政治講座ⅴ1548「レアアースは豊富にある! のさばるな中国共産党」
恩を仇で返す。鄧小平が三顧の礼で迎えた松下電器の中国工場も共産党デモ集団に破壊された。日本からGDP2位を奪い傲慢な態度でのさばっているのが中国共産党である。オーストラリアには石炭の輸入禁止、台湾にはパイナップルの輸入禁止、日本にはレアアースの輸出禁止と魚介類の輸入禁止など、嫌がらせのオンパレードである。やはりデカップリングを考えた方が良い。日本の領海にはレアアースの埋蔵量は国内消費量の数百年分相当と推計される程ある。
今回はレアアースに関する報道記事を紹介する。
皇紀2683年12月16日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
中国が支配するレアアース、先進国の対応策は?
Milton Ezrati によるストーリー • 1 日
中国はいま、世界的にレアアース(希土類元素)の生産を支配していると言っても過言ではない。これらの金属は、スマートフォンから電気自動車(EV)、風力タービン、大陸間ミサイルに至るまで、ほぼすべての科学技術製品に欠かせないものだ。中国は定期的にレアアースの輸出禁止をちらつかせて経済力を誇示している。
直近では、米国が中国に対して先端半導体の輸出規制を強化し、また先端技術分野における中国への米国からの投資を制限したことに対する報復として、中国は米国へのレアアースの輸出を停止した。中国がこのような戦術をとるのは、これが初めてではない。こうした戦術は短期的には効果をあげるかもしれないが、長期的戦略としては問題がある。
レアアースとは17種類の元素の総称だ。それぞれが現代経済や防衛、日常生活において重要な役割を果たしている。例えばランタンは、ガドリニウムと同様、スマートフォンやコンピュータの画面の色を作り出すのに使われており、スピーカーが音を出せるのはネオジムとプラセオジムのおかげだ。また、テルビウムとジスプロシウムがあるからこそ、着信音がはばかられる会議中などに携帯電話を振動させることができる。こうした一部の例だけを取ってみても、レアアースの幅広い用途がわかるだろう。
米シンクタンクのブルッキングス研究所の調査によると、中国は現在、世界のレアアースの約60%を生産し、85%を加工している。ただ、この圧倒的なシェアは、レアアース鉱床の大部分が中国領内にあるという地質学的な偶然とは何の関係もない。
それどころか、名前に「レア(希少)」という文字が入っているにもかかわらず、レアアースは決して希少ではない。銀や金よりも豊富だ。特に一部に集中しているわけでもない。これらの金属の採掘と精製が環境破壊につながるため、現在中国が独占しているにすぎない。中国は最近まで、西側の先進国ほどに環境問題を気にかけていなかった。米国は環境問題を自国で抱えるのではなく、進んで太平洋の向こうへ送りつけたのだ。
米国はかつてレアアースを自給自足していたが、現在操業中の鉱山はカリフォルニア州モハーベ砂漠にあるMPマテリアルズが運営するマウンテンパス鉱山のみだ。MPマテリアルズは時々、規制上の問題から操業を停止せざるを得ないことがある。採掘しても、分離・精製という環境問題をはらんだ工程のために中国に出荷している。
中国がこうしたレアアースの世界的な流れを牛耳っている間、世界は事態をそのままにしておくことを厭わなかった。だが、中国がレアアースの供給制限をあまりに強化したり頻繁に行ったりするのであれば、欧米の先進国や日本が他の供給源を開拓し、環境への負荷が少ない精製技術を開発することはほぼ間違いない。
日本はすでに、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の主要7カ国(G7)にそのような計画を提案している。岸田首相は最近のG7の会合で、7カ国のすべてあるいは数カ国が共同で、アフリカと中南米でレアアースの採掘・精製を行う体制を模索し、資金を注入することを提案した。
