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やさしい法律講座ⅴ17 副題 利益相反行為

謹賀新年

今年は劇的に世界の政治情勢が変化する分岐点となる年であろう。

政治に無関心でいると、今、世界で何が起きているかが理解できない。そして、今後、その変化がどの様に社会・経済・防衛軍事に変化をもたらし、国民生活に重要な負担と犠牲、そして、基本的人権まで侵害されてくることに気付かない。

平和ボケで、権利が侵害された事に気付いてからでは遅いのです。魔の手が迫っているのです。

さて、表題の利益相反行為利益相反取引は通常の取引や相続の親権者(法定代理人)が往々にして陥りやすい事柄である。日常生活には出ない法律用語ですが、ビジネスパーソンには失敗を防止するためにも今回の講座は有意義となろう。

                            2021.1.1

                         さいたま市桜区

                            田村 司

はじめに

利益相反(りえきそうはん)とは、職務を行う地位にある人物が立場上の追求すべき利益・目的(利害関心)と、その人物が他にも有している立場や個人としての利益(利害関心)とが、相反している状態(片方の立場が有利になると別の立場が不利になる)をいう。

このように利益が相反している場合、地位が要求する義務を果たすのは難しくなる。

利益相反は、そこから非倫理的もしくは不適切な行為が行われなくても存在する。

利益相反は、本人やその地位に対する信頼を損なう不適切な様相を引き起こすことがある。一定の利益相反行為は違法なものとして扱われ、法令上、規制対象となる。また、法令上は規制対象となっていない場合でも、倫理上の問題となる場合があり得る。

このように、利益相反行為とは、複数の当事者がいる場合における、一方の利益となり、かつ他方の不利益となる行為のことです。契約実務においては、利益相反行為は、意外と問題となることが多く、注意しなければならない概念です。自己のためではなく、他の者のために行動をする場合は、常に利益相反行為に該当する可能性を考慮に入れて行動する必要がある。

具体的には、利益相反行為は相続のときに発生しやすい。遺産分割協議書のとき、親権者と親権に服する子との間で利益が相反する場合である。数人の子に対し親権を行う父母が複数人の子をそれぞれ法定代理する場合にもその複数の子の利益相反となる。このときは、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しその特別代理人を相手にして父又は母は法律行為をしなければならない。

民法826条(利益相反行為)

「親権を行う父又は母とその子と利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利害が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」

親権者が無償で親権に服する子に贈与する場合には利益相反にならないから、親権者は一面、自分個人という資格と他面、子の法定代理人という資格で、お手盛りの取引をすることが許される

民法851条(後見監督人の職務)

「・・・

後見人又はその代表する者被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。」  「その代表する者」・・後見お職務を分掌してその代表となる者

民法860条(利益相反行為)

826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合はあこの限りでない。」・・・特別代理人を選任するが後見監督人がいれば後見監督人が代理行為をすることになる。

民法876条2(保佐人及び臨時保佐人の選任)

「・・・

保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は臨時保佐人の選任家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合はこの限りではない。」

民法876条7(補助人及び臨時補助人の選任等)

「・・・

3補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は臨時補助人の選任家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、補助監督人がある場合はこの限りではない。

民法108条(自己契約及び双方代理等)

同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りではない。

2前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りではない。

以下は、ビジネスパーソンには必読の条文である。

会社法第356条(競業及び利益相反取引の制限)

「取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。」

会社法第419条(執行役の監査委員に対する報告義務等)

「執行役は、指名委員会等設置会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに、当該事実を監査委員に報告しなければならない。

2 第355条、第356条及び第365条第2項の規定は、執行役について準用する。この場合において、第356条第1項中「株主総会」とあるのは「取締役会」と、第365条第2項中「取締役会設置会社においては、第356条第1項各号」とあるのは「第356条第1項各号」と読み替えるものとする。

3 第357条の規定は、指名委員会等設置会社については、適用しない。」

会社法第594条(競業の禁止)

「業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

一 自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること。

二 持分会社の事業と同種の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

2 業務を執行する社員が前項の規定に違反して同項第1号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって当該業務を執行する社員又は第三者が得た利益の額は、持分会社に生じた損害の額と推定する。」


会社法第595条(利益相反取引の制限) 

「業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

一 業務を執行する社員が自己又は第三者のために持分会社と取引をしようとするとき。

二 持分会社が業務を執行する社員の債務を保証することその他社員でない者との間において持分会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項各号の取引については、適用しない。」

一般財団法人第84条(競業及び利益相反取引の制限)

 「理事は、次に掲げる場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 理事が自己又は第三者のために一般社団法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 理事が自己又は第三者のために一般社団法人と取引をしようとするとき。

三 一般社団法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において一般社団法人当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法(明治29年法律第89号)第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。」

学校法人やNPO法人、医療法人では、法人と理事の利益が相反する事項に関して理事は代理権を有しておらず、この場合、所轄庁や都道府県知事が特別代理人を選任しなければならない(私立学校法第40条の4、特定非営利活動促進法第17条の4、医療法第46条の4)。その他の法人に関しても、これらと同様の制限が存在する。

承認を得ない自己取引の効力の諸説

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