やさしい物理講座ⅴ69「超高速の炭素イオンや陽子などの粒子線」
医療に使われるものに放射光があるが、これはシンクロトロン放射による電磁波である。「光」とあるが、実際は、人工のものでは赤外線からX線、天然のものでは電波からγ線の範囲のものがあり、特に可視光に限定して呼ぶことは少ない。また、電磁波が放射される現象は他にも多くあるが、シンクロトロン放射による電磁波に限り放射光と呼ぶ。翻って、本記事の粒子線とは主にレプトン、ハドロン、(イオン化された)原子や分子などの粒子によるビームである。つまり、粒子が束状になって進んでいく状態である。粒子線の代表的なものとして、電子線、陽子線、重粒子線、中性子線などがある。(イオン化された)原子や分子などの粒子を加速して粒子線とするようである。
今回は報道記事から最先端の医療技術を紹介する。
皇紀2684年5月18日
さいたま市桜区
理論物理研究者 田村 司
レーザー光で世界最高「光速の50%」粒子線 次世代がん治療に期待
朝日新聞社 によるストーリー
光速の50%という超高速の粒子線を高強度レーザー光によって発生させたと、量子科学技術研究開発機構(QST)などの国際研究チームが13日、発表した。これまでの最高速度を大きく上回る世界新記録だという。次世代の粒子線がん治療装置「量子メス」の小型化に欠かせない技術で、将来、多くの患者の治療につながる可能性がある。
粒子線がん治療は放射線治療の一種で、超高速の炭素イオンや陽子などの粒子線でがん細胞をたたく。X線やガンマ線と違い、体の奥にある患部に集中的に照射でき、手術の難しいがんでも実績をあげている。正常な細胞へのダメージを抑えて副作用も少ないとされる。
ただ、従来の粒子の加速器は大がかりで、治療施設が大きな体育館ほどのものもある。導入コストも100億~300億円と巨額だ。このため、炭素イオンを使う重粒子線治療装置は国内7カ所に限られ、適用対象となる年間7万人の患者のうち、実際に治療できているのは8%にとどまる。普及にはコストを抑える必要があり、QSTは会議室サイズの次世代治療装置「量子メス」の開発を進めている。
参考文献・参考資料
レーザー光で世界最高「光速の50%」粒子線 次世代がん治療に期待 (msn.com)
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