日本がそうした取り組みを主導するのは当然だ。中国はすでに2回、日本へのレアアースの輸出を停止した。1回目は数年前、両国が領有権を主張する東シナ海の無人島をめぐって緊張が高まったときだ。さらに直近では、先端半導体の中国への輸出を規制するという米国の措置に日本が加わったため、中国は再びレアアースの輸出を禁止した。これまでのところ、欧米諸国は日本の提案を拒否してはいないものの、反応は薄い。だが、中国の動きが経済に大きな影響を及ぼすようになれば、欧米諸国はほぼ間違いなく日本の考え方やそれに近いものに賛同するだろう。
中国は、輸出禁止をちらつかせる手法をあまり取らない方がいいだろう。結局のところ、中国は今以上に輸出を失うことはできないのだ。中国の輸出はすでに減少しており、経済は不穏なペースで減速している。
さらに、大幅な輸出禁止は欧米を日本の計画や類似するものへと向かわせ、中国の現在の支配的な地位を揺るがし始めるだろう。米国、欧州諸国、そして日本は、中国の影響力が及ばない場所で採掘・精製を行うことで、中国の支配を終わらせようと、直ちに措置を講じることが予想される。仮に中国が通常通りのレアアース輸出を再開したとしても、代替の供給源があれば中国は高圧的な手段に出ようとしなくなるだろう。(forbes.com 原文)
レアアースの脱中国依存へ、南鳥島沖の水深6000m海底から採掘...技術開発に着手
2022/10/31 07:49
政府は、小笠原諸島・南鳥島沖の水深6000メートルの海底で確認されているレアアース泥の採掘に乗り出す。来年度に採掘法の確立に向けた技術開発に着手し、5年以内の試掘を目指す。電子機器の生産に不可欠なレアアース(希土類)の国内調達を実現し、中国からの輸入への依存脱却を図る。2022年度第2次補正予算案にも、関連経費を盛り込む方向だ。
複数の政府関係者が明らかにした。レアアース泥は、レアアースを豊富に含む泥で、12年に同島沖の排他的経済水域(EEZ)の海底でも確認された。同島沖の埋蔵量は国内消費量の数百年分相当と推計される。
採掘には内閣府の事業で今年8~9月、茨城県沖で試験が成功した世界初の技術を用いる。試験では海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が深さ2470メートルの海底まで「揚泥管」を伸ばし、ポンプで1日約70トンの泥を吸い上げることができた。来年度以降、深海に対応するためにポンプの強化や揚泥管の延長などを進め、1日350トンの採掘を目指す。
中国では鉱山などで採掘できるのに対し、深海の底からの採掘はコストをどこまで下げられるかが課題となる。政府は今後5年間で効率的な採掘・生産の手法を実現させ、28年度以降は民間企業が参入できる環境を整えたい考えだ。
レアアースは、スカンジウムやイットリウムなど17種類の元素の総称。供給量が減ればスマートフォンやパソコン、次世代自動車などの生産に支障が生じ、国民生活にも影響が出る。
現在はほぼ全量を輸入に頼っており、6割は中国から輸入している。中国はレアアースの輸出管理を強めており、供給途絶のリスクが懸念されている。このため、政府は経済安全保障推進法に基づき、国が供給確保に関与する「特定重要物資」にレアアースも指定する方針だ。
<独自>南鳥島レアアース来年度試掘 脱中国依存へ
2023/10/21 18:48
政府は日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)沖の海底で確認されているレアアース(希土類)について、令和6年度中に試掘を始める方向で調整に入った。経済対策を反映する5年度補正予算案に関連経費を盛り込む。レアアースはハイテク製品に欠かせないが、中国からの輸入に大半を依存する。試掘が成功すれば、レアアースの国内調達に一歩踏み出すことになる。
複数の政府関係者が21日、明らかにした。
南鳥島沖では、水深約6000メートルの海底でレアアースを含む泥が大量に確認されている。東京大などの調査では、世界需要の数百年分相当の埋蔵量があるという。
政府は7年1~3月の試掘開始を想定しており、調査期間は約1カ月を見込む。4年に茨城県沖の水深約2470メートルの海底から泥の回収に成功しており、この技術を応用する。
