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政治講座ⅴ2016「中国の関税迂回行動、ベトナムへ」


 米国の関税策は表層的・一時的に米国の物価を引き上げる様相となる要因であるが、トランプ政権の主目的は、米国企業がアウトソーシングで海外に工場を移して産業の空洞化した製造業を国内に回帰させようとする政策である。
 これは第1回目のトランプ政権の打ち出したことと変わりがない。保護貿易の手段としての関税は自国の産業育成保護の為に使われてきたが、今は、産業内製化政策として考案されている。だから、迂回工作は穴を塞がれる可能性がある。米国への工場誘致・産業誘致しか米国市場を開拓できないのである。
今回は米国の関税に関わる報道記事を紹介する。

     皇紀2684年11月11日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

報道記事紹介

トランプ当選で中国の輸出業者こぞって「そうだ、ベトナムに行こう」―中国メディア

Record China によるストーリー

6日に投開票が行われた米国の大統領選でトランプ氏が当選したことで、中国の輸出業者の間では、ベトナムの視察がブームになっているという。写真はベトナムのホーチミン市で撮影。© Record China


6日に投開票が行われた米国の大統領選でトランプ氏が当選したことで、中国では中小を中心に輸出業者が大きな試練にさらされることになった。トランプ氏が発言してきた関税の大幅引き上げが実施されれば、会社が存亡の危機にさらされるからだ。一方で、ベトナム行きのツアーや航空券の売れ行きが伸びているという。中国の情報サイトの百度が関連記事を掲載した。
トランプ氏は選挙期間中に、米国に輸入されるすべての商品に10%以上の関税を課し、中でも中国製品には60%の追加関税を適用すると発言した。また、4年以内に中国からの電子製品、鉄鋼、医薬品などの輸入を段階的に停止することも提案した。
多くの中国の貿易業者が、実施されれば生き残りが難しくなると判断し、対策を模索している。典型的な方法がベトナムへの「転進」だ。米国が2018年に中国製品の関税を引き上げた際には、多くの中国企業がベトナムに生産拠点を移して、ベトナム製品として米国に輸出してきた背景もある。
ベトナムにある中国系企業に22年から駐在している劉勇海氏は、中国国内の友人から「視察に行きたい」という電話を次々に受けるようになった。またSNSのグループには「視察」に言及する書き込みが増えた。冗談と思われるが、「トランプ氏が当選を決めた日には、中国からハノイとホーチミン行きの航空券が売り切れた」とする噂も出現したという。
中国からベトナムへの「視察ツアー」では、現地の工場団地の見学などのほかにも、多くの場合には日程に観光が含まれている場合が多く、「大名旅行」の色合いもある。旅行会社は利益を多く出せるために、このような「視察ツアー」に力を入れている。

トランプ当選で中国の輸出業者こぞって「そうだ、ベトナムに行こう」―中国メディア© Record China

しかしベトナムでは中国のように産業チェーンが成立しておらず、鉄やプラスチックなどの素材は中国から輸入せねばならない。また、交通インフラの整備が遅れており、輸送コストも中国より割高だ。そのためベトナムでの生産コストは中国と同等か、場合によっては割高になる。コスト引き下げの要因である人件費も上昇しつつある。トランプ政権により中国製品に対する輸入関税の引き上げが実施された場合と比べれば、ベトナムへの移転は「比較すればお得」ということになるが、トランプ政権がベトナム製品に対する関税を引き上げない保証はない。そのため、インドネシアあるいはマレーシア、フィリピン、中東地域での生産拠点設立を検討する業者もある。前出の劉勇海氏の会社は、米国による18年の関税引き上げを機にベトナム工場を設置した。従業員30人で出発したが、現在は300人を雇用するまでに成長した。ただしベトナムでの投資はまだ回収できておらず米国がベトナム製品への関税引き上げを実施すれば会社は「存亡の危機」に陥るという。中国企業にとっては、米国市場を補填する他の市場を開発する方法もある。例えば欧州市場だ。ただし、欧州は全体としては人口7億人の大市場ではあるが50カ国ほどに分かれており、各国の政策や消費者の好みも異なる。またここ数年間は消費者の購入も軟調だ。東南アジアとアフリカは人口は多いが、人々の購買能力に制約があり、売れる物は多くの場合、低価格商品だ。中東には、戦乱などの恐れもある。米国は購買能力が極めて強く人々の好みもばらつきが比較的少ない、中国にとっての格好の市場だった。輸出先が小規模市場に分散されれば、多様な製品を生産するために、生産ラインなどもより多く必要になり、それぞれの市場を開拓せねばならず、そのためにはそれぞれの市場での人員が必要になる。このことは、低価格商品を強みとしてきた小規模企業にとっては特に、耐えがたい負担であり、未知への冒険になる。中国の投資コングロマリットである中国中信集団による単純な推計によると、米国が中国製品に60%の関税を課せば、中国の対米輸出は16%減り、輸出全体は2.3%減る可能性がある。すでに輸出業の廃業を決意した経営者もいるという。(翻訳・編集/如月隼人)

