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政治講座ⅴ473「戒厳令の裏でロシア軍の強奪が始まった:孫子の兵法に照らし考察」
やりたい放題! ロシアの弱さが露呈したウクライナ侵攻であったと歴史に刻まれるのであろう。今回は孫子の兵法を交えてこの戦いを考える。
皇紀2682年10月22日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
孫子の兵法の概略
第一章:始計篇
兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。
まず最初に戦争をやる意義について記述されている。「戦争とは国家にとって一大事であり、国民の生死に関わることだから慎重に検討しないといけない」という意味である。
戦うということはお金も人も資源も多くのものを使い戦闘以外に兵站の重要性が重視される所以である。ロシア軍のウクライナ侵攻に関してこの兵站の不備のために初戦が敗退して撤退を余儀なくされているのである。
故に、これを経(はか)るに五事を以ってし、これを校(くら)ぶるに、計を以ってして、その情を索(そと)む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。
「道・天・地・将・法の5つの条件が整っているか重要である。
「道」とは道理のこと。それをやる納得するだけの大義名分があるのかどうか? ロシアの主張はネオナチの撲滅と言いながら、やっていることはナチスドイツと同じである。
「天」とはタイミングのこと。時流や季節、天気などを考慮して今すべきことなのかどうか?世界情勢、時代の流れ、自国の国内産業の力、天然資源のみが勇逸の国力の源泉である。国際社会の反対がある中での実行も失敗の原因、「天」は味方していないのである。
「地」とは場所のこと。どの場所でことを起こすのか?場所の優位性、地の利があるのか?ということ。クリミア半島の略奪に成功した経験をウクライナ全土に応用したのが間違いのもと。
「将」とはリーダーのこと
つまりリーダーが立派かどうか、信頼されているか?ということ。いかなる優れた戦略であっても、リーダーが間抜けではうまくはいかないということ。プーチンの側近も殆ど離反して、残された将軍も解任されている。
「法」とは軍の力のこと
軍の能力はどうか?ということ。戦争を実行するのは軍。軍がつよいかどうか?武器は?資金は?編成は?配置は?足の速さ、食料は?と言った様々な要素で軍の力は決まる。ソ連崩壊により、人材、資金、資源は分散されて、旧ソ連程の科学技術や軍事力はないことが今回のウクライナ侵攻により露呈したと見るべきであろう。
これらの条件が揃って、初めて戦いに出る決断ができると孫子は言っている。
<第1章のまとめ>『無謀な戦いはしてはいけない』
第二章:作戦篇
次に作戦。戦いの方針について書かれています。
兵は勝つことを貴び、久しきを貴ばず
作戦で大事なのは「短期決戦をすべきであって戦いは長期に渡ってはいけない」ということである。戦争の期間が長いと消耗戦で潰れてしまいます。
プーチンの仕掛けた「特別軍事作戦」(宣戦布告なき戦争)は長期戦になり、ウクライナに奪還されつつある。作戦の失敗である。
<第2章のまとめ>『戦いは長期化してはいけない』
第三章:謀攻篇
次に、戦いの心構えや戦略の基本が書かれている。
およそ兵を用うる法は、国を全うするを上となし国を破るはこれに次ぐ
この故に、百戦百勝は善の善なるものにあらず。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり
「相手を傷つけずに降伏させることが最も良いことであり、相手に勝って相手を降伏させるのは二番目のことである。だから、100回戦って全て勝ったとしてもそれは良いことではなく、最も良いのは戦わずにして相手が降伏することが最も良いことだ」ということ。
彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず
「相手を知り、自分を知れば、負けることはない」と言っている。
国際社会がウクライナを支援していることを甘く見ている。核兵器で恫喝しているが、核兵器でウクライナ国土を荒廃させることがロシアの目的なのか?自国の繁栄のためなら愚かな事である。
つまり無用な戦い、消耗は避けて、確実に勝てる方向性を探ることが重要であり、それはそもそも戦うというよりも求める成果さえ手に入れば良いのであると孫子はいっています。