計画では、地球深部探査船「ちきゅう」から水深約6000メートルの海底まで「揚泥管」を伸ばし、1日当たり約70トンの泥を吸い上げる。海底で作業するための水中ドローン(ROV)の製作費用として、5年度補正予算案に20億円を盛り込む方向だ。
試掘後の泥は、国立研究開発法人「海洋研究開発機構(JAMSTEC)」の横須賀本部で分析する。将来的には、南鳥島に泥の脱水や分離を行う拠点施設を整備する案も浮上している。
日本国内で利用するレアアースは、中国からの輸入が約6割に上る。中国は近年、対立する国に輸出入規制をはじめとする経済的威圧を展開している。平成22年にも尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を機に、レアアースの対日輸出を規制した。
レアアース
産出量が少なく、抽出が難しいレアメタル(希少金属)の一種で、17種類の元素(希土類)の総称。スマートフォンや電気自動車、省エネ家電などの製造に欠かせない。少量を加えるだけで素材の性能を高めるため「産業のビタミン」とも言われる。
国産レアアース、前例なき挑戦 深海底での採掘、技術確立めざす
2020年1月20日 5時00分
日本近海の海底下に存在すると見込まれている資源・レアアース(希土類)について、海洋研究開発機構(JAMSTEC)などが採掘に向けた研究を進めている。深海底からの採掘は前例がないが、2022年度に実用化につながる技術の確立を目指す。
レアアースは電気自動車やスマートフォンなどの精密機械に欠かせない…
日本として初となるレアアース(重希土類)の権益を獲得します
2023年3月7日
経済産業省が所管する独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(本部:東京都港区、理事長:細野哲弘)と双日株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:藤本昌義)は、2011年に共同で設立した日豪レアアース株式会社(本社:オランダ・アムステルダム)を通じ、Lynas Rare Earths Limited(本社:豪州・パース、代表者:アマンダ・ラカーズ)が行う重希土類の生産等に関して出資を行うことになり、日本向けに供給する契約を締結しました。
経済産業省では、金属鉱物資源の権益獲得等に資する事業に対して、これまで出資による支援を行っていますが、重希土類を対象とした支援は初めてとなります。
1.出資支援の概要
金属鉱物資源の探鉱・開発は、資源獲得に不確実性があること、生産に至るまでのリードタイムが長いこと、必要な資金が多額であること等、大きなリスクを伴います。
企業のリスクの一部を負担するため、企業が関与する金属鉱物資源の探鉱・開発を出資により支援しています。
2.事業概要
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下、「JOGMEC」)と双日株式会社(以下、「双日」)は、2023年3月7日、2011年に共同で設立した日豪レアアース株式会社(以下、「JARE」)を通じ、Lynas Rare Earths Limited(以下、「ライナス社」)への総額200百万豪ドル相当の追加出資(以下、「本出資」)を決定しました。
本出資による資金は、ライナス社が掲げる中期成長計画の実行に充当され、軽希土類の増産や重希土類の分離開始などが計画に含まれています。
JOGMECと双日は、本出資に伴い、ライナス社が生産するマウント・ウェルド鉱山由来の重希土類であるジスプロシウム及びテルビウムの最大65%を日本向けに供給する契約をライナス社と締結しました。
これは国内需要の3割程度に相当するものと見込んでいます。
重希土類の権益獲得等に資する事業への出資支援は初めてとなり、日本企業が参画する鉱山からの重希土類一貫生産プロジェクトにおける初の日本向け供給契約となります。
