに拍車をかけているのが、中国共産党の習近平総書記(国家主席)が取る米国と対決スタンスだ。将来の経済成長をけん引するはずの先端半導体やその他テクノロジーの供給から中国を切り離そうとする米国の動きが強まっている。
こうした力学を踏まえれば、中国経済の成長が今年は期待外れに終わるばかりではなく、経済規模で米国を追い越そうという中国の勢いもそがれる可能性がある。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のチーフエコノミスト、トム・オーリック氏は「数年前までは、中国がハイペースで米国を追い抜き、世界最大の経済大国にならないとは考えにくかった」が、「地政学が焦点となった今、米中逆転はほぼ確実に遅れるだろうし、全く起こらないシナリオも想像し得る」と述べる。
BEは不動産不況の深刻化や改革ペースの遅れ、米中デカップリング(切り離し)の劇的な進展といった下振れシナリオでは、中国の成長率は30年までに3%まで減速するとみている。
「ベース効果」
中国政府が3月に示した今年の成長率目標(5%前後)は、発表時は控えめとみられていたが、今では現実的に思える。ゴールドマン・サックス・グループは6月、今年の中国成長率予測を6%から5.4%に引き下げた。
世界経済の成長率が2.8%と予想される中で、一見するとそれほど悲観的な数字ではない。しかし実際には中国は22年もロックダウン(都市封鎖)など厳格なコロナ対策を続けていたため、今年の比較対象となる昨年の水準は低い。
こうした見かけ上、成長率を押し上げるいわゆる「ベース効果」を差し引くと、23年の成長率はパンデミック前平均の半分にも届かない3%に近くにとどまるとBEは想定している。
政府がこのまま手をこまねいていれば、事態がさらに悪化する恐れもある。不動産建設が急減し、土地売却収入が減少して公共財政に打撃を与え、米国のリセッションで世界需要が弱まり、中国市場が「リスクオフ」モードに移るというシナリオでは、BEの予想モデル「SHOK」は成長率がさらに1.2ポイント下がることを示す。
「中国は今、工業化からイノベーションに基づく成長への移行期にある。イノベーションを基盤とする成長はそれほど速いペースではない。中国の経済成長が今後さらに鈍化していくことに備える必要がある」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスの金刻羽教授(経済学)は話している。
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原題:China’s Economic Woes Are Multiplying and Xi Has No Easy Fix (抜粋)
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