政治(金融・経済)講座ⅴ1987「中国人民元の国際化?まだ意識は発展途上国!」
GDP世界2位と言われた中国の惨状は、今や不動産バブル崩壊に伴う地方政府の財政破綻の過剰債務・税収不足など阿鼻叫喚の状態にある。
そして中国から脱出する海外企業だけでなく自国の企業も脱出を試みている。推測であるがそのような産業・経済の趨勢を考慮すると日本のGDP以下に落ちていると思われる。
そして、未だに発展途上国としての貿易の優位性を手放そうとしない。「中国は最大の発展途上国だ」と言ったとたん、みな笑い出す。そのような中国が「中国人民元の国際化」ということ自体が笑止千万である。都市と農村の格差を少なくする政策が優先されるべきことであろう。
中国の格差社会のために「共同富裕」を掲げた習近平氏の主張も理解できるが、世界に覇権主義を公言して微笑外交から戦狼外交と政策変更して、近隣諸国への領海侵犯などをして、威嚇などの攻撃的な軍事行動をすることは自分の首を自分で締め付けているようなものである。中国はやっていることは整合性がなく、バラバラ政策である。盛者必衰の理、崩壊の兆しを感じるのは吾輩だけであろうか。
今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2684年10月26日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
報道記事紹介
コラム:中国人民元の国際化、資本管理の「長城」がハードルに
By Chan Ka Sing
2024年9月28日午前 7:49 GMT+91ヶ月前更新
オピニオンChan Ka Sing
[香港 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の習近平国家主席が目指しているのは、覇権通貨ではなく強い人民元だ。基軸通貨である米ドルの座を奪いたいわけではなく、人民元が国際的な決済や中央銀行の準備通貨としてより広く利用されるべく努めている。その試みはある程度進んでいるが、前途は長い。中国が厳格な資本管理を望んでいることが大きな、そして政治的に厄介なハードルとなっている。
習氏は昨年10月の金融当局者とのハイレベル会合で、中国を「金融大国」にしたいという野望を初めて明らかにした。
その実現に向けて、習氏は強力な通貨を筆頭に、いくつかの重要な要件を挙げた。
一見すると、これはグローバルな金融システムでのドルの支配的な役割に対する挑戦に映るかもしれない。
確かに中国国営メディアは、米国が自国通貨を利用してロシアなどの敵対国に制裁を科していることを批判し、「ドル覇権」への攻撃を強めている。
米国の一部政治家でさえ、「脱ドル化」の脅威を懸念する声を上げ始めている。
今年11月の米大統領選の共和党候補であるトランプ前大統領は最近、ドルを敬遠する国からの輸入品に100%の関税を課す可能性をちらつかせた。
このような発言は、米中間の地政学的および貿易上の緊張の高まりを反映している。
しかし、厳しい言葉が全てを物語っているわけではない。習氏が奮闘しているのは中国を金融大国にすることであり、超大国にすることではない。
習氏は昨年11月にサンフランシスコを訪問した際、アップル(AAPL.O), opens new tabのティム・クック最高経営責任者(CEO)やテスラ(TSLA.O), opens new tabのイーロン・マスクCEOらに「中国は米国に挑戦するつもりも、追い落とすつもりもない」と述べた。以来、中国の外交官らはこの言葉を繰り返し唱えている。
少なくとも現時点では、「強い人民元」という目標にも同様の戦略が適用されているようだ。
国際金融における影響力という点で中国が米国に大きく遅れを取っていることが、その一因となっている。
米国の国内総生産(GDP)は世界全体の約25%だが、中国人民銀行のデータによると昨年の国際決済のほぼ半分はドル建てだった。また、中銀の外貨準備の60%弱をドルが占めている。
これに対し、中国は金融の超大国とは言い難い。中国は世界のGDPの15%超を占め、世界最大の輸出国でもあるが、中国人民銀行のデータによると人民元は国際決済の5%未満、外貨準備高の2%強にとどまっている。
人民元の実際の強さはどの程度だろうか。中国人民銀行は人民元レートの安定を図っているが、対ドル相場はここ数年揺れ動いている。米連邦準備理事会(FRB)が2022年3月に利上げを開始して以来、人民元はドルに対して3%余り下落したが、FRBの利下げ観測が強まった今年7月以降は2.5%近く反発した。FRBは今月に利下げを発表した。
中国人民銀行が24日、新型コロナウイルスのパンデミック以来で最大の金融緩和策を発表したことから、人民元は25日に対ドルで上昇。16カ月ぶりに1ドル=7元を割り込んだ。米利上げサイクル直前の22年3月22日には、人民元は1ドル=6.4元で取引されていた。
ドルの王座は、当面安泰のようだ。
しかし、中国は各国、企業、中銀に対し、人民元利用拡大の働きかけを強めている。そのために地域および多国間での協力を推進しており、例えばブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカが主導するBRICS各国に対して、貿易および投資において人民元を含む現地通貨の利用を促進するよう呼びかけている。