ライナス社は豪州のマウント・ウェルド鉱山でレアアース鉱石を採掘しており、現在日本へ供給される軽希土類は、モーター用磁石の主原料として使用されています。脱炭素化の実現に向け、磁石は今後も需要の拡大が見込まれており、軽希土類の長期に渡る安定供給のため、ライナス社は生産能力の拡大を行います。
更に、ライナス社は、磁石に耐熱性を付与する重希土類であるジスプロシウム及びテルビウムの生産を開始します。現在、これらを生産しているのは中国のみですが、本出資により中国以外のサプライソースが加わることで、日本へのジスプロシウム及びテルビウムの安定供給に寄与します。
(参考1)レアアース(希土類)とは
レアアースは、レアメタルの一種で、17種類の元素(希土類)の総称。
電動自動車に不可欠なレアアース磁石の材料であるネオジムやジスプロシウム、HDDガラス基板等の研磨剤や自動車用排ガス触媒に使用されるセリウムやランタン等がある。
希土類の中で原子量が大きいものが重希土類であり、モーター内部温度が100℃を超えるような用途での磁石には、ジスプロシウムやテルビウムといった重希土類の添加が必要とされている。
ScスカンジウムYイットリウムLaランタンCeセリウムPrプラセオジムNdネオジムPmプロメチウムSmサマリウムEuユウロビウムGdガドリニウムTbテルビウムDyジスプロシウムHoホルミウムErエルビウムTmツリウムYbイッテルビウムLuルテチウム
(参考2)ライナス社に対するこれまでの出融資実績
2011年3月に、JOGMECと双日は、JAREを通じ、ライナス社へ総額 2 億 5 千万米ドル(約 200 億円)の出融資契約を締結し、その後、ライナス社は豪州西オーストラリア州マウント・ウェルド鉱山でのレアアース資源開発、およびマレーシアでのレアアース分離のための精錬所の建設を行いました。双日はライナス社が生産するレアアース製品の日本市場における独占販売契約を締結しており、磁石を含めた様々な用途の需要家にレアアースを安定供給しています。
また、2022年9月には、JOGMECと双日は、JAREを通じ、ライナス社が行うマウント・ウェルド鉱山の追加探鉱に9百万米ドル(約13億円)の追加出資を行っています。
2022年 10月 18日
内閣府戦略的イノベーション創造プログラム
革新的深海資源調査技術
国立研究開発法人海洋研究開発機構
レアアース泥採鉱装置による水深2,470m海域からの
海底堆積物揚泥試験の成功について
1. 発表のポイント
深海に堆積するレアアース泥採鉱を可能にする技術を開発し、水深2,470mの地点における実海域試験を実施し、海底堆積物の揚泥に世界で初めて成功した。
当該試験で用いた採鉱装置は南鳥島海域水深約6,000mの海底下に賦存することが確認されている「レアアース泥」を採鉱することを念頭に設計されており、今後残りの3,000m分のパイプを追加することで南鳥島沖におけるレアアース泥採鉱への道が拓かれる。
採鉱試験に際して、我が国が提案して発行された国際標準(ISO)規格に則り、「江戸っ子1号」などを使用して環境モニタリングを実施し、その実用性を実証した。
2. 概要
南鳥島沖水深6,000mの海底下には広くレアアース泥が分布することが知られています。しかし、レアアース泥は海底面直下に存在する堆積物であり、これまでは大量に海上に引き上げる技術は世界のどこにも存在しませんでした。
今回、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(以下「SIP」という。※1)革新的深海資源調査技術(プログラムディレクター 石井正一、以下「SIP海洋」という。※2)とSIP海洋の研究推進法人である国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和裕幸、以下「JAMSTEC」という。)は、深海に堆積するレアアース泥採鉱を可能にする技術を開発し、JAMSTECが運航する地球深部探査船「ちきゅう」(以下、「ちきゅう」という。図1、※3)を用いた茨城県沖水深2,470mの地点(図2)において実施した実海域試験で、海底堆積物の揚泥に世界で初めて成功しました。加えて、実際の採鉱作業を想定した環境モニタリングの試験運用では、これまでSIPで開発してきた手法の実用性を確認することができました。
