やさしい物理講座ⅴ56「発電・送電の熱効率から考察する内燃エンジン車vsEV車」
CO₂が地球に害悪だ(環境に悪い)と主張する場合、人類の消費する電力を火力発電を使わずに賄えるかと言う命題に答えられるのであろうか。人類の発展は火の使用CO₂の排出から始まった。炎は燃焼で起こるがそこからは色々な電磁波が出ているのである。電磁波も色々な波長(正確には振動数)であらわされる。、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線(あるいはガンマ線)に大別される。
CO₂を排出しない車として、EV車を求める者が多いが、EVの電気は何処で発電されて、CO₂を排出しないで電気なのか。火力発電なら100%の燃料で電気になる発電効率は30%となる。それを充電器まで送電線で電気を送る効率は27%となる。つまり100%の燃料で8%しか充電に使えないのである。この8%で車を動かすならば、発電せずに、車の動力に燃焼力を使う方が動力として効率がよいのである。
現在のEV車が燃料からの発電・充電されるまでを俯瞰するなら、忙しい現代においてのんびりと充電する時間に拒絶を感じるのであろう。現に中国では高速道路では充電渋滞を起こしているとのマイナス面が報告されている。
もし、EV車をエコという観点とらえると必ずしもエコといえないのである。そして、充電までのエネルギー効率は8%であり全体から熱効率を俯瞰すると92%の熱エネルギーを無駄に捨てて車を走らせることになるのである。
今回はEV車と内燃エンジン車を比較したときの熱効率に焦点を当ててみた。
皇紀2683年(令和5年)4月30日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
熱効率とは、
熱機関の性能を表現する物理量であり、熱として投入されるエネルギーのうち、機械的な仕事(動力)や電気的なエネルギー(電力)などに変換される割合である。 ある熱機関に投入される熱が Q であるときに取り出される仕事を
と表した時の係数 η がこの熱機関の熱効率である。
例として、熱機関であるエンジンの目的は、動力の供給である。1000ジュールの熱エネルギーが与えられたエンジンが300ジュール分の動力を出力した場合、このエンジンの熱効率は30%である。残りの700ジュールは発熱や摩擦抗力や震動など、目的ではない形の物理現象に消費され、目的外に費消されたのであり、損失と呼ばれる。熱効率は熱力学第一法則により1(100%)を越えることはなく、熱力学第二法則により1になることも決してない。
様々な熱効率
熱機関の場合、熱効率は燃料の化学エネルギーが有効な仕事に変換された割合を指す。
発電所の場合、熱効率は燃料の保有発熱量(kcal)が発生電力量(kW)に変換された割合を指す。発電所の熱効率には、発電端熱効率と送電端熱効率がある。
発電端熱効率は、タービンに繋がれた発電機が発電したそのままの電力量を用いて算出する。
送電端熱効率は、発電端電力量から発電所内で使った電力量を差し引いた正味電力量(net power)を用いて算出する。
熱効率50%はなにがスゴいのか? 日産の次世代「e-POWER」発電専用エンジンに迫る!
2月26日、日産自動車(以下、日産)は、シリーズ・ハイブリッド・システム「e-POWER」の発電専用エンジンで、熱効率50%を実現したことを発表した。50%のなにがスゴイのか。By 世良耕太
2021年3月1日
10%アップのために要した時間は約50年
日産自動車は2月26日、次世代「e-POWER」向けの発電専用エンジンで、世界最高レベルの熱効率50%を実現する目処が立った、と、発表した。
「自動車用ガソリンエンジンの平均的な最高熱効率は30%台であり、40%台前半が限界」とされているなかで、「50%を実現」とぶち上げたのだ。熱効率50%のどこがすごいのか?
