政治講座ⅴ1913「米国の盛者必衰を今に見る」
古代ローマを模して、黒人奴隷を酷使してできた米国は、今、瓦解しつつある。金の発掘や石油などとタダ同然の労働力と先住民からの土地の収奪で繁栄した国家、それが米国である。米国の繁栄に寄与した要素は剥がれ落ちてきたのである。繁栄は永遠に続かないものである。
嘆き悲しむことなかれ!まさに盛者必衰の理である。
今回はその悲哀を感じさせる報道記事を紹介する。
皇紀2684年8月31日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
ハンマーで叩き壊される日本車! 80年代のジャパン・バッシングと、白人貧困層出身「副大統領候補」の時代的因縁
小田坂真理雄(国際トラフィックライター) によるストーリー
バンス氏指名の影響
7月中旬、トランプ氏はJ.D.バンス上院議員を副大統領候補に指名した。このバンス氏の指名は、米国内はもちろんのこと、欧州でも大きなニュースとなった。
【画像】「えっ…!」これがバンス氏の「生まれ故郷」です(10枚)
バンス氏は、過去にトランプ氏を批判していたが、今ではトランプ氏に最も近い人物として目されている。一部の報道では、トランプ氏は、バンス氏の過去の発言に恨みを持っているものの、それを我慢してでも迎え入れるメリットが大きいとさえいわれているぐらいだ。
また、トランプ氏の息子のエリック氏と仲がよく、かつ最近トランプ氏との緊密な関係で注目を浴びているイーロン・マスク氏もバンス氏の指名を歓迎しているという。では、バンス氏に、大統領選挙線を戦う上でどのようなメリットがあるのだろうか。
ラストベルト攻略の鍵
バンス氏は、オハイオ州出身である。
同州はラストベルトの中西部に位置し、バンス氏も
「白人貧困層」
出身だ。氏の生涯を振り返った著書「ヒルビリー・エレジー」は、ベストセラーとなり映画化もされている。トランプ氏は、バンス氏の白人貧困層出身という経歴や知名度の高さを利用して、ラストベルトの選挙戦を優位に戦おうとしているのではないかと見られている。
実際、前回の大統領選では、ラストベルトのうち、トランプ氏が勝利できたのは3州にすぎず苦戦を強いられていた。また、バンス氏は、シリコンバレーの投資会社に勤めていたこともあり、民主党支持者の多いカリフォルニア州でも一矢報いるのではないかと期待されている。
このほか、バンス氏の39歳という若さや、インド系の妻ウーシャ氏の存在もトランプ氏の弱点を十分補っているようだ。
中流階級瓦解の真実
ラストベルトは、1980年代以降に定着した言葉で、日本語では
「さびついた工業地帯」
といわれている。以前は重工業や製造業が盛んであったが、国際競争力の低下とともに衰退しさびついた工場が立ち並び、その光景からラストベルトと呼ばれるようになった。
地理的には、五大湖周辺から東海岸にかけての地域を指しており、
・ウィスコンシン州
・イリノイ州
・ミシガン州
・インディアナ州
・オハイオ州
・ペンシルベニア州
・ウエストバージニア州
などで構成されている。ラストベルトは、米国製造業衰退の象徴としてだけでなく、かつて製造業を支えてきた白人労働者による
「中流階級瓦解(がかい。物事や組織が崩れたり、崩壊したりすること)」
の象徴ともされてきた。
もちろん、ラストベルトの製造業が全滅したわけではなく、今でも鉄鋼や自動車産業が残っており米国製造業の中心地にはかわりない。だからこそトランプ氏は、自国の製造業の保護といった
「かつての強い米国」
を想起させるような政策により、白人労働者階級の票の取り込み躍起になっている。今回の大統領選挙戦では、バンス氏の起用でさらに攻勢をかけられるかもしれない。
ラストベルトの現実と教訓
1980年代は、日本の自動車の輸出台数が増え、日米貿易摩擦が激化した時期だ。1970年代のオイルショック以降、米国では安価で燃費のよい日本車の需要が急増し、その結果、米国の自動車産業の業績が悪化した。少し年齢が上の人なら、日本車をハンマーでたたき壊すジャパンバッシングの映像に驚いた記憶があるかもしれない。
以降、自動車メーカーは、日本政府と対米自動車輸出台数の
「自主規制」
を行い、さらには米国での現地生産を加速することとなった。
1984年生まれのバンス氏には、衰退する米国製造業、没落する白人労働者階級のなかで多感な時期を過ごし、ラストベルトのリアルを見てきたというバックボーンがある。
しかしながら、米国の製造業が衰退したのは製品の魅力の相対的な低下もあるのだろうが、企業の経済活動の基本が
「安く作って、高く売る」
ことであり、米国内で製品を安く作れなくなった面もある。「安く作って、高く売る」原則がある以上、米国ではなく、人件費やエネルギー調達費用など製造コストの安い海外に製造業が出ていくのは自然な流れである。
話を少しそれるが、日本も製造業が安く作れる海外に出ていき、製造業を支えてきた中産階級がいなくなり、安価な海外製品であふれているのは、ラストベルトがたどってきた道となんら変わりはない。
再生を目指す白人労働者
副大統領候補となったバンス氏は、ラストベルトの白人労働者階級の出身で、かつ米国ンドリームの体現者であり、エスタブリッシュメント(既存の支配層)を敵視しており、トランプ氏の掲げる
「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(MAGA、米国を再び偉大な国に)」
の実現に適した人物かもしれない。一方で、彼の過去の言動や書物から、本当にトランプ主義者(米国第一主義、ポピュリズム、反移民感情などを持つ)なのかと懐疑的に見る意見や、トランプ氏を際立たせる
「触媒」
にすぎないという意見も少なくはない。
それともうひとつ、トランプ氏が再選したあかつきには、バンス氏へのバトンタッチを狙っているともささやかれている。もちろん、
・グリーンエネルギーの否定
・化石燃料への回帰
・移民政策
・ウクライナ問題
・北大西洋条約機構(NATO)
との関係など、多岐にわたるトランプ氏が掲げる政策が、バンス氏の考えとどこまで一致するか不明である。
しかしながら、エスタブリッシュメントによる政策の下で苦しんできた労働者階級に手を差し伸べ、国際貿易を減らして国内生産を増やし、移民を抑制して雇用を増やす方向性は変わらないかもしれない。
トランプ氏からバンス氏と足かけ12年共和党政権が続くと、
「4年間我慢すればいい」
ではなく、米国市場へのアクセス方法がさらに大きく変化し、さらに難しくなる可能性がある。
参考文献・参考資料
ハンマーで叩き壊される日本車! 80年代のジャパン・バッシングと、白人貧困層出身「副大統領候補」の時代的因縁 (msn.com)
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