【用語解説】
※1
内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP):
内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設したプログラム。
※2
革新的深海資源調査技術:
SIP第2期(2018-2022年度)にて選定された海洋課題。世界に先駆けて深海の海底に賦存するレアアース泥等の鉱物資源に関する革新的深海資源調査技術を段階的に確立・実証し、社会実装を進めて将来を見据えた産業化モデル構築に道筋をつけることを目指す。
※3
地球深部探査船「ちきゅう」:
JAMSTECの所有する科学掘削船。海底下をより深く掘削するため、ライザー掘削技術を科学研究に初めて導入した。巨大地震・津波の発生メカニズム、海底下生命圏、地球規模の環境変動の解明などに挑戦している。
3. 背景
SIP海洋では、南鳥島沖水深6,000mの深海におけるレアアース資源の生産技術開発を目的として研究開発を進め、その当初から「ちきゅう」の既存設備及び能力を最大限活用することを前提とした採鉱システムの開発を目標としました。
2020年には「ちきゅう」で吊下げ可能な6,000mの揚泥管(ライザー)の基本設計を完了し、揚泥管の製作にはコロナ禍の影響で遅延が生じたもの、2021年8月に今回の試験に向けた3,000m分の揚泥管が納入されました。
同年9月には「ちきゅう」船上に操作機器を設置し、新規導入の揚泥管の接続試験を行いました。
2022年5月には水深6,000m仕様の採鉱装置(図3)が完成し、同年6月に揚泥管及び採鉱装置と「ちきゅう」既存設備を一体化した採鉱システムの作動確認を駿河湾において行いました。(図4)
他方、SIP第1期(2014-2018年度)では、海底鉱物資源開発に伴う環境影響評価に利用可能な環境モニタリング手法の技術規格を国際標準化機構(※4)に提案しており、SIP海洋においても継続してこれらの国際標準化に取り組み、2021年(ISO 23731,23732,23734)と2022年(ISO 23730)にISO規格として発行されました(2021年9月27日既報:。
今回の採鉱試験は、これらの環境モニタリング手法を実際の採鉱作業において検証する機会となりました。
【用語解説】
※4
国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization):
世界各国の代表的標準化機関からなる国際標準化機関であり国際規格作成を取りまとめている。
4. 成果
南鳥島沖水深約6,000mに存在するレアアース泥は海底面直下の堆積物(固体)であり、そのままでは、天然ガスや石油(気体や液体)のように地中の圧力で自噴を促すことができないため、これまでの海底資源回収手法では連続して大量に洋上に引き上げることは出来ず、この深度の海底から堆積物を大量に揚泥する技術は未だ存在しません。そのため、本開発はSIP海洋の中でも最も難易度の高い技術開発目標と位置付けられてきました。
今回の技術開発システムは、環境負荷を極力小さくする閉鎖系二重管揚泥方式(※5)を採用し、その上で「解泥」「集泥」「揚泥」を可能とする採鉱装置を一体化した新たな採鉱システムです。具体的には、採鉱装置(解泥機)を海底に差し込む(図5)ことで海底のレアアース泥を採鉱装置に閉じ込めます。固く締まったレアアース泥は採鉱装置内の攪拌装置で攪拌され、海水と混ぜられることで懸濁液(スラリー化・液体化)(図6)となり揚泥管へと移送されます。その後は「ちきゅう」のライザー循環機能を活かし、揚泥菅内を垂直に循環する循環流を発生させ、この流れに沿う形で、レアアース泥を採鉱装置内から船上まで引き上げます。
実海域試験は、茨城沖水深2,470mの海域で2022年8月12日から9月2日にかけて、海底3か所の採鉱サイトにおいて上記の作業を実施し、1日あたりに換算して約70トンの堆積物の回収に成功しました。この深度での海底堆積物の揚泥は世界でも初めてのケースであり、開発した技術は、JAMSTEC及び開発に参加した企業とともに7件の特許申請を行なっております。
