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政治講座ⅴ637「中国に金融侵略されて新植民地化されるロシア」

領土侵略しながら、一方で経済侵略を受けているロシアの愚かな姿がこれらの事象から読み取れるのである。ロシアは武力を用いない経済戦争ですでに敗北(中国の元通貨経済圏に飲み込まれている)しているのである。同時に報道記事から中国の新植民地主義についての内容を掲載する。

          皇紀2682年12月1日
          さいたま市桜区
          政治研究者 田村 司

焦点:ロシアが急速に「人民元化」、中国から金融の安全保障

Reuters - 22 分前

[モスクワ/上海 29日 ロイター] - 発光ダイオード(LED)照明の企業を営む中国の実業家ワン・ミンさんは今年、ロシア顧客向けの価格設定をドルやユーロではなく人民元でできるようになったことを喜んでいる。自社は為替リスクを抑えられ、顧客は支払いが簡便化する「ウィン・ウィン」の関係だ。

焦点:ロシアが急速に「人民元化」、中国から金融の安全保障© Thomson Reuters


ロシアのウクライナ侵攻に対する西側の制裁により、ロシアの銀行や多くの企業はドルとユーロの決済網から締め出された。孤立したロシアはアジアの大国、中国から金融面の安全保障を得ようと、急速に「人民元化」を進めている。
人民元は何年も前から徐々にロシアに浸透していたが、侵攻以来の9カ月間でその勢いが急加速し、ロシアの市場と貿易決済に大きく広がっている。ロイターによるデータ分析と企業・金融関係者10人への取材で明らかになった。

ワンさんの年商は約2000万ドルで、そのほとんどがアフリカと南米からの売り上げだが、「来年にはロシアが全売上高の10─15%を占めることを期待している」と話す。
ロシアの人民元化は対中貿易を促進する可能性があり、ドルの対抗軸を目指す人民元の立場を強め、西側の経済制裁効果を限定しかねない
モスクワ取引所のデータをロイターが分析したところ、人民元/ドルの取引高は先月、1日平均約90億元(12億5000万ドル)に達した。以前は1週間で10億元を超えることさえ珍しかった。
モスクワの投資会社カデラス・キャピタルのマネジングディレクター、アンドレイ・アコピアン氏は、外貨を預金している銀行が制裁を受ける危険に触れ、「ドルやユーロ、ポンドなど、伝統的な通貨を預けておくことが突如として非常に危険になったということだ」と説明。「誰もがルーブル、もしくは人民元を筆頭とするその他の通貨に切り替えようと思ったし、そうせざるを得なくなった例もある」と語った。
事実、取引所データによると、10月の人民元/ルーブル取引高は計1850億元と、ロシアが月末近くにウクライナに侵攻した2月の80倍超に膨らんでいる。
モスクワ取引所・外国為替市場部門の幹部、ドミトリー・ピスクロフ氏は、外為市場における人民元のシェアが年初の1%未満から今では40─45%に急拡大したと述べた。
対照的に、ドル/ルーブル取引のシェアは1月の80%超から10月には約40%に下がったことが、取引所と中央銀行のデータで分かる。
<ロシア大企業が元で起債>
国際的な資金フローにも、ロシア国内と同様の傾向が見られる。
国際決済制度SWIFTのデータによると、ロシアは4月まで、中国国外での人民元取扱高(流入・流出の金額)で上位15カ国にすら入っていなかったが、今では4位に急浮上した。
国際的な観点で見ると、9月時点で世界の資金フローの42%をドル、35%をユーロが占めており、依然としてこの2通貨の存在が圧倒的だ。人民元は約2.5%で、2年前の2%未満から拡大した。
ただロイターの集計によると、ロシアではアルミのルーサル、石油のロスネフチなど大企業7社がこれまでに人民元建てで計420億元の債券を発行している。銀行最大手ズベルバンクや石油のガスプロムネフチなども人民元建て起債を検討中だ。
<中銀は利用促進>
ロシアのプーチン大統領は長年ドル依存を減らそうと模索してきたが、今年は地政学という強力なエンジンが加わった。プーチン氏と習近平国家主席は2月に「無制限」の中ロ協力に合意している。この数週間後、ロシアはウクライナに侵攻した。
ロシア中央銀行のアンドレイ・メルニコフ国際協力局・副局長によると、昨年はロシアの対中貿易決済における人民元のシェアは約19%で、ドルは49%だった。今年の数字はまだ公開されていないが、メルニコフ氏によると人民元の割合が拡大している。
ロシア中銀は本記事へのコメントを控えた。
中銀のナビウリナ総裁は今月議会で、人民元の大量流入は「わが国経済の通貨構成の変容」を印象付けたと述べた。
ロシアでは人民元預金が急拡大する一方で人民元建ての貸し出しは始まったばかりで、規制当局はこの不均衡がもたらすリスクについても認識している。中銀は市中銀行に対し、バランスシートにおける人民元の資産・負債バランスの不均衡を是正するため、輸入での人民元支払いや人民元建て証券への投資、中国以外の国々との貿易における人民元の利用を増やすよう促した。
ただ当局は現時点で人民元の利用を制限することは計画していない。むしろ貸倒引当金規制を人民元については緩め、ドルとユーロについては厳格化することで、銀行の人民元利用を促進するかもしれないと、中銀のエリザベータ・ダニロワ金融安定局長は今月の会合で述べた。
(Elena Fabrichnaya記者、 Samuel Shen記者)