<第3章のまとめ>『戦わずに勝つこと』
第四章:軍形篇
戦うことになった場合の、理想の勝ち方を示した章です。
先ず勝つべかざるをなして、以って敵の勝つべきを待つ
「先に守りを固めて、敵の隙を狙うこと」と言っています。つまり、守りが頑丈で負けさえしなければ勝つチャンスはあるということ。守りが肝心だということ。
善く戦う者は勝ち易きに勝つ者なり。故に善く戦う者は勝つや、智名なし、勇攻なし。
「優れた名将とは勝ちやすいものと戦い勝つ。だから、名将が勝っても有名になったり賞賛されることがない」と言っています。
孫子は、多くの人に賞賛されるような勝ち方をするものを多くは優れていると思っているが、そうではないと言っています。名将は勝つべくして勝つのだと。準備を整え、情報を集め、勝てるとき、勝てる相手のみと戦うのが名将なのだと言っているのです。
<第4章のまとめ>『守りを固めて確実に勝てる戦いをせよ』
第五章:兵勢篇
この章では「勢い」の重要性を説く。
およそ戦いは、正を以って合し、奇を以って勝つ
「戦いというのは、対峙する時は正攻法で、勝つ時は奇襲で勝つものである」と説く。「奇」と「正」の組み合わせは無限にあり、その組み合わせの戦術で勝つものだと説く。
善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責めず
「名将とは、個人個人の兵の能力に頼らずに、勢いを重視して戦うものである」と説く。重要なのは「全体の流れ」。「勢い」なのある。
乱は治に生じ、怯(きょう)は勇に生じ、弱は彊(きょう)に生ず。
治乱は数なり。勇怯は勢なり。彊弱は形なり。
「戦いにおいては、混乱はすぐに穏やかになり、怯えは勇気に変わリ、弱者は強者に変わるものである。混乱するかしないかは軍の力で決まり、怯えるかどうかは軍の勢いで決まり、弱者になるかどうかは軍の態勢によって決まるのである」と説く。
第5章のまとめ>『兵の力よりも流れを重視せよ』
第六章:虚実篇
この章では前章で軍の勢いを生み出すために重要とする4つの条件の中の1つ「虚実」について記述されている。
孫子曰く、およそ先に戦地に処(お)りて敵を待つ者は佚(いつ)し、後れて戦地の処りて戦いに趨(おもむ)く者は、労す。故に善く戦う者は、人を致して人に致されず。
「先に戦場についたものは余裕を持って戦うことができ、遅れて戦場についたものは戦いに苦労するであろう。つまり、名将とは、人を左右する側であって、人に左右される側であってはいけない。」と説く。つまり「主導権を握れ」ということである。
実を避けて虚を撃つ
兵に常勢なく、水に常形なし
「手厚い場所を避けて、守りの弱い部分を攻めよ。水に形がないのと同じく、戦い方にも決まった形はないのである」と説く。
<第6章のまとめ>『主導権を握れ』
第七章:軍争篇
この章では戦いで最も重要な「迂直の計」が書かれています。武田信玄で有名な「風林火山」もこの章にある。
迂(う)を以って直となし、患を以って利となすにあり
「回り道をすることが直進することとなり、損をすることが利益になるのである」これが「迂直の計」。「損して得取れ」である。
故に、其の疾(はや)きこと、風の如く
其の徐(しず)かなること、林の如く
侵掠(しんりゃく)すること、火の如く
動かざること、山の如く
知り難きこと、陰(かげ)の如く
動くこと、雷霆(らいてい)の如し。
「風林火山」です。
「風のように速いかと思えば、林のように静かになる。炎のように激しく攻撃をしたかと思えば、山のように動かない。影に隠れたかと思えば、雷のように神出鬼没。敵の領土を奪う時は人員を分業させ、領土を拡大するときは守りを固めること、的確な判断をすることが大事である。敵より先に迂直の計を使うものが勝つ。これが勝つ方法である」と孫子は説く。
つまり、簡単に言えば「常に敵の裏をかいて自分にとって有利となる状況を先手を打って作り出すことを的確に判断すること」ということである。
<第7章のまとめ>『損して得とれ』
第八章:九変篇
「九変」とは「状況によって対応を変える」ということ。臨機応変のような意味です。孫子はこの「九変」を知らない武将は軍を率いる資格がないと言説く。
塗(みち)に由(ゆ)ざらる所あり
軍に撃たざる所あり
城に攻めざる所あり
地に争わざる所あり
君に受けざる所あり
「行ってはいけない道もある。戦ってはいけない敵もいる。攻めてはいけない城もある。奪ってはいけない土地もある。君主の命令であっても従ってはいけない命令もある」と孫子は説く。
