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政治講座ⅴ689「元通貨のドル通貨覇権への挑戦」

ウクライナ(米国が黒幕)vs ロシアの侵攻の決着はロシアの経済疲弊を招き、ウクライナ有利に戦況は展開していると思われる。
もう一方の宿敵の中国は米国に経済戦争を仕掛けている。手の内を見せたのが今回の「石油や天然ガスの人民元建て決済」の動きである。
この元を基軸通貨とする経済圏は中国の狙うデカップリング構想が一歩一歩進みつつある。「一帯一路」構想も「元」基軸構想・経済圏構想・軍事支配圏構想、などの中国古来の朝貢外交と冊封体制の構築に他ならない。
このような怪物を育てたのは他ならぬ米国のヘンリー・キッシンジャー氏である。皮肉なものである。自業自得・因果応報の最たるものであろう。
政治の世界は一寸先は闇であるが、経済力が衰えてきたとは言え、欧米列強の政治力は侮れないものがある。旧ソ連が崩壊して、ロシアもウクライナに侵攻して自滅の様相を呈してきている。翻って、中国は漁夫の利を得てここまで経済力をつけてきたが、ロシアの衰退と同時に中国への崩壊へと舵を切ることであろう。米国のマニフェスト・デスティニー英語: Manifest Destiny)の野望は消えていないのである。
元々はアメリカ合衆国の西部開拓を正当化する標語であった。「明白なる使命」や「明白なる運命」、「明白な天命」、「明白なる大命」などと訳出される。「文明は、古代ギリシア・ローマからイギリスへ移動し、そして大西洋を渡ってアメリカ大陸へと移り、さらに西に向かいアジア大陸へと地球を一周する」という、いわゆる「文明の西漸説」に基づいたアメリカ的文明観である。
今後の展開が楽しみである。以下報道記事を掲載する。

         皇紀2682年12月14日
         さいたま市桜区
         政治研究者 田村 司

野心に満ちた中国と習近平…ここへ来てとうとう「アメリカのドル覇権」を切り崩しにかかった理由

加谷 珪一 - 3 時間前

中国が米ドルの覇権を崩す動きに乗り出している。今のところドルの地位は鉄壁だが、皮肉なことに米国は自ら米中経済の分断化を進めており、ドル覇権に中国が割って入る余地が出てきた。ウクライナ侵攻以前、人民元が基軸通貨の一角を占めるなど、到底、考えられないことだったが、分断化された国際社会においては、人民元がアジアの地域基軸通貨になる可能性はそれなりに高くなっている。

石油とドルは密接にリンクしている

中国の習近平国家主席は2022年12月9日、サウジアラビアで開催された中国・湾岸協力会議(GCC)で演説を行い、石油や天然ガスの人民元建て決済を推進する方針を明らかにした。
中国は同会議において8つの提案を行っており、その1つが、中国が湾岸地域から石油や天然ガスの輸入を拡大すると同時に、同地域における再生可能エネルギープロジェクトに参加するというものだった。中国がエネルギーを輸入する際、人民元建ての取引を想定していると見られる。


〔PHOTO〕iStock© 現代ビジネス


よく知られているように、石油の取引はドルで行うことが慣例となっており、この商慣行は米国のドル覇権と密接に関わってきた。ドルを中心とした国際金融システムは完璧であり、中国は大国になったとはいえ、平時の状態でこの仕組みを崩すことはほぼ不可能に近いと言われてきた。ところが、ここ数年の間に国際金融システムをめぐる環境が激変しており、従来の常識が通用しなくなりつつある。