日産が発表した熱効率50%を実現するエンジン技術。
量産エンジンでは、トヨタの「カムリ・ハイブリッド」などが搭載する2.5リッター直列4気筒自然吸気エンジン(A25A-FXS)や、レクサス「UXハイブリッド」が搭載する2.0リッター直列4気筒自然吸気エンジン(M20A-FXS)、そして「ヤリス・ハイブリッド」の1.5リッター直列3気筒自然吸気エンジン(M15A-FXE)が最大熱効率41%を達成しており、世界トップクラスだ。それを50%にするというのだから、一気に9%ものアップであり、41%を基準に考えれば、伸び率は22%になる。
日産は2030年代の早い時期に熱効率50%を実現したいと意気込んでいる。30%程度だった熱効率を40%に向上させるのに約50年を費やしたことを考えると、この先10年で50%にしようとする目標がいかに意欲的かわかろうというものだ。
カムリが搭載する2.5リッター直列4気筒ガソリン・エンジンは、熱効率41%を達成した。
熱効率を高める意味
なぜ50%なのか? というと、ひとつにはキリがいい。それに、エンジンの開発に携わる技術者にとって、長い間チャレンジングな目標とされていたからだ。熱効率50%は、いくらなんでも無理だろうとされてきた目標だったのである。宇宙探査でいえば、火星に有人宇宙船を着陸させるような。日産はその目処が立ったので、内なる興奮を抑えつつ、「目処が立ちました」と、控え目に、しかし堂々と発表をおこなったのだ。
熱効率とは、燃料が持つエネルギーに対し、出力として取り出せる割合を指す。熱効率が40%ということは、残りの60%は出力にならずに捨てていることになる。出力が100kWなら、150kW分はどこかに捨てているわけだ。出力=仕事にならなかった分は損失ということになる。熱効率を高めて損失を減らせられれば、投入するエネルギー(消費する燃料の量)がおなじでも出力を高められるし、出力がおなじでよければ投入するエネルギーは少なくて済み、燃費を向上できる。燃費が向上すれば、CO2排出量は減る。
小難しい話は抜きにするが、エンジンの熱効率を高める手段は、比熱比を上げることと、圧縮比を上げることのふたつに極論できる。水は熱すれば沸騰して気体になるし、冷やせばかたまって氷になる。
それを「なぜ?」と、思わないで、そういうものであると認識するのとおなじように、熱効率を上げるには比熱比を上げることと圧縮比を上げることであると覚えるくらいがいいだろう。
圧縮比はともかく、比熱比については補足が必要だ。比熱とは「一定量の気体の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量」と、定義され、比熱比が小さいほど暖まりにくく、大きいほど暖まりやすい。これでもピンとこないと思うが(筆者もそうだ)、エンジンの場合は空燃比をリーンにするほど比熱比が大きくなる。
e-POWERは駆動用モーターと発電用エンジンを搭載する。
空燃比は燃料と空気の比率のことで、空気中の酸素とガソリンが過不足なく燃焼する空気と燃料の比率は空気14.7gに対してガソリン1gである。この14.7:1の空燃比をストイキオメトリー(理論空燃比。略してストイキ)と、呼ぶ。
理論空燃比に対する空気過剰率を示すのがλ(ラムダ)で、λ=1(ラムダワン)はストイキ。この数字が1より大きい(空燃比が高い)場合をリーン、1より小さい(空燃比が小さい)場合をリッチと呼ぶ。日産が熱効率50%を実現するガソリン・エンジンは、空気過剰率をλ>2にするのがポイントだ。つまり、過不足なく燃焼するのに必要な空気量の2倍より多い空気を燃料と混ぜることになる。2倍の空気で薄める(希釈する)わけだ。
その結果、混合気は薄くなる(リーンになる)。ガスコンロに着火する際、ガスの出口で火花を飛ばすのは、その付近のガスが濃いからだ。離れたところで火花を飛ばしても火がつきにくいことは、容易に想像できるだろう。比熱比を高く、空燃比をリーンにしていくと、ガスコンロから離れたところで火花を飛ばすようなもので、着火しにくくなる。
e-POWERは現行セレナにも搭載される。
その課題を解決する技術が、STARC(スターク:Strong Tumble and Appropriately Stretched Robust Ignition Channel)と呼ぶ新燃焼コンセプトだ。リーンな(希釈された)混合気を確実に燃焼させる技術で、強いタンブルを形成して放電チャンネルを伸長させるのがポイントだ。タンブルは水平方向からシリンダーを見たときに中心が見える渦(縦渦)のことだ。この渦の流れを制御して、点火プラグの電極部にぶつかるようにし、電極部で発生する稲光のようなアーク放電(放電チャンネル)を適度に伸長させる。その結果、リーンな混合気に対してエネルギーを供給できる表面積が大きくなり、安定したエネルギー供給が可能になって初期火炎核(火種のようなもの)の形成を促進する。これが、リーンな混合気を確実に着火する技術だ。
