政治講座ⅴ1232「中国共産党の伝統芸の大粛清か、中共の権力闘争の始まりか」
都合の悪いことは隠蔽・隠蔽の2文字である。だから科学にしても社会にしても欠点を改善せずに、進歩しないのが隠蔽社会の中国である。外交にしても人事にしても密室であり、隠蔽体質を体現したのが中国外相の解任劇であろう。中国大陸の各王朝の歴史を俯瞰すると「権力」を脅かす有能な人材は潰すという粛清が行われる。権力闘争の一端でもある。中国の権力者には品格・風格にかける小心者が権力の座を守るためだけに粛清を行う。今回もそのような一端を垣間見せる報道記事を紹介する。
皇紀2683年7月29日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
秦剛は監獄に?習近平「大粛清時代」の幕開け、ロケット軍でもスパイ探しか
福島 香織 によるストーリー • 5 時間前
秦剛外相の解任だけではなく、習近平国家主席による「大粛清」が始まっているとの見方が出ている。
ロケット軍内部でも幹部の連行や自殺、取り調べといった噂が相次いで流れている。
米国への機密情報漏洩などが疑われているとも言われ、米中関係は危うさを増している。
(福島 香織:ジャーナリスト)
秦剛はどこ行った? 秦城だ!
などという不謹慎なざれ言をネットで見かけた。秦城とは北京郊外にある秦城監獄のことだ。クーデター未遂で失脚した薄熙来が服役した場所も秦城である。2006年の上海市社会保険基金横領事件の主犯で、上海のテレビ局の女性財経記者と不倫して隠し子を持ったことも暴露され失脚した元国家統計局長の邱暁華も秦城監獄に服役した。この時も現役閣僚の突然の失脚は大きな衝撃だった。だが、現役の外相・秦剛の突然の解任はさらに大事件だ。
7月25日の全人代常務委員会で秦剛の外相解任が審議、可決され、発表された。解任理由はまだ明らかにされていない。国務委員の職位がまだ保留になっており、肝硬変や脳梗塞などの突発的な病気の可能性も取りざたされているが、仮に何かの罪を犯したということになれば、やはり秦城に服役することになるのだろうか。
笑い話で済まされないのが、今後の外交部の機能問題だ。通常なら馬朝旭外務次官あたりが外相に昇進するところを、外相より上の地位にある政治局委員の王毅が,下部職位の外相を兼務することになった。「返り咲いた」という表現を使うメディアもあったが、すでに指導部入りした王毅にとっては本来する必要のない部下の仕事を引き受ける羽目になったのだ。
なぜ馬朝旭に任せられないのか。彼が無能だから? それとも、秦剛の部下の馬朝旭に関与の疑いがかけら可能性も残っているのか? 王毅に外相を兼務してもらわねばならないほど、外交部は人材が逼迫しているのか?
実はこうした異常事態の発生は外交部だけではない。ほぼ同時期に解放軍ロケット軍でも起きている。
軍内部の粛清の噂に解放軍は沈黙したまま
7月始めごろ、元解放軍海軍司令部出身の在米華人評論家の姚誠がツイッターで、中国の戦略ミサイル部隊であるロケット軍の司令、李玉超上将が6月26日午前、突然、会議を開いている途中から連行されたという情報を投稿した。さらに香港紙などからロケット軍の副司令、呉国華が7月6日に自殺したという情報が流れた。その他の副司令を含む10人前後の幹部も取り調べを受けているという情報も流れた。
それ以前の5月下旬、香港紙明報がロケット軍内で粛清が広がっていると報じていた。4月、中央軍事委員会連合参謀部副参謀長の張振中中将と彼の後任としてロケット軍副司令員についていた劉光斌が逮捕され、取り調べを受けているのだという。2人はともに技術軍官出身で権力闘争には無縁と見られていたのだが。
姚誠は2016年に米国に亡命し、今も解放軍内部の豊富な人脈を持っているとされ、ときおり解放軍内部の暴露話をネットに投下する。与太話も混じるが、信憑(しんぴょう)性の高い情報もあり、香港や台湾メディアの裏取りと合わせると、今のところ、ロケット軍内で幹部が次々と取り調べを受けていることは事実らしい。だが、その原因については不明だ。
姚誠は李玉超が連行された原因について、李玉超の息子が米国に留学しており、その息子経由で軍内の情報が米国に売られた可能性がある、と語っていた。ちなみに6月末のロケット軍における幹部昇進式に司令の李玉超は欠席しており、今もその動静は不明だ。
ロケット軍副司令の呉国華は7月6日、北京の自宅で首をつって自殺したと香港メディアで報じられた。台湾のネットメディアは「解放軍内部筋によれば、呉国華は自殺ではなく、脳溢血で死亡した」と報じた。一部で「スパイ容疑をかけられて憤死したのでは」とささやかれた。さらに明報は、解放軍の通信情報の諜報や電子戦などの全権を負う、戦略支援部隊司令の巨乾生がこのロケット軍を舞台にした異変に関与しているとして取り調べを受けている、と報じていた。
この軍内粛清の情報については、解放軍は公式に言及していないが、噂だ、フェイクニュースだと、否定する発言もしていない。中国のメディア、SNSではこの件に関する情報は削除されている。
軍内部にスパイがいる?