一部の関係者は、石油取引がドルであることと米国の覇権は単なる偶然であり、両者には何の関係もないと主張しているが、それは物事を一面からしか見ていない。確かに、石油がドル取引だったことは、ある種の偶然かもしれないが、エネルギーと安全保障、そして金融システムがリンクしているのは紛れもない事実である。米国はこれらをうまく活用し、国家の覇権を維持してきたと考えるべきだろう。
石油とリンクされたドル、あるいはそれに基づく米国の覇権は、しばしば「ペトロダラー」と称されるが、この体制が構築されるきっかけとなったのは1973年に発生したオイルショックである。
もともと石油ビジネスは米国企業が開拓したものであり、1960年代までは米国を中心とした石油メジャーと呼ばれる企業が石油取引を支配していた。産油国は不利な条件で石油を提供するしかなかったが、この状況に反旗をひるがえしたのが1973年のオイルショックである。OPEC加盟6カ国は、1バレルあたり3.01ドルだった原油公示価格を一気に5.11ドルに引き上げ、翌年1月には11.65ドルに引き上げた。これをきっかけに一次産品のほぼすべてが値上がりし、世界経済は大混乱に陥った。
オイルショックによるインフレで米国経済は大打撃を受けたが、米国にとってはさらに深刻な事態が進んでいた。それは米ドルの信用不安である。
1960年代、米国企業の競争力は著しく低下し、ベトナム戦争の泥沼化で政府の財政も極度に悪化していた。米ドルには下落圧力がかかり、米国から金が流出。追い込まれた米国政府は1971年、米ドルと金の兌換停止(いわゆるニクソン・ショック)に踏み切っている。産油国による原油価格の引き上げも、きっかけはニクソン・ショックによるドルの下落であり、それをカバーするための措置と捉えることもできる。

ペトロダラー体制はこうして生まれた

産油国にとって米国は圧倒的な超大国であり、いくら石油取引で不利な条件を飲まされているとはいえ、正面から米国と衝突することはできなかった。米国の弱体化とドルの信用不安によって、産油国は巨額損失リスクを抱えたが、同時に、政治的には大きなチャンスであり、こうした状況でオイルショックは発生した。
米国はオイルショックによる激しいインフレに対処すると同時に、ドルの信用不安を払拭しなければならないという、極めて困難な状況に直面した。当時の米国はニクソン政権だが、ニクソン氏はウォーターゲート事件によって失脚し、その後は副大統領だったフォード氏が大統領の座を引き継いだ。一連の政権で産油国との交渉を担ったのは、ニクソン政権の大統領補佐官で、後に国務長官にも就任したヘンリー・キッシンジャー氏である。
ニクソン氏とキッシンジャー氏は1974年にサウジアラビアを訪問。両国は、石油のドル建て取引による安定供給とサウジアラビアの安全保障について合意した。これは、米国が石油価格の上昇を受け入れる代わりに、中東各国に流出したドルを米国に還流させる仕組みを意図したものである。同じタイミングで食糧危機が発生したことから、ニクソン政権は、穀物メジャーを通じて旧ソ連に対する小麦輸出を実施するとともに、世界食糧会議の開催を提唱し、米国の穀物輸出によるドル決済拡大を目論んだ

キッシンジャー氏〔PHOTO〕Gettyimages© 現代ビジネス


産油国との合意によって、米ドルと石油取引は完全にリンクするようになった。産油国は獲得した巨額のオイルマネーを米国の金融市場で運用することになり、米国から見れば、ドルが米国市場に還流し、ドル不安を軽減する作用をもたらした。食糧会議は米国の思惑通りには進まなかったが、食糧が石油と同様、国家覇権の一部を担っているとの認識が生まれたという点では大きな変化といってよい。
キッシンジャー氏を過大評価する人は、一連の外交によって完璧なドル覇権が確立したと認識しているかもしれないが、現実は少々異なる。ドルと金の兌換停止によってドルは下落する一方であり、米国にとってはむしろ防戦一方だった。米国はオイルショックによって手の付けられないインフレが進み、物価上昇を抑制するため、景気を犠牲にしても高金利政策を採用せざるを得なかった
サウジとの合意が大きな役割を果たしたことは事実だが、米国は経済面から金利引き上げを実施せざるを得ず、不可避となった高金利をキッシンジャー氏が政治的にうまく活用したと考えた方が自然だろう。

