
政治(物理)講座ⅴ2171「太陽光パネルの現状とその将来を担うペロブスカイト太陽電池」
2011年に東北大震災が起こり福島原発も被害に合い、日本の電気需要を抑制しなければならない事態になったことは今も記憶にある。
当時から太陽光パネルによる発電が盛んに宣伝されていた。
震災後に実家に帰ったら太陽光パネルを倉庫の種に設置していた。費用を聞いたら300万円といっていたが、発電効率を聞いたら、期待ほどの発電がなく、つまり、太陽が出ているときのみ発電し、雨の時、曇りの時、雪の時、そして、一日の半分の夜は無用の長物となる。と感想を漏らしていた。
吾輩も設置を検討したが、コスパが悪いことがわかった。 設置せずに300万円の株式投資の方が配当と値上がり率がよかったので、設置を諦めた。
さて、あれから十数年、近年ペロブスカイト太陽電池が開発されて実用化に向かっていると聞く。
中国から大量生産されて日本に設置された太陽光パネルの現状を考えるとき、老朽化した太陽光パネルんの廃棄問題も発生するのではないだろうか。
今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2685年3月1日
さいたま市桜区
政治(物理)研究者 田村 司
ペロブスカイト太陽電池とは


報道記事紹介
太陽光パネルの架台、雪で広範囲が破損 福島のメガソーラー建設地
毎日新聞 によるストーリー

福島市松川町で建設が進むメガソーラー(大規模太陽光発電所)の工事現場で、太陽光パネルを支える架台が、雪の重みに耐えられずに広い範囲にわたって破損していたことが工事関係者への取材で分かった。この工事を巡っては、下請け業者の間で工事費の未払いトラブルも生じている。
破損が見つかったのは、福島市松川町水原のゴルフ場跡地(約60ヘクタール)に建設中の「NW福島CC太陽光発電所」。事業者は、ポルトガル電力公社「EDP」傘下で再生可能エネルギーを手掛ける「EDPリニューアブルズ」(EDPR)で、別の事業者が進めていた計画を2022年12月に引き継いだ。発電規模は約4・4万キロワット。工事は「自然エンジニアリング」(東京都中央区)に発注して24年5月に着工し、今年9月の稼働を目指している。
福島市の山間部は8日から9日にかけて大雪に見舞われ、このメガソーラー付近の積雪量は約50センチになっていた。
工事関係者によると、12日に作業員が建設現場を巡回したところ、太陽光パネルを固定する枠と架台をつなぐ部品が雪の重みで折れ、パネルが倒れているのを見つけた。計画では全体で約6万3000枚の太陽光パネルを設置する予定で、太陽光パネルは1枚約30キロあり、架台1台に対して6~28枚設置されるが、相当数の設備が損傷していた。
太陽光パネルは中国製で、製品に含まれる鉛、カドミウム、ヒ素、セレンの有害物質は基準値未満の仕様とされているが、工事関係者は「設計段階で積雪に対する強度計算に問題があったのではないか。積雪が続けば太陽光パネルが架台からはがれて破損する可能性がある。パネルに含まれている有害物質が雪に染み込んで流出する恐れもある」と懸念する。
建設地の雪解け水や雨水は敷地内にある調整池に流れ込み、その後は河川に放流される。ふもとには水田が広がっており、工事関係者は「可能性は低いが、万が一、有毒物質が調整池に流入した場合、豪雨などで河川に流出することも否定できない」と話す。
EDPRは毎日新聞の取材に対し「請負業者である自然エンジニアリングは太陽光発電設備の一部が、最近の大雪により損傷したことを確認した」と損傷を認めたうえで、「厳しい積雪荷重への対策を検証しており、構造的な安全性が確認され次第、実施する予定。その後、損傷した設備は全面的に修復・補強される」とした。
一方、2次下請けとして太陽光パネルの設置工事を請け負った「サムスターク」(郡山市)の金井宏治社長によると、担当した区画で24年5月から工事を始めたが、同年8月末の支払いを最後に1次下請けの「ARCS form」(アークスフォーム、宮城県岩沼市)から工事費が支払われていない。
金井社長は「社員や下請け企業に支払いができず、工事を止めた」と話し、未払いが解消されなかったため、サムスタークは24年末に工事から撤退。大雪による破損はサムスタークが担当した区画とは別の場所で起きていた。
EDPRは、工事費の未払いについて「これまでのプロジェクトのマイルストーン(進捗(しんちょく)目標)に基づく支払いは全て予定通りに完了しており、今年後半の建設完了を予定している」としている。
元請けの自然エンジニアリングは「契約条件や法律に基づき、支払うべき代金はアークスフォームに支払った。当社としてもアークスフォームに(2次下請けへの)工事費の未払いがあったと認識しており、同社との契約を今年1月に解除した。その後、別の業者と契約を結び、アークスフォームが担当していた工区の工事を再開させた」と回答。アークスフォームは27日時点で取材の電話に応答しない状態になっている。
福島市では、吾妻連峰の一角の先達山(せんだつやま)に建設中のメガソーラーが景観悪化や大雨での土砂流出を起こし、市は23年8月に、これ以上の山地へのメガソーラー建設を望まない「ノーモアメガソーラー宣言」を出した。今回の破損が見つかった工事は宣言前から手続きが進んでいた。福島市はメガソーラーの規制条例の制定を進めており、市内の約7割を禁止区域、その他の場所は許可制とし、既存の発電所についても立ち入り調査や指導をできるようにする。
メガソーラーによる土砂災害に詳しい山梨大の鈴木猛康名誉教授(地域防災学)は「メガソーラーは建築基準法の建築物に該当しないため、設計基準などのチェック体制が甘い。国はガイドラインを策定しているが、実際は事業者を野放しにしている。そもそも積雪の多い場所が建設地として適当なのか疑問だ」と指摘する。【松本ゆう雅】
全国初「太陽光パネル税」騒動から浮かぶ、エネルギー政策のゆがみ
毎日新聞2022/6/21 03:00(最終更新 6/21 03:00)

