政治講座v162「プーチン氏の誤算と原発攻撃の懸念」
クリミア半島の侵攻の成功が今回のウクライナ侵攻でも成功するであろうと甘い期待であったと思われる。侵攻の3日間でウクライナ人に歓迎と祝福を受けるであろうなどと甘い誤算があったものと思われる。もう、長期化しており、ウクライナ人からの反撃を受け、ロシア内部からも反戦デモも勃発して、世界からも経済制裁を受けており、大誤算である。今回のウクライナ侵略のあまい誤算の結果が理性を狂わせて原子力発電への攻撃という手段をとる可能性もあり得る。今回はその辺の誤算を裏付ける引用記事を掲載する。
皇紀2682年3月9日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
はじめに
ロシアによるクリミアの併合(ロシアによるクリミアのへいごう)は、国際的にウクライナの領土と見なされているクリミア半島を構成するクリミア自治共和国・セヴァストポリ特別市をロシア連邦の領土に加えるもので、2014年3月18日にロシア、クリミア、セヴァストポリの3者が調印した条約に基づき実行された。
1991年のソビエト連邦崩壊・ロシア連邦成立後初の、ロシアにとって本格的な領土拡大となった。クリミアとセヴァストポリにおける住民投票、独立宣言、併合要望決議、そしてロシアとの条約締結という段階を踏んで併合宣言が行われたが、国際連合やウクライナ、そして日本を含む西側諸国などは主権・領土の一体性やウクライナ憲法違反などを理由としてこれを認めず、併合は国際的な承認を得られていない。その時、G8からロシアを排除して、また以前のG7に戻った。
今回のウクライナ侵略の誤算の結果が理性を狂わせて原子力発電への攻撃という手段をとる可能性もあり得る。
「プーチン大統領はいらだっている」 米情報機関トップが証言
2022/03/09 11:21
【ワシントン=渡辺浩生】バーンズ米中央情報局(CIA)長官は8日、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり下院情報特別委員会で証言し、ウクライナの強力な反撃により当初の侵攻計画が進まないことに「プーチン露大統領は憤慨し、いらだっている」と分析した。国防情報局(DIA)のベリエ長官は2月24日の侵攻以来の露軍の死者数は推定で2000人から4000人との見方を示した。
バーンズ氏は、ウクライナのゼレンスキー政権を倒し親露のかいらい政権を樹立させる目標を掲げたプーチン氏は、首都キエフを侵攻開始2日程度で制圧できると見込んでいたと指摘。
「近代化した軍が最低限のコストで素早く決定的に勝利できると自信をもっていたが、どれをとっても間違っていた」と語った。
ただし、バーンズ氏は、プーチン氏が今後、ウクライナの民間人の犠牲をまったく顧みずに攻撃を強化する危険もあると指摘した。
露軍の死者数について、ロシア国防省は2日に498人と発表している。ベリエ氏は自ら示した概算について「信頼度は低い」と語ったものの、ロシア側の発表数を大幅に上回るのは間違いなさそうだ。アフガニスタンの20年間の対テロ戦争で米軍の死者は2400人超とされる。
ヘインズ国家情報長官も証言し、プーチン氏が命じた核兵器運用部隊の戦闘警戒態勢について、ソ連時代にさかのぼっても「極めて異例」と指摘。ただし、核戦力の態勢に現時点で変化はみられないと語った。
専門家が語る「ロシア軍の原発攻撃」の無謀さ 原発は武力攻撃に耐えきれず、安全対策も無力
岡田 広行 2022/03/08 23:00
ロシア軍は、ウクライナの原子力発電所を武力攻撃し、施設を占拠した。戦時下で原発が標的となったのは歴史上初めてのことで、世界に衝撃が走っている。
原子力安全・テロ対策に詳しい専門家の佐藤暁氏に、今回の事態の重大性と行き着く先について聞いた。
――ロシアによるウクライナ侵略では、軍隊による原子力施設への攻撃・占拠が相次いでいます。
そこまでやるのかと衝撃を受けた。同時に何が目的なのかと考えてみた。原子力発電所を占拠することにより、これを盾にしようとしているのではないか。
つまり、占拠したうえで原発の周辺をミサイル基地化することにより、戦争がエスカレートした場合でも、NATO(北大西洋条約機構)軍が攻撃できないように盾にしようという思惑があるのではないか。チェルノブイリ原発周辺を軍事基地化すれば、NATO軍が攻め込んできたとしてもそこを攻撃できない。
チェルノブイリ原発の4基はすでに廃炉になっているが、使用済み核燃料プールには多数の使用済み核燃料が保管されている。また、爆発を起こして大破した4号機は「石棺」で覆われているが、ここが攻撃を受けたら大規模な放射能汚染につながりかねない。それを恐れて攻撃できなくさせるという狙いがあるのではないか。
チェルノブイリ原発で「ロシア軍が電力を切断」 電力会社が発表
毎日新聞 2022/03/09 21:08ロシア軍の侵攻が続くウクライナの北部にあるチェルノブイリ原発で、ロシア軍が9日、外部からの電力供給を切断した。ウクライナ国営電力会社ウクルエネルゴが発表した。施設全体に電力が全く供給されない状態になっているという。
使用済み核燃料が貯蔵されている施設があり、冷却ができなくなれば放射性物質が放出される恐れがあるとしている。
