政治講座ⅴ2091「似非同盟、敵は誰か、また利敵行為か」
政治講座ⅴ2064「日鉄・USスチール買収計画の行方」|tsukasa_tamura
「鉄は国家なり」、「半導体は産業のコメ」などと嘗て言われて、国策で産業育成と保護が行われた。しかし、時代は変わって、古い時代遅れの産業「鉄」に固執するのは、失敗することが目に見えている。今や「鉄」に代わる新素材が「花形」産業になりつつある。
M&Aで成功する例と失敗する例がある。買収したら隠された簿外債務や資本金が債務超過であったり、不良債権が子会社に「飛ばし」が行われていたり、企業の生産能力が見掛け倒しだったりして、高い「のれん代」になるケースも散見される。「鉄」に代わる新素材の開発こそ新産業革命であると考える。USスチールにこだわると高い買い物をさせられて、過去に「東芝」はストーン・アンド・ウェブスターの買収を失敗したことを教訓にすべきである。つまり、「日本製鉄」は「東芝」の失敗を教訓にすべきである。しかも政治的に祝福されないままでは失敗は目に見えている。
今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2685年1月7日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
報道記事紹介
日本が脅威なのか-USスチール問題が問う「国家安全保障」の意味
Eric Martin によるストーリー
(ブルームバーグ): USスチールは数カ月にわたり、日本製鉄への売却が生き残る唯一の方法だと主張していた。しかし、バイデン米大統領は異なる考えを持っており、同盟国である日本に拠点を置く企業による買収であっても、国家安全保障上の懸念を解消するには不十分だと結論づけた。
これが、グローバルな貿易と投資における新しい政治のあり方だ。
買収阻止を3日に発表するに当たり、バイデン氏は日本製鉄による買収が「米国の国家安全保障と重要なサプライチェーンにリスクをもたらす」という「信頼に足る証拠」があると述べたが、その証拠が何であるかは明らかにしなかった。
バイデン氏は重要な物品の供給を確保するために大統領に経済に対する権限を与える国防生産法(DPA)を引用したが、これは同氏が米国の国家安全保障に対する脅威となるものの定義をより拡大して解釈していることをあらためて示すものだった。
「友好国や同盟国を安全保障上の脅威と宣言するのは異例だ。国家安全保障の定義がかつてよりも拡大しているように思える」と、クリントン政権の商務省高官で、現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザーを務めるビル・ラインシュ氏は述べた。日本は米国にとって、極めて重要な同盟国だ。
買収阻止の決定は2010年代半ばまで米国の貿易および投資政策の特徴であったグローバル化の原則から同国が急激に離れたことを示すものだと元政府当局者や専門家は指摘する。米国はそのシフトの一部として、漠然と定義された「国家安全保障」という考えに依存してきた。
「大統領や政権関係者が国家安全保障を理由に特定の行動を正当化する場合、国家安全保障を自分たちが望むように定義することができる」と、大西洋評議会ジオエコノミクスセンター、ステートクラフト・イニシアチブの常勤シニアフェロー、サラ・バウアーレ・ダンツマン氏は述べた。
ジャンピエール大統領報道官は買収阻止について、日本とは何の関係もなく「USスチールが米国資本で米国経営のままである」ことを目的としたものだと政権の決定を擁護した。
23年には米国への外国直接投資は引き続き増加していたが、より多くの投資を歓迎する人々はUSスチールを巡る決定が発するシグナルを懸念している。
この決定は、米国で生産を拡大しようとする他の外国企業を阻む危険性がある。米商工会議所の国際貿易部門を率いるジョン・マーフィー氏は声明で「米国への国際投資に悪影響を及ぼす可能性がある」と懸念を示した。
多くの通商法の専門家は、トランプ氏が今月に米大統領に就任した後、国家安全保障を理由とする措置をさらに強化するだろうと予想している。
「かなり広範な権限を持つ政府が、それを抑制しつつ行使することを確実にしたいと切に思う」と大西洋評議会のバウアーレ・ダンツマン氏は述べた。
USスチールの件で国家安全保障を持ち出す議論は「信ぴょう性が薄い」と付け加えた。
原題:Nippon Rejection Shows National Security Means Whatever You Want(抜粋)
More stories like this are available on bloomberg.com
©2025 Bloomberg L.P.