将に五危有り
必死は殺さるべきなり
必生は虜(とりこ)にさるべきなり
忿速(ふんそく)は侮(あなど)らるべきものなり
廉潔(れんけつ)は辱(はずか)しめらるべきなり
愛民は煩(わずら)わさるべきなり
さらに将軍が間違いやすい危険の例を5つ挙げている。
「必死であれば殺される。生きようとすれば捕虜にされる。怒りっぽいものはナメられる。真面目であれば騙される。みんなのことを考えすぎてもうまくいかない」と孫子は説く。このようなリーダーは負け戦をしがちということです。臨機応変に対応するものこそ優れたリーダーであるということ。
<第8章のまとめ>『固定観念を外し臨機応変に対応せよ』
第九章:行軍篇
この章ではより主に危険回避の考え方や、人材育成など、具体的な戦い方の話になるので現代に活用できる部分を抜粋。
敵近くして静かなるは、その険を恃(たの)べばなり。遠くして戦いを挑むは、人の進むを欲するなり。その居る所の易(い)なるは、利なればなり。
ここでは敵の観察方法を説く。
「敵が近くにいるのに攻めてこないのは攻めるのが難しい場所だからである。敵が遠くにいるのに攻めてくるのは、こちらを誘い出しているからである。敵がそこに居るのは有利な場所だからである」と孫子は説く。
多くは「見るだけ」で「観察」しようとしない。何事も理由があってそうなっているのである。常に優位でいるためにはよく観察し、情報を集めることが大事なのである。
「数(しばしば)賞するは、窘(くる)しむなり。数(しばしば)罰するは、困(くる)しむなり。先に暴にして後にその衆を畏(おそ)るるは、不精(ふせい)の至りなり。」
人材育成について書かれている。脱走兵の多いのも教育不十分がもたらした結果である。
「やたら賞金をあげても、やたら罰しても、人は育たない。最初に散々怒っておいて、後になってご機嫌を伺うとは、間抜けのすることである」
「まだ親密になってもいないのに厳しくしてばかりでは部下は育たない。逆に親密だからと言ってき厳しくしないのも部下は育たないだろう」
「だから、思いやりによって教育をし、厳しさによって統制を取らなければいけないのである」
「それらに基づいて教育をすれば部下は育ち、そうでなければ部下は従ってはくれない。上司と部下との関係はそうして作られるのである」
<第9章のまとめ>『危険を予測し常に優位に立ち、部下を育てよう』
第十章:地形篇
この章では戦う場所、地形について記載。
孫子曰く、地形には、
通なる者有り、
挂なる者有り、
支なる者有り、
縊なる者有り、
険なる者有り、
遠なる者有り。
・通(つう)・・敵も味方も行き来しやすい場所
・挂(かい)・・攻めやすいが撤退しにくい場所
・支(し)・・・敵も味方にとっても悪い場所
・縊(あい)・・くびれた場所
・険(けん)・・険しい場所
・遠(えん)・・自国から遠い場所
どの場所が有利なのかは状況や自社の強みによって異なるから、最も最適な場所取をしていくことが大事である。
彼を知り、己を知れば、勝、乃(すなわ)ち殆(あや)うからず。天を知りて地を知れば、勝、乃ち窮(きわ)まらず
「相手を知って自分を知り、タイミングを待って、最適な場所を活かせば必ず勝てる」と孫子は説く。
<第10章のまとめ>『地形に合わせた戦術を使う』
第十一章:九地篇
ここでは地形だけでなく戦う地域、領域について9つのパターンが記載。中でも商売に応用しやすい敵国との共闘についての名言がこちら。
呉人(ごひと)と越人(えつひと)と相悪(にく)むも、その舟を同じくして済(わた)り風に遇うに当たりては、その相救うや左右の手のごとし
「呉と越の敵同士であっても、同じ船に乗っていれば船が危なくなればお互い協力し合うものだ」と孫子は説く。
<第11章のまとめ>『状況に合わせた戦術を使う』
第十二章:火攻篇
ここでは「火攻め」について記載。
憤(いきどお)りを以って戦いを致すべからず。利に合して動き、利に合せずして止む
「怒りによって行動してはいけない。利益があれば行動し、不利であれば撤退することである」と孫子は説く。
<第12章のまとめ>『利益にならない戦いはしない』
第十三章:用間篇
最後の章です。尊師の兵法で最も重要とされるのがこの章。「スパイ」のことである。
而(しか)るに爵禄百金愛(おし)みて敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり
