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やさしい物理講座ⅴ154「水の特性の解説と水の電気分解」
前回のやさしい物理講座ⅴ153「光による水の分解」|tsukasa_tamura の続編である。
光(電磁波)による水の分解には触媒や半導体を活用することを解説した。しかし、本質的な解説がなされていないので続編として開設するものである。原因・理由を追求すると、自然科学は実に面白いのである。
今回は光(電磁波)による水の分解には触媒や半導体を活用できる水の特性について解説する。
皇紀2685年2月22日
さいたま市桜区
理論物理研究者 田村 司
まず水の分子構造から解説する。
水分子は「酸」と「塩基」のいずれとしても働く。溶液が水よりも水素イオン(プロトン)H+を放出する傾向が強ければ水は塩基として働く。逆に水よりもプロトン受容体としての能力が大きければ水は「酸」となる。
そして、水は極めてわずかであるがイオンに解離している。 つまり、水分子の最大の特徴は、下の水の集合図で表されるように大きく分極した極性分子であることである。
そして、それは、水素原子の電子は酸素原子に引き寄せられており、水素は正に、酸素は負に荷電している。このため、水分子は電荷が非対称に分布した双極子であり、分子間で多数の水素結合を形成する。これが、水分子の特徴を作り出している。水酸化ナトリウムを水にとかすと、ナトリウムイオン(Na+)と水酸化物イオン(OH-)に電離します。
この水溶液に電気を流すと水は分解して、マイナス極に水素ガスが発生し、プラス極に酸素ガスが発生する。
光(電磁波)による水の分解はこの特性から派生する現象であり、電磁波の中でも紫外線などのエネルギーの高い(振動数の多い)光電効果のとおり、分子から電子をはじき出すほどの力を持つ光は、水を分解するには触媒として、酸化チタン(TiO2)(光電効果を持つ金属酸化物)という半導体を使うことにより達成している。
そして、酸化チタン(TiO₂)はPH(水素イオン濃度)が酸性側では表面がプラスの電気を帯び、アルカリ性側ではプラスに帯電する。PHが中性の場合は粒子がくっつく。これは水の特性によるところが大きい。
太陽光の3%~4%の紫外線の波長の領域にしか活用できないので、V, Cr, Fe などの金属イオンをTi +イオンと置換すると可視光で機能する。
この様な水の特色が半導体という触媒を使い可視光(電磁波)まで応用できるようになって来たのである。
水の分子構造
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水分子の集合図
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反磁性の性質を示す代表的な物質でもあり、強力な磁石を近づけると水が反発して逃れるように動く現象は、旧約聖書の逸話にちなみ「モーゼ効果」と呼ばれている(俗称ではなく正式な学術用語)。
また、水分子の回転のエネルギー準位がマイクロ波のエネルギーに対応するので、液体の水はマイクロ波を吸収しやすく、電子レンジはそれを利用して加熱をしている。
液体の状態では 10−7 mol/L (at 25 °C) が電離し、水素イオン(正確にはオキソニウムイオン)と水酸化物イオンとなっている。
一般的に水は電気絶縁性が低いといわれるが、これはイオンなどの不純物が含まれる場合の水の性質である。
純粋な水は電気(電流)をほとんど通さない絶縁体である。
化学的性質
水は化学的には化学式H₂Oで表される、水素と酸素の化合物である。
水分子の酸素原子と水素原子は共有結合で結びついており、その結合は水素原子と酸素原子から価電子を1つずつ供給されてできている。
さらに酸素原子の最外殻には共有結合に使われていない孤立電子対が2つ存在する。
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水素と酸素の電気陰性度の違いから、O-H結合においては酸素原子側が電気的に負、水素原子側が正となり、局所的に電気双極子を作っている。
分子全体でもH-O-H結合角が約104.45°と分子が曲がっていることから極性を持つ。
以上の理由から水の比誘電率は 79.87 (at 20 °C) と高い。このためイオン間の静電気力を弱め塩化ナトリウムなどのイオン結晶の結合格子を破壊して溶解させる、すぐれた溶媒として働く。複数の水分子の間では水素原子と酸素原子の間に水素結合を作る。水に限らず、最外殻に孤立電子対を持つ窒素や酸素やフッ素などの原子やイオン、あるいは電気陰性度が高い原子に結合している水素原子は水分子と水素結合を作ることができる。したがって水は、糖などイオン性ではない分子に対する溶解性も示す。一方、シクロヘキサンなどの炭化水素はイオン性でなく、水素結合も形成しないため、水には溶解せずに寄り集まって油滴を作る。このように水に溶けない疎水性の化合物同士が水の中で見かけ上親和性を示す現象を疎水効果と呼ぶ。
複数の水分子の間に水素結合が働くことで、クラスター状の高次構造(水クラスター)が生じる。
水の高次構造は寿命がピコ秒からフェムト秒オーダーと非常に短く、一度形成してもすぐ別の高次構造に移り変わる。
水分子は水素イオン (H+) の供給源として酸としての性質を示す。
水分子の酸素原子上に孤立電子対があることから、水は塩基、配位子としてもはたらく。水分子を配位子とする錯体は水和物、もしくはアクア錯体と呼ばれる。酸と塩基の定義のうち、アレニウスによる定義は水溶液中を前提にしたものである。
水は、使い捨てカイロでの鉄粉の酸化、6-ナイロンの合成など、化学反応の触媒としても用いられることがある。また、酸や塩基などを触媒としてエステルやアミドなどの加水分解や、アルケンへの付加反応(水和反応)の基質となる。
生化学反応でも水は頻繁に現れる。光合成では水が4電子酸化を受けて酸素となる。
電気双極子の実体
電気双極子の物理的な実体としては、電子と原子核の束縛状態である原子や、原子同士の束縛状態である分子が挙げられる。 例えば水の分子では、酸素原子が電子を引き付けており、分子形状も曲がっているため、酸素原子が負、水素原子が正に偏った電気双極子とみなすことができる。
このような電場がかかっていない状態でも分子がもつ電気双極子は永久双極子と呼ばれる。 また原子や分子に外部電場をかけることで、電荷の偏りが生じて分極する。このときの電気双極子を誘起双極子という。 外部電場 E に対して誘起される電気双極子を p=αE と表したときの係数 α を分極率と呼ぶ。
水の電気分解のしくみ
水酸化ナトリウムを水にとかすと、ナトリウムイオン(Na+)と水酸化物イオン(OH-)に電離します。
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硫酸イオン
水の電気分解のときに硫酸(H₂SO4)を使っても同じ結果です。
硫酸イオン(SO42-)のほうが水の中のOH-よりイオンでいる傾向が強いので、硫酸イオンはそのまま水溶液中に残り、OH-が電子を陽極にわたして水と酸素が発生します。
第1段階:H₂SO4 → HSO4- + H+
第2段階:HSO4- → (SO4)2- + H+
一般的:H₂SO4 → (SO4)2- + 2H+
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