出現した中国の「新植民地主義」 文化人類学者静岡大学教授・楊海英

2018/8/7 11:45
文化人類学者、静岡大学教授の楊海英氏

 中国の習近平国家主席が7月、中東・アフリカ5カ国を歴訪した。習氏の外遊は今年3月に国家主席に再選され終身的独裁体制を築いて以降、初めてとなる。彼は訪問先で中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた金銭支援を打ち出し、アメリカの保護主義を批判した。習氏の外遊は「中国流新植民地体制」の幕開けを改めて印象付けた。

 ≪定住型と搾取型のパターン≫

 一般的に植民地体制には2つのパターンがある。定住型と搾取型だ。習氏が訪問した南アフリカにはさまざまな先住民が暮らしてきたが、そこへオランダ系の白人が入植し、武力を駆使してアパルトヘイト国家を創建した。マンデラ氏のような平和運動家が終生にわたって闘争した結果、人種差別制度が撤廃された。しかし経済は外来の白人や定住した元植民地者に牛耳られたままだから、植民地統治の影響が消えたわけではない

 もう一つは搾取型だ。入植者の白人が植民地で勃発した民族解放運動によって追放され、本国に戻ってからも、旧来のルートで入植地の経済と政治に影響力を及ぼし続け、利権を手放さない間接支配を指す。習氏が訪れたセネガルなど西アフリカの諸国はフランスの統治から離脱しても、今日に至るまで経済的依存から脱却できないのが、その典型的な例だ。

 フランスはその気になれば、いつでも現地の「子飼い」=代理人を通して宗主国の権益を確保する。こうしたヘゲモニックな状況は現在も全く変わっていない。

 ≪「一帯一路」こそ合致する≫

 従来の植民地体制はどちらも1960年代に崩壊した、といわれてきたが、われわれが見落とした現代史の別の側面がある。それは、中国による「新植民地」体制の確立だ。チュニジアの首都チュニスで60年1月に「第2回全アフリカ人民会議」が開かれた際に、独立したばかりのアフリカ諸国は「新しい形態の植民地主義の出現に警戒しよう」と呼びかけた。そして「新植民地」には以下のような特徴がある、と予想していた。

第1は自らに従属する現地政府を擁護しながら内政干渉する。
第2経済援助を盾に多国間の権力構造を作り、軍事同盟と基地提供、ひいては軍隊派遣を通して弱小国を抑圧する-というものだ。

 58年も前の警戒心は実に先見の明を有していた、と高く評価しなければならない。というのも、習近平体制が進める「一帯一路」構想はまさにその「予言」にぴったりと合致しているからだ。アフリカ諸国の最大の貿易相手国となった中国の狙いは、資源と「天然の同盟軍」を獲得するところにある、と習氏は公言している。大規模投資や多額の借款で相手国を負債に追い込み、そして港湾と要衝を軍事基地として永年借用する

 インド洋に面したパキスタンのグワダル港をはじめ、スリランカのコロンボ港とハンバントタ港、そしてアフリカのジブチなどは既に「成功例」とされている。

 「中国流新植民地主義」には旧来の植民地開拓と異なる特徴がある。それは、現地の政治体制に対し、人権や民主、投資運用の透明化など、うるさいことを一切、言わない点だ。巨大な工場や港湾を整備しても、働いているのは中国国内から連れていかれた労働者たちだ。労働者たちの僅かな給料を搾り取ろうとしてやってきた性産業従事者もまた中国人だ。

 こうして北京は「中国のアフリカ」を経営しているが、内政には干渉していないと宣言ができる。現地の独裁政府も地元の雇用につながっていない点に多少不満があっても、裏から大金が入るので、ほどよく解消されている。

 ≪国内の民族統治術が適用された≫

 中国はどこからこのような「豊富な経験」を積んできたのだろうか。答えは、国内の植民地経営にある。1930年代にアメリカの「歩く歴史家」、オーウェン・ラティモアはその名著『満洲に於ける蒙古民族』(善隣協会)の中で次のように指摘している。

 中国は確かに西洋列強の半植民地に転落してしまったが、同時に中国はモンゴルやチベットなどの諸民族に対し、西洋列強よりも苛烈な「植民地支配」を強制している、と喝破している。無数の漢民族をモンゴルの草原に入植させては軍閥政権を打ち立て、そして現地の人々が少しでも抵抗すれば、容赦なく虐殺する。

 西洋列強と中国に比べて、新生の満州国はモンゴル人の生来の権益を守り、民族自治が実現できている、とラティモアは評価している。彼は生涯、日本に厳しい態度を取ってきたが、満州国の政策に関しては賛辞を惜しまなかった。

 モンゴルとチベット、「東トルキスタン」(新疆)を漢民族の「国内植民地」として開拓して運営してきた中国共産党は現在、その統治術をアフリカ諸国に適用し始めた。こうした兆候は既に49年以降に表れていたものの、世界は共産主義体制に甘かったので不問にされてきた。「中国流新植民地主義」が世界を席巻しつつある今日において、国際社会はいかなる措置を講じるかが問われている。(よう かいえい)

参考文献・参考資料

焦点:ロシアが急速に「人民元化」、中国から金融の安全保障 (msn.com)

【新植民地主義政策】知っておきたい経済戦争と植民地支配 | 公務員総研 (koumu.in)

新植民地主義 - Wikipedia

【正論】出現した中国の「新植民地主義」 文化人類学者静岡大学教授・楊海英(1/3ページ) - 産経ニュース (sankei.com)

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