日鉄のUSスチール買収計画、大統領「禁止命令」の舞台裏
Alexander Ward によるストーリー
• 2 時間 • 読み終わるまで 5 分
ジョー・バイデン米大統領は日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収を禁止する命令を出すにあたり、国家安全保障担当のトップ補佐官らの意見には従わなかった。代わりに、労働組合の側に立つという自身のレガシー(遺産)を強化するため、国内政策担当の側近に同調した。
政権関係者によれば、バイデン氏のスタッフたちは最近、二つの幅広い選択肢を提示した。141億ドル(約2兆2160億円)の買収計画を完全に阻止するか、あるいは、日本製鉄がUSスチールを所有することが米製造業のサプライチェーン(供給網)に悪影響を与えるとの懸念を払拭(ふっしょく)できるまで承認を遅らせるかだ。
関係者によれば、非公開の話し合いの中で、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)とアントニー・ブリンケン国務長官は東アジアの同盟国との重要な関係を損ないたくないと考える外交政策志向の側近として、取引を存続させる選択肢を推した。一方、スティーブ・リチェッティ大統領顧問をはじめとする国内担当スタッフは、2023年12月に買収計画が発表されて以来この取引に声高に反対してきた全米鉄鋼労働組合(USW)の幹部たちに味方するのが最善の策だと述べたという。バイデン氏は米国史上最も労働組合寄りの大統領を自称している。
バイデン氏の国家安全保障問題担当のアドバイザーたちは、この取引を承認する道筋を見つけることに一様に賛成したわけではない。例えば、米通商代表部(USTR)代表のキャサリン・タイ氏は買収中止を支持した。しかし最終的な議論では、バイデン氏の政治的本能とグローバルな検討事項が相いれないことが明らかになったと関係者は語る。
ある政府高官は、国家安全保障と経済問題の両方が「プロセス全体を通して、また大統領との話し合いの中でも議論された」と述べた。
バイデン氏は何カ月もの間、USスチールを外国の手に渡さないとする発言を続け、最終的には1月3日にその約束を実行に移すことで、1年間に及ぶ密室の議論を終わらせた。
「現在と将来にわたって米国内で所有・運営する強力な鉄鋼業を確実に維持することは、大統領としての私の厳粛な責任だ」とバイデン氏は声明で述べた。
USW指導部は、USスチールの売却後に日鉄が減産すれば、製鉄所の雇用が危険にさらされると述べた。同組合は、生産を古い製鉄所から、従業員が少なく低コストの工場に移すというUSスチールの戦略を、日鉄が継続するとみている。
第2次世界大戦以来、米国と緊密な関係にある日本が米企業を買収するのを阻止することで、バイデン氏は、米国を常にパートナーに寄り添う揺るぎない同盟国にするとしてきた自身の戦略を損なった。それでもこの動きは、たとえ友好国を困らせても重要な産業を保護するという政権の姿勢と一致するものだ。例えば、米国企業に巨額のグリーンテクノロジー補助金を提供するインフレ抑制法(IRA)は、欧州諸国から過剰な保護主義だと非難された。
対米外国投資委員会(CFIUS)と呼ばれる外国企業の対米投資を審査する省庁間委員会は、日本製鉄によるUSスチール買収が国家安全保障に及ぼす影響について何カ月も検討した。財務省・国務省・国防総省などを代表する同委員会のスタッフたちは、この取引を大統領に推薦するかどうかで意見がまとまらなかった。日本製鉄の規模の大きさと世界的な広がりを考えれば、USスチールの生産が海外工場からの輸入に置き換えられる可能性があり、米鉄鋼産業のリスクとなるかどうかで意見が分かれた。
バイデン氏は買収を禁止する声明の中で、この懸念に触れている。「この買収は、米国最大級の鉄鋼メーカーを外国の支配下に置くものであり、われわれの国家安全保障と重要なサプライチェーンにリスクをもたらす」
ドナルド・トランプ次期大統領は選挙戦でこの買収を阻止すると繰り返し宣言していたが、これはバイデン氏とトランプ氏の間で意見が一致した珍しいケースだった。トランプ氏の大統領就任を間近に控え、日本企業が米国のサプライチェーンを守ることができるとバイデン政権を説得する時間は事実上尽きてしまったと関係者は語った。