ウクルエネルゴによると、チェルノブイリ原発で働く職員が居住するスラブチチの街全体も停電になった。「軍事行動が続いており、必要な修理作業や電力供給の復旧ができない状態」という。火災の際の消火システムも作動しない状況だという。
また、国際原子力機関(IAEA)によると、チェルノブイリ原発の監視システムのデータ送信が8日、停止した。
ロシア軍は2月24日にウクライナ侵攻を開始し、同日、チェルノブイリ原発を武力で制圧した。さらに南東部のザポロジエ原発を3月4日に制圧した。この際、原発内で交戦があり、施設内の建物で火災が発生した。
一方、英国防省などによると、露軍は9日も首都キエフの北郊を攻撃したが、ウクライナ軍に前進を阻まれた。露軍は北東部ハリコフや北部チェルニヒウ、南東部マリウポリを包囲し、激しい攻撃を続けた。ウクライナ軍は制空権を握っているといい、露空軍に大きな損失が出ている模様だ。
激戦地から住民を避難させるルート「人道回廊」の設置による脱出は9日も続いた。露国防省は8日、人道回廊のルート周辺でモスクワ時間9日午前10時(日本時間午後4時)から戦闘行為を一時停止すると発表していた。【杉尾直哉、林哲平】
ザポリージャ原発への影響
――稼働中のザポリージャ原発もロシア軍の攻撃を受けて、占拠されました。
原発を攻撃すること自体、やってはならないことだ。国際条約でも禁止されている。
他方、(6基ある原発のうち)4号機の運転が継続されていることから見て、ロシア軍は見境なく攻撃したわけでなく、一定の冷静さはあったとみることができる。全基を停めて発電できなくしたのでは、所内での電源の融通ができなくなってかえって危険だからだ。
ただし、万が一、攻撃がエスカレートしていたら、発電中の原子炉が真っ先に事故を起こし、とんでもない事態になっていた可能性がある。
――ウクライナのクレバ外相は、原子炉が攻撃されて最悪の事態になった場合には、「被害は(1986年に起きた)チェルノブイリ原発事故の10倍にもなる」とし、ゼレンスキー大統領は「ヨーロッパが破滅する」とまで警告しました。
確率はともかくとして、まったくありえないことではない。
――最悪の場合、どういうことが考えられますか?
まずもって申し上げたいことは、原発は軍事攻撃に耐えられるような安全性を有していないということだ。
銃撃戦であれば格納容器の破壊には至らないだろうが、ミサイルが撃ち込まれたら、格納容器を貫通してしまう。格納容器は鉄筋コンクリート製だが、内側には数ミリの鉄板が張られている程度だ。
穴が開いたところに、焼夷弾のような燃焼エネルギーの大きな爆弾が投下された場合、最悪の事態につながりうる。
ジルコニウム合金の燃料被覆管がいったん発火すると、それが発熱反応によっていっそう火勢が増し、炉心や燃料プールの核燃料から、高温の煙に乗って膨大な放射性物質が環境中に放出されるおそれがある。
ここで中途半端に水をかけると水蒸気が一気に発生し、今度は高温の水蒸気とジルコニウムが化学反応を起こしてさらに水素ガスが生じる。
火災が発生した時点で一気に水をかけて火を消し止めることができればいいが、戦闘が続いている中でそれができるとは思えない。
原子炉が攻撃されても原子爆弾のような爆発現象は起こらない。
しかし、全方位に拡散される放射性物質による影響は、10メガトンの水爆をもはるかに上回る。実際に何が現実に起きるかは、攻撃を指揮する者たちの悪意や狂気のレベルによる。
国際標準的な安全対策の有効性は
――ザポリージャ原発は、電源系統を多重化したり、非常用ディーゼル発電機を備えるなど、過酷事故対策を整えていたようです。
ヨーロッパ原子力安全規制グループ(ENSREG)は、ウクライナの原発が過酷事故にどこまで耐えられるかについてのウクライナの原子力規制当局による「ストレステスト」に対するピアレビューを実施しており、その報告書が2015年に発表されている。
それによれば、ザポリージャ原発を含めて、ウクライナの原発の所外電源は、各号機に3系統以上あり、外部から電力の供給を受けられるようになっている、また、非常用ディーゼル発電機も各号機に3系統ずつ備えられている。同発電機には7日分の燃料がある。
さらにザポリージャ原発については、近くの水力発電所と火力発電所からもバックアップの電源が得られるようになっている。もちろん、原発内での融通も可能だ。バッテリーによる直流無停電電源も3系統ある。そして最終的な熱の逃がし先として、川や冷却塔、スプレーポンド、さらには大きな貯水池もある。福島原発事故を踏まえた重大事故対策の設備として、可搬式のディーゼル発電機やポンプのユニット、消防車も備えている。
このように、国際標準的な安全対策は講じられている。なお、最悪の事態(クリフエッジ)の評価としては、全電源喪失と最終排熱喪失が同時に起きたうえに、運転員が何も対応できない場合に、炉心損傷に至るまでの時間は、ザポリージャ原発の原子炉と同じ炉型の場合に3.5~4時間となっている。ただし、これは武力攻撃された場合の想定ではない。
言えることとして、福島原発事故後の安全対策は、戦争下においてはまったくの無力ということだ。
参考文献・参考資料
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