岡山県美作(みまさか)市が導入を目指す全国初の「太陽光パネル税」の行方が混沌(こんとん)としている。市と課税対象となる大規模太陽光発電所(メガソーラー)運営事業者との間で意見が対立。導入の可否を判断する総務省が「待った」をかけた。税導入に向けた一連の経緯は、太陽光発電急拡大のゆがみと、再生可能エネルギー推進の課題も浮かび上がらせた。
傾斜地に最大級のメガソーラー
パネル税創設を盛り込んだ市条例案は2021年12月の市議会で可決された。山地などに太陽光発電施設を建設することで災害発生リスクが高まるとして、税収を施設周辺の環境保全や防災費用に充てるのが目的だ。
発電認定容量が原則10キロワット以上の施設を対象に、パネル1平方メートル当たり50円を課す。建物の屋根に設置するパネルは対象外だ。市は課税対象となる発電施設が80程度あるとして、年間約1・1億円の税収を見込む。23年1月に課税対象者と額を決定し、23年度からの課税を目指していた。
同市内では、山の傾斜地などに太陽光発電施設が相次いで建設され、新興の発電事業者「パシフィコ・エナジー」(東京都)が国内最大級の「作東(さくとう)メガソーラー」などを運営している。総務省が「待った」
太陽光パネル義務化の条例案、都議会委員会で可決 自民は反対
毎日新聞2022/12/13 19:15(最終更新 12/13 19:15)

新築戸建て住宅などへの太陽光パネル設置義務化に向けて東京都が提出している環境確保条例の改正案について、都議会の環境・建設委員会は13日、賛成多数で可決した。しかし、自民党は「義務化への議論が深まっていない」として反対した。
ペロブスカイト太陽電池の構造と発電メカニズム
2023.09.11
ペロブスカイト太陽電池の発電メカニズムは他の太陽電池と同じですが、太陽電池に利用される素材が異なります。
今回はこのペロブスカイト太陽電池のデバイス構造や発電メカニズムについてご説明いたします。
・ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池とは、
ペロブスカイト構造と呼ばれる結晶構造の物質を使用した太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池は2009年に横浜桐蔭大学の宮坂教授の研究グループにより報告されました。当時は変換効率が4%程度と低かったのですが、変換効率の向上ともに世界中の研究グループの注目を集め、開発競争が始まりました。
そして、ビジネスチャンスを見込んだ企業の参入も追い風となり、
2023年8月現在では、変換効率26.1%を実現し、シリコン型に追いつく変換効率が実現されています。
研究の歴史についてはペロブスカイト太陽電池に関わる研究の歴史という記事で解説しております。
ペロブスカイト太陽電池の特徴として、薄く柔軟、かつ軽量のため設置場所の幅が広がること、また低照度での発電効率が高いことが挙げられます。
一方で、現状のペロブスカイト太陽電池はシリコン太陽電池に比べて耐久性に劣ることや、設置に関する関連技術の開発などの実用化に向けた課題の克服に取り組んでいるところです。
シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池の比較表

・ペロブスカイト構造とは?

