見出し画像

政治講座ⅴ2096「米中に梯子を外されるM&A」

 国際政治の裏側ではどのような裏取引が行われているのであろうか。
 表舞台では米国自国民受けが良い「関税!関税!」と喧嘩しているように見えるポーズをとりながら裏ではしっかり「取引(安い鉄鋼製品購入)」をしているのが米国の政治の世界である。
 沈没しそうな(倒産しそうな)USスチールと日鉄を潰そうとしている機会と米国政府は捉えている。そのように懐疑的に政治を見るべきであろう。日本の政治家やビジネスマンは米国人(アングロサクソン)の本質を知らなすぎるのである。
 「日本は同盟国」と煽てられて「有頂天」なっている政治家よ!今回の事例が如実に物事の本質を示している。
 米国と中国と裏で繋がっている可能性は否定できないのである。
 米国への設備投資はいつ「手のひら返し」で回収不能な不良債権となるかは分からない。その最たるものが今回のM&Aの事例であろう。東芝のM&Aの失敗に学べ!不良債権を押し付けられて、高い買い物をさせられる!くわばら!くわばら!
今回は通常の報道記事から裏を感じさせる報道記事を紹介する。

     皇紀2685年1月11日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

報道記事紹介

中国、アメリカ大統領就任式に特使派遣…トランプ氏側は習近平主席の側近・蔡奇氏の出席希望か

読売新聞 によるストーリー

 【ワシントン=向井ゆう子】英紙フィナンシャル・タイムズは9日、米国のトランプ次期大統領の就任式に中国政府が特使を派遣すると報じた。トランプ氏の政権移行チームに対し、中国側が伝達した。 韓正(ハンジョン) 国家副主席、または 王毅(ワンイー) 外相(共産党政治局員)が派遣される可能性があるという。

中国の韓正国家副主席(左)と王毅外相© 読売新聞

 トランプ氏側は当初、 習近平(シージンピン) 国家主席を招待したが、中国が応じなかった。トランプ氏側には、韓、王両氏では不十分だとして、習氏側近で共産党序列5位の 蔡奇(ツァイチー) 中央書記局書記の出席を求める声があるといい、双方が駆け引きを続けている模様だ。

 就任式は20日にワシントンで行われる。特使は訪米中、トランプ氏や次期政権幹部と会談するとみられる。

米国大統領が「日本製鉄」をこうも目の敵にする訳 人気取りは、時に自国民の利益よりも優先される

真鍋 厚 によるストーリー

トランプ次期大統領は、自身のSNSで「かつて偉大で強力だったUSスチールが日本製鉄に買収されることに全面的に反対する」と投稿した(写真:CNP/時事通信フォト)© 東洋経済オンライン

アメリカのジョー・バイデン大統領が日本製鉄によるアメリカの大手鉄鋼メーカーのUSスチールの買収を禁止する行政命令を発表し、大きな騒動に発展している。

【画像】やがてクビに?日鉄による買収に賛成するUSスチールの労働者たち

日鉄とUSからスチールは反発強める

日本製鉄とUSスチールは、今回の命令を「実質的な調査に基づかず、バイデン政権の政治的目的を満たすためにあらかじめ決定されたもの」とし、「アメリカ政府が、アメリカの利益につながる競争を活性化する本買収を拒否し、同盟国である日本国をこのように扱うことは衝撃的であり、非常に憂慮すべきこと」とする共同声明を発表

USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEО)は、大統領の判断は「恥ずべきもので、腐敗している」などとコメントした。

両社は1月6日、日本製鉄によるUSスチールの買収計画を阻止したとしてアメリカ政府を提訴。バイデン大統領が「全米鉄鋼労働組合の支持を得て、自身の政治的目的を達成するため法の支配を無視したこと」などを訴訟で明らかにするという。

