政治講座ⅴ1996「米国の対中投資規制で中国は『共同富裕』ではなく『共同貧困』へ」
旧ソ連の経済統計には捏造や事実の隠蔽が多数あったことが旧ソ連の崩壊で暴露された。
今の中国共産党の経済指標・経済統計は旧ソ連と同様に捏造や事実の隠蔽があると李 克強首相自ら語っていた。
中国に投資することはどぶに金を捨てるようなものである。米国上場の中国企業の財務も同様に粉飾会計が為されているようである。中国の人口14億人(最近13億と言われている)が作り出す需要に魅力を感じている者が多いが、「有効需要」という考え方があり、つまり、需要があっても買う金がない(所得が少ない)とそれは有効需要と言わない。
中国共産党は人民の所得を増やすなどの政策をとってこなかったためである。
鄧小平の富める人からさきに富んで下々の徐々に裕福にしていくという構想を立てていた。しかし、そのようにはならなかった。事業家と中国共産党員だけが裕福になり、貧富の格差が開いてきたのである。
鄧小平の有名な言葉のひとつに、「先富論」がある。「豊かになれる条件を持った地域、人々から豊かになればいい」という方針であったが、これが「貧富の差」を拡大した。
そして中国は外資導入や技術導入をしながら、国内企業を優先するように豹変してきたのである。
今回はそのために米国の逆鱗に触れて対中投資規制を始めたという報道記事を紹介する。
蛇足であるが習近平氏は鄧小平の「先富論」政策の失敗を是正するために打ち出した政策は「共同富裕」であるが、今の中国経済不振から人民は「「共同貧困」の奈落に堕ちたように思えるのである。中国はGDP世界2位であると豪語しているが、まだ開発途上国の優遇の特権を手放さないのである。貧困の人民を抱えながら微笑外交から戦狼外交に豹変して近隣諸国に脅威を与える覇権国家に落ちぶれてしまった。
皇紀2684年11月1日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
「中国版シリコンバレー型資金調達モデル」とは?
現状、中国のインターネット市場からは海外企業は実質的に締め出されており、国内企業は保護されている。
このため競争が激しくならず、収益力が高まりやすい。
そのため、中国ベンチャー企業は、高バリュエーションが付与されやすい。
弱い経済メカニズムだからこそ生き残れる高バリュエーションの中国企業に海外から資金が集まれば、結果的に中国の外貨調達に大きく貢献することになる。
そこに中国の粉飾体質が合わされば、調達できる金額は飛躍的に増加する。鎖国による利益のかさ上げを糧とした中国版シリコンバレー型資金調達モデルといえる。
だが、国の保護下で1980年代に盛隆を極めた日本の内需型産業が、その後のグローバル競争のなかで苦戦を強いられたことは中国政府も熟知しているだろうが、「ネット鎖国」といわれている中国企業が、グローバル化の波に晒された際、生き残れるかは不透明だ。
それでも何だかんだ言い訳をしながら、経済開国を先延ばしすることに違いない。
過去とは異なり、今後はアメリカが中国の経済開国の先延ばしに対して、どのようなスタンスで臨むのかが注目される。その結果が次の報道記事に続くのである。
バイデン氏、対中投資規制を最終決定-半導体やAIなど先端技術分野
Mackenzie Hawkins によるストーリー
(ブルームバーグ): バイデン米政権は、米国の個人および企業による中国の先端技術への投資を制限する規制を最終決定した。半導体、量子コンピューティング、人工知能(AI)などが対象となる。
1年余りの審議を重ねて策定された同規則は、これらの産業への投資の一部を禁止するほか、その他の投資については米政府への通知を義務付けている。米国の資本とノウハウが中国に軍事的優位性をもたらし得る重要な技術の開発支援につながらないようにすることを目的としている。
米財務省のポール・ローゼン財務次官補(投資安全保障担当)は28日のプレスリリースで「経営支援や投資・人材ネットワークへのアクセスといった無形の利益を含む米国の投資は、資本移動を伴うことが多いが、懸念国の軍事力、諜報(ちょうほう)力、サイバー能力の発展を支援するために利用されてはならない」と述べた。
来年1月2日から発効する最終的な枠組みは、6月に発表された提案とほぼ一致しているが、規則の技術的枠組みと米政府のコンプライアンスを巡る期待をさらに明確化している。
例えば、政府高官によると、同規則は先進的な半導体技術に重点を置く中国企業への米国の投資を禁止しているが、幅広い電子機器に不可欠な旧型の「レガシー半導体」に重点を置く中国企業への投資については通知のみを義務付けている。
米国はすでに先進的な半導体の対中輸出を制限しており、今回の規則は既存の貿易規制を補完するものとして設計されている。
一方、AI投資に関する規制については、問題になっているAIシステムのトレーニングに使用される計算能力とその使用目的の両方に左右される。規則では米国の個人および企業が軍事用途に特化した中国のAI企業の株式を取得することを禁止する一方、他の用途のAIモデルへの投資は禁止または通知義務の対象となる可能性がある。
上場証券や一部のLP(リミテッド・パートナー)投資など特定の資本移動には適用除外がある。当局者によれば、今回の規則はおおむね、ワシントンを拠点とするシンクタンク、セキュリティー・新興技術センター(CSET)の2023年の報告書で特定されたような投資パターンを把握することを目的としているという。
この報告書によると、15年-21年の間に中国AI企業との世界的な投資の17%に米国人が関与しており、これらの取引のうち、およそ10件中9件はベンチャーキャピタル段階のものだった。
原題:Biden Finalizes Curbs on US Investment in Chinese Chip, AI Tech(抜粋)
「先富論」の解説
1985年頃から中国共産党中央顧問委員会主任鄧小平が唱えた改革開放の基本原則を示すものである。
「我們的政策是譲一部分人、一部分地区先富起来、以帯動和幇助落伍的地区、先進地区幇助落伍地区是一個義務。」
※字体は日本語の漢字
(我々の政策は、先に豊かになれる者たちを富ませ、落伍した者たちを助けること、富裕層が貧困層を援助することを一つの義務にすることである。)
鄧小平が先富論を唱えた後、1990年以降中国では年率二桁を超すことも珍しくない猛烈な経済成長を遂げる。
ボストン・コンサルティング・グループの調査によると中国の流動資産100万ドル以上の超裕福層は2013年に約240万世帯まで増加している。
また、1990年には1000万人程度しかいなかった中間層も2010年には6億人を超えており、一定の成果を上げている。
しかし、「幇助落伍」は不十分であり、未だ取り残されている国民の約半数の低所得層への対策が今後の課題と言え、李克強首相はその対策としてリコノミクスを提唱していた。
リコノミクス(Likonomics / Liconomics)とは、中華人民共和国の李克強(Li Keqiang)が第7代国務院総理(首相)在任中に掲げた経済政策を指す言葉である。
中国経済を高度成長から安定成長に軟着陸させるために短期的な景気刺激策を避け、レバレッジを抑制し、構造改革を行うという政策。
バークレイズ・キャピタルが2013年6月のレポート内で命名した。
レーガノミクスと共通点が多いとされる。
7月には中国経済網が発表した2013年上半期の中国経済10大流行語にランクインした。
先述のレポートは経済学の博士号を持つ李克強が習近平政権において経済政策を主導するであろうという仮定のもとに書かれたものであったが、実際には中国共産党における経済政策を指導する中央財経領導小組会議(英語版)議長を務める習近平が主導したこともあり、結果としてリコノミクスという言葉は定着しなかった。
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