CFIUSは審査期間を延長し、日本製鉄に時間を与えたが、「日本製鉄は国家安全保障上の懸念に対処するために約1年を費やしてもうまくいかなかった」と前出の政府高官は語った。結局のところ、条件付きで取引を阻止するのではなく、全面的に取引を拒否することをバイデン氏が決めた理由はそこにあるという。
日鉄は、同社が連邦政府に提示した、USスチールの工場への30億ドル近い投資や米国内での鉄鋼生産の保証、連邦政府によるUSスチール事業の監督を含む複数の提案や合意案にCFIUSが応じなかったことに、不満を表明した。
先週初めにホワイトハウスに直接提示された最終案の一部として、日鉄は政府の承認なしにUSスチールの生産能力を10年間一切削減しないことを約束した。
日鉄とUSスチールの弁護士はCFIUSが提起した異議や懸念について、しばしば国家安全保障問題の検討の域をはるかに超えていたと主張した。両社は12月17日付の書簡で、同委員会が「事実無根の架空のリスク」をつくり出していると非難した。この取引に関する委員会の調査は、ホワイトハウスからの「許されざる影響」を反映していると両社は述べた。
「このような虚偽がまかり通るのであれば、CFIUSとこのプロセスに関わったすべての人々のレガシーを汚す結果となる。そこにはバイデン大統領も含まれる」と同書簡で述べている。
この1年間、日鉄はUSスチールが操業している州の政治家たちにこの取引への支持を求めた。一部の指導者は、組合や一部の有権者との意見の不一致を示すのを避けるため、公的な支持を差し控えた。USスチールの最高経営責任者(CEO)は、取引が失敗した場合、同社は最終的にペンシルべニア州ピッツバーグ近郊にある製鉄所を閉鎖し、本社をピッツバーグから移転する可能性があると警告していた。同州のジョシュ・シャピロ知事は3日、USスチールが従業員に責任を持ち、州内の雇用や本社を脅かさないことを期待すると述べた。
東京の駅構内に掲げられた日本製鉄の広告。米政権関係者によると、バイデン氏は日本が米国経済に投資することを今でも歓迎している
ペンシルベニア州選出のジョン・フェッターマン上院議員(民主)は、バイデン氏の決断を称賛した。しかし、党員全員が満足しているわけではない。オバマ政権で経済諮問委員会の委員長を務めたジェイソン・ファーマン氏は、「特定の利害に屈する哀れで臆病な決断であり、米国の繁栄と安全を低下させる」とXに投稿した。「法律を乱用して同盟国を裏切る彼(バイデン氏)を見るのは残念だ」
政権関係者は、バイデン氏は日本に敵意を持っていないと主張している。日本の政府当局者との最近の電話会談で、バイデン氏の側近は、同氏が日本による米国経済への投資を望んでおり、長きにわたる関係はこの荒波を越えて続いていくと強調した、と話した。
バイデン氏の発表後、国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は記者団に対し、「われわれは、特にインド太平洋地域において、信頼できるパートナーであること、条約上の同盟関係や約束を真剣に受け止めていることを、何度も何度も証明してきた」と述べた。「率直に言って、この決定が、あるいは他のいかなる決定も、米国および世界において堅実で一貫した、安定的な米国のリーダーシップ以外のものを示しているとは思わない」
日鉄買収禁止、反対や懸念 命令前に米高官ら、米紙報道
共同通信 によるストーリー
【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポストは5日付紙面で、バイデン米大統領が日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収禁止を命じる前に、複数の米政府高官が買収禁止の立場に反対や懸念を示していたと報じた。是非を巡り政権内で意見が割れていたことが浮き彫りになった。
同紙によると、ブリンケン国務長官やイエレン財務長官に加え、キャンベル国務副長官、エマニュエル駐日大使らが数カ月間、政権内で反対、懸念の意思を示していた。
イエレン氏は安全保障上のリスクを示す明確な証拠がないまま全面的に買収を却下すれば、審査した対米外国投資委員会(CFIUS)の政治的中立性を損なう恐れがあると表明。司法省は、買収反対が訴訟を招く可能性があると警告した。