石破茂首相は、「なぜ安全保障上の懸念があるのか」と述べ、アメリカ政府に強く説明を求めるなど、日米関係に小さくない亀裂を生じさせる出来事となった。

重要なのは多くの国民が感情的に納得できるかどうか

これらの買収計画をめぐる一連の動きは、ウォール・ストリート・ジャーナルが「アメリカの製造業と安全保障を損なう経済的な自虐行為だ」と批判したように、行き過ぎた保護主義の産物といえるものであり、まさに産業政策が「政争の具」にされる事態といえるだろう。

ポピュリズムの観点から見れば、また違った風景が見えてくる。政治家が人気取りのために「実益」よりも「世情」を優先する志向の先鋭化である。

合理的に考えてどのような利益や損失があるかどうかを見極めることなどよりも、多くの国民が感情的に納得できるかどうかのほうが重要になるからだ。

米国で1月3日に出された大統領命令。日本製鉄によるUSスチール買収が「米国の国家安全保障を損なう恐れのある行動をとる可能性があると信じるに足る証拠がある」と記されている(出所:ホワイトハウスのウェブサイト)© 東洋経済オンライン

これは理屈ではない。道徳心理学者のジョナサン・ハイトが提唱する道徳基盤理論が分析の助けになる。彼は『社会はなぜ左と右にわかれるのか 対立を超えるための道徳心理学』(高橋洋訳、紀伊國屋書店)で、人間の道徳心は6つの道徳基盤によって構成されていると説いた。

「ケア」「公正」「自由」「忠誠」「権威」「神聖」だ。それぞれが進化の過程で獲得された認知モジュール(脳内にある小さなスイッチのようなもの)で、さまざまな文化ごとにその内容は異なっているという。

今回の買収騒動に最も関係があるのは、「神聖」のモジュールである。もともとは病原菌などの「汚染を避ける」という適応課題によって出現したとされ、それが概念的な意味を含む「不浄の忌避」へとその範囲が拡大していったものだ。

日鉄による買収に賛成するUSスチール従業員の集会。自社ホームページに動画を掲載するなど会社側も後押し(出所:USスチールのメディアサイトの動画)© 東洋経済オンライン

ハイトは「〈神聖〉基盤は、悪い意味でも(汚れている、あるいは汚染しているので)、良い意味でも(神聖なものを冒瀆から守るために)、何かを『手を触れてはならないもの』として扱えるようにする」と述べている(同前)。

恐らく保守的な思想を持つアメリカ人にとって、この神聖モジュールが作用している対象がUSスチールなのではないかと推測できる。これらのモジュール=スイッチが非常に厄介なのは、思考以前の深い情動レベルの働きだからである。

つまり、ある行為についての評価(悪いことなのか、良いことなのか)を直観的に方向づける影響力を持っているのだ。これは言い換えると、その判断がほとんど無意識に行われていることを示唆している。

ハイトは、神聖モジュールが反応しやすいものについて、「もの(国旗、十字架など)、場所(メッカ、国家の誕生にまつわる戦場の跡など)、人物(聖者、英雄など)、原理(自由、博愛、平等など)」といった例を挙げ、「神聖の心理は、互いに結束して道徳共同体を築く方向に人々を導く。

道徳共同体に属する誰かが、その共同体の神聖な支柱を冒瀆すれば、集団による情動的かつ懲罰的な反応がきわめて迅速に起こるはずだ」と指摘している(同前)。

USスチールは「共同体の神聖な支柱」

トランプ次期大統領は、自身のSNSで「かつて偉大で強力だったUSスチールが日本製鉄に買収されることに全面的に反対する」と投稿したが、バイデン大統領も以前 「USスチールは1世紀以上にわたりアメリカの象徴的な鉄鋼会社であり、国内で所有され、運営されるアメリカの鉄鋼会社であり続けることが極めて重要だ」と発言している。

