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政治講座v2081「日中米の今後の外交戦略」
戦争は外交の最終手段と言われる。戦争の抑止力は相手に負けない軍事力を持つ事である。核兵器はそのような意味で戦争の抑止手段であった。核兵器のある国へは攻撃を控えるのが常識ある政治家や軍人であろう。しかし、国際条約の覚書などという約束事はいとも簡単に破られるのである。それが、ブダペスト覚書である。その覚書は旧ソ連の崩壊でウクライナが核兵器の保有国になり、1994年12月5日にハンガリーの首都ブダペストで開催されたOSCE(欧州安全保障協力機構)会議において、アメリカ・イギリス・ロシアの核保有3ヶ国が署名した覚書である。内容としては、ウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンが核不拡散条約に加盟したことに関連して、協定署名国(つまりアメリカ・イギリス・ロシア)がこの3ヶ国の安全を保障する、という内容のものである。またフランスと中国は、別々の書面で若干の個別保障をしている。署名した国々の1つであるロシア自体が2022年にウクライナに侵攻した。もしウクライナが核兵器を放棄していなければロシアからの侵攻をうけることもなかった。
今回は今後の外交を占う報道記事を紹介する。
皇紀2684年12月26日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
報道記事紹介
中国専門家「トランプ第2期、中国に有利…4年間戦争はしないだろう」
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「中米間の緊張は高くなるかもしれないが、トランプの孤立主義は中国に役立つだろう」
中国の代表的な国際政治学者である中国清華大学国際関係研究所の閻学通名誉院長が20日(現地時間)、米外交専門紙「フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)が公開した「中国がトランプを恐れない理由」という寄稿文を通じて、このようにドナルド・トランプ政府第2期に対するやや楽観的な展望を出した。あわせて「4年間『中米戦争』はしないだろう」と断言した。
閻氏はその背景として学習効果を挙げた。トランプ氏が貿易戦争を拡大して軍事的圧迫を高めても、中国がトランプ第1期の間に多くのことを学んだので、これ以上トランプ氏を恐れることはないという観測だ。
閻氏はトランプ第2期が中国に有利な具体的な根拠3種も挙げた。第一に、トランプ氏は相対的に中国の人権など理念的問題に関心がなく、中国の政治体制を変えることにも関心がないためだ。中国が政治的安定を維持するのに集中することができるという意味だ。
第二に、トランプ氏の政治的孤立主義は米国が同盟を保護するための投資を減らすことができる。トランプ氏が米国の安全保障に便乗しようとする同盟を叱責してきたので、中国がこれらの国々と協力する新たな機会を持つことができるという解釈だ。すなわち米国の同盟が危険を分散させる「米中ヘッジ戦略」を取れば中国が戦略的優位に立つことができるというものだ。
第三に、トランプ氏が国内問題に集中するため米中が台湾を巡って戦争する可能性が低くなるだろうという展望だ。実際、経済を重視するトランプ氏は最初任期の間、ただの一度の戦争も起こさなかったことを政治的功績だと感じている。
閻氏は「中米が人工知能(AI)や先端技術サプライチェーンを巡って争うことはあるが、台湾海峡や南シナ海で代理戦をあおる理由はない」とし「中米冷戦論は状況を誤った方向に導いている」と主張した。
「中国は日本製鉄の買収失敗を望んでいる」USスチールCE0が買収阻止の動きに警鐘
テレ朝news によるストーリー
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日本製鉄による買収計画を巡り、USスチールのCE0は「中国はこの取引が失敗することを望んでいる。そうさせてはならない」とニューヨーク・タイムズに寄稿しました。