禁止命令の前日の2日にホワイトハウスで開かれた会議では、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らが、条件付きで買収を阻止する案を提示。日鉄が安保上のリスクを抑えるさらなる提案をする余地を残し、トランプ次期政権に判断を先送りするものだった。
日鉄株が下落、バイデン大統領のUSスチール買収計画の阻止判断で
稲島剛史 によるストーリー
(ブルームバーグ): 日本製鉄の株価は6日、バイデン米大統領がUSスチール買収計画を阻止する決定を下したことを受け下落した。両社は「法的権利を守るためにあらゆる措置を追求する」としているが、買収が失敗すれば日鉄は成長戦略の見直しや違約金の支払いが必要となる可能性がある。
日鉄の株価は午前の取引で一時前営業日比2.3%安の3108円を付けた。バイデン大統領による判断を受け、USスチール株は3日の取引で6.5%安となっていた。
SMBC日興証券の山口敦アナリストらは6日付のリポートで、事前の報道により買収が成立する可能性は低いと織り込んでいたものと思われ、「サプライズはない」とコメントした。
日鉄が2023年12月に発表したUSスチールの買収計画を巡っては、対米外国投資委員会(CFIUS)が国家安全保障上の脅威となるか審査を行っていたが意見がまとまらず、最終判断が先月、バイデン大統領に委ねられた。
日鉄や日本政府からは反発の声が上がる。日鉄は3日に公表した声明で、決定は「バイデン大統領の政治的な思惑のためになされたもの」と批判。武藤容治経済産業相も同日、日本の産業界から今後の日米間の投資について強い懸念の声が上がっており、懸念払拭に向けた対応をバイデン政権に求めていくとした。
日鉄はバイデン大統領の決定について7日に会見すると、共同通信が幹部への取材を基に報じている。
ただバイデン大統領による決定を覆すハードルは高く、USスチール買収を通じて規模の拡大を目指していた日鉄は成長戦略の修正を余儀なくされる公算が高い。
また、買収の不成立となれば日鉄には5億6500万ドル(約890億円)の違約金を支払う必要が生じる可能性がある。同社は今期(25年3月期)の純利益は前期比44%減の3100億円になると見込んでおり、違約金による痛手は小さくない。
山口アナリストらは違約金は保有資産の売却などにより吸収可能との見方を示した。「経済好調な米国市場への進出による長期的な成長期待の後退はネガティブ」だとした上で、USスチール買収がなくても、インドでの鉄鋼事業や資源事業の拡大で粗鋼1億トン、事業利益1兆円を達成すると予想した。
関連記事
日本が脅威なのか-USスチール問題が問う「国家安全保障」の意味米M&Aに安保リスク、バイデン氏の買収阻止が分水嶺に日本製鉄のUSスチール買収、日米関係に影響も-米大統領が阻止へ
More stories like this are available on bloomberg.com
©2025 Bloomberg L.P.
バイデン米大統領の“最後っ屁”、日本製鉄にUSスチール買収阻止命令[新聞ウォッチ]
ひと昔前の正月三が日の新聞は、ご祝儀の観測記事を含めた“特ダネ”が紙面を飾ったものだったが、ここ数年はお屠蘇気分もすっ飛ぶようなスクープ記事にお目にかかったという記憶がない。
ところが、今年は新年早々に米国のバイデン大統領が、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画への禁止命令を発表したことで、各紙の4日付け朝刊は1面トップで「USスチール買収禁止、米大統領が命令」などと取り上げていた。
それによると、バイデン氏は日鉄とUSスチールに対し、原則30日以内に「買収計画を完全かつ永久に放棄するために必要な全ての措置」を講じるよう命令。「国内で所有・運営される強固な鉄鋼産業は、国家安全保障に不可欠であり、サプライチェーン(供給網)にとっても極めて重要だ」と説明したという。
ただ、日鉄とUSスチールも共同声明を発表し、「バイデン大統領が禁止命令を決定したことに失望している。自身の政治的な思惑のために、米国鉄鋼労働者の未来を犠牲にすることにほかならない」と反発。「法的権利を守るためのあらゆる措置を講じていく」と表明した。
翌5日の各紙も「日鉄、米政府を提訴へ」(朝日)や「日鉄、米提訴で打開狙う」(日経)などと1面トップで報じたほか、総合面などに解説記事、さらに社説のテーマにも「日米関係に禍根残す買収阻止」(読売)や「米大統領の判断は疑問だ」(産経)と解説。