USスチールはアメリカの力と繁栄を象徴する「共同体の神聖な支柱」なのであり、それが他国の手に渡ることは冒瀆に近い行為になり得るのだ。

21世紀に入っても、この神聖モジュールが国の威信やナショナルアイデンティティを体現する「もの」や「場所」などにしっかりと根を張っているだけでなく、依然としてその深層にある感情を目覚めさせるポテンシャルを秘めていることが改めて浮き彫りになったといえる。

けれども、なぜ同盟国による買収計画で、しかも中国との競争が念頭にあるにもかかわらず、かたくななまでに拒絶するのだろうか。BBCによれば、「アメリカ政府は1990年以降、外国企業による買収を8件しか阻止していない。そのほとんどは過去10年間のもので、中国企業が関与していた」という(日本製鉄とUSスチールが米政府など提訴 「政治目的で不適切な影響力行使」と/2025年1月7日/BBC)。

可能性としては、先の国の威信やナショナルアイデンティティにひも付いている神聖モジュールが、社会経済状況の悪化とともに過剰反応するようになったことが考えられるだろう。そうなると、今後多様な分野で感情的な反発からハレーションを引き起こすことが増えていくかもしれない。

金融ジャーナリストのロジャー・ローウェンスタインは、大統領選から撤退する前の昨春の段階で「疑いなく、バイデン氏はドナルド・トランプ氏の自国第一主義なアピールに対抗したいと考えている」と評した(It Hurts to See Biden Imitating Trump on Trade/2024年3月21日/The New York Times)。バイデン大統領が身に付け始めたポピュリズム的しぐさに対する批判である。

残念なのは、バイデン氏がトランプ氏の真似をしていることだ。トランプ氏は、2期目に当選すれば、日本企業の買収を「即座に」阻止すると誓っている。バイデン氏の反対声明はトランプ氏よりやや弱かった。同氏は買収を非難したが、明確には破棄するとは誓わなかった。(略)バイデン氏はトランプ氏の支持者に迎合した。(同前)

ポピュリズムにおいては、支持者を拡大するために対立候補の政策を“盗む”ことが頻繁に見られる。要するに、保守層にもウイングを広げたいのだ。

もはや単なる人気取りでしかないので、これまでの政治的なスタンスとの整合性は軽視される。そして、最悪の場合、真に国益となるのか、自国民のためになるかといった実際上の問題は考慮されなくなる恐れがある。

「自分たちの沽券(こけん)に関わるシンボリックなものが侵食されるのを座視するわけにはいかない」――これが多くの国民の琴線に触れるものであり、支持率に直結するのであればなおさらである。

自尊心を脅かすものをすべて敵対勢力とみなすアイデンティティ戦争の様相を呈していることに注意を向ける必要がありそうだ。

「ばかげた最後の試みだ」全米鉄鋼労働組合が批判…日本製鉄などの「USスチール」買収禁止命令を無効とする訴えについて

FNNプライムオンライン によるストーリー

「ばかげた最後の試みだ」全米鉄鋼労働組合が批判…日本製鉄などの「USスチール」買収禁止命令を無効とする訴えについて© FNNプライムオンライン

アメリカの鉄鋼大手「USスチール」の買収計画の禁止命令を受け、日本製鉄などがこの命令を無効とする訴えを起こしたことについて、アメリカの鉄鋼会社の労働組合で作るUSW=全米鉄鋼労働組合は、これを批判する声明を発表しました。

組合員に向けた声明の中でUSWのマッコール会長は、日本製鉄とUSスチールが起こした訴訟について「ばかげた最後の試みだ」などと批判し、「これらの軽薄な申し立てから組合を守る」とコメントしました。

買収の禁止命令を出したバイデン大統領についても「アメリカが将来にわたって強固な国内鉄鋼産業を持つことが不可欠なことを理解している」と支持する意向を表明しました。

今回の買収計画の中止命令を巡っては、日本製鉄側も徹底的に争う姿勢を示していて、日米の経済関係への影響なども懸念されています。


ここから先は

156字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?