出典:エネコートテクノロジー株式会社,会社案内標準230607のP5より一部加工(カチオン等の語句を消去)ペロブスカイト構造は以下の図のように一般化されています。A、B、Xにはそれぞれ原子や分子が配置されます。
結晶構造の中心にあるBは鉛やスズ、ビスマスなどの金属が使用されます。そして、このBを取り囲むように6個のXにより8面体が作られます。
この8面体に8個の正のイオンであるAが6面体を作るように配位されてペロブスカイト構造が完成します。
結晶を構成する最小単位である単位格子に注目すると、Aは立方体の8つの各頂点に1/8の体積の原子が存在するため、単位格子中には1/8×8=1個のAが使用されています。
また、Xは立方体の6つの各面に1/2の体積の原子が存在するため、1/2×6=3個の原子が使用されています。Bは立方体の中心に1個あるのみなので、単位格子中には、A:B:X = 1:1:3の比率で各原子が存在しています。
・ペロブスカイト太陽電池の構造
ペロブスカイト太陽電池は

①裏面電極
②正孔輸送層
③ペロブスカイト層
④電子輸送層
⑤透明導電膜
の5つの層構造に分かれています。
①裏面電極
デバイスの後端部に位置し、正孔輸送層からの正孔を集めて外部回路に供給する役割を果たしています。
②正孔輸送層
正孔輸送層は、ペロブスカイト層で発生した正孔を効果的に収集する一方、電子の流れを妨げる役割を持っています。
③ペロブスカイト層
ペロブスカイト太陽電池の肝となる層です。ペロブスカイト層で太陽光を吸収して、電子と正孔を生成します。
④電子輸送層
電子輸送層はペロブスカイト層で発生した電子を効果的に収集する一方、正孔の流れを妨げる役割を果たしています。
⑤透明導電膜
透明導電膜は、金属材料と同じように導電性を持ちながら、可視光を透過する性質を持つ材料で形成される層です。電子輸送層から電子を集め、外部回路に流す役割を果たしています。インジウムスズ酸化物、フッ化スズ酸化物などが素材となっています。
・ペロブスカイト太陽電池の発電原理
ペロブスカイト層に太陽光が届くと、光エネルギーによって自由電子(マイナスの電荷)と正孔(プラスの電荷)が生成します。
このとき、ペロブスカイト層の上下を電子輸送層・正孔輸送層の2種類の層によって挟み込むと、自由電子は電子輸送層に、正孔は正孔輸送層にそれぞれ移動します。これにより、電子の流れ=電流が発生します。
これが、ペロブスカイト太陽電池の発電原理です。
また、ペロブスカイト層に太陽光が届く前に、他の層で光吸収が起こると、自由電子と正孔の生成量が減ってしまうため、光が差し込む側には透明な層を用いる必要があります。
一方、ペロブスカイト層で発生した自由電子・正孔をロスなく取り出すため、金属のように電気抵抗の低い層を用いる必要があります。そのため、太陽光が入射する側の電極には、可視光を透過する性質を持ちながら、金属材料と同等の導電性を兼ね備えた透明電極(酸化インジウムすず等)が用いられています。
・従来のシリコン型太陽電池との構造の違い
基本的に、太陽光を吸収することによって発生した電子・正孔対を2種類の半導体で引き抜くという点では、ペロブスカイト太陽電池もシリコン型の太陽電池も同様です。
素材として、結晶シリコンを用いるか、ペロブスカイト層を用いるかが違いとなっています。
このシリコン型太陽電池に欠かせないp型n型のシリコンウェハーは一般的に結晶のため、ペロブスカイト太陽電池のような柔軟性を担保するのが難しいのです。
また、結晶シリコンは、ペロブスカイトと比べて光を吸収する能力(光吸収係数)が数十分の1程度と小さいため、シリコンで十分な量の光を吸収するためには、分厚い膜が必要となってしまいます。そのため、ペロブスカイト太陽電池と比べて重量が重くなり、耐荷重の大きい場所にしか設置できないという特徴の違いが生まれています。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、その独特の構造により、従来のシリコン太陽電池とは異なる特性を持っています。特に、透明導電基膜から電極にかけての層構造は、ペロブスカイト太陽電池の薄さや柔軟性の秘訣となっています。
この特性を活用することで、これまで設置できなかった箇所への太陽電池の設置ができるようになったりとさらなる自然エネルギー活用に繋がると期待されています。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?