点火プラグの電極部を狙うタンブルの流速は遅すぎても、速すぎても狙った放電チャンネルは形成されない。たとえていえば、風向きがころころ変わる球場でど真ん中にストレートを投げ続けるようなものだが、それだけでは不十分で、毎回球速をそろえる必要もある。ものすごく高度なコントロールが求められる技術だ。
日産が開発している熱効率50%のエンジンは、新燃焼コンセプトのSTARCで比熱比を高めるのに加え、ミラーサイクルや急速燃焼、クールドEGRといった従来技術の応用によってノッキング限界を高め、理論熱効率の向上につながる高圧縮比にも取り組んでいる。
日産の将来
このエンジンのもうひとつの特徴は、e-POWER(イーパワー)専用の発電専用エンジンに限定した点だ。
e-POWERはハイブリッド・システムの一種で、エンジンとモーターの駆動を使い分けて走るのではなく、駆動に使うのはモーターのみとしたところに特徴がある。
販売中の量販EV(電気自動車)「リーフ」。
エンジンは発電専用に割り切ることができるため、低速で走ったり、高速で走ったり、強く加速したりといった運転条件に左右されることなく、エンジンにとって最適な条件で運転させられる。カーブを投げたり、外し球を投げたりする必要がなく、ど真ん中のストレートを投げることだけに集中すればいい。球種をひとつに絞ることで(球速もそろえなければならないが)、熱効率50%というチャレンジングな目標を達成するための道が開けたというわけだ。
日産は2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2030年代の早期に主要市場に投入する新型車をすべて電動車両にする目標を掲げている。タイプの異なるハイブリッドと電気自動車(EV)で電動化を進めていく例が多いなかで、日産はEV(電気自動車)とe-POWERに絞るという。
ユーザーにしてみれば、どちらを選択しても、100%モーター駆動であることは変わりない。エンジンは残すが、熱効率を高めて損失を減らし、CO2排出量を減らしたい……そのためにe-POWERを選択したというのである。もちろん、効率だけのためではなく、モーターがもたらす走りの楽しさを重要視してのことだ。文・世良耕太
環境にやさしい内燃機関へ
乗用車用エンジンの熱効率50%超を
達成2019年度更新
飯田 訓正(慶應義塾大学 大学院理工学研究科 特任教授)石山 拓二(京都大学 大学院エネルギー科学研究科 教授)金子 成彦(東京大学 大学院工学系研究科 教授)大聖 泰弘(早稲田大学 研究院次世代自動車研究機構 特任研究教授)SIP革新的燃焼技術
背景と経緯
自動車の電動化が進む中で、2040年でも世界の全自動車保有台数の約89%は、内燃機関が搭載されると予測されています。従って、世界のCO2排出量を減らすためには、内燃機関の熱効率向上は不可欠です。
熱効率を飛躍的に向上させるには、燃焼過程で動力に変換されないで捨てられているエネルギー損失を極限まで低減できる新しい燃焼コンセプトを創出し、さらにその燃焼過程をこれまで以上に高度に制御することで、そのコンセプトを実現する必要があります。
そのためには、熱の移動、流体の挙動、物質の移動、化学反応、およびこれらの相互作用によりエンジン内で高速に進行する燃焼現象を科学的に解明し、その基礎的知見に基づく技術開発が重要です。また、エネルギー損失を低減するには、高速に動くエンジンの仕組み上どうしても発生する、摩擦によって失われるエネルギーを減らす技術、および排気として放出されるエネルギーを有効利用するターボ過給や熱電発電といった技術の開発も必要です。
熱効率向上は、これらの知見を統合することで初めて成し遂げられる、複合的な科学技術の粋と言えます。
世界予測による自動車保有台数の構成。2040年でも内燃機関は主力となっている。
(出典: ‘International Energy Agency (2018) , Global EV Outlook 2018、また以下データを用いてJSTで作成, 'International Energy Agency (2017), Energy Technology Perspectives 2017, OECD/IEA, Paris')
