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政治講座ⅴ1018「ドル覇権の凋落?」

 国家の権力の範疇に通貨発行権というものがある。この通貨発行権を放棄して共通通貨としたのがユーロである。自国の通貨発行権がないと財政規律が必要になり、過去にギリシャの国家破綻があった。自国に通貨発行権があれば、為替相場や自国建て国債発行という手法で破綻を切り抜けることができたはずである。MTT理論がそうである。英国のEU離脱の隠された原因にそのようなことがあるのではないだろうか(このことはあまり議論はされていない)。英国がEUからの離脱は通貨発行権と言う観点から良かったと思われる。
さて、ドル覇権の凋落の命題に関しては、ハッキリいうとニクソンショックの時点で終焉を迎えていたというのが自論である。変動相場への移行がそれを物語り、ドル価値の下落を支えたのがG7である。特に日本が米国債の買い支えによりドルを支え、米国経済を陰ながら支えたのである。日本が米国を影で支えたという専門家の議論がほとんどないが、敗戦国の日本に支えられたとは戦勝国のプライドで感謝の言葉も言えないのであろう。言い方を変えると張子の虎が米国であろう。日本は米国の属国と揶揄する輩もいるが、それは本質を見ていない者の浅はかな発言である。ソ連と西側の冷戦で漁夫の利を得たのが他ならぬ日本である。同じく漁夫の利をえたのが中国共産党であろう。日本はその漁夫の利で債権国家となった。中国共産党も日本を真似て経済発展を遂げた。
今回は関連記事を紹介する。
米国が高インフレのために金利引き上げを余儀なくされた理由は物の需要と供給のアンバランスで発生するものと過剰通貨発行による貨幣価値の下落があるが、まさに今回は後者であり、ドルへの信認の低下(ドル貨幣価値低下)が高インフレになっているとも読み取れるのである。
なお、貨幣価値の変動は市場の為替相場に影響するがある程度誘導により人為的に操作が可能である。日本が米国債を買い支えることができるかどうかに米国の命運がかかっているとも言える。ドルの凋落は日本の胸三寸次第である。経済評論家、経済学者は知ってか知らずか、黙して語らずである。

     皇紀2683年4月20日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

新興国のドル離れ、速いペースで進行-「スマイル理論」のジェン氏

Matthew Burgess によるストーリー •

(ブルームバーグ): ドルは一般に考えられているよりも速いペースで基軸通貨としての地位を失いつつあると、ロンドンを拠点とするヘッジファンド、ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)はみている。

  ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する金融制裁がきっかけとなり、多くの国がドルに代わる通貨を求めたため、世界の外貨準備高に占めるドルの割合は昨年、過去20年間平均の10倍のスピードで低下したとジェン氏と同氏の同僚ジョアナ・フレイレ氏はリポートで説明した。

  為替レートの動きを調整すると、ドルは2016年以降、市場シェアの約11%を喪失。「ドルは22年、準備通貨としての市場シェアを大きく落としたが、恐らくこれは制裁を強力に発動したためだ」と両氏は指摘。「米国とその同盟国がロシアに対して取った異例な行動は、外貨準備を多く抱える国を驚かせ」、そうした国のほとんどはいわゆる「グローバルサウス」の新興国だとコメントした。

  元モルガン・スタンレーのジェン氏は、米国の成長率が他の国・地域を上回るか、リスク回避の状況でドル相場が上昇すると仮定する「ドル・スマイル理論」を唱えたことで知られている。

  ウクライナでの戦争が世界的なインフレをあおり、債券・為替市場に打撃を与えた利上げの引き金となる中で、ブルームバーグのドル指数は昨年、一時16%上昇。22年を6%上昇で終えた。

  米国と欧州はロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)決済ネットワークから排除。中国とインドが貿易決済向けに自国通貨の国際化を推進する中で、小国はドル離れを探っている。ドルが恒久的な政治ツールとなる可能性もあり、米国が国家戦略として他国に圧力をかけるためドルに頼ることも懸念されている。

  ジェン、フレイレ両氏によると、ドルは現在、世界の公的外貨準備の約58%を占めている。ドルが「紛れもない覇権的準備通貨」だった01年は73%のシェアを得ていた。

  とはいえ、基軸通貨としてのドルの役割がすぐに疑われることはなさそうだ。両氏は、大規模で流動性が高く、十分に機能するドル中心の金融市場のおかげで、途上国にはドルから離れる余力はまだないと分析。その上で、こうした状況が続くとは「決まっていない」し、各国がドルの使用を積極的に避ける時が到来するかもしれないとも予想する。

  基軸通貨としてのドルは安泰という一般的な見方は「あまりにも無邪気で自己満足的であるように思われる」とし、投資家が理解すべきは「ドルの使用を完全に回避することはできないグローバルサウスだが、そのうちの多くの国がすでにドルを使うことを望まないようになっているということだ」と論じた。

原題:De-Dollarization Is Happening at a ‘Stunning’ Pace, Jen Says (抜粋)

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参考文献・参考資料

新興国のドル離れ、速いペースで進行-「スマイル理論」のジェン氏 (msn.com)

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