今年5月には、国際通貨基金(IMF)の元副専務理事で現在は中国政府の顧問役である朱民氏が、全ての国に利益をもたらす「新たなブレトン・ウッズ体制」を提唱した。
ドルの特権的通貨としての地位を確立した1944年のブレトン・ウッズ会議合意への、あからさまな当てつけだ。
その一方で、中国は新たな金融インフラを構築している。2015年には「人民元クロスボーダー支払いシステム(CIPS)」を立ち上げ、人民元建ての貿易を上海で決済できるようにした。その最終目標は、ドルが支配的な地位を占める国際銀行間通信協会(SWIFT)のメッセージングシステムおよび米国の銀行間決済システム(CHIPS)に対抗することだ。
10年前にほぼゼロだったCIPSの1日当たり利用額は現在では600億ドルに急増しているものの、米CHIPSの1兆8000億ドルには遠く及ばない。
中国はデジタル通貨やコモディティー取引における人民元の役割拡大にも取り組んでいる。
中国人民銀行によると、2015年にはコモディティーの国際決済における人民元の利用は実質的にゼロだったが、昨年1─9月は約1兆5000億元相当が人民元建てで決済された。
しかし、人民元の国際化にとって最大の障害は、資本移動に対する中国の閉鎖的な政策だ。
中国政府は資本流入・流出を厳しく管理しているため、人民元は完全に交換可能ではない。
つまりグローバルな外国為替市場で自由に取引されていないため、国際的なユーザーにとっての魅力は大きく劣るということだ。
1993年、中国は2000年までに資本管理を完全に撤廃する計画を発表した。しかし、97年のアジア金融危機により、この計画は頓挫した。また2015年には、株式市場の暴落を受けて資本流出を防ぐため、資本移動自由化の取り組みが凍結された。
この2つの事例は統制経済の中国で、国家安全保障が金融市場の発展より優先されることを物語っている。世界における人民元の利用が拡大し続ければ、中国政府は資本流出に対してもっと寛容になれるのかもしれない。しかし皮肉なことに、資本管理こそが人民元の大きな足かせとなっているのだ。
完全に交換可能でない限り、人民元の完全な国際化は達成できない。人民元は将来的には、中国の国際貿易での役割を反映して世界で広く利用されるようになるのかもしれない。
しかし、現状のまま人民元国際化の努力を進めれば、ある時点で再び、閉ざされた資本勘定という「万里の長城」にぶつかって挫折する定めだろう。
●背景となるニュース
*中国の習近平国家主席は2023年10月、中国が「金融大国」を目指すべきだとの考えを初めて示し、そのためには「強い通貨」が必要だと述べた。
*SWIFTのデータによると、今年7月に人民元は金額ベースで世界4位の決済通貨で、シェアは4.7%だった。ドルのシェアは47.8%。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
中国がGDP世界第2位の自国を「まだ発展途上国だ」と主張する根拠
2021.12.24 by 『黄文葦の日中楽話』
ごく近い将来にアメリカを抜いてGDP世界第1位の経済大国になるとも言われる中国ですが、彼らは発展途上国という「地位」を手放すつもりはないようです。今回のメルマガ『黄文葦の日中楽話』では、2000年に来日し現在は日本に帰化されている中国出身の作家・黄文葦さんが、中国が自国を発展途上国であると主張する根拠を列挙。その上で日中両国に対する、厳しくも真摯な提言を記しています。
中国は開発途上国を卒業したくない?
欧州連合(EU)、英国、カナダなど32カ国が、12月から中国を開発途上国と認めて付与していた一般特恵関税制度(GSP)を廃止する。中国はすでに2014年にスイス、2019年に日本、今年10月12日にはユーラシア経済連合(EEU)のロシア、カザフスタン、ジョージアからGSPを中断されている。これに伴い、世界最大の開発途上国を自任してきた中国政府の貿易戦略に修正が避けられなくなった。
また、中国内の低賃金労働集約的輸出企業の海外移転も早まりそうだ。現在、中国製品は世界的に高い競争力を持っているため、一般特恵関税制度(GSP)を廃止する動きが中国企業の輸出に大きな影響を与えることはないだろう。
そういえば、今、世の中、普通の視線から見れば、中国はもはや「開発途上国」ではないだろう。ハイスピードで経済を発展させてきて、外交・軍事・宇宙開発の面では、強国・大国のような振る舞いを見せているようだ。しかし、中国国内の人たちに「中国は開発途上国ですか」と聞いてみたら、「国際的には先進国、国内は発展途上国」と言われた。
昔から学校の教育では、自国は「第三世界」に属すると教えられている。第三世界とは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの発展途上国で構成されている。この「第三世界」には、概ね政治的な意味を持つようなもの。アメリカとソビエト連邦は「第一世界」であった。昔から、中国政府は自国国民に対し、「我が国はまだ弱い」「他国にいじめられてばかりだ」「中国は強くならなければいけない」と言い続ける傾向が顕著である。