孫子は「お金を惜しんで敵情視察をしないものはバカである。」と説く。
<第13章のまとめ>『スパイによって敵情視察をせよ』
以上、孫子の兵法より。
現在の戦況報告
原発の街のロシア軍、「逃げ出し始めた」 ウクライナ国営企業が投稿
朝日新聞社 2022/10/20 20:38
![](https://assets.st-note.com/img/1666316177583-ozEUI7SzeR.png?width=1200)
ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは20日、ザポリージャ原発があり、ロシア軍が占拠する中南部の都市エネルホダルから、「占領軍が逃げ出し始めている」とSNSに投稿した。投稿の真偽や、退避を図っているロシア軍部隊の規模などは不明だ。
エネルゴアトムは投稿で、「(南部の)ヘルソン州、(中南部の)ザポリージャ州にいるロシア軍を襲ったパニックや恐怖、敗北の予感はエネルホダルにも及んでいる」と主張。19日から20日にかけ、市内のロシア軍人らが滞在する地区から、略奪品の運び出しが始まったと記した。
市内のホテルでは大規模な略奪が記録されたとし、ロシア軍はテレビや冷蔵庫、家具、やかんなど「できる限りすべての物」をバスやトラックに積み込んで運び出したという。
エネルホダルがあるザポリージャ州は、ロシアが一方的に併合したと主張する4州の一つ。投稿はエネルホダルでの略奪について、プーチン大統領が4州に出した戒厳令が隠れみのになり、事実上許容されているとの見方を示した。
親ロ派、住民「退避」急ぐ=ロシア部隊撤退観測も―ウクライナ
2022/10/20 18:01
![](https://assets.st-note.com/img/1666315796398-6b2J5A1DMw.png)
(19日の地元自治体提供動画からの静止画)(EPA時事)
【ロンドン時事】ロシア占領下のウクライナ南部ヘルソン州で、親ロシア派当局が住民の「退避」を急いでいる。ロシアが今後、ウクライナによる同州奪還を阻止する戦いに出るとの見方もある一方、英国防省は20日の戦況報告で、ロシアが「大規模な部隊撤退を真剣に検討している」と分析。情勢は混迷を深めている。
ヘルソン州ではウクライナ軍が反転攻勢を強めており、近く州都ヘルソン市の奪還を試みると伝えられる。プーチン・ロシア大統領は20日付で、「併合」した同州を含む東・南部4州に戒厳令を発動。ヘルソン州の親ロ派は住民と行政機関の移動に着手し、サリド「知事代行」は6日間で最大6万人が退避すると語った。
My opinion
大義名分もなく、政治的にも、戦略的にも、戦術的にも、ロシアの敗戦は濃厚である。
更なる自滅への道へプーチンは国民を地獄への道にいざなうのか。
「Z」旗は「卍」旗を思わせる。
ロシアのやっていることはナチス時代の他国侵略の手法とそっくりである。国際社会はロシアを見放している。
戦術核兵器を使うと恫喝しているが、核兵器を使ったら、「銃を先に抜いた者が悪者」として「西側は待ってました」とばかりに攻撃を開始するであろう。
歴史的に「西側は好戦的な種族」である。
「十字軍」然り、米国の「マニフェスト・デスティニー(英語: Manifest Destiny)」然り。これは、元々はアメリカ合衆国の西部開拓を正当化する標語であった。「明白なる使命」や「明白なる運命」、「明白な天命」、「明白なる大命」などと訳出される。「文明は、古代ギリシア・ローマからイギリスへ移動し、そして大西洋を渡ってアメリカ大陸へと移り、さらに西に向かいアジア大陸へと地球を一周する」という、いわゆる「文明の西漸説」に基づいたアメリカ的文明観である。
大東亜戦争(太平洋戦争)は米国と大日本帝国の国益を掛けた戦いに米国は勝利した。
次の米国の狙いはユーラシア大陸のロシアである。
今がその時として狙いを定めているのであろう。
その中で最近、覇権を唱える中国共産党が脅威として目立ち始めている。
ロシアへの対処はNATOにお任せして、好戦的な米国は中国の台湾侵攻を契機とする戦いを狙っているのではなかろうか。米国vs中国共産党、どちらに軍配が上がる? どんとはれ!
参考文献・参考資料
原発の街のロシア軍、「逃げ出し始めた」 ウクライナ国営企業が投稿 (msn.com)
親ロ派、住民「退避」急ぐ=ロシア部隊撤退観測も―ウクライナ (msn.com)
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