アメリカ鉄鋼大手USスティールのデビット・ブリットCEOは22日、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、この買収は「アメリカの製造業の未来にとって極めて重要な機会だ。アメリカは正しい決断を下さなければならない」と主張しました。
そのうえで、この取引が「事実上、アメリカの鉄鋼産業を維持できる唯一の選択肢だ。この取引を阻止することは、ピッツバーグが鉄鋼の街であった100年以上の歴史に終止符を打つことになる」と買収阻止の動きに警鐘を鳴らしました。
また、日本製鉄による買収は「我々の最も強力な同盟国の一つとの関係を深めることによって、アメリカの世界的な地位を強化し、中国の露骨で野放図な市場操作に対抗することを可能にする」と指摘しました。
「中国の競合他社もこの取引に注目しており、失敗することを望んでいる。この取引が実現すれば、中国による世界の鉄鋼生産の支配力は弱まるだろう。この協定がなければ、私たちはより脆弱(ぜいじゃく)になる。そうさせてはならない」として、日本製鉄による買収がアメリカが中国に対抗するうえでも重要だとの認識を強調しました。
買収計画へのアメリカの委員会による審査の期限は23日とされ、ロイター通信などは、買収がバイデン米政権によって阻止される見通しだと伝えています。
【ミリタリーブリーフィング】中国軍、腐敗清算の中でも…米国「中国に核弾頭600個、2030年には1000個」(1)
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米議会の要求で米国防総省が毎年発表する中国軍年次報告書の最新版が発表された。2023年の活動を扱った最新の報告書は、中国が慢性的な軍部腐敗にもかかわらず核・ミサイル戦力を増強していると明らかにした。報告書は中国が核と通常兵器の弾頭を搭載できる弾道ミサイル3100発と核弾頭600個を保有していると評価した。
<1>「中国軍、腐敗清算中にも核・ミサイル戦力増強」
12月18日(以下、現地時間)、米国防総省は議会の要求に基づき、中国の軍事および安全保障発展に関する年次報告書を発表した。報告書は中国軍が景気沈滞と腐敗による粛清が続く中でも核と通常兵器を引き続き増やしていると明らかにした。2023年の活動を扱った今回の報告書は、中国軍の武器開発や戦略に関する新しい内容はなかったが、中国の軍事活動に対する米国政府の観点が分かる資料という評価だ。
米国防総省の関係者は報告書発表を控えた12月16日、記者らに2023年下半期だけで少なくとも15人の軍幹部と防衛産業関連企業の幹部が腐敗容疑で職位解除されたと明らかにしたが、一部は中国の地上基盤の核および通常ミサイル現代化に関連したプロジェクトを監督していた。
中国軍は慢性的な腐敗問題解決に困難がある中でも核・通常戦力を増強している。報告書は中国軍が2030年までに1000個の核弾頭を保有するという計画を順調に進め、2024年半ば基準で約600個を備蓄したと評価した。これは昨年の報告書で評価した500個より100個多い。
弾道ミサイル戦力も増やしている。報告書は中国ロケット軍が3100発の弾道ミサイルを保有していると明らかにした。DF-15、DF-16など短距離弾道ミサイル(SRBM)900発、DF-17、DF-21など準中距離弾道ミサイル(MRBM)1300発、DF-26など中距離弾道ミサイル(IRBM)500発、そしてDF-5(CSS-4)、DF-31(CSS-10)、DF-41(CSS-20)など大陸間弾道ミサイル(ICBM)は400発にのぼる。このほかCJ-10、CJ-1000など地上発射巡航ミサイルも400発を保有している。
報告書は中国ロケット軍が最小300個のサイロがある3カ所の固体推進ICBMサイロ団地を建設し、一部はすでにミサイルで埋まっていると明らかにした。中国ロケット軍は多弾頭各個目標設定再突入飛行体(MIRV)を搭載した新しいICBMを開発中で、このためには追加の核弾頭が必要とみている。このほか衛星イメージ分析によれば、2023年から2024年の間に少なくとも72両のDF-26用TELが組み立てられると予想した。
<2>GAO、米海軍が巡洋艦の寿命延長に18億4000万ドル浪費と指摘