中国にとっては、「開発途上国」から卒業したくない思惑があるようだ。言うまでもなく、現在、中国のマスコミは「中国はまだ発展途上国だ」という意見で一致している。
中国側の言い分としては、中国の一人当たりの所得水準は、世界銀行の「低所得」および「低中所得」の基準、すなわち一人当たりのGDPが4,045米ドル未満である「救済基準」を超えているとはいえ、米国の6分の1、EUの4分の1に過ぎず、世界平均の一人当たりのGDPは10,954米ドルに達したが、中国は10,839米ドルと、まだその「合格点」に達していない。
もう一つは、産業構造の割合で、先進国では第三次産業が全体の7割を超えるか、それに近い割合であるのに対し、中国は半分強に過ぎない。しかも、まだ貧しい地域や貧しい人々はいる。よってまだまだ発展途上国だという。
欧州連合(EU)、英国、カナダなど32カ国が、12月から中国を開発途上国と認めて付与していた一般特恵関税制度(GSP)を廃止することについて、中国マスコミの反応としては、「中国に対する関税優遇措置を撤廃することは世界銀行の方針に沿ったものだが、中国を牽制する意図が全くないとは言い切れない。いわゆる『人権』問題、中国への内政干渉、台湾に関する問題について、EUがこれまでに取ってきた行動を見てみると、アメリカに劣らず激しいものがある」。
アメリカのトランプ元大統領は、在任中かつて「世界最大の発展途上国」と評される中国に矛先を向けた。中国のGDPは世界第2位、商品の輸出額は世界第1位、世界のトップ500企業のうち120社が中国にあることを指摘し、「中国はもはや発展途上国とは言えない」と主張した。ただし、中国政府はこれに強く反論し、中国にはまだ農村地域の貧困があることを指摘し、発展途上国としての立場を維持することを表明した。
「中国は最大の発展途上国だ」
中国は超大国とは言えても、発展途上国だなんて謙遜して言うのは、ちょっとユーモラスであると考えるのである。
笑う彼らは無知なわけではなく、長く世界中を歩き回り、欧米の先進国のみならず、アジア・アフリカ・ラテンアメリカなどの発展途上国にも行ったことのある人ばかりで、当然中国のいろんな場所にも行っている。
中国が与える印象とは、東部にある北京・上海であっても西部にある重慶・西安などの都市であっても、欧州の大都市よりも立派な建物が建ち並び、都市生活の利便性も先進国に匹敵するというものだ。
長年、中国の経済は急速に成長し、米国に次ぐ世界第二位の経済大国となり、騰訊(テンセント)・華為(ファーウェイ)・アリババなどの多くのハイテク企業を擁している。
さらに、欧米メディアの中米貿易紛争に関する最近の報道の中では一般的に、中国は急速に興起した「先進国」であり、長年世界のトップであり続けた米国の地位を脅かそうとしていると描写されている。
今年はちょうど新中国成立75周年にあたり、中国の発展が大きな成果を得ているのは間違いないが、欧米の先進国に比べると中国は今のところやはり発展途上国であり、まさに「船が川の中流に差し掛かると波が急に荒くなり、人が山の中腹に差し掛かると急に険しくなる」というような時期にあって、先進国になるにはいまだ遠い道のりがある。
まず、発展がアンバランスで、都市と農村との二重構造が特に顕著である。中国の現在の都市化率は58%で、先進国の80%前後というレベルよりも低い。中国の都市と農村部の住民との所得格差は大きく、都市部住民の可処分所得は農村住民の2.7倍であり、都市部住民の一人当たりの消費支出は農村住民の2.2倍となっている。都市と農村のインフラや公共サービスの差も顕著である。
前述の欧州の友人たちが行ったことのある中国の地方を例にとると、彼らは中国の都市あるいは観光ポイントを押さえてはいるが、中国の農村に行ったことのある人はほとんどおらず、ましてや貧しい辺境地帯に行ったことのある人はいない。貧しく立ち遅れている地方には道路もないため、彼らは行くことができない。中国の農村の貧困脱出のスローガンに、「豊かになりたかったら、まず道をつくりなさい」というものがあるが、中国は道路建設の上で比較的大きな進展を得ているとはいっても、道路の総距離や密度はいまだに低い。2017年、中国の道路密度は一平方キロメートルあたり0.51㌔で、ドイツの数字は一平方キロメートルあたり5.8㌔にも達している。ポーランドでは一平方キロメートルあたり2.7㌔で、インドでも一平方キロメートルあたり1.8㌔に達している。
衛生施設を例にとると、インド映画『Toilet:Ek Prem Katha』では、農村にはふつうトイレがないという現状が描かれている。中国の農村も同様の問題を抱えている。中国の農村の衛生施設建設レベルの低さはトイレで示すことができる。中国では2015年から、「トイレ革命」がスタートし、3年余りの間に7万カ所ものトイレが改造・新設された。
それでも中国の農村で衛生的な便器を使用している割合は36.2%に過ぎず、くみ取り式トイレを使っているのが58.6%、トイレがない家もいまだ469万戸あり、2.0%を占めている。
同様に飲用水・病院・通信施設などの方面で、中国の農村には大いに改良の余地がある。
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