ロケット軍は元解放軍戦略ミサイル部隊(第二砲兵部隊)。習近平の軍制改革の第一弾として2015年にロケット軍に改名、正式に軍種として昇格した。このとき、宇宙空間やサイバー空間での諜報防諜作戦を担う戦略支援部隊や陸軍司令部も創設された。これら新たな軍種の司令は習近平人事だ。台湾武力統一作戦において主要な役割を果たす独立軍種のロケット軍の初代司令は習近平お気に入りの魏鳳和上将で、前国防部長。だが、一部ではすでに退役した上将の魏鳳和も取り調べを受けているという情報が流れた。
仮に、本当にこのロケット軍内でありえないような粛清の嵐が吹き荒れているとしたら、原因は何なのか。李玉超の息子のスパイ容疑の噂の前から、粛清は始まっていたようなのだ。
一つの推測は、ロシアのワグネル・プリゴジンの反乱未遂を見て、習近平が改めて解放軍の反乱をおそれて、内部の不穏分子狩りを再開したからではないか、と言われている。ただ対象が、陸軍ではなく戦略ミサイル部隊というのが不思議だ。これまで解放軍内で政変未遂を起こしてきたのは、だいたい陸軍で遼寧派閥系だった。
もう一つの推測のヒントは、昨年秋、米空軍大学傘下の中国航空宇宙研究所(CASI)が発表した中国ロケット軍に関するリポートだ。255ページに及ぶこのリポートでは、ロケット軍の組織構成や指揮官、幹部の姓名と写真、ロケット軍基地の場所や配置されているミサイルの種類や戦闘力評価など詳細な情報が満載だった。
こうした情報は米国の衛星写真情報だけで把握することは難しいと見られ、解放軍内に内部情報提供者がいると噂された。しかも「このレベルの全面的な情報は下級幹部が把握しきれているものではない」(姚誠)とみられている。習近平は、このリポートの情報を米国に提供した「犯人捜し」を行っているのではないか、と言われた。
もう一つの推測は、米国の領空侵犯をして撃ち落とされた中国偵察気球事件と関連があるという説だ。この偵察気球は軍の諜報、電子戦領域を担当する戦略支援部隊が関わるもので、習近平はこの事件について調査を行う中で、米国への情報提供者がいると気付いたのではないか、という。
自殺(?)した呉国華はもともと人民解放軍参謀部第三部(技術偵察)の部長を務め、電子戦、情報戦の専門家だ。そして目下取り調べを受けているという噂の巨乾生は副部長として呉国華の補佐をしていた人物。張振中、劉光斌もレーダーや電子戦の専門家。張振中は酒泉、西昌、文昌の宇宙衛星発射基地の責任者を務めたことがある。劉光斌はミサイル電子システムの開発に従事していた。
いずれの推測も、ポイントは米国への情報漏えい者、裏切り者、スパイが軍内部にいると習近平が疑い、手あたりしだい捕まえては取り調べをしている、ということになる。
粛清の嵐が再び吹き荒れているのか
習近平は権力を掌握して最初に、軍内で圧倒的な実力を持つ2人の退役上将、徐才厚と郭伯雄をありえない方法で失脚させ、陸軍内の彼らの派閥幹部の恨みを買った。以降、習近平は軍による反乱を恐れることになるのだが、一方で、自分に忠実でない軍幹部を排除するために軍制改革を進め、軍区制を戦区制に変えることで陸軍の政治的影響力を削減、陸軍以外の空海軍、新設したロケット軍、戦略支援部隊の影響力を高めていった。
その過程でざっと100人以上の軍の高級将校たちを粛清してきた。だが、およそ10年にわたる粛清の大ナタを振るっても、まだ裏切り者がいると習近平は疑って、その粛清の嵐は、自分の肝いりでつくったロケット軍や戦略支援部隊の技術屋にまで及んでいるということだ。
解放軍内でも習近平による粛清が行われているのだろうか(写真:新華社/アフロ)© JBpress 提供
この軍の粛清問題は、今は噂をつぎはぎしたような程度の情報しかないが、8月1日の建軍記念日に合わせた式典に誰が欠席しているかなどの情報をつきあわせて、噂の角度はもう少し高まるだろう。