米国が中国の野心を後押しする

一連の取り組みによって何とか信用毀損を免れた米ドルだが、その後、世界経済は意外な方向に進んだ。80年代にレーガン政権が行った規制緩和によって米国経済は復活し、世界経済のグローバル化が進展。米国の輸入が急拡大したことで、決済通貨としてのドルの価値はむしろ高まった突出した消費大国として米国が世界にドルをバラ撒き、支払われたドルが米国の金融市場に還流し、米株が上昇するという、現代の金融システムの枠組みが出来上がった。
今となっては石油や食糧に限らず、多くの貿易がドルで行われており、国際送金もほとんどがドルを経由する。米国とは何の関係もない日本とアジアの貿易であっても、決済にはドルが使われ、ドル以外の通貨を送金する場合でも、一旦ドルに両替され、ドルから現地通貨に両替される
この仕組みを再構築するには、途方もないコストと手間がかかるため、ドルを中心した国際金融システムは変わりようがないというのがこれまでの常識だった。ところが、こうした常識を大きく変えるきっかけとなったのが、米中の政治的対立と、ロシアによるウクライナ侵攻である。
トランプ政権は、従来の外交方針を大転換し、中国を敵視する戦略にシフトした。バイデン政権も基本的にこの路線を踏襲しており、両国は相互の貿易に高い関税を課し、先端技術の輸出規制を行っている。ここにロシアのウクライナ侵攻が重なり、米国はロシアの経済活動を封じ込めるため、ロシアの外貨準備を凍結した。この措置はロシアに対しては大きな効果を発揮したが、中国にドル離れを加速させる作用をもたらしたのは間違いないだろう。
これまで説明してきた米国のドル覇権というのは、グローバル経済があってこそ維持されるものであり、米中間の巨額貿易の存在がこれを担保していた。だが米中の分断化が進むとなれば、話は変わってくる。中国は米国という最大の顧客を失ったことで経済は大打撃を受けた。だが、言い換えればドルの縛りから解放されたともいえる。
ウクライナ侵攻をきっかけに、中露は軍事的・経済的な結びつきを強めている。各国から経済制裁を受けているロシアにとっては、中国に天然ガスを輸出し、代わりに工業製品を輸入するしか生き延びる道はなく、中露間において人民元での決済が増える可能性が高まっている。
このタイミングで中国が産油国との会談において、石油の人民元決済に触れたのは決して偶然ではない。
中国はこれまで米ドルの覇権を崩したいとの野心を持っていたものの、それを表立って示すことはなかった。だが、今回の演説で、エネルギー分野での人民元決済導入を皮切りに、アジアや中東地域において徐々に人民元決済を拡大したいとの野心をむき出しにした。
これまで人民元の国際化を阻んでいたのは米国中心のグローバル経済だった。米国が自ら自国中心主義に転換したことで、一部地域とはいえ、逆に人民元が一種の基軸通貨を目指せる環境が整ってしまったのは、まさに皮肉というよりほかない。

経済を分断する「デカップリング」 米中摩擦で起きているのか?

2022.2.16 日経ビジネス 編集部

2国間が経済的に連動せず、互いに影響を受けない状態にあることを「デカップリング」という。近年は米中対立によって両国のデカップリングが進んでいるとする見方があり、世界経済に及ぼす影響に注目が集まっている。今回は米中のデカップリングの現状と欧州の状況について、過去記事からピックアップしていく。

米中の対立が「デカップリング」を生み出す?


デカップリングとは、国同士の経済や市場を切り離して連動していない状態を指す。デカップリングになれば、一方の国の経済が停滞しても相手国はその影響を受けることはなく、経済成長が続くことになる。

 デカップリングが注目を集めているのは米中対立によるところが大きい。両国は互いに密に連携しながら成長してきたが、ドナルド・トランプ米大統領(当時)が米中対立をあおったことで、デカップリングが進んだという指摘がある。一方でデカップリングは起きていないという見方もある。