研究の内容
上記のような背景により、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的燃焼技術」では、機械工学やエンジン工学のみならず、燃焼科学、伝熱科学、反応化学、流体力学、トライボロジー、高分子化学、計算科学など、多種多様な分野にまたがる大学・公的研究機関(以下、大学等)に属する研究者が結集して、熱効率向上のための研究開発を行ってきました。
また、JSTとの連携協定に基づき、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)が、大学等に対し、産業界のニーズの提示、実験装置の提供、安全確保の支援、また実機検証の支援などを行ってきました。
このような産産学学連携の体制により、以下のような研究成果を得て、さらにこれらの成果を、排気の温度・流量や燃焼によって発生する圧力などの条件を一致させ、かつ相乗効果や背反も考慮して統合することによって、ガソリンエンジンでは51.5%、ディーゼルエンジンでは50.1%の正味最高熱効率を達成することができました。
1.ガソリン燃焼の高効率化に関する研究開発
燃焼コンセプト:「超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)」コンセプト実現のための課題:従来の点火技術だと着火しにくい。大きな放電エネルギーを与えて部分的に着火させても、火炎が伝播するときと消炎し伝播しないときの変動が大きく、燃焼が安定しない。
実施内容と成果:超希薄燃焼場に強力なタンブル流(縦渦)を導入した、高乱流・希薄燃焼の現象を解明。その結果に基づき、安定着火を可能とする点火技術を開発。これにより、エネルギー損失の低い低温燃焼となる超希薄燃焼を実現し、熱効率向上の実証に成功。
2.ディーゼル燃焼の高効率化に関する研究開発
燃焼コンセプト:「高速空間燃焼」コンセプト実現のための課題:エンジン燃焼室の壁近くでの火炎の滞留や後燃えによって、エネルギー損失(冷却損失)が生じたり燃焼エネルギーの仕事への変換効率が低くなったりする。
実施内容と成果:燃料噴霧の発達や燃料濃度の分布に関する詳細な解析と実験により、燃料噴射の在り方と火炎形成の関係を解明。また、後燃えの要因を特定。その結果に基づき、燃料噴霧が空気を巻き込みながら最適に分散する、燃料噴射技術を開発。これにより、火炎が壁から離れて配置され、かつ後燃えを低減する高速空間燃焼を実現し、熱効率向上の実証に成功。
3.損失低減に関する研究(ガソリン燃焼とディーゼル燃焼の両方に共通)
3-1.機械摩擦損失の低減に関する研究研究開発概要:固体潤滑剤と軟質金属から構成される高耐久の低摩擦層およびその表面改質技術の開発などにより、エンジンの摺動表面に低摩擦機能を付与し、機械摩擦損失の55.5%低減を実証。3-2.排気エネルギー有効利用に関する研究(ターボ過給の高効率化)研究開発概要:流体解析に基づき翼列、流路を新たに設計するとともに、伝熱と軸受での摩擦を考慮したターボ過給機システムを構築。市販ターボ過給の効率を10ポイント以上上回る、最大69%程度の効率値を実証。3-3.排気エネルギー有効利用に関する研究(熱電変換システムの高効率化)研究開発概要:発電温度域を中低温に拡大できる、新たな素子およびモジュールを開発。排気熱との熱交換システムを含めて、最大1.3%程度の熱効率相当の性能があることを実証。
正味最高熱効率50%超を達成した技術の概要
プロジェクト参画機関は日本全国に跨り、参画者数は5年間の累積で延べ1300名にのぼる。
多様なメンバーの力を融合するため、産学のメンバーが自由に利用できる研究拠点(オープンラボ)が整備された。
今後の展開
本プロジェクトで得た最先端の知見や技術などは、企業での競争領域の開発研究や設計に取り込まれ、乗用車としての性能開発、信頼性・耐久性や、製品としての量産性などを確保する方策と合わせて検討され、製品化に結びつきます。
また、各成果をさらに発展させるための産産学学連携による研究開発を、本プロジェクト終了から間をおかずに開始・持続できるようにする、産学での検討も進んでいます。
参考文献・参考資料
政治講座v1025「エコに騙されてEV車を買う愚かさ」|tsukasa_tamura|note
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