他方で、環境モニタリング手法の検証では、「ちきゅう」に備えられた作業用ROV(遠隔操作型無人探査機)に4Kビデオカメラを搭載して採鉱サイトの状況を記録するとともに、「江戸っ子1号」(※6)COEDO型(図7)を採鉱サイトの北50mと200mの地点にそれぞれ設置し、海底堆積物の揚泥作業に伴う海底の環境モニタリングを行いました。
「江戸っ子1号」COEDO型により撮影された映像には、採鉱装置の着底中に回避した魚類が装置の揚収により復帰する様子が確認できております。また、船上では、海産試験株を用いて汚染リスクを判定する洋上バイオアッセイ(※7)及び現場表層環境の健全性を監視するファイトアラートシステム(※8)による環境モニタリングを実施し、周辺環境への影響を船内の実験室でもリアルタイムで簡便に評価できることが分かりました。(図8)
【用語解説】
※5
閉鎖系二重管揚泥方式:
海底面から解泥機を差し込み装置内の堆積物に海水を注入して流動性のある状態にして揚泥管を通じて洋上に引き揚げる方式。採鉱する堆積物が装置内に限定されるため、海底面や海水中への環境影響が低いことが特長として期待される方式である。
※6
「江戸っ子1号」:
中小企業連合を中心として開発されたフリーフォール型の小型ランダー深海探査機。高効率かつ低コストに行う海底観測のため、映像によるモニタリング手法を利用する。COEDOは軽量化を目的に開発された機種。岡本硝子株式会社が製品化。
※7
洋上バイオアッセイ:
国立環境研究所が保有する海産試験株Cyanobium sp.(NIES-981)と遅延蛍光計測を組み合わせ、装置の小型化により船内ラボでも検査を可能にしたバイオアッセイ法 (ISO 23734: 2021)
※8
ファイトアラートシステム:
国立環境研究所が開発した現場海水中の植物プランクトンの光合成活性を準リアルタイムに測定し、光合成活性の変化に基づいて現場水質の健全性を評価するためのモニタリングシステム(特許公開2020-130016)
5. 今後の展望
今回の実海域試験までに完成している3,000mまでの採鉱システムに加えて、南鳥島沖の水深6,000mに存在するレアアース泥回収の実現に必要となる残り3,000m分の揚泥管を入手して6,000m級のレアアース泥回収システムを完成させることで、速やかに南鳥島沖でのレアアース泥採鉱実験及び採鉱効率実証試験の実現を目指します。併せて、今回の環境モニタリングの解析を進め、環境モニタリング手法の有用性についてさらなる検証を進めるとともに、上記南鳥島沖での採鉱実験における環境影響評価を進めてまいります。
※本件に関する資料映像は、以下のURLからご覧いただけます。(本試験について)国立研究開発法人海洋研究開発機構
革新的深海資源生産技術開発プロジェクトチーム プロジェクト長 川村 善久(報道担当)国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部 報道室
参考文献・参考資料
中国が支配するレアアース、先進国の対応策は? (msn.com)
レアアースの脱中国依存へ、南鳥島沖の水深6000m海底から採掘…技術開発に着手 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
<独自>南鳥島レアアース来年度試掘 脱中国依存へ - 産経ニュース (sankei.com)
国産レアアース、前例なき挑戦 深海底での採掘、技術確立めざす:朝日新聞デジタル (asahi.com)
日本として初となるレアアース(重希土類)の権益を獲得します (METI/経済産業省)
レアアース泥採鉱装置による水深2,470m海域からの海底堆積物揚泥試験の成功について<プレスリリース<海洋研究開発機構 | JAMSTEC
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