気がつけば、坂道グループの音楽はいま大変な状況にあるんじゃない・・・?
櫻坂の裏ベスト10を書いた直後にこの文でなんだが、Apple Musicで坂道グループのシングルを見ると、真っ先に「音質はロスレスなんだ・・」と思うことが増えた。
こう思うのは最近のアイドルが高音質の処理を施した音楽を配信してるのと比較してしまうせいだ。
Apple Musicは他の音楽サブスクと比べて高音質の配信が特徴としていて、ドルビーアトモス対応やハイレゾロスレス対応のほか、Appleデジタルマスターなど、すごくいい音で聴けるプラットフォームにしてる。
New JeansなどKpop勢から、kpopの活況を受けて生まれたJO1やINI、そしてME:Iなど日本のアイドルグループのシングルが、いずれかの高音質配信を行なっている。それを聴いて、「これはなかなかの状況だぞー」とかいまさら思うのだった。
いま、国際的な展開も目論んでるグループはパフォや楽曲はもちろん、配信する楽曲のクオリティも高いパッケージングをやってる。さっきの例に挙げた日本のグループも大体は海外進出をやってるし。
その観点でいうと、なんだかんだでNumber_iは凄まじいなと思う。やっぱり「Goat」もこの前配信された「INZM」も日本のアイドルソングを大きく更新してしまうくらいの強度がある。というか、「いまここまでやらなきゃとメンバーも運営も感じてるんだ」ということを思いさられる感じ。コーチェラに出るくらいだからここまでやってるんだな・・と遠くを見つめてしまうというか。
そこで坂道の音楽なんだけど、いま大変な状況にあるよなあと。
紅白や音楽番組にkpop勢ならびにその影響下の日本グループがたくさん出ることに思うことあるけれど、お茶の間世帯にあれが披露されることで確かなのは「うわーアイドルものでもすんごいクオリティが必要な時代になっちゃったんだ」ってことだ。
まるで最新のiPhoneとか最新のゲーム機が登場して、前の世代の機種が表現できたものが一気に色褪せて見えてしまう現象に近いというか。PS4とか5の時代に、PS3のゲームを見ると厳しいかもって思ってしまう感じ。クオリティに関してはほんと、好き嫌いどうこうとは別に厳然として思い知らされちゃうところはある。
そして残念ながら、坂道楽曲がPS3のくらいのゲームみたいに見えざるを得ないとこ、ちょっとある。ソフト(≒アイドル)はとてもいいけれど、ハード(≒運営)が難しい立場になったな・・という。これも好き嫌いじゃなくて、ポピュラーミュージックの状況がそうなってしまった、と言うほかなくて。
やすすの考えに「ヒット曲は田舎の漁港のぼろいスピーカーで聴けるかどうか」みたいな話がある。いろいろ象徴的な話で、日本のための日本ならではの歌にずっとかかわってる人ならではのすごい観点だなと思った。やっぱり高音質で作り込んだ曲をしっかり聴いてもらうという考えをすぱっと捨ててる。
なので基本的に坂道の音楽の表題曲やアンダー曲は「一聴して難しくしないようにする」というのがあると思う。やすすがクソスピーカーでも聞こえるように低音域を使わないようにするとかも、その一環だろう。音楽性を試そうとするのはカップリングのユニット曲とか、個人MVの曲とかその辺。
それが良くもあり、いま大変なところであり。しかしいくら雑なスピーカーで聴ける曲ですよって言っても、乃木坂の「チャンスは平等」や「チートデイ」、日向坂の「絶対的第六感」、櫻坂の「愛しあいなさい」は「だ、だ、大丈夫なの・・・・・?」と思ってしまったし。
とはいえ、いま坂道では櫻坂がたぶん音楽的に頑張ろうとしていて、海外進出も意識的にやってる。
そして楽曲的にも周囲の状況を無視してるわけではない。いまのトレンドと坂道の音楽性って意味で櫻坂を考えると、なんかいつまでもAKB的なビジネスモデルの箱庭でいられなくなってるところで動こうとしてるかんじで面白いというか。
去年の「承認欲求」はすごくkpopシーンを意識したトラックで、坂道的なサビを載せられるか試してた感あるし、低音域が解禁された楽曲もしばしば見られる。そしてその音域を使えてるということは、考えてみれば櫻坂がやすすの関与からどれくらい離れてるかも見えてくる。
将来的にサブスク配信は高音質対応したりするんだろうか。
日本国内の人を相手にするだけなら町の片隅にあるノイジーなスピーカーでも染みる歌謡曲が流れれば共感するかもだけど、世界の人たちのスピーカーからはっとさせるには、そこも手をつけなければならなそうなのだ。
そして、やすすと坂道の関係自体も、なんとなくだが櫻坂の新しいシングルか新しいアルバムにドルビーアトモス対応が行われたとしたら変わってしまう予感がある。「もう一曲 欲しいのかい」を360°ので聴ける環境になったとき、坂道自体の運命も変わるのかも。