米政府会計検査院(GAO)は新しい報告書で、これまで多様な事業の管理に失敗して米議会から叱責を受けてきた米海軍が今度はタイコンデロガ級巡洋艦の寿命を5年追加延長する事業で18億4000万ドル(約2880億円)を浪費したと批判した。
2012年に米海軍が計画寿命を迎える前に7隻の巡洋艦を退役させると提案したが、米議会が拒否した。2015年に米海軍は10年間に11隻の巡洋艦を改造する計画を推進したが、2017年までに7隻に縮小した。しかし7隻のうち修理および改造作業に18億400万ドルを支出した「USSヒュー・シティ」(CG-66)など4隻が再配備されず退役した。「USSチョーシン」など残りの3隻は2015年から2023年まで37億ドルを投入して寿命を延長したが、報告書は計画された5年の寿命延長を達成できないと明らかにした。
GAOはその原因について100人以上の海軍関係者にインタビューし、次のような問題を発見した。
海軍は巡航艦現代化作業のための核心プログラム計画および監督道具と文書(取得戦略、独立的費用推算、リスク管理計画、基準ライン、海軍プログラム監督会議など)を開発しなかった。
巡航艦現代化作業の過程で品質が低い作業が広範囲に発生したにもかかわらず、海上システム司令部(NAVSEA)指揮部は地域整備センター(RMC)と契約担当者が産業基盤を維持して船舶修理業界と前向きな協力関係を維持するために核心の品質保証道具を完全に使用できないよう妨害した。
海軍は巡洋艦現代化のために20億ドル以上の調達資金を投入したが、獲得プログラムではないため、主要機能獲得経路に基づく高額主要国防獲得プログラムの典型的な計画および監督道具を具現しなかった。
GAOの報告書はNAVSEAはNAVSEA21に今後、大規模な現代化およびメンテナンス作業に、獲得プログラムに使われる計画および監督道具を適用するよう要求する点と、主要現代化作業のために艦船の所有権を艦隊からNAVSEAに移転してはならないという点を含め、海軍に6つの点を勧告した。
報告書は巡洋艦現代化努力を回復させるにはあまりにも遅れたが、重要な教訓を得ることができなければ海軍の他の艦艇類型に対する大規模な現代化努力を始める過程で海軍艦隊の未来にリスクを招きかねないという結論を出した。
「リーマン級」金融危機か…トランプ2.0で長期金利上昇、オフィスビル・集合住宅向けローンにデフォルト懸念
藤 和彦 によるストーリー
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トランプ次期政権が米国経済に与えるリスクが顕在化しつつある。中でも長期金利の上昇により不動産向けローンの債務不履行(デフォルト)が相次ぐとの見方が広がりつつある。リーマン・ショック時と同様にリスクの高い不動産ローン債権を束ねた金融商品に飛び火し、金融危機の引き金となる可能性もある。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
「一人勝ち」と言われる米国経済にとって最大の脅威は政治リスクだ。このことが改めて認識させられる出来事が起きた。
米連邦議会は12月21日未明、期限切れ寸前で政府の予算執行を来年3月まで延長する「つなぎ予算案」を可決した。つなぎ予算が成立しなければ、政府機関の一部が閉鎖に追い込まれるところだった。
綱渡りの成立になってしまったのは、トランプ次期大統領が直前になって連邦債務の上限を停止する措置を盛り込むよう求めたからだ。
米国では連邦債務の上限が1917年以来法律で定められているが、昨年1月に現行の限度額(31.4兆ドル)に達している。これにより、米国債は史上初のデフォルト(債務不履行)に陥りかけたが、昨年6月に「財政責任法」が成立したことで、これまでのところ国債の発行に制約が生じていない。だが、この法律が失効する来年1月2日まで新たな合意が成立しなければ、米国債のデフォルトリスクが再燃することになる。
ジョンソン下院議長(共和党)はトランプ氏の意向を盛り込んだ予算案を19日に提出した。ところが、あろうことか、身内の共和党議員38人が「財政緊縮に反する」として反対に回ったため、不成立となった。ジョンソン氏はその後、トランプ氏の要求を削除した予算案を再提出し、なんとか合意をとりまとめた。