このうち、日経は「USスチール買収阻止は不当な介入だ」(日経)とのタイトルで「日鉄による技術移転や投資が米国にどんな恩恵があるのか。株主や政府、労組だけでなく、もっと広く米国民の理解を得る必要がある。経営トップが顔の見える形で丁寧に説明してもらいたい」。
「鉄鋼大国となった中国への対抗策という点でも日米に意義あるM&A(合併・買収)だ。米政権は冷静に再考すべきではないか」などと強く非難している。
日鉄は海外戦略の再考を迫られることになるほか、日本企業にとっても対米投資に何らかの影響が出る可能性もあり、今後の日米関係に暗い影を落としかねないきな臭さも感じられるだけに、2025年は新年早々、世界経済の行方を案じる波乱の幕開けとなったようだ。
「誰がUSスチールを売りたいだろうか」トランプ氏が身売り不要論
朝日新聞社 によるストーリー
• 6 時間
2024年12月22日、米アリゾナ州フェニックスで行われたイベントに出席したトランプ次期米大統領=ロイター© 朝日新聞社
トランプ米次期大統領は6日、自身のSNSに「関税(の引き上げ)によって、はるかにもうかり、価値のある会社になるというのに、誰がUSスチールを売りたいと思うだろうか」と投稿した。日本製鉄によるUSスチールの買収計画に反対の立場で、USスチールの身売りは必要ないとの考えを改めて示したものだ。
トランプ氏は第1次政権で、海外の安い鉄鋼の流入から国内産業を保護するとして、輸入鉄鋼に高関税をかけた。こうした政策の継続を通じて、競争力を落とすUSスチールを世界市場を席巻する中国勢などから守り、経営を再建できるとの自信を示した。
大企業・東芝の致命的ミス…買収で巨額損失、苦渋の撤退はなぜ起きた
2023.03.29
3月29日はどんな日? 金融ライターが独自の視点でお金にまつわる「今日」のトピックをセレクトし、そのトリビアをお届けする「マネー・トリビア」。会話のきっかけに、ビジネスの場でのアイスブレイクに、つい話してみたくなる豆知識をご紹介します。
投資の前にきちんと銘柄を調べていますか? もし調べていない場合「東芝」のように大失敗してしまうかもしれません。東芝の子会社「ウェスチングハウス」は買収した企業の価値を見誤ったために破綻し、東芝本体にも非常に大きなダメージを残しました。
3月29日はウェスチングハウスが破綻した日です。この事件は東芝に半導体事業の売却を迫るほどのインパクトを与えました。東芝に何が起こったのか確認しましょう。
およそ1兆円の最終赤字を計上
ウェスチングハウスは原子力発電に関連するサービスを提供する企業で2006年10月に東芝のグループ子会社となりました。1万2000人もの従業員がいましたが、2017年3月29日に破綻しました。
直接の原因は破綻のおよそ1年前に買収したストーン・アンド・ウェブスター社です。のれん(※)は当初約105億円と見積もっていましたが、買収後に数千億円に上ることが判明しました。
※のれん:買収金額-買収企業の純資産。買収側が支払う実質的なコスト。例えば100億円で買収する場合、純資産70億円の企業ならのれんは30億円、純資産10億円なら90億円となる。
ストーン・アンド・ウェブスターは原子力発電所の建設を手掛ける企業でした。安全意識の高まりなどから原子力発電所の建設コストは上昇傾向にあり、ストーン・アンド・ウェブスターは膨らむ建設費を吸収できず純資産を大きく減らしたとみられます。ウェスチングハウスは買収前にこの事実に気付けず、巨額損失が確定的となってしまいました。
東芝はそれ以上の損失を回避するためウェスチングハウスの破綻を選びます。関連する損失は1兆2000億円を超え、東芝の2017年3月期最終損益は9656.63億円の赤字となりました。
【ウェスチングハウスを巡る経緯】
2006年10月:東芝がウェスチングハウス(以下WH社)を買収
2015年10月:WH社がストーン・アンド・ウェブスター(以下S&W社)の子会社化を決定
2015年12月:WH社がS&W社を買収
2016年4月:WH社で2600億円の減損
2016年12月:S&W社で数千億円の減損の可能性が浮上
2017年3月:WH社破産
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?