中国から東南アジアへ工場移転加速か、トランプ氏の対中関税に備え

Devjyot Ghoshal Chayut Setboonsarng によるストーリー

米大統領選の期間中から、中国から東南アジアへの工場移転が続いていた。共和党候補トランプ前大統領が勝利した場合に中国からの輸入製品に高額の関税が適用される事態をにらんだ動きだが、トランプ氏の返り咲きが決まった今、こうした移転が加速するとみられている。写真は中国メーカーのEV。7月4日、タイの工場で撮影(2024年 ロイター/Chalinee Thirasupa)© Thomson Reuters

Devjyot Ghoshal Chayut Setboonsarng

[バンコク 8日 ロイター] - 米大統領選の期間中から、中国から東南アジアへの工場移転が続いていた。共和党候補トランプ前大統領が勝利した場合に中国からの輸入製品に高額の関税が適用される事態をにらんだ動きだが、トランプ氏の返り咲きが決まった今、こうした移転が加速するとみられている。

トランプ氏は次期大統領就任後、米国に輸入される中国製品に60%と、1期目の政権時に発動した7.5─25%よりずっと高い関税を課すと約束している。

自動車や電子機器などの工場が集まるタイ、マレーシア、ベトナムといった東南アジア諸国は、この関税政策の恩恵を受ける公算が大きい、というのが企業関係者や法律専門家などの見方だ。

タイの事業用不動産開発大手WHAグループのジャレエポーン・ハルコーンサクル最高経営責任者(CEO)によると、米大統領選でトランプ陣営の勢いが強まるとともに中国の顧客から問い合わせの電話が殺到した。2017─21年のトランプ前政権時代、既に東南アジアへの工場移転は起きていたものの、これからより本格化するだろうという。

ジャレエポーン氏は、WHAがタイとベトナムに展開する広さ1万2000ヘクタール強の工業団地を管理運営する部門でセールス要員と中国語ができる人材を拡充しつつあると明かした。

タイの別の事業用不動産大手アマタが運営する工業団地に今年開設された90の工場のうち、およそ3分の2は中国から移転してきた企業だった、と創業者で会長のビクロム・クロマディトは話す。

ビクロム氏は、トランプ氏返り咲きは中国にとって「大打撃」で、同社が東南アジア4カ国で運営する広さ150平方キロの工業団地に中国から移転を検討している企業は倍増する可能性があると見込んでいる。

同氏は、アマタが今月になってラオスの工業団地建設も開始したと述べた。ラオスは首都ビエンチャンと中国南部を結ぶ高速鉄道が既に開通している。

東南アジアの自動車産業の拠点となっているタイの電気自動車(EV)業界には、中国の自動車メーカーからこれまで14億ドルの資金が投じられた。

タイのピチャイ商務相は「中国からの多額の投資を、われわれが米国に輸出できるような形にしていきたい、これは実現すると信じている。米国民も中国国民もわれわれを愛しており、われわれはどちら側かを選ぶ必要はない」と記者団に語った。

マレーシアでも企業団体の指導者が、半導体セクターに1000億ドルの新規投資を呼び込み、世界的なサプライチェーン(供給網)再編の動きの追い風を受けられると期待を示した。

同国製造業連盟を率いるソー・ティアン・ライ氏は「この再編でマレーシアは米国やその他重要市場向け輸出シェアを拡大する新たなチャンスを得られるだろう」と話した。

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