つなぎ予算を巡るゴタゴタ劇からわかるのは、連邦議会は必ずしもトランプ氏の意のままに動くわけではないことだ。自身の「横やり」のせいで腹心のジョンソン氏も窮地に追い込まれており、来年1月3日に招集される新議会の雲行きは怪しくなっている。
長期金利の上昇が招く大惨事
米連邦政府の財政赤字が急拡大していることも悩みの種だ。
トランプ氏の公約が実現すれば、今後10年間で7.5兆ドル(約1100兆円)の財政赤字の要因になると見込まれており、米国債の大量発行により長期金利が急上昇する可能性は排除できなくなっている。
足元の状況をみてみると、米連邦準備理事会(FRB)が9月以降、合計1%の利下げを行ったのにもかかわらず、長期金利は1%近く上昇している。FRBの利下げサイクルで長期金利が上昇したのは1984年以来の出来事だ。
長期金利の上昇で最も打撃を受けるのは米商業不動産だと筆者は考えている。
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コロナ禍以降、米国で在宅勤務が急速に普及したことが災いして、オフィス需要の不振が続いている。特に古い物件ではテナント離れが進み、「空き」が埋まらない状況が続いており、大幅なディスカウント価格で売却される事例が相次いでいる。
格付け会社ムーディーズは「2026年までに米国全体のオフィス面積の4分の1が空室となり、その価値が2500億ドル(約38兆円)減少する」と試算している。
12月3日付ブルームバーグが「都心部のオフィス物件が苦戦しており、シアトルの大手開発業者がデフォルトに陥った」と報じているように、事業環境はさらに悪化している。
ブルームバーグによれば、商業用不動産の所有者は来年末までに1兆5000億ドル(約225兆円)相当の債務が返済期限を迎えるが、その4分の1は借り換えが困難でデフォルト懸念が広がっている。
リーマン・ショックの二の舞になる理由
12月16日付ブルームバーグは「オフィスの価値低迷は米国の銀行業界に波及しており、中小の金融機関で悪影響が顕在化している」と報じている。
「泣き面に蜂」ではないが、オフィスビルに加えて集合住宅も苦境に陥っている。
米国の集合住宅市場は2010年代以降、急拡大し、今や建設中の住宅物件の6割を占めるようになった。米国の集合住宅の多くは賃貸で、ノンバンクやREIT(不動産投資信託)が投資用に保有しており、日本のように居住者が一室を購入するケースはまれだ。
「集合住宅への投資は30%のリターンが保証されている」との期待からマネーが殺到し、市場は過熱状態となっていたが、金利上昇後、価格は急落した。
FRBによれば、昨年第4四半期の価格はピーク時の2022年第2四半期に比べて2割下落したが、足元の価格は市況の悪化を十分に反映していないと言われている。
格付け会社フィッチは「集合住宅向け融資は昨年末時点で6130億ドルに達した」と分析している。関係者からは「集合住宅向け融資はオフィス向け融資以上に危険だ」との声も聞こえてくる。
商業用不動産の不振は金融市場にも悪影響を及ぼしつつある。
問題視されているのは、CRE・CLOと呼ばれる商業用不動産ローンのプールを裏付けとして発行される証券だ。普通の不動産ローン担保証券(MBS)に組み入れるにはリスクが高すぎると判断された債権を束ねたものである。
ハイリスク・ハイリターン金融商品に属し、リターンは期待できるものの、市場環境が悪化すればその影響を最も大きく受ける。
オフィスや集合住宅分野のCRE・CLOのディストレス(行き詰まった状態)率は今年に入って上昇しており、15%前後と高率だ。
気になるのは、CRE・CLOがリーマンショックの大本の原因となったCRE・CDO(債務担保証券)に由来していることだ。投資家保護を強化した上で2019年末に発行が開始されたが、これまで逆風にさらされたことはない。来年以降、米国の金融市場の撹乱(かくらん)要素となる可能性は排除できないと思う。
「歴史は繰り返す」というつもりはない。ただ、米国の金融市場に蓄積されているひずみが重大な危機に発展するリスクへの警戒を怠るべきではないだろう。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
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