仮に本当に解放軍内で、こうした異常な粛清が行われているとしたら、この背景にあるのは、今起きている外交部の異常事態と共通するものではないか、と私は想像している。いずれも米国に対する情報漏えいが疑われているのだが、なぜ外交部や解放軍の幹部たちが米国に情報漏えいするのか。あるいは情報漏えいを疑われるようなことになるのか。
それは米中関係が先鋭化しすぎて、外交部や軍の現場で台湾有事、あるいは米中戦争が起きうるという危機意識が高まっていることと関係があるのではないだろうか。
外交部の対米外交当事者や軍当事者にしてみれば、今はいかに戦争を回避するかを必死に考えているだろう。偶発的な衝突を避けるためにも、あるいは誤認、誤解を避けるためにも、米国側と連絡をとったり情報交換を深めたりしたいと思うのが、まっとうな外交担当者、軍幹部の考えだ。
習近平政権は内部から瓦解し始めたのか
特に軍人は、戦争になれば自分や自分の部下たちが死のリスクを負うわけだから、勇ましいことを口で言っても戦争回避を望んでいる。だが、今は習近平の意向で、米中の国防相同士が会談をすることすら許されない。
台湾武力統一反対を頑強に言い続けてきた解放軍の戦略家、劉亜洲上将が2021年暮れに失踪し、今年になって秘密裏に執行猶予付き死刑判決が下されたという噂が流れた。習近平は口を開けば、戦争準備を呼び掛けている。そういう中で、非公式に米国側と接触して情報交換しようとした官僚や軍幹部がスパイを疑われることは十分あり得る。
あるいは、習近平外交の危うさを見れば、中国の未来に絶望して、情報を手土産に米国への亡命を考える中国官僚や軍人が増えるのも当然ともいえるかもしれない。
問題は、こうした習近平外交のつけとして、大量の優秀な外交官や軍人が粛清され続けた結果、現場が深刻な人材不足に陥り、ますます習近平の言いなりの無能で危うい現場によって対米関係が進んでしまうということだ。秦剛外相解任もロケット軍粛清問題も、単発、一過性の事件というより習近平体制内部の瓦解が加速しているということのあらわれではないだろうか。
外相解任、説明回避続く=中国外務省
【北京時事】中国外務省の毛寧副報道局長は27日の記者会見で、外相を解任された秦剛氏に関する詳細な説明を前日同様に避けた。海外メディアが「まだ外交官なのか」などと質問したのに対し、「関連状況は既に紹介した」「提供できる情報はない」と回答するのにとどめた。
国営新華社通信は25日、秦氏の解任を短い一文だけで報道。毛氏は翌26日の記者会見で解任理由を矢継ぎ早に聞かれたが、「新華社が既に報じている」と繰り返し、詳しく説明しなかった。
中国の政策、路線変更の兆し-習氏の権力基盤でほころび露呈
Bloomberg News によるストーリー • 昨日 21:20
(ブルームバーグ): 中国共産党の習近平総書記(国家主席)が抜てきした外相が突然更迭され、盤石に見える習氏の権力基盤のほころびが図らずも露呈した。
中国ウオッチャーによれば、昨年末に駐米大使から外相に就いた秦剛氏がわずか7カ月で解任されたことは、他の経験豊富な候補者を差し置いて秦氏を推した習氏にとって痛手だ。
習氏の支配を脅かす深刻な事態が生じている兆しはないが、外交面の今回の混乱だけでなく中国が直面している問題は多岐にわたり、その一部は習氏自身が主導した政策にも及ぶ。
習指導部が仕掛けた米国とのイデオロギー闘争は、中国による先端半導体へのアクセスを阻止しようとする欧米の取り組みに拍車をかけた。
習氏がロシアのプーチン大統領と「制限なし」の友好関係をうたった2022年2月の宣言は主要な貿易相手国から大きな批判を招いた。習指導部が昨年12月まで堅持していた厳格な新型コロナウイルス対策の影響が長引き、中国の経済成長は予想を下回り続けている。
つまずき
株式相場も低迷。政府は地合いを支えようと取り組んでいるものの、世界最悪クラスのパフォーマンスだ。