 この記事では米中のデカップリングに関する話題を中心に、欧州の状況も含め、注目すべき過去記事を紹介していく。

米中デカップリングの「予行演習」となった新型コロナ危機

 米国では、中国との平和共存は不可能であり、中国とそれに従う国々を米国中心の世界から、全ての面で切り離すべきだ(デカップリング)という意見が強まっている。

 そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大は、図らずもその「予行演習」となってしまった。人の往来は止まり、サプライチェーンは寸断され、物流は滞り、経済活動は低下した。中国経済が世界経済に組み込まれた状況で中国を切り離すことは、こういう結果をもたらすということだ。

「深まる米中『デカップリング』。国際企業は打撃に備えよ」

 国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、新型コロナ後、米中間の緊張はさらに緊迫した状態に陥るとする。さらに米国と中国の経済的な対立に加え、米国は中国だけでなく欧州などその他の地域からも孤立するとみている。

 米中関係の泥沼化が日本企業に多大な影響を与えることは言うまでもない。そんな中、日本が果たすべき役割として同氏が期待しているのは、通信やデータ、IoT(モノのインターネット)といった技術の国際標準化の領域でリーダーシップを発揮することだ。技術の国際標準まで「真実を隠す」傾向にある中国に奪われれば、世界はますます混沌とするというのがその理由だ。

米中デカップリングの真実

 米中のデカップリングが話題となる中、投資の分野ではデカップリングどころか、むしろ両国のつながりがより深くなっているという指摘もある。例えばショート動画アプリ「快手(クアイショウ)」を手がける中国の快手科技が2021年2月に香港市場へ上場する際、フィデリティやブラックロックなど米投資運用大手が大きな役割を果たしている。

 米投資顧問会社シーフェアラー・キャピタル・パートナーズのニコラス・ボースト氏は、「金融分野での分断どころか、米中2国間の投資関係は今や世界最大級の規模に達した。さらに、他にはないペースで拡大している」と話す。

米中対立とサプライチェーン危機 デカップリングは起きていない

 識者の中には「米中のデカップリングは幻想にすぎない」と指摘する人もいる。21年の時点でも中国は米国から大量の穀物を輸入しているなど、両国の相互依存度は高い。もはや「デカップリングには手遅れ」という見方もある。現在起きているのはデカップリングではなく「各国が中国への一極依存に伴うリスクに気付いただけ」というのが、これらの識者たちの主張だ。

ドイツとロシアのビジネス関係が示す、デカップリングが困難な理由

 デカップリングは米中以外の国同士でも話題になっている。その一例がドイツとロシアだ。ロシアが14年にウクライナのクリミア半島を併合して以来、ドイツとロシアの政治的な関係は大幅に悪化した。貿易も同様に低調だ。ロシアの対独貿易額は20年、450億ユーロとウクライナ紛争前の半分近くまで落ち込んだ。

 だが、最近の貿易額の減少は、ロシア通貨ルーブルの下落と石油やガスの価格低下に負うところが大きい。逆にドイツからロシアへの対外直接投資額は経済制裁を科された後の15年、35億ユーロに拡大した。18年には38億ユーロに達している。ロシアに進出しているドイツ企業は約4000社で、ロシアに暮らす1億4500万人の消費者に向けて商品を生産しているのだ。

最後に

 2国間が経済的に分断されるデカップリング。今日の世界では、米中、あるいは欧州とロシアの間で政治的な摩擦や緊張が高まっているが、デカップリングはほとんど発生していないとする見方が多い。その一方で、新型コロナの感染拡大は、米中デカップリングの「予行演習」になったといわれるほど世界経済を分断している。こうした分断が各国にどのような影響を与えるのか、そして新型コロナ後にどうなるのか、その行方に注目したい。

参考文献・参考資料

野心に満ちた中国と習近平…ここへ来てとうとう「アメリカのドル覇権」を切り崩しにかかった理由 (msn.com)

経済を分断する「デカップリング」 米中摩擦で起きているのか?:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

【自業自得】と【因果応報】の意味の違いと使い方の例文 | 例文買取センター (reibuncnt.jp)

マニフェスト・デスティニー - Wikipedia

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