アジアソサエティー政策研究所中国分析センターのエグゼクティブディレクター、ベイツ・ギル氏は「これら全てが問題であり、習氏の3期目にとって幸先の良いスタートではない」と指摘。
秦氏を巡る状況は「党・政府の最高指導部に存在すると思われる長引く政治的緊張を管理することに、習氏がいくらか手を焼いていることを示す一つの指標かもしれない」と述べた。
習氏の国家主席3期目は昨年10月にスタート。その数週間後に習氏の権力掌握に疑問を呈するかのような「ゼロコロナ」政策に対する抗議デモが発生した。デモ参加者の中には、毛沢東初代国家主席以来、中国で最も強力な指導者となった習氏の退陣を求める声さえあった。
中国はほぼ一夜にして大規模検査やロックダウン(都市封鎖)、国境閉鎖を伴うゼロコロナ政策の主要部分を放棄。米国などで見られた死者急増を防ぐためにゼロコロナは不可欠だと言っていた共産党にとって、極めて異例の政策急転換となった。
ゼロコロナ政策打ち切り後、中国でも人口の多い浙江省で今年1-3月(第1四半期)の火葬件数が前年同期比72.7%増えたと地元メディアが今月報じたが、このデータは後に削除された。
香港城市大学の劉冬舒助教(中国政治)は「ゼロコロナは習政権の成功を示す一例だったが、かなりの災厄に急転した」と語った。
ゼロコロナの傷跡に習体制下の数年にわたる大きな政策転換が重なり、消費者と民間セクターは支出を抑えており、世界2位の経済大国は一種の信頼感の危機に直面している。
路線変更
今年の公式目標である5%前後の経済成長達成が危うくなり、デフレに陥る瀬戸際にあるとの懸念も生じる中で、習指導部は長年の締め付けで痛手を負った民間投資家を引きつけようと大がかりなメッセージキャンペーンに乗り出した。
政府は今月、国内テクノロジー企業に対する規制強化の終了を示唆。相次ぐ規制で株式市場では巨額の時価総額が失われ、世界最大の新規株式公開(IPO)が頓挫していた。
習氏が路線を変えようとしているもう一つの兆候は、今週発表された中国人民銀行(中央銀行)総裁への潘功勝氏起用だ。
潘氏は昨年10月、共産党中央委員会から外れ、人民銀総裁を退任する易綱氏の後任に習氏が自身に忠実な人物を任命する準備を進めているとの見方が強まっていた。
1990年代以降、人民銀総裁任命時に党中央委員でなかったのは潘氏が初めて。アジアソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマス氏によると、景気失速を受け習氏は最近「忠誠心よりも専門知識を優先」している。
ユーラシア・グループの中国・北東アジアコンサルタント、ジェレミー・チャン氏は「ここ数カ月、習氏がとりわけ慎重なアプローチを強めているのは明らかだ。昨年秋の行動から想定されたゴリラのボスのようにはなっていない」と話した。
原題:Xi Protege’s Sudden Removal Adds to Rough Start for Third Term (抜粋)
--取材協力:Jing Li、Kari Soo Lindberg、Tania Chen、Charlotte Yang、Martin Ritchie.
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©2023 Bloomberg L.P.
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編集委員 高橋 哲史
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参考文献・参考資料
秦剛は監獄に?習近平「大粛清時代」の幕開け、ロケット軍